カリスマ経営者・松本晃が語る「変化せよ、さもなくば死あるのみ!」

時代は変わった。反則技もあるプロレスのようなビジネス界をどう生き抜くのか?/産業交流展2019

2019年12月20日
優れた技術や革新的な製品を武器とする中小企業が一堂に会し、販路拡大や企業間の連携、情報収集・交換の支援を目的とした「産業交流展2019」が2019年11月13~15日の期間で開催されました。2019年のテーマは「OPEN the Mind ~ジダイを切り開き、変えるチカラ~」。今回の記事では11月13日に開催されたセミナー「Change, or Die!変化に対応せよ」(講師:松本晃さん/元 カルビー株式会社 代表取締役会長兼CEO)より、企業が生き残るために必要な条件についてレポートします。
 優れた技術や革新的な製品を武器とする中小企業が一堂に会し、販路拡大や企業間の連携、情報収集・交換の支援を目的とした「産業交流展2019」が2019年11月13~15日の期間、東京ビッグサイトで開催されました。

 2019年のテーマである「OPEN the Mind ~ジダイを切り開き、変えるチカラ~」のもと、「情報」「環境」「医療・福祉」「機械・金属」の4分野を中心に748もの企業・団体が集結。中小企業の技術や製品をひと目見ようと、会場は業界関係者で賑わいました。

 今回の記事では11月13日に開催されたセミナー「Change, or Die!変化に対応せよ」(講師:松本晃さん/元 カルビー株式会社 代表取締役会長兼CEO)より、企業が生き残るために必要な条件についてレポートします。

「プロ経営者」「カリスマ」と呼ばれるビジネス界のレジェンド、松本晃さん

平成の30年間を頑張らなかったツケ

 「平成の30年間、日本は頑張らなかった。昭和の日本は優秀だったが、平成を経て普通以下になってしまった。これからは新しい日本を作っていかないといけない」。冒頭から厳しい意見を述べた松本晃さん。長年多くの企業経営に携わった松本さんは、ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人やカルビーの業績を大きく伸ばしたことから「プロ経営者」「カリスマ」と呼ばれるビジネス界のレジェンドです。

 「平成の30年とは何だったのか、戦争が起こらなかった以外に良いことはありませんでした。どんどんデフレが進み、昔は上手くいっていたことが上手くいかなくなってしまった。これは変えないといけません」

 松本さんによると1989年11月9日、ベルリンの壁崩壊を境に日本は変わってしまったそうです。冷戦時代の日本は、規格化された工業製品を大量生産することで高度成長を実現、偏差値教育が重視され、少数のエリートが会社を牽引することで経済大国となりました。しかし、冷戦後はグローバル化が進み、少子高齢化や長期に渡る不況といった社会問題が続出、社会保障は破綻し借金大国とまで言われる国になってしまいました。

 「冷戦終了を境に世の中は大きく変わりました。まずゲームが変わった。例えるなら90年まではルールの厳しい相撲、それ以降は反則技もあるプロレスになったと言えます。また、ITとインターネットにより世界産業の構造に変化が訪れました。そして人生80年時代が100年時代へと移行しました。世の中は変わったのに多くの会社は変わろうとしない。変革とは金・権力・地位といった既得権を奪うことですから、誰も手放したくないんですね」

 カルビーで松本さんは、まずこの変革に乗り出しました。率先垂範を心がけ、権限・個室・社用車・接待費をなくしたそうです。

「冷戦終了を境に世の中は大きく変わりました。例えるなら90年まではルールの厳しい相撲、それ以降は反則技もあるプロレスになったと言えます」(松本さん)

古き労働慣行が、日本人をだめにし、会社をだめにし、国をだめにした

 松本さんの考える経営とは一体どのようなものなのでしょうか。「経営とは全てのステークホルダーを喜ばせることです。うまくいく経営に欠かせないのがビジョン・プラン・リーダーシップの3つの要素だと考えます」
 
 特に重要なのがビジョンであり、カルビーではビジョンを「顧客・取引先から、次に従業員とその家族から、そしてコミュニティから、最後に株主から、尊敬され、称賛され、そして愛される会社になる」と定めていたそうです。顧客・取引先、従業員とその家族、コミュニティ、株主の順番が大事だそうで、「多くの企業は株主を一番に持ってきているから失敗しています。この順序を守れば必然的に株主にも貢献することができるのです」と松本さんは付け加えました。

 また、経営はシンプルにすることが必要であると松本さんは強調し、そのために必要な条件を数多く挙げました。例えば、朝の挨拶を「お疲れ様です」から「おはようございます」に変える、人を呼ぶときは役職ではなく名前で呼ぶといった簡単なものから、身分制度・中間階層・稟議書・定例会議・中期計画・諸手当・日当の廃止、情報の透明化、権限移譲、コスト削減、ダイバーシティの採用などまで、いずれも実行がさほど難しいものではありません。

 「会社が求めているのは従業員の労働時間ではなく成果です。カルビーでは部下の時間を奪う上司を減らすために会議と書類を廃止しました。また、成果が出れば良いので在宅勤務制度を徹底的に勧めました。古き労働慣行が日本人をだめにし、会社をだめにし、国をだめにしてきたと考えます。働き方が変われば生き方が変わり、会社が変わり、人生が豊かになります」

「会社が求めているのは従業員の労働時間ではなく成果です。働き方が変われば生き方が変わり、会社が変わり、人生が豊かになります」(松本さん)

負けに不思議の負けなし

 「組織はリーダーの力量以上に伸びません。リーダーとは組織を率いて継続的に成果を出し、結果に対して責任を取ることができる人のことを指します」と経営者や上司のあるべき姿について松本さんは話します。

 松本さんによると部下がついていく上司には三つの要素が求められるそうです。圧倒的な実績、なるほどと思わせる理論、こんな人についていきたいと思わせる人徳の三つです。全てを兼ね備えることはなかなか難しいですが、少なくとも一つ半は持っていたいと松本さんは言います。

 また、会社が求めているのは成果ですから、リーダーは成果を出した人に対して感謝と称賛、そして報酬を与えることが重要であると松本さんは話し、「ただし、日本の会社はどれも下手なので、これをバランス良くやるのがリーダーの仕事だと言えます」と補足しました。

 最後に松本さんは「強い組織を作らなくてはいけません。負けに不思議の負けなしと言いますが、勝つためには良い人材を集めて上手に使うことが大切です。また、組織においては仕組みを変え、悪しき文化を壊すことが必要です。簡素化・透明化・権限移譲を心がけましょう。トップの仕事とは責任を取ることです。約束と結果責任を常に念頭に置き、結果にこだわる組織づくりを行ってください」と締めくくりました。

 多くの成果を上げてきた松本さんの言葉にはどれも説得力があります。停滞の時代だった平成が終わり、新たな令和の時代となった今こそ、変化に対応できる強い組織作りを始める良い機会だと言えそうです。

優れた技術や革新的な製品を武器とする中小企業が一堂に会し、販路拡大や企業間の連携、情報収集・交換の支援を目的として開催された「産業交流展2019」(2019年11月13~15日、東京ビッグサイト)。今年のテーマは「OPEN the Mind ~ジダイを切り開き、変えるチカラ~」。「情報」「環境」「医療・福祉」「機械・金属」の4分野を中心に748もの企業・団体が集結した

(レポーター/HANJO HANJO編集部 川口裕樹)

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執筆者: HANJOHANJO編集部 - HANJOHANJO編集者
日本の中小企業の皆さんにとってビジネスのヒントになる「ヒト・モノ・カネ・情報」を探し出し、日々オリジナルな視点で記事を取材、編集してお届けします。中小企業の魅力をあますところなく伝えます。

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