正解を出すのはもう古い! 2020年、ニュータイプの企業となるためには?

正解を出せる人が活躍できる時代は終わった/産業交流展2019

2020年1月7日
優れた技術や革新的な製品を武器とする中小企業が一堂に会し、販路拡大や企業間の連携、情報収集・交換の支援を目的とした「産業交流展2019」が2019年11月13~15日の期間で開催されました。2019年のテーマは「OPEN the Mind ~ジダイを切り開き、変えるチカラ~」。今回の記事では11月13日に開催されたセミナー「「ニュータイプ」の中小企業になるために~「役に立つ」から「意味がある」へ~」(講師:山口周さん/独立研究者・著作家・パブリックスピーカー)より、新しい時代に求められる企業のあり方についてレポートします。
 優れた技術や革新的な製品を武器とする中小企業が一堂に会し、販路拡大や企業間の連携、情報収集・交換の支援を目的とした「産業交流展2019」が2019年11月13~15日の期間、東京ビッグサイトで開催されました。

 2019年のテーマである「OPEN the Mind ~ジダイを切り開き、変えるチカラ~」のもと、「情報」「環境」「医療・福祉」「機械・金属」の4分野を中心に748もの企業・団体が集結。中小企業の技術や製品をひと目見ようと、会場は業界関係者で賑わいました。また、企業成長のヒントとなるセミナーも多数開催され、多くの聴講者が訪れました。

 今回の記事では11月13日に開催されたセミナー「「ニュータイプ」の中小企業になるために~「役に立つ」から「意味がある」へ~」(講師:山口周さん/独立研究者・著作家・パブリックスピーカー)より、新しい時代に求められる企業のあり方についてレポートします。

独立研究者・著作家・パブリックスピーカーの山口周さん。昨年、7万部を超えるベストセラーとなった『ニュータイプの時代――新時代を生き抜く24の思考・行動様式』で注目を集めた

正解を出せる人が活躍できる時代は終わった

 近年、書店に足を運ぶと「東大流○○」「京大流○○」といった本が平積みされているのをよく見かけるようになりました。今回の講師である山口さんはこのことについて「世の中では偏差値が高い人が優秀だと言われていますが、今の時代に早く正確に正解を出せる人は本当に必要でしょうか? 実際に正解を出せる人は活躍しているでしょうか?」と問いかけます。

 多くの企業において、昭和から平成にかけては理性が重視されてきました。データを活用し、消費者が求めるものに対する正しい答えを出せる人が優秀だとされてきた時代だと言えます。しかし、現在において正しい答えは必ずしも重要ではない、昭和に価値のあったものでも今は価値がなくなっていると山口さんは警鐘を鳴らします。

 「昭和の時代は問題と呼べるものがたくさんありました。問題とは不足しているものや困っていることのことです。例えば食品の保存ができない、家で洗濯ができないという問題に対して、冷蔵庫や洗濯機といった正解を生み出すことがビジネスになっていました。しかし、現在は困っていることが特にない時代です。それにも関わらず正解を売ろうとしている。困っていない人を相手にビジネスはできません。正解が過剰になりすぎてデフレを起こし、価値がなくなっているのです」

 山口さんによると、現在はモノが過剰で意味(生きがいや働きがい)が希少な時代になっているそうです。しかし、人間のマインドは保守的なので、モノに価値があると思っている人が多いのが現実です。

 「こんまり(近藤麻理恵)さんの本がアメリカで大ヒットしました。それはモノを減らすという意味を生み出したからです。意味が価値になり、莫大な利益を生み出しています」

「現在は困っていることが特にない時代です。正解が過剰になりすぎてデフレを起こし、価値がなくなっているのです」(山口さん)

サイエンスからアートへのシフトが必要

 また、山口さんは利便性が過剰になり、情緒やロマンといったものが希少な時代になっていると話します。

 「例えばエアコンは便利で価格も安いですが、どれも似たようなものばかりです。最近の富裕層は家を建てたときに寒さ対策に何を設置するかご存知でしょうか? 答えは暖炉や薪ストーブです。不便で高価なものですがお金持ちほど欲しがります。音楽も同じです。最近は携帯電話でも聴くことができますが、LPレコード用のターンテーブルや真空管アンプ、ステレオセットなど揃えるだけで数百万円するにも関わらず売れています」

 エアコンも音楽プレーヤーも、消費者データを分析し、その結果をもとにデザイナーやエンジニアが設計するため、当たり前の結果として同じようなモノが生まれてしまいます。その最も分かりやすい例が携帯電話でしょう。かつて日本国内で作られていた携帯電話(いわゆるガラケー)は、デザインも機能もほとんど同じであり、価格による差別化しかできない泥沼のような状況でした。そこに登場した米アップル社のiPhoneは市場を席巻し、一人勝ちします。

 「iPhoneが一人勝ちしたのは、自分たちはこういうモノがかっこいいと思うというアートの視点で作ったからです。日本はデータなどのサイエンスに基づいて製品を作りますが、アップルはアートに基づいて作りました。その結果、日本の携帯電話は惨敗を喫することになったのです。偏差値の高い優秀な人が作ることで、必然的な結果として弱いビジネスになったと言えます。正解は正しいかもしれないけど弱いということです」

 さらに今後、人工知能が普及すれば、正解を出すことが得意な偏差値の高い人は不要になると予測する山口さん。

「偏差値が高い人というのは受験勉強が良くできる人ともいえます。受験勉強は突き詰めればクイズとパズルですから人工知能には敵いません。そして人間を雇うと年間数百万のコストがかかる割に1日8時間しか働けない、週に2日は休ませないといけない。生産性が低く不安定な人間に正解を求める必要がなくなります。そして人工知能の方が効率よく正解を導き出しますから、人間が正解を出すということが競争にならない時代になるでしょう」

今後、人工知能が普及すれば、正解を出すことが得意な偏差値の高い人は不要になると山口さんは予測する

「意味」のマーケットを切り開き、機能価値から感性価値へ

 従来の正解を出す仕事が人工知能に取って代わられることが予測される未来において、人間がなすべき仕事とはどのようなものなのでしょうか。山口さんは人工知能にはできないこととして、問題提起、意味付け、情緒やロマン、ストーリー、共感、懐かしさといったキーワードを挙げました。また、音楽や文学、絵画などは人間が作ることができる分野だと話します。

 「現在は役に立つことが評価されず、個人にとっての意味が重視される時代です。しかし、ほとんどの会社が役に立つことばかりで勝負しており、そこに価値が見いだせない状況に陥っています。例えば自動車。国産車には人や荷物を運び、悪路も走破できるという利便性があります。同じ利便性でもBMWやメルセデスは価格が3倍です。二人乗りで舗装された道路しか走ることができないスポーツカーは10~20倍の価格になります。BMWやスポーツカーには使う人にとっての意味があるからです」

 また、意味がある市場の方が競争が緩やかで、価値が多様化するブルーオーシャンであると話す山口さん。例えばコンビニに売っている文房具は1~2種類ですがタバコは200種類あります。文房具は役に立つものですが一種類あれば十分です。一方、タバコは役に立たないものですが買う人ごとに意味が異なるため、多くの種類を用意しなければなりません。そして役に立つものは、一番役に立つものしか評価されない(コンビニに置かれない)ということです。

 「サイエンスは役に立つモノと相性が良いですが、意味に価値がシフトしている今、役に立つモノはこれ以上伸びないでしょう。逆に意味はサイエンスと相性が悪いですが、アートとは相性が良い。意味のマーケットで成功すれば20~100倍の利益を生み出すことも可能です。例えば南部鉄器を世界の富裕層が欲しがっており、国内では手に入りにくくなっています。南部鉄器の広告があったわけではありません。インバウンド客がクールなヤカンという意味を持たせてSNSで紹介し、それが拡散した結果です。これは昭和の時代には考えられなかったことです」

 近年ではビジネススクールへの出願件数が減っている一方で、エグゼクティブを美術大学に送り込む企業が増えていたり、コンサルティング会社がデザイン会社を買収するという動きが増えています。この動きも、高いコストをかけて正解を学ぶことの価値が薄れ、製品に意味を持たせ、新たな市場を切り開くことに価値がシフトしているからだと言えるでしょう。

 最後に山口さんは「便利さという正解が生み出せればうまくいく時代は終わりました。意味的な価値を生み出すことが今後は重要になります。機能価値から感性価値へのシフトが必要です」と締めくくりました。

 従来の価値であった利便性が当たり前になった今、新たな価値として意味が求められています。いかに魅力的な意味を製品に持たせるか、今後企業が生き延びるために考える必要があるといえるでしょう。

優れた技術や革新的な製品を武器とする中小企業が一堂に会し、販路拡大や企業間の連携、情報収集・交換の支援を目的として開催された「産業交流展2019」(2019年11月13~15日、東京ビッグサイト)。今年のテーマは「OPEN the Mind ~ジダイを切り開き、変えるチカラ~」。「情報」「環境」「医療・福祉」「機械・金属」の4分野を中心に748もの企業・団体が集結した

(レポーター/HANJO HANJO編集部 川口裕樹)

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執筆者: HANJOHANJO編集部 - HANJOHANJO編集者
日本の中小企業の皆さんにとってビジネスのヒントになる「ヒト・モノ・カネ・情報」を探し出し、日々オリジナルな視点で記事を取材、編集してお届けします。中小企業の魅力をあますところなく伝えます。

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