日本の屋外広告をすべてデジタル化する! 看板が最強の広告メディアになる日(第2回)

LIVE BOARD(ライブボード)/ドコモのデータで屋外広告価値を見える化、XYZ世代にも届くメディアへ

2019年12月11日
「OOH」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか? OOHとはOUT OF HOMEの略称で、街頭広告をはじめ、家から一歩外に出た際に触れるすべての広告のことを指します。そんなOOHをデジタル化することで、まったく新たなコミュニケーションメディアを日本に生み出そうとする会社が登場しました。今年の2月に設立された「株式会社LIVE BOARD(ライブボード)」です。代表取締役社長の神内一郎さんに話を聞く第2回は「DOOH、広がるそのパワー」です。
 「OOH」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか? OOHとはOUT OF HOMEの略称で、街頭広告をはじめ、家から一歩外に出た際に触れるすべての広告のことを指します。看板や駅構内のサイネージ、電車やバスの車内広告・・・。いわゆる屋外広告は歴史上一番古くから存在する広告でもあります。そんなOOHをデジタル化することで、まったく新たなコミュニケーションメディアを日本に生み出そうとする会社が登場しました。今年の2月に設立された「株式会社LIVE BOARD(ライブボード)」です。LIVE BOARDは、NTTドコモと電通の合弁会社。そこで鍵を握るのは携帯電話から集積される膨大な量のデータです。アナログ&アナクロだったOOHの世界に明確な基準となるデータや数値を与えることは、広告のあり方に変更を迫るだけでなく、日本の街の風景を一変させる可能性すら秘めています。今後ますます成長が見込まれるOOH。それはデジタル化=DOOH(DIGITAL OUT OF HOME)によって加速されることは間違いありません。DOOHがもたらす未来について、株式会社LIVE BOARD 代表取締役社長の神内一郎さんに3回にわたって話を聞きます。第2回は「DOOH、広がるそのパワー」です。

株式会社LIVE BOARD 代表取締役社長の神内一郎さん。「『街全体が広告です!』というような表現はDOOHでなければできません」

世界中に広がるDOOH。早く追いつきたい日本

── 海外ではすでにDOOHは成功していると聞きます。

DOOHの特性をよく表している例をご紹介しましょう。シンガポール・チャンギ空港のターミナル4です。OOHには「強制視認性」という他のメディアにはない特長があります。テレビだと消す、オンラインだとオプトアウトする、という対応で広告を見ないようにできますが、看板ではそれはできません。強制というと言葉としては強いのですが、OOHは「人が絶対に見る」メディアだということです。チャンギ空港の出入国審査場ではDOOHが様々な情報を出しています。パスポートを手にして並んでいる人は必要な空港情報などを必ず見ますし、大行列でイライラする時はエンターテインメント情報を見せることもできます。人々の気持ちが安らぐということで好評を得ています。

Changi Airport’s Terminal 4 “Theatre of Experience” [DEMO] from Moment Factory on Vimeo.

シンガポール・チャンギ空港ターミナル4に設けられたDOOHのデモンストレーション映像(制作会社/Moment Factory)

── OOHの特長のひとつはそのサイズです。

今年の旧正月、中国・青島で実施したコカコーラの旧正月キャンペーンは、世界最大の広告フォーマットだったのではないでしょうか。青島の沿岸にある53棟のビルにLEDを埋め込み、これらすべてのLEDが連動して巨大な広告になる。「街全体が広告です!」というような表現はDOOHでなければできません。「強制的に見せる」「大きい」。このふたつがDOOHのパワーと言えるでしょう。

── 日本のDOOHの先進事例を教えてください。

昨年、ドコモのプロジェクションマッピングが大変評判になりました。オリンピックの1000日前を盛り上げるという企画です。プロジェクションマッピングすることで代々木のビルをDOOH媒体へと変えたのです。看板機能だけでなくインタラクティブな仕組みも備えていました。見る人が応援メッセージをスマホから送ると、プロジェクションマッピング上で「頑張れ日本!」と表示されるのです。

音についてもパブリックな環境を意識した配慮がなされています。映像とシンクロされた音楽をスマホから聞けるようにしたのです。音を野外に流すと「私、聞きたくない」と迷惑に感じる方もいるでしょう。それを避け、サイネージとシンクロした音楽を聞きたい人のために、スマホというパーソナルな機器に送信したわけです。

またパブリックビューイングを想定した実験的な試みも実施しています。競技をプロジェクションマッピングでビルに映し、その映像に絵文字で応援することができるようにしました。一方向配信のOOHを超え、モバイルと連携して双方向に楽しむことができるという点で、2020を盛り上げることが期待されます。

NTTドコモ代々木ビルをプロジェクションマッピング投影するプロジェクト「YOYOGI CANDLE2020」(全体プロデュース/カケザン)

場所や時間でクリエイティブを変えれば大きな効果

── 動画、巨大なサイズ、インタラクティブ・・・。入れ物がこれだけパワフルだと、新たなクリエイティブ能力が必要になるのではないですか。

リアルな人間と向き合ってしかもパブリックな場所に置かれている広告なので、クリエイティブの表現力を高めれば、その場所にドンピシャな内容にできますし、コンテキスト(文脈)を活かすこともできます。

コンテキストでの成功例では、ユニリーバのボディソープ「ダヴ」がニューヨークのタイムズスクエアで実施したDOOHが有名です。この広告では雨が降って来たときにだけクリエイティブが変わります。雨をシャワーに見立てているわけです。「雨が降ってくる」「雨の中で広告を見ている」「シャワーの時間だわ」という風に広告を見ている人の意識が変わっていくような構造です。あたかも自分がシャワーの中にいるようなコンテキストで広告を見ることで広告効果が非常に高まりました。

場所やコンテキストに合わせてクリエイティブを制作すると、見ている人の興味も上がるし、適用度も上がります。ダヴのように商品認知率が100パーセントに近いブランドであったとしても、「DOOHを見たことで商品を買いたくなりました」という人が増加するのです。データが場所やタイミング、そこにいるターゲットを明らかにして、そのことによって適切な広告へと切り替えられるのです。これはかつてない大きな進歩だと思います。

ユニリーバのボディソープ「ダヴ」がニューヨークのタイムズスクエアで実施したDOOH

中小企業や個人商店にとってDOOHのメリットとは?

── 中小企業や個人商店にとって、看板に代表されるOOHは昔から馴染みのあるメディアです。デジタル化することでどんなメリットが生まれますか?

OOHは様々な場所に設置することができます。そのためハイパーローカル(地域特化)な広告を出せるわけです。電柱に貼られた「○○洋菓子店、ここから○分です」というのがこれまでの典型的なOOHでした。この電柱広告をデジタルサイネージ化すると、場所を見に行かなくてもネットで広告を買うことができるようになります。「うちのお店はこのエリアで○○円だったら広告を出せますよ」と場所のピンポイント指定もできます。

バスの車内で一般的な沿線の病院や学習塾の広告も、バスの路線に沿ってハイパーローカルな広告をハイパーローカルな場所に出すことができます。

あるいは「うちの会社の化粧品をこの美容院のまわりにいる人たちにピンポイントで売りたい」という場合、その美容院にだけ広告を出すこともできます。予算の少ない中小企業でも無理なく広告が出せるようになります。

「どこに広告を出したらいいのだろう?」と町中を見て回るのはすごい手間じゃないですか。それをわれわれのプラットフォームで「どんなターゲットを狙っているのか?」を指定してもらえば、「ふさわしい場所」「ふさわしいタイミング」で広告を出せるのです。自動的にできる仕組みをLIVE BOARDはすでに作っていますし、掲示場所もどんどん増やしています。

米国の流通・小売大手Krogerの店舗で導入されているデジタルサイネージ「EDGE」。日本国内でも大日本印刷との共同研究が開始された

── 看板を提供する側、不動産業やテナントビルオーナーにとって、DOOHを設置するメリットはどこにありますか?

不動産を持っている人にとって場所の価値は、「テナントを入れる」「自分の商売をしていくら儲かりました」ということですよね。テナント料は部屋数が10だったら10のテナント料が収益のマックス。でもビルの周りには人がいっぱい集っていて壁を広告に変えることで、新しい収益が作れるとしたらどうでしょう。これまでは自分の持っているビルの媒体価値を計測できなかったわけですが、これからは他のメディアと比べられる客観的なガイドラインを使えるようになるので、新たな収益源になるはずです。

── 広告ネットワークに入ることのメリットは?

自分のところで看板を設置してそのひとつだけで運営していると、営業部隊を個別に持たなければならないですし、広告が入らなくても固定費がかかってしまいます。しかし、LIVE BOARDのネットワークの一枚になっていただければ、われわれが持ってくる広告に対して判断していただくだけでよくなります

「実際には100パーセント分の枠があるのに70パーセントしか売れていない。残り30パーセントを売りたいけれども少ししんどい」――そんな状態の看板オーナーの皆さんには、「LIVE BOARDのネットワークに入っていただければ、売れたら売れた分だけお返しします」ということをお伝えしたい。所有している場所の価値をお金に変えてみせます。
(第3回に続く)

★関連リンク

  • 日本の屋外広告をすべてデジタル化する! 看板が最強の広告メディアになる日(第3回)

    「OOH」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか? OOHとはOUT OF HOMEの略称で、街頭広告をはじめ、家から一歩外に出た際に触れるすべての広告のことを指します。そんなOOHをデジタル化することで、まったく新たなコミュニケーションメディアを日本に生み出そうとする会社が登場しました。今年の2月に設立された「株式会社LIVE BOARD(ライブボード)」です。代表取締役社長の神内一郎さんに話を聞く第3回は、DOOHの公共性や可能性についてのほか、LIVE BOARDの理念に焦点をあてます。

  • 日本の屋外広告をすべてデジタル化する! 看板が最強の広告メディアになる日(第1回)

    「OOH」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか? OOHとはOUT OF HOMEの略称で、街頭広告をはじめ、家から一歩外に出た際に触れるすべての広告のことを指します。看板や駅構内のサイネージ、電車やバスの車内広告・・・。いわゆる屋外広告は歴史上一番古くから存在する広告でもあります。そんなOOHをデジタル化することで、まったく新たなコミュニケーションメディアを日本に生み出そうとする会社が登場しました。今年の2月に設立された「株式会社LIVE BOARD(ライブボード)」です。

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執筆者: 加藤陽之 - HANJO HANJO 編集長
コンピュータ関連の出版社からキャリアを始め、カルチャー雑誌などの編集長を歴任。これまで数多くの著名人をインタビューしてきた経験を活かし、HANJO HANJOでは中小企業経営者の深く掘り下げた話を引き出し続ける取材の日々。

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