「2020年、日本は世界に開かれた信頼と活力ある社会を目指す必要がある」/日本生産性本部 年頭会見

環境問題、デジタル技術の進歩、国際秩序の機能不全・・・構造変化に対応することが急務

2020年1月21日
1月8日に日本生産性本部の正副会長による年頭会見が開催されました。日本生産性本部発足から65周年の節目を迎える2020年、今年は一体どのような年になるのでしょうか? 会長の茂木友三郎氏と副会長6名により、年頭所感とわが国の重要課題が発表されました。
 2020年は日本生産性本部発足から65周年の節目を迎える年です。今年は一体どのような年になるのでしょうか? そのヒントとなる日本生産性本部の年頭会見が1月8日、ホテルニューオータニで開催されました。

日本生産性本部 茂木友三郎氏(キッコーマン 取締役名誉会長 取締役会議長)。「生産性運動65周年を迎えるにあたって」と題し、年頭所感を表明した

 日本生産性本部の会長である茂木友三郎氏(キッコーマン 取締役名誉会長 取締役会議長)および副会長6名により、「年頭所感の発表とわが国の重要課題について」をテーマにコメントが発表されました。その模様をレポートします。

世界と日本で山積みとなっている課題。その解決のための改革が必要

 茂木友三郎氏は「生産性運動65周年を迎えるにあたって」と題し、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年は、世界に開かれた信頼と活力ある社会を目指し、次の世代に引き渡す必要があると切り出しました。

 しかし、その一方で、地球温暖化等の環境問題や、デジタル技術の進歩による急速な変化への対応、自国第一主義的な空気の高まりによる国際秩序の機能不全など、世界的にさまざまな課題が山積みであると言及。さらに日本の超少子高齢化社会や財政赤字、社会保障制度の持続性などの課題にも触れ、統治構造のさらなる改革の必要性を強調しました。

 また、65周年の節目を迎える生産性運動について、2020年を日本の生産性改革の推進に向けた具体的な発信と実践の年と位置づけ、以下の取り組みを行うことを発表しました。

1.「生産性白書」の公表
2. 全国生産性機関と連携し、全国各地で生産性に関する議論の喚起
3.「人口減少モデル」への産業・社会構造の転換を図るためのビジョン発信
4.「日本サービス大賞」第三回表彰式の開催
5. ドイツ・ミュンヘンにて「日独経営者会議」の開催
6.「生産性運動六十五周年記念生産性大会」の開催

 最後に茂木氏は「これらの取り組みを通じ、日本生産性本部では持続可能な経済社会の実現に向け、生産性運動三原則に基づく生産性運動を推進し、未来への責任を果たします」と締めくくりました。

6名の副会長によるコメント

 続いて、2020年における日本の重要課題について、6名の副会長がそれぞれコメントを発表しました。

副会長 佐々木毅氏(元東京大学総長)

 最初にコメントを発表した佐々木毅氏(元東京大学総長)は、「危機感というのは我々が想像していた以上に強くかつ深刻であるということを肝に銘じ、今年の活動を続けていきたい」と述べ、特に東京オリンピック・パラリンピック終了後の日本はどうなるか、どうするべきなのかを考えておく必要があると強調しました。

副会長 神津里季生氏(日本労働組合総連合会会長)

 次に神津里季生氏(日本労働組合総連合会会長)は日本の人口減少や賃金の問題に触れ、「見かけの生産性にばかり注力していて、日本は萎みゆく国ということになってしまったのではないか」と警鐘を鳴らしました。働き方改革2年目に当たる2020年4月には同一労働同一賃金がスタートします。見かけの生産性ばかり追いかけてきたツケをどう払うのか、今後どう日本経済を発展させていくのかが大きな論点となりそうです。

副会長 遠山敦子氏(トヨタ財団顧問)

 遠山敦子氏(トヨタ財団顧問)は、「日本は夏まではオリンピック・パラリンピックの熱に覆われますが、解決すべき問題は山積みです。年初から忘れることなく取り組むべきことがいくつかあります」と述べ、特にAIとバイオテクノロジーの発展によりこれまで人間が経験したことのないような時代がやってくること、そして女性の活躍を真剣に考える必要があることの二点についてコメントしました。これまで以上に人材育成や人材活用に力を入れる必要があると言えるでしょう。

副会長 大田弘子氏(政策研究大学院大学教授)

 大田弘子氏(政策研究大学院大学教授)は、生産性を上げるうえで一番大事なのはイノベーションであると話し、昨年立ち上げたイノベーション会議での調査結果を報告しました。「日本は破壊的イノベーションを起こしやすいかどうか、大企業の経営者を対象に調査したところ、7割の方が起こしにくいと回答。企業がリスクを取ることに消極的であり、その背景には失敗を許容しない企業風土があるということが分かりました」と話し、この課題についてどう克服するかがポイントになると強調しました。

副会長 野中孝泰氏(全国労働組合生産性会議議長)

 野中孝泰氏(全国労働組合生産性会議議長)は、超少子高齢化などの課題が山積みの日本において、国民が生きがいや働きがい、幸せを感じる持続可能な日本社会を再構築していくことが重要であると話し、そのためには社会全体の生産性を上げることが必要であると強調しました。「ただし、能率や効率に偏重したものではなく、人間性を基礎とした生産性の精神を重視しなければなりません。生産性運動三原則を日本社会全体が共有できるような価値観の浸透が大事です」と述べました。

副会長 有富慶二氏(ヤマトホールディングス元代表取締役社長)

 最後に有富慶二氏(ヤマトホールディングス元代表取締役社長)は、全産業の70%を超えるサービス産業について言及し、サービス業の生産性向上のためにはITパワーの活用が非常に重要であると強調しました。「ITを上手に使えばコストセーブとともに収入増が見込め、生産性の分子・分母(算出/投入)の改善にもつながる可能性が十分にあります」と話し、サービス大賞に応募する企業への期待を寄せました。
 東京オリンピック・パラリンピックを控えた2020年、各企業や団体にとってはこれまで以上にさまざまな課題に対し、真摯に向き合うことが求められます。日本生産性本部の年頭会見で述べられた提言は、2020年の日本経済や産業を占う重要なヒントと言えると同時に、厳しい状況を乗り越えるための手助けとなるはずです。

(レポーター/HANJO HANJO編集部 川口裕樹)

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執筆者: HANJOHANJO編集部 - HANJOHANJO編集者
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