「創造生産性」で次代のビジネスを生み出せ!

中小企業の匠の技を新たな価値創造に/新価値創造展2019

2020年1月28日
新しいアイデアや技術を持つ中小企業を中心に、新製品開発や販路拡大の支援を目的とした「新価値創造展2019」(19年11月27~29日)。今回のテーマは「生産性向上、SDGs」です。本日の記事では株式会社ローランド・ベルガー グローバル共同代表 日本法人代表取締役社長・長島聡さんのセミナーから、中小企業に求められている「創造生産性」のポイントを探ります。
 企業が成長するためには、新たなアイデアによる価値の創造が欠かせませんが、アイデアや価値は必ずしも革新的なものである必要はなく、むしろ身近にあるものの掛け合わせによって生まれたアイデアがヒットした事例も数多くあります。

 そんな新しいアイデアや技術を持つ中小企業を中心に、新製品開発や販路拡大の支援を目的とした「新価値創造展2019(第15回中小企業総合展 東京)」が2019年11月27~29日の期間、東京ビッグサイトで開催されました。

 2019年のテーマは「生産性向上、SDGs」。近年世界的な課題となっている生産性向上と、地球市民としての企業が果たすべき国際的ガイドラインであるSDGsをテーマに、「産業・技術」「健康・福祉」「環境・社会」の3分野29カテゴリーに分類された378社が出展し、多くの業界関係者で賑わいました。また、新たな価値を生み出すヒントとなりそうなセミナーも多数開催され、多くの聴講者が熱心に耳を傾けていました。

 今回の記事では11月28日に開催されたセミナー「新たな挑戦を形にする創造生産性の高い中小企業」(講師:長島聡さん/株式会社ローランド・ベルガー グローバル共同代表 日本法人代表取締役社長、工学博士)より、中小企業に求められている創造生産性のポイントについてレポートします。

株式会社ローランド・ベルガー グローバル共同代表 日本法人代表取締役社の長長島聡さん

すべての日本企業に求められる「創造生産性」とは?

 「創造生産性は日本企業すべてに必要なコンセプトです」。そう語るのは今回のセミナー講師である株式会社ローランド・ベルガーの長島さん。長島さんは、顧客が作った仕様や図面通りに早く安く作ることが一般的な中小企業の競争力になっているものの、その一方で各社が持っている卓越した技術を顧客以外に伝えることが難しいと話します。

 「どんなに高い技術を持っている中小企業でも、コスト圧力によって低収益を余儀なくされているケースが少なくありません。そこで、モノづくりに不慣れな顧客にこんな価値が提供できますよ、と提案することが求められます」

 つまり、中小企業の持つ高い技術力を一つの価値と定義し、従来とは全く異なる分野の顧客が持つ価値と結びつけ、新たな価値を創造する。これが「創造生産性」であると長島さんは強調します。

 具体的な方向性として、長島さんは「成し遂げたときにありがとうと言われる仕事に進んでいくことを考えます。モノづくりには知見がないが、コンセプトイメージを持っているベンチャー企業やデザイナーをターゲットにして、技術という価値ベースで提案をする。結果、感謝と評価を得ることができます。これを一つでも二つでもやっていくことが重要です」と話しました。

中小企業の持つ高い技術力を一つの価値と定義し、全く異なる分野の顧客が持つ価値と結びつけ、新たな価値を創造するーーこれが「創造生産性」であると長島さんは強調する

「和ノベーション」で新たな価値を量産せよ!

 このように、ベンチャー企業やデザイナーと一緒に新しい価値を生み続けると、様々な変化が起こると長島さんは説明します。

 「まず色々と考えて工夫をするようになるので、自分たちのものの考え方が変わります。考え方が変わるとモノづくりを知らない人とも話ができるようになります。さらに、この体験を活かして既存顧客に対し、付加価値向上につながるような小さな提案ができるようになります。もちろん、最初のうちは話を聞いてもらえない可能性が高いですが、諦めずに3個4個と提案することで徐々に話を聞いてくれるようになるはずです。既存顧客と対話できる関係づくりができれば、少しずつ単価の取れるものにシフトしていくことも可能なのではないでしょうか」

 ここで長島さんは「和ノベーションの推進」という言葉を挙げました。「和ノベーション」とは、日本の強みを活かしつつ、新たな価値を量産するということで、日本企業や個人が持っている潜在力(ありもの)の見える化と組み合わせを意味する「和」、業界分野を超えて対話する「話」、ネットワークや未来志向、想いや志を共にする仲間の「輪」の三つの意味が込められているそうです。

 「ゴールは創造生産性の向上です。創造生産性を高めるには、顧客目線で面白いと思えるものを考え、その面白いものにどうすれば貢献できるか思いを巡らせることが必要です。さらに仲間を作り、対話に多くの時間を割くことや自分の常識とは違う人に積極的に会いに行き、刺激や学びを積み上げることも重要です」

長島さんが提唱する「和ノベーション」。日本の強みを活かしつつ、新たな価値を量産するというものだ

中小企業の匠の技を新たな価値創造に

 東京都の大田区や墨田区、新潟県の燕三条など、日本国内のあらゆる地域に特徴あるモノづくり企業があります。これらの企業が持つ価値拡大のために「他社との対話を行い、自社との違いを考えることが必要です。新たな価値を生み出すために、自分の専門分野とは異なる能力を持つ人材が集まる場を用意するのも良いでしょう」と長島さんは話しました。

 長島さんが特に強調していたのが「新たな価値を量産する」ということです。中小企業の持つ匠の技を、モノづくりに知見のないベンチャー企業やデザイナーに活用してもらい、そこで創造した新たな価値の量産を既存顧客に提案して単価を上げることが、これからの中小企業に必要な考え方だと言えるでしょう。

 最後に長島さんは「創造生産性を上げるには、こんなことをやってみたいという構想、仲間集め、得意技の組み合わせの三つが必要です」と話し、「異質や違いを好むこと、使いやすい得意技を持つこと、対話の場を盛り上げること、得意技を使い倒すこと、顧客と何度も対話すること、これまでのやり方を一旦忘れること、感性を信じること。この7つに今日から挑戦してみてください」と締めくくりました。

 自分たちの持つ技術を価値に変換し、その価値を起点としてさらに新たな価値を生み出す。これからのビジネスには、この新価値創造の視点が必要だと言えそうです。

新しいアイデアや技術を持つ中小企業を中心に、新製品開発や販路拡大の支援を目的とした「新価値創造展2019(第15回中小企業総合展 東京)」(2019年11月27~29日、東京ビッグサイト)。今回のテーマは「生産性向上、SDGs」。「産業・技術」「健康・福祉」「環境・社会」の3分野29カテゴリーに分類された378社が出展した

(レポーター/HANJO HANJO編集部 川口裕樹)

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執筆者: HANJOHANJO編集部 - HANJOHANJO編集者
日本の中小企業の皆さんにとってビジネスのヒントになる「ヒト・モノ・カネ・情報」を探し出し、日々オリジナルな視点で記事を取材、編集してお届けします。中小企業の魅力をあますところなく伝えます。

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