ソサエティ5.0時代、エネルギーのデジタル化/スマート化が日本の未来を変える!

脱炭素社会に向けて今何をすべきなのか?/新価値創造展2019

2020年1月23日
新しいアイデアや技術を持つ中小企業を中心に、新製品開発や販路拡大の支援を目的とした「新価値創造展2019」(19年11月27~29日)。今回のテーマは「生産性向上、SDGs」。本日の記事ではコージェネ財団理事長・柏木孝夫さんのセミナー「IoE(Internet of Energy)とエネルギービジョン」から次代のヒントを探ります。
 企業が成長するためには、新たなアイデアによる価値の創造が欠かせませんが、アイデアや価値は必ずしも革新的なものである必要はなく、むしろ身近にあるものの掛け合わせによって生まれたアイデアがヒットした事例も数多くあります。

 そんな新しいアイデアや技術を持つ中小企業を中心に、新製品開発や販路拡大の支援を目的とした「新価値創造展2019(第15回中小企業総合展 東京)」が2019年11月27~29日の期間、東京ビッグサイトで開催されました。

 2019年のテーマは「生産性向上、SDGs」。近年世界的な課題となっている生産性向上と、地球市民としての企業が果たすべき国際的ガイドラインであるSDGsをテーマに、「産業・技術」「健康・福祉」「環境・社会」の3分野29カテゴリーに分類された378社が出展し、多くの業界関係者で賑わいました。また、新たな価値を生み出すヒントとなりそうなセミナーも多数開催され、多くの聴講者が熱心に耳を傾けていました。

 今回の記事では11月28日に開催されたセミナー「IoE(Internet of Energy)とエネルギービジョン」(講師:柏木孝夫さん/国立大学法人東京工業大学 特命教授・名誉教授、コージェネ財団理事長)より、今後のエネルギービジョンとIoEを推進するためのヒントについてレポートします。

国立大学法人東京工業大学 特命教授・名誉教授、コージェネ財団理事長の柏木孝夫さん

世界は石油から電力化にシフトしている

 自然エネルギーの活用や低炭素社会の実現など、エネルギーを取り巻く環境はここ数年で大きく変わりました。このエネルギーとビジネスの関係は、今後どのように変わっていくのでしょうか。今回のセミナー講師である柏木さんは「現在、地球の石油埋蔵量は富士山をカップに見立てると約半分の量しかありません。石油から他のエネルギーにシフトしていかないと、持続可能な企業というのはありえないだろうと考えています」と話しました。

 そして、石油からシフトすべきエネルギーについて、柏木さんは電力を挙げています。2040年には世界の乗用車の約55%が電動自動車になるという予測がありますが、柏木さんは「1回のチャージで700km走ることができる自動車でないと購入者側は不安になります。おそらく30%がプラグインハイブリッド車で、完全EVはスポーツカーや軽自動車などに限られるのではないでしょうか」と意見を述べました。

 しかし、それでも世界は電力化に向かっていくだろうと柏木さんは話します。「1980年の世界全体の電気消費量は10兆kWhでした。2018年には22兆kWhと約2.2倍になっています。約40年間でこれしか電気消費量が増えていないのは、先進国が省エネを進めた結果だと言えます。しかし、アジア圏で見ると電力消費量が4倍に増えていること、また世界の無電化層がまだ14億人いることから、今後も世界の電力化は続いていくでしょう」

 日本のエネルギーに注目すると、電気が40%、熱が60%となっています。特に発電によって生み出された排熱を利用する技術(ヒートカスケーティング)があるため、コージェネレーションシステム(電気と熱を同時に発生させる事が可能な熱電併給システム)をアジアに向けて輸出することが、世界の電力化への貢献につながると柏木さんは指摘しました。

「石油から他のエネルギーにシフトしていかないと、持続可能な企業というのはありえないだろう」(柏木さん)

エネルギーのデジタル化がポイント

 電力化を推進するためには発電が欠かせません。近年では太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーが注目されています。柏木さんはこの再生可能エネルギーを日本の主力電源化することを強く主張しています。

 そこでポイントとなるのがエネルギーのデジタル化です。近年、太陽光発電と蓄電池を備えたスマートハウスが普及しつつありますが、このスマートハウス化がポイントとなると柏木さんは話しました。

 「太陽光や風力による発電は、発電量の変動が大きいという特徴があります。例えば今年のゴールデンウィークは比較的晴天の日が多くありました。そして、10連休の企業も少なくなかったと思います。企業や工場がお休みで電気を使わないのにも関わらず、天気が良いから太陽光でどんどん発電してしまう。そうすると電気の価格がタダ同然になります。スマートハウスであれば、電気料金をウォッチし、安くなったときに自動的に使用量を上げるといったことも可能です」

 スマートハウスにはHEMS(Home Energy Management System:ヘムス)という仕組みが導入されています。HEMSとは、電気やガスといった家庭で使用するエネルギーをタブレット端末等でデジタル化・見える化し、エネルギー使用の制御や最適化をすることができるシステムです。

 そして、このエネルギー情報のデジタル化こそが、IoE(Internet of Energy/エネルギーのインターネットシステム)社会の推進に欠かせないものであると柏木さんは強調します。

「エネルギーをデジタル化・見える化し、まずは自分たちができるエネルギー政策を取らないと世界から信用されません」(柏木さん)

スマート化社会を作ればIoE推進につながる

 脱炭素社会という言葉を耳にするようになって久しいですが、実際のところ脱炭素社会は進んでいるのでしょうか。

 「脱炭素社会を掲げているドイツでも、発電の39%は石炭火力です。世界の電源構成を見てみると、石炭火力が40%、天然ガスと大型水力がそれぞれ20%、原子力が10%、太陽光・風力・地熱・中小水力・バイオマスは10%と、まだまだ高炭素時代だと言えます。エネルギーをデジタル化・見える化し、まずは自分たちができるエネルギー政策を取らないと世界から信用されませんし、脱炭素社会の実現は難しいでしょう」

 また、脱炭素社会のヒントとしてCCU(二酸化炭素回収有効利用)技術について柏木さんは「天然ガスを燃やした後の二酸化炭素を使ったフルーツトマトの栽培事例があります。二酸化炭素を使った化学産業や石炭火力のクリーン化などはビジネスチャンスに繋がる可能性があります」と強調。

 最後に柏木さんは「エネルギーのスマート化とデジタル化、そしてHEMSを活用して安く使えるときに使う、こういう社会を作ることが日本のIoE推進に繋がります。IoEが進めば、社会も変わるはずです」と締めくくりました。

 エネルギーの有効活用は、社会や環境の持続にも結びつきます。デジタル技術が進歩した今だからこそ、エネルギーのスマート化にもっと目を向ける必要がありそうです。

新しいアイデアや技術を持つ中小企業を中心に、新製品開発や販路拡大の支援を目的とした「新価値創造展2019(第15回中小企業総合展 東京)」(2019年11月27~29日、東京ビッグサイト)。今回のテーマは「生産性向上、SDGs」。「産業・技術」「健康・福祉」「環境・社会」の3分野29カテゴリーに分類された378社が出展した

(レポーター/HANJO HANJO編集部 川口裕樹)

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執筆者: HANJOHANJO編集部 - HANJOHANJO編集者
日本の中小企業の皆さんにとってビジネスのヒントになる「ヒト・モノ・カネ・情報」を探し出し、日々オリジナルな視点で記事を取材、編集してお届けします。中小企業の魅力をあますところなく伝えます。

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