こんにちは。クラウドサービス「カイクラ」の江尻です

「おもてなし電話」から「カイクラ」へ。起業6年目でサービス名称を変更した理由

2019年11月18日
株式会社シンカ代表取締役社長の江尻高宏さんによる連載。今回は看板サービスであるクラウドCTIの名称変更という大発表です。使い慣れたサービス名を、江尻さんは今なぜ変えるのでしょうか? その決断に至る心のあやを語ってくれました。
 こんにちは。クラウドサービス「カイクラ」の江尻です。

 ところで、お気づきになられましたか? 出だしの文言がこれまでと違います。これまでは“こんにちは。クラウドCTI「おもてなし電話」の江尻です”でした。

 実は、サービス名を11月1日より変更いたしました。

 「おもてなし電話」から「カイクラ」へ。

 サービス名を変更するにはものすごいコストがかかります。ホームページや資料の変更、関係各社への告知など、労力だけでなく、お金もかかります。特に「おもてなし電話」は5年以上も使っていた名称のため、変更するのにはとても勇気がいりました。

 ではなぜ、そんなにも大変なのにサービス名称を変更しようと思ったのか? これまで変えるタイミングは何度もあったのに、なぜ今なのか?

 今回のコラムではこの変更にまで至ったプロセスをお伝えしたいと思います。意思決定の難しさとそれを鈍らせる事象をお伝えできればと思います。

 まずは「おもてなし電話」という名称にした理由からお話ししましょう。

 「おもてなし電話」はクラウド型CTIサービスとしてスタートしました。私がエンジニア時代にコールセンターのシステム構築プロジェクトに関わったことがあり、そこで初めてCTIを知りました。電話業務を効率化し、効果の高い素晴らしいシステムだと感じた半面、高価なためあまり広まっていないことに、もったいないという気持ちがありました。そこで、クラウドで作ることでシステム開発費用を抑え、更にはコールセンター向けではなくオフィスや店舗向けとしてターゲットを絞ることで高機能な部分を排除することで、CTIを安価に提供することができるようになりました。これが、弊社が提供するサービスです。

 ターゲットを変えたことにより、CTIの導入効果(目的)を変えました。コールセンターでは電話業務効率化が主な目的ですが、オフィスや店舗では、誰でも電話対応がスムーズに、そして取引先や常連客からの電話対応を気持ちよくすることが目指すべき効果になります。「いつもの電話業務を気持ちよくする」ということから、電話でおもてなしを実現させるサービスとして提供したのです。

 「電話でおもてなしを」というキャッチコピーとともに販売を進め、ユーザ様から「このおもてなしが電話でできるサービス」と言ってもらえるようになりました。いつしかそれが「おもてなし電話」と略されて呼ばれるようになったのです。そうであれば、それをそのままサービス名にしてしまえ、となったのです。

 つまり、当初の名称は下記のような理由から決まりました。

 ・お客様の口からよく出る言葉であった
 ・狙いたい効果が分かりやすい
 ・一度聞いたら覚えられる
 ・ターゲットの中小企業様がとっつきやすい

 「おもてなし電話」という名称に決まったときはとてもスムーズでしたし、決まった後はとても爽快でした。「おもてなし電話」をサービス名にするということが、すぐに腹落ちしたということでしょう。

 このサービス名はとても反応が良かったです。分かりやすい、面白いという声をたくさんいただきました。これはすごくうれしかったですね。また、中小企業様向けに販売しようと思っていたので、ITっぽくない名前でとてもいいと好評でした。本当にたくさんの方からいい名前だと言ってもらえました。

 しかし、ここに罠があったのです。

 たくさんの方から好評だったため、私自身が「とてもいい名前だ」と信じ込んでいました。しかし、サービス名称を褒めてくれる人は皆、このサービスを「知っている」方ばかりなのです。実は、こんな反応の方も少なくなかったです。「(おもてなし電話の名づけ理由を聞いて)なるほど! そういう意味か! いい名前だね!」

 ここから分かるように「なるほど」と気づいて、その背景とセットで名前を評価してくれているのです。つまり、一度サービス内容を知った方が、そのあとサービス名を評価してくれているのです。

 これでは、初めての方には分かりにくい。何のサービスなのかがよく分からない。特に、クラウドサービスと気づいてくれない方が多かったのです。

 過去に何度かそれに気づけることがありました。例えば、展示会に出展した際に「おもしろいサービス名ですね。ところで何のサービスですか?」と聞かれる。名前から何ができるサービスなのかがピンと来ていない。こういう人は少なくなかったです。

 ただ、「なんだろう?」って思ってもらえたということは、インパクトとしては大成功ですね。そういう意味ではとても良かったと思います。

 しかし、それとは別でマイナスに働くこともありました。

 名前の最後が「電話」で終わるため、電話屋さんだと思われることです。「電話のコストを下げたい」「ビジネスフォンを買い換えたい」「回線の相談をしたい」など。展示会で相談されるだけでなく、オフィスへ問い合わせもありました。つまり、「名は体を表す」ことになっていないどころか、別の意味にとらえられているのです。

 こういったことがときどき発生すること、そして、たくさんの方にこのサービスを広めていくためには、新規開拓がとても大切であること、そのためにはこのサービスをまだ知らない人に分かりやすく伝えなければならないということを考えました。

 あと、もう一つの理由もあります。それはBtoB企業になかなか刺さらないことです。「電話でおもてなし」と聞いた瞬間、店舗系のサービスと思われ対象外と判断されることがありました。

 これらのことにより、とてもマーケティングで苦労しました。ウェブで新規集客をしようと思っても、なかなか気づいてもらえない。こうしたことが続き、サービス名を変更しようと考えたのです。

 そのポイントは下記です。

 ・クラウドサービスっぽくない(ITっぽくなくしたことが裏目に出ました)
 ・特に「電話」で終わるため、電話屋さんに思われる
  ※クラウドサービスっぽくない名称で、かつ「電話」で終わらせたことが誤解を招いたのではないかと思っています
 ・BtoB企業に刺さらない

 世の中、IT系、特にクラウド系のサービス名称がとても分かりやすく、“できること”をそのままサービス名にしているものも増えてきました。上記の理由に加え、この流れに乗ることが大切だと思ったのです。

 とはいえ、5年も使ってきたサービス名。とても愛着があります。私も大好きな名前です。これを変えるというのは一世一代の大決断。本当にいいのか? 大変なことにならないか? 一度変更したらもう戻れないのでは? かなり悩みました。

 私が「おもてなし電話」名で感じている課題はただの思い過ごしで些細なことなのではないかと迷うこともありました。新規開拓を拡大するには名称変更は必要なことだろうと思い込もうとしました。本当に悩み、なかなか決断が出せなかったのです。

 そんな時はどうしたらいいのか? こういうすごく悩ましい決断をしないといけないことがあります。

 「よし!決めた!」と勢いづくのも一つの手なのかもしれませんが、私は周りのたくさんのプロフェッショナル達に意見を求めました。皆さんはどういう考えをお持ちなのか。いろんな意見を聞き、メリットデメリットを聞きました。そして最終的には総合的に判断し、名称変更を決断しました。もちろん、社員にも聞きました。惜しむ声がとても多かったですが、決めたことを支持してくれるメンバーが大多数でした。

 このようにして決まった新しいサービス名「カイクラ」。この新しい名称がどのように評価されていくかはこれからの行く末を見守っていただければと思います。

 会話をクラウドでもっと楽しくすることを、「カイクラ」で広げていきたいと思います。

 今回も最後までコラムをご覧いただき、誠にありがとうございました。

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執筆者: 江尻高宏 - 株式会社シンカ代表取締役社長
関西大学大学院工学研究科修了後、株式会社日本総合研究所に入社。金融系の情報システム開発に従事し、広範囲の開発プロジェクトに参画、チームリーダやプロジェクトマネジャーを経験。その後、株式会社船井総合研究所に入社。営業、マーケティング、商品戦略を中心に、中小IT企業向けのコンサルティングに注力。特にクラウドビジネス分野に強く年間約20本の講演を担当。2014年1月に株式会社シンカを設立。「おもてなし電話」をはじめ、クラウドサービスを中心にITを世界に広めることに注力している。

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