これからのインバウンドは「観光」だけではない/インバウンドマーケットEXPO

2018年3月7日
 2017年には2869万人と過去最高を記録し、さらに右肩上がりに増え続けている訪日外国人。2019年のラグビーワールドカップ、2020年の東京オリンピックに向け、訪日外国人対応や地方創生は企業にとって大きなビジネスチャンスである。
 2018年2月21日から23日の期間、東京ビッグサイトで開催された『インバウンドマーケットEXPO2018』では、訪日外国人対応の強化や地方創生の支援に関わる106社による製品・サービスが集結。またインバウンド対応に関する数多くのセミナーやパネルディスカッションが行われた。

2018年2月21日から23日の期間、東京ビッグサイトで開催された『インバウンドマーケットEXPO2018』。訪日外国人対応の強化や地方創生の支援に関わる106社による製品・サービスが集結。インバウンド対応に関する数多くのセミナーやパネルディスカッションが行われた

 今回はセミナーの一つ『インバウンド・マーケティングの最新トレンド~2018年の動向を占う~』から、今後のインバウンドビジネスにおいて知っておかなければならないテーマを取り上げる。進化するインバウンドにおけるマインドチェンジの必要性、リピーター獲得のための地域連携、そして訪日客との関係性強化など、講師の日本インバウンド連合会理事長・中村好明氏による分析と指摘は会場に集まった多くの聴講者に共感を与えた。

■「インバウンドを観光と捉えない」。思考の転換が求められている

日本インバウンド連合会理事長 中村好明氏

 まず中村氏は観光立国と地方創生の成功条件として「『インバウンドを観光と捉えない』という思考の転換が必要である」ことから話を始めた。2019年に日本で開催されるラグビーワールドカップに伴い、欧米豪からの訪日客は40万人増加すると見られている。しかしここでこれまでの意識を変える必要がある。例えば「食」というジャンルでは、寿司やラーメンなどの日本食が好まれると考えがちだが、観光とは異なる目的での訪日客は日本食を求めるとは限らない。
 欧米豪では卵料理などアレルギー性食品に対し特に厳しい扱いをしているし、近年増加しているヴィーガンやハラルフードなどについても考慮する必要がある。特にラグビーワールドカップの経済波及効果は2000億円を超える見込みであり、だからこそフードダイバーシティ(食の多様性)対応をすることは急務であると中村氏は強調する。
 また長時間かけて日本へ来る欧米豪の訪日客にとっては、東京から北海道・沖縄への移動は「それほど遠くない移動」と捉えられている。また日本国内だけでなく近隣の中国や韓国にも足を伸ばす傾向が高い。そのため広域連携や越境連携の必要性も考えなくてはならない。逆に一箇所に長くとどまってもらうのであればロングステイ戦略やナイトエコノミーの充実も図る必要がある。インバウンド対応というと観光やおもてなしという部分に目が向いてしまいがちだが、このような対応も同時に進めておかなくてはならないだろうと中村氏は話す。
 「日本の人口は減少していますが、世界の人口は増え続けています。これがインバウンドの増えている理由でもあります。特にアジア新興国の成長率は世界一です。また日本にとって国際観光産業は唯一伸びる産業です。しかしインバウンドの定義は観光だけではありません。訪日客は観光よりも旅そのものにウエイトを置いています。ですから今こそインバウンドに本気で対応しなくてはなりません」

■訪日客数の伸びは四国がダントツでトップ、西高東低の流れ

 インバウンドにおける消費や訪問地の現状はどうなっているのだろうか。中村氏によると2017年12月にはモノ消費が47.2%、コト消費が52.8%となっており、これまで見られた「爆買い」のようなモノ消費からコト消費へと需要がシフトしている。また売れるモノも変化しており、2014年には化粧品やブランド品が売れていたが、2017年は中国の二人っ子政策を受けベビー用品がよく売れたそうだ。

 国内で訪日客の数が伸びているのは四国がダントツでトップであり、LCCやクルーズ船のある九州も伸びている。一方で関東・東北は伸びが今ひとつであり、現状は"西高東低"であると中村氏は話す。
 「2020年の訪日客4000万人は間違いなく達成できます。今後はASEANや欧米からのインバウンドを増やすことが重要となるでしょう。また2018年には免税制度が変更となりますが、一人あたりの消費額は減少していくと思われます。したがってモノ消費よりも"今ここでしか体験できないコト"を開発する必要があります」

■「国際交流」を「国際関係」に変えていくことが重要

 それでは今後、地域や企業はどのようなインバウンド対応を取っていく必要があるのだろうか。中村氏は「まず自分の町を知ることが必要」と話した。これは外部目線を通して、地域でダントツとなるコンテンツを探し、作り、共有して、広めるということだ。
 またインバウンドは自社だけで対応して儲けようとするのではなく、地域への奉仕が必要であるとし、「川から水を引こうとして、自分のところだけ用水路を掘っても水は流れません。地域の人たちと協力しないと用水路を作ることはできないのです。インバウンド対応についても同じこと。地域連携、広域連携をしてみんなで協力して作り上げていく必要があります」と中村氏は話した。

 さらに観光立国に必要な「5者(もの)」として中村氏は「若者・ばか物・よそ者・切れ者(専門家)・本者(地方の文化を知っている人)」を挙げた。新しいアイデアを持つ者、外部から客観的に地域を見ることができる者、アイデアを活かすことができる者を広く集めることが重要ということだろう。

 最後に中村氏は「国際交流人口は現状でも多いですが、今後は国際関係人口を増やしていく必要があります。国際関係人口とは訪日客との関係作り、つまり顔と名前が一致する関係になるということです。顔と名前を知っている人はファンになり、リピーターになってくれます」と締めくくった。
《川口裕樹/HANJO HANJO編集部》

●関連リンク

執筆者: HANJOHANJO編集部 - HANJOHANJO編集者
日本の中小企業の皆さんにとってビジネスのヒントになる「ヒトモノコトカネ」を探し出し、日々オリジナルな視点で記事を取材、編集してお届けします。中小企業の魅力をあますところなく伝えます。

イベントレポート新着記事

  • 混迷の時代を生き残る会社の「社長力」とは?

    「会社に良い悪いはない。社長に良い悪いがある」。そう言い切るのは株式会社小宮コンサルタンツ 代表取締役社長CEOの小宮一慶さん。大学教授として会計や経済の教育に携わる一方で、140冊以上の多岐にわたる著書を発表しています。「世の中には経営という仕事があります。この経営という仕事を知らない社長さんが意外なほど多い。経営の仕事とは『方向付け』『資源の最適配分』『人を動かす』の3つを実行することです」と小宮さんは話します。

    2019年2月18日

    イベントレポート

  • 中小製造業の強い味方! 新製品開発のクラウドファンディング活用術

    「クラウドファンディング」という言葉を耳にすることが多くなりました。新しい製品やサービスやプロジェクトを実現するために、専用のサイトを通じて資金調達をする方法です。一般的には消費者向けの新商品開発がメインですが、BtoBメーカーが高い技術を使ったBtoC向け製品をアピールする場としてクラウドファンディングを使うことは効果があります。中小企業がクラウドファンディングを利用するために知っておくべきことは何なのでしょう? サイバーエージェントグループのクラウドファンディング「Makuake(マクアケ)」から考えます。

    2019年2月14日

    イベントレポート

  • 赤字路線からブランドへと成長した「いすみ鉄道」の発想と戦略

    廃線寸前の赤字路線からブランドに変貌した千葉県房総半島を走る「いすみ鉄道」。現在ではさまざまなメディアで取り上げられ、鉄道ファンのみならず多くの人が訪れる強力な観光コンテンツに成長しました。沿線には目的地になるような場所がないため、外部から人が来ることはほとんどありませんでした。そこで発想の転換をしたことが成功を導きました。

    2019年2月12日

    イベントレポート

  • マンガ・アニメと現実世界の境界にある「2.5次元文化」をビジネスに応用せよ!

    「2.5次元文化」とは、マンガ・アニメ・ゲームなどの2次元の虚構の世界と、身体性を伴った経験を共有する3次元の現実世界の境界にあるカルチャーのこと。舞台、ミュージカル、コスプレ、コンサートなどさまざまなコンテンツとして提供されていて、国内外を問わず熱狂的な支持を得ています。これらのコンテンツは、アニメの舞台となった街を訪れる「聖地巡礼」といったツーリズムとの相性もよく、海外でも強い人気を博しています。マンガ・アニメ・ゲームーーこれらのコンテンツを2次元だけではなく、2.5次元の世界で活用することが、地域活性やインバウンド誘致の新たなファクターとなりそうです。

    2019年2月1日

    イベントレポート

  • 地域活性の切り札になるか? 自然共生型アウトドアパーク「フォレストアドベンチャー」人気上昇の秘密

    「フォレストアドベンチャー」をご存知でしょうか? 元々はヨーロッパ発の「自然共生型アウトドアパーク」を指す名称ですが、その特徴は森を森のまま活用できる商業施設という点にあります。大規模な開発が不要なので、遊休森林や夏季のスキー場を有効利用するのに最適です。日本でも2006年に自然共生型アウトドアパーク「フォレストアドベンチャー」が山梨県富士山麓にオープンし、現在までに30ヶ所を超えるパークがオープンしています。日本にはまだまだ自然豊かな場所が数多く残っています。自然共生型アウトドアパークを地域活性につなげるにはどんな道筋が考えられるのでしょうか?

    2019年1月28日

    イベントレポート

  • 「発足当時に匹敵する覚悟で、生産性運動を再起動する」/日本生産性本部 年頭会見

    1月9日に日本生産性本部の正副会長による年頭会見が開催されました。平成が終わり文字通り新しい時代の幕開けを迎える2019年、会長の茂木友三郎氏からは「発足当時に匹敵する覚悟をもって生産性運動を再起動する」という言葉とともに、5つの柱からなる日本生産性本部の中期運動目標が発表されました。

    2019年1月23日

    イベントレポート

  • 地方で戦うための集客戦略とは? 工場テーマパーク「おやつタウン」の狙いを探る!

    地域活性化の手法のひとつとして「工場テーマパーク」が注目を集めています。特に食品製造業は消費者に近い存在であることから、工場を体験型のアミューズメント施設化するだけでなく、製品購入につながるブランディング効果も期待できるのが大きな特長です。今夏開業予定であるおやつカンパニーの「おやつタウン」から、工場テーマパークの集客戦略を探ります。

    2019年1月21日

    イベントレポート

  • 増え続けるムスリム訪日客、キーワードは「食事」と「お祈り」!

    日本を訪れるムスリム(イスラム教徒)の観光客が増えています。東南アジアや中東に多く住むムスリムは世界人口の1/4にも及び、日本を訪れるムスリムが増えるということは大きなマーケットのチャンスがあると言えます。日本におけるハラル(イスラム)ビジネスの先駆者である佐久間朋宏さんの話からビジネスへの具体的対応を抽出します。

    2019年1月17日

    イベントレポート