日本の屋外広告をすべてデジタル化する! 看板が最強の広告メディアになる日(第1回)

LIVE BOARD(ライブボード)/ドコモのデータで屋外広告価値を見える化、XYZ世代にも届くメディアへ

2019年12月9日
「OOH」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか? OOHとはOUT OF HOMEの略称で、街頭広告をはじめ、家から一歩外に出た際に触れるすべての広告のことを指します。看板や駅構内のサイネージ、電車やバスの車内広告・・・。いわゆる屋外広告は歴史上一番古くから存在する広告でもあります。そんなOOHをデジタル化することで、まったく新たなコミュニケーションメディアを日本に生み出そうとする会社が登場しました。今年の2月に設立された「株式会社LIVE BOARD(ライブボード)」です。
 「OOH」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか? OOHとはOUT OF HOMEの略称で、街頭広告をはじめ、家から一歩外に出た際に触れるすべての広告のことを指します。看板や駅構内のサイネージ、電車やバスの車内広告・・・。いわゆる屋外広告は歴史上一番古くから存在する広告でもあります。そんなOOHをデジタル化することで、まったく新たなコミュニケーションメディアを日本に生み出そうとする会社が登場しました。今年の2月に設立された「株式会社LIVE BOARD(ライブボード)」です。LIVE BOARDは、NTTドコモと電通の合弁会社。そこで鍵を握るのは携帯電話から集積される膨大な量のデータです。アナログ&アナクロだったOOHの世界に明確な基準となるデータや数値を与えることは、広告のあり方に変更を迫るだけでなく、日本の街の風景を一変させる可能性すら秘めています。今後ますます成長が見込まれるOOH。それはデジタル化=DOOH(DIGITAL OUT OF HOME)によって加速されることは間違いありません。DOOHがもたらす未来について、株式会社LIVE BOARD 代表取締役社長の神内一郎さんに3回にわたって話を聞きます。第1回は「OOHからDOOHへの移行で何が変わるのか?」です。

株式会社LIVE BOARD 代表取締役社長の神内一郎さん。屋外広告をデジタル化することは、広告のあり方に変更を迫るだけでなく、日本の街の風景を一変させる大きな可能性を秘めている

デジタルOOH=DOOHとは何か?

──「デジタルOOH」という用語を初めて聞きました。

OOHは何の略かというと「OUT OF HOME」。つまり家を一歩外に出た時から触れるメディア〜ビルの看板、駅の広告、電車の中の広告など屋外広告、交通広告の総称です。それがデジタル化されるのが「デジタルOOH(DOOH)」で、「電子看板」という言い方もされます。

── 私たちの身近にある代表的なDOOHにはどんなものがあるのでしょうか。

渋谷のスクランブル交差点で誰もが目にする動画のビルボードや、首都圏だと交通広告ですね。電車のドアの入り口の上に設置されているモニターや駅のコンコースで何本も続けて流れているサイネージは、もはや日常風景と言っていいでしょう。

世界の観光名所となった渋谷スクランブル交差点を飾る「デジタルOOH(DOOH)」(電子看板)。今後、大きな広告市場が見込まれている

── 小売店の店頭で見かける「今日のおすすめ」といった電光掲示板ですが、これはDOOHなのでしょうか?

「POP」と呼ばれる販促ツールのことですね。しかしこのところ、小売のPOPもデジタル化することでDOOHへと形を変えています。DOOHが設置される場所は、屋外、電車の駅、電車やバスの中、そのほかショッピングモールのなかなどです。確実にDOOHは増えています。

── 駅やビルの屋上、ショッピングモール・・・。OOHにはほかのメディアにはない「場所」という大きな特徴がありますね。

街を行く人、電車に乗る人が見るわけですから、OOHは、老若男女、誰でも目にすることができる、つまりパブリック、公共的色彩の強いメディアだと言えます。

── 日本のOOHの市場規模は?

現在は約5200億円です。これは新聞や雑誌より大きな規模です。

LIVE BOARDはDOOHのすべてを網羅する

LIVE BOARDが設置している自社デジタルサイネージより(時計回りに:マイアミビル@渋谷センター街、北青山ビル@外苑前、くすりの福太郎@新橋、サウスアベニュー@新宿)

── LIVE BOARDの事業概要を教えてください。

事業は大きく3つあります。ひとつは「DOOHの媒体社」としての存在。LIVE BOARD自らで電子看板を持ちます。

ふたつめは「アドネットワークの運営者」。自社の広告枠と他社から提供された広告枠をひとつのプラットフォームに統合し総体として販売します。これまでの商習慣ではメディアごと単体で販売されていましたが、LIVE BOARDがそれらをたばねることで広告をより効率的に変えていきます。

アドネットワークは、複数のデジタル広告媒体を集めて配信ネットワークを作り、広告をまとめて配信する仕組みのことです。典型的なものとしては、グーグルのGDN(グーグルネットワーク)やヤフーのYDN(Yahoo!ディスプレイアドネットワーク)などがあります。それらと同様に、ターゲットとインプレッション(表示回数)などをあらかじめ約束して契約します。

残るひとつは「DOOHのアドテクノロジープラットフォーマー」。このプラットフォームを介してDOOH広告のプランニングから広告枠の取引、そして配信までを統合的に行うことが出来るようになります。

DOOHメディアの所有者など、広告枠を売りたいという人に市場、場所を提供するのがサプライサイドプラットフォーム(SSP)。一方、広告主や広告会社が広告枠を買いたいときに使うプラットフォームはデマンドサイドプラットフォーム(DSP)と呼ばれます。

広告を売りたい人と買いたい人をマッチングさせ、マッチングができたら次に広告をターゲットやタイミングに応じた適切な看板の「面」を選んで配信します。この役割を担うのがアドサーバーです。この3つのコンポーネントがLIVE BOARDのプラットフォームで統合されているわけです。

── 現在のビジネスの進捗状況は?

まずスタートさせたのは、旧来的な販売方法とデジタル化を組み合わせたスタイルです。営業の際にはアナログに「手売り」(対面販売)をしています。たとえば「100万インプレッションで○○万円です」とセールスをして、購入していただいた後にわれわれがシステム入力して様々な看板メディアに配信すると、自動的に広告が配信されるようになります。

完全デジタルで自動化するプラットフォームも準備しています。売りたい人がDSPから買いたい条件、たとえば「20代の女性に向けて100万回表示させたい」「バジェットは○○円で、期間は○○〜○○」と入力すると、LIVE BOARDのプラットフォームを介して自動的に広告枠の売買ができるようになります。売買双方をマッチングさせて、一番高い価格を提示した人が競り落とすと、広告が自動的に配信されます。システムを使った広告の自動取引はプログラマティック広告と呼ばれ、OOHメディアでは「プログラマティックOOH」となります。オンラインの世界では当たり前の自動化ですが、LIVE BOARDはOOHの世界で日本初となる、プログラマティックOOHを実現させました。

LIVE BOARDはOOHで日本初となる、プログラマティックOOH(システムを使った広告の自動取引)を実現させた

曖昧だったOOHの広告評価を明快にする

── OOHメディアの売買を自動化するうえで重要なポイントは何ですか?

「何人が見ている」という共通の指標を作るためのデータです。たとえば株式市場を想像してください。売上げや利益などについて、株式市場が出している数値はすべて定義が決まっています。それがOOHメディアの場合、これまでA社、B社、C社で別々の指標だったり、指標すらないこともありました。それでは売買の際に判断がつきません。そんな状況を変えるため、われわれは「何人が見てますよ」という数値を提供します。客観的な数字は、OOHメディアを買うためのロジックにつながります。

── オンライン広告の仕組みと同じと考えればいいのでしょうか?

「オンライン広告でやっていることを、OOHの世界でも実現させました」というとわかりやすいですね。

── これまではどのような販売方法だったのですか?

一例をあげると、「期間は一週間」「時間帯は朝9時から深夜の1時まで」「1時間ごとに4回掲出」。朝から晩まで同じロールがぐるぐるまわって1時間のあいだに4回広告が出ます、というような売り方が典型です。

── そこの値付けは感覚値? 経験値?

サーキュレーションと呼ばれる1日あたりの場所ごとの通行人数を基にしていることが多いですね。駅の乗降客数を参照する場合や、日本野鳥の会のようにカウントしている会社もあります。しかし曜日や季節によっても人の動きは変動します。これまではそういう実態をあまり考慮していませんでした。「見た」という視認率や視認数という考え方は入っていないのです。

── 海外ではどうなんですか?

実は海外では「OOHの視認数というのはこうやって求めなさい」というガイドラインが定められています。北米・南米、ヨーロッパ、中国やインドのOOH業界団体が協力して作った共通の基準があるんですよ。ただここに日本は入っていません。

── 広告先進国である日本がそこにいないのは不思議な感じがします。

テレビや新聞はひとつの業界団体としてまとまっています。しかしOOHは大昔からあるメディアだったこともあり、交通メディアや屋外ビルボードなど様々な事業ごとに団体が複数存在してきました。それをひとつに束ねる団体は日本になかったからだと思います。日本は広告マーケットとして世界で3位の大国です。それなのに、少なくともガイドラインや標準化という点においては遅れていました。

LIVE BOARDの登場によって、これまで曖昧だったOOHの視認率や視認数がデータを使って明確化できるように。広告価値の標準化は広告主にとって大きなメリットにつながる

広告主が求める「ROI(投資収益率)の明快化」に応える

── それがLIVE BOARDの登場で変わることになります。標準化に向かわせた最大の要因は何でしょうか?

やはり広告主です。広告主にとって自分たちの求めるターゲットにリーチできるかは最大のテーマです。特にミレニアル世代やXYZ世代にどうやってたどり着くか。その世代に到達させることがいま、新聞や雑誌、テレビでは難しくなっています。オンラインも実はターゲット到達精度がそれほど高くありませんでした。

そんななかOOHの評価が浮上してきたのです。新聞やオンラインを見ない人でも、学校や会社に行くために必ず外出します。OOHはどんなターゲットにでも到達できるメディアとして注目を浴びるようになってきました。そしてさらに計測技術が発達し客観数字がわかるようになる。

「広告費を様々なメディアに配分したいとき、OOHをどう判断すればいいの?」。海外同様のガイドラインがあればほかのメディアとの比較ができるようになります。OOHの視認数がわかっていれば、ほかのメディアと数字として比較できるため適正に配分することが可能になります。

── いま、広告主は広告にどんな価値を求めているのですか?

広告主のニーズは一言で言うと「ROI(投資収益率)を明快にしてくれ」です。テレビだと「視聴率によると○○の人が見ています、○○GRPです」と答えられるのに、OOHの旧来の基準だと「○○ビルの看板に一週間出ました」としかわからない。それでは「なぜテレビやオンラインがあるなかでOOHに出稿したのか?」が説明できません。社内向けだけでなく、特に上場企業は株主に対してマーケティング投資をした説明責任が問われます。OOHではそれがこれまでできなかった。そのニーズの高まりがOOHの客観数値化を促し、ターゲットに到達するメディアが少ないという現状のメディア状況が、客観的な標準値を伴ったOOHへの要請を押し上げているのです。

鉄道車両内では世界初となる、リアルタイムな環境変化に応じて動的に表示内容や広告を切り替えることができるダイナミックDOOH。埼玉高速鉄道のデジタルサイネージ「ダイナミックビークルスクリーン」で11月より始まった。LIVE BOARDほか4社による合同事業

5Gと親和性の高いDOOH

── LIVE BOARDはNTTドコモと電通の出資による新会社です。データという点ではドコモが果たす役割は大きいですね。

「何人がOOHを見ているのか?」という視認数のモデルを作るときに、ドコモが持っているデータが非常に役に立ちます。ひとつは基地局データ。携帯電話で「もしもし」と話すと必ずつながるのはどこかの基地局につながっているからです。携帯を持っているすべての人は必ずデータのやり取りをしています。どこの基地局につながったとか携帯保持者がどういう加入者であるかはドコモ側で把握できるようになっていて、「この看板では100人の男性がOOHを見ています」といった統計処理されたデータを導き出します。これは個人データではなく、われわれはあくまで加工された情報を活用しています。

── データは多ければ多いほど信頼性が高まります。

ドコモには約7800万人の加入者がいて、膨大なデータを取り扱っています。そのデータがわれわれのベースになっています。データだけだとたいしたビジネスは生まれませんが、それを広告という商品に加工すると、レバレッジの効くビジネスに変えることができます。データビジネスのひとつの答えがOOHだったのです。

── 看板屋さんがデータビジネスに変わる。選択肢が大きく増えそうですね。

いままでのOOHは「看板に画像や映像を表示する」というサービスで収入を得ていましたが、看板自体にIoTのセンサーを取り付ければ、街の人の流れや天気・気温などのデータを取ることもできるし、災害が起きたときには看板から「こっちに逃げろ!」といった避難のメッセージや防犯の情報を流すこともできるようになります。携帯電話を持っていれば、看板の前にどんな人がいるかがわかるので適切な情報を流すことができるわけです。

今後、5Gの時代に入っていきます。5Gは指向性が強いため基地局を数多く設置しなければなりません。DOOH設置の際に看板そのものを基地局にしてしまえば、一石二鳥です。5Gの基地局という意味でもDOOHは非常に有効な役割を果たします。

「ミレニアル世代やXYZ世代にどうやれば広告メッセージを到達させるられるのか? そんななかOOHの評価が浮上してきたのです」(神内さん)

── アナログからデジタルに移行するときのコスト感が気になります。

いままでの看板事業では、「広告を差し替えたい」という場合に、まず広告を印刷する費用が必要です。そして大きなポスターのような広告物を人力で剥がして貼り変える。それを複数の設置場所で行う。その作業だけでも相当のコストがかかります。しかし、デジタルだったら、データを様々なデジタルサイネージに配信するだけですから、クリエイティブをひとつ作っておけば、何枚もの印刷物もいらないし、人件費もかかりません。

ビルのオーナーなど媒体社側は、デジタルサイネージを設置する初期費用はかかりますが、一定の期間を経ればトータルではアナログより安くなるはずです。一方、広告を出す側のコストは確実に安くなります。

さらにDOOHならではのメリットがあります。それは「動画」です。デジタルサイネージは基本的には動画を流しています。動画の表現力は非常に大きいので訴求力も高まる。「モノクロだった新聞がカラーになって、カラーがさらに動き出しました」。DOOHにそんなイメージを描いていただければわかりやすいと思います。
(第2回に続く)

★関連リンク

  • 日本の屋外広告をすべてデジタル化する! 看板が最強の広告メディアになる日(第2回)

    「OOH」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか? OOHとはOUT OF HOMEの略称で、街頭広告をはじめ、家から一歩外に出た際に触れるすべての広告のことを指します。そんなOOHをデジタル化することで、まったく新たなコミュニケーションメディアを日本に生み出そうとする会社が登場しました。今年の2月に設立された「株式会社LIVE BOARD(ライブボード)」です。代表取締役社長の神内一郎さんに話を聞く第2回は「DOOH、広がるそのパワー」です。

  • 日本の屋外広告をすべてデジタル化する! 看板が最強の広告メディアになる日(第3回)

    「OOH」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか? OOHとはOUT OF HOMEの略称で、街頭広告をはじめ、家から一歩外に出た際に触れるすべての広告のことを指します。そんなOOHをデジタル化することで、まったく新たなコミュニケーションメディアを日本に生み出そうとする会社が登場しました。今年の2月に設立された「株式会社LIVE BOARD(ライブボード)」です。代表取締役社長の神内一郎さんに話を聞く第3回は、DOOHの公共性や可能性についてのほか、LIVE BOARDの理念に焦点をあてます。

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執筆者: 加藤陽之 - HANJO HANJO 編集長
コンピュータ関連の出版社からキャリアを始め、カルチャー雑誌などの編集長を歴任。これまで数多くの著名人をインタビューしてきた経験を活かし、HANJO HANJOでは中小企業経営者の深く掘り下げた話を引き出し続ける取材の日々。

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