「社会課題解決」で未来を変える! 企業の挑戦を可視化する、革新的採用プラットフォーム登場(第2回)

アスタミューゼの「SCOPE」はなぜ地域企業を活性化できるのか?

2019年11月13日
地域企業の価値を何で評価するべきなのか? 働く人のやりがいをかなえるために必要なことは何なのか? その問いに対してまったく新たな視点と具体的な方策によって答えを出した採用プラットフォームが登場しました。「アスタミューゼ株式会社」の「SCOPE(スコープ)」です。今月12日には島根銀行との提携を発表。SBIグループがネットワークしている全国の地域金融機関と協力し、全国47都道府県の未来へ挑戦する地域企業を可視化していきます。
 地域企業の価値を何で評価するべきなのか? 働く人のやりがいをかなえるために必要なことは何なのか? その問いに対してまったく新たな視点と具体的な方策によって答えを出した採用プラットフォームが登場しました。アスタミューゼ株式会社の「SCOPE(スコープ)」です。SCOPEは日本や世界が抱える「社会課題」を軸に転職者と企業をマッチングさせるプラットフォーム。これまでの採用基準である給与や勤務地、経験の有無ではなく、「社会課題を解決する」「未来を作る」という軸によって企業と人材を結びつけます。未来に向けて解決すべき社会課題を105に分類、テーマをわかりやすく見える化することで客観性と信頼性を生み出しています。そしてそれはこれまでの大企業と中小企業という分類や関係性に変更を迫ることになるはずです。中小企業の潜在力をクローズアップし、それを明示することによって優秀な人材が地域企業の扉をたたく── SCOPEがもたらす企業価値の変換が、地方のみならず日本全体のビジネスの行方を占うことになるかもしれません。
 SCOPEについて、アスタミューゼ株式会社 執行役員 事業推進本部長の嶋﨑真太郎さんと同社・取締役の白木陽次さんに3回シリーズで話を聞きます。第1〜2回では嶋﨑さんにSCOPEを世に出す意義や地域企業との関係性などについて、第3回では、白木さんにアスタミューゼ社の創立時から現在に至る歩みを語ってもらいました。

アスタミューゼ株式会社執行役員事業推進本部長の嶋﨑真太郎さん(左)と取締役の白木陽次さん

中小企業には「もったいない」がいっぱいある

── 地方の企業や中小企業に対する意識はどこから生まれたのですか?

「もったいないな」とずっと感じていました。グーグルもユニクロも創業した時は中小企業です。最初から大企業という会社はこの世にひとつもないのに、なぜ中小企業で終わってしまうのかと。どこかに突破口があるはずだと思ってきました。もっと輝けるはずなのにもったいない。発信できていないのはもったいない。中小企業にはそんな「もったいない」がいっぱいあります。新たな事業領域に進出するときに海外視察をする会社がありますよね。しかし日本のなかに見るべき中小企業はいくつもあるんです。ただ知られていないだけなんです。それを明らからにしたいということも、SCOPEを世に出した理由のひとつです。

──「見るべき中小企業」を紹介していただけますか。

東京の墨田区に「アストロスケール」という小型の衛星を作っている会社があります。小型衛星でスペースデブリ(宇宙ゴミ)を除去するための衛星です。ものすごい数の衛星が地球の大気圏外をぐるぐるまわっていますが、隕石やほかの衛星にぶつかり飛散すると現役の衛星にぶつかり、地球のGPSが使えなくなる恐れがあります。二次災害を避けるために、アストロスケールの小型衛星は残骸化した衛星を回収する役割を果たします。世界でもまだその技術は確立しておらず、アストロスケールは先駆者と言えるでしょう。NASA、JAXA、ロシアなどの宇宙関係者がものすごく注目していて、2020年にはロシアで打ち上げが予定されているそうです。決して大人数を擁する会社ではありませんが、アストロスケールには「宇宙環境の課題を解決する」という大きな大義があります。

SCOPEで人材募集を行っているのが、世界初となる宇宙ごみに挑むベンチャー企業の「アストロスケール」だ。「宇宙環境の課題を解決する」という未来に向けての目標が明確にある

── SCOPEでは注目する中小企業のインタビューも掲載していますね。

そのうちのひとつが茨城県(筑波大発スタートアップで、現在、本社は東京都に移転)の「FullDepth(フルデプス)」です。日本初の水中ドローン専業メーカーです。ダムや大型船舶のプロペラの清掃はこれまで、潜水士やダイバーが手作業で行なっていました。非常に危険が伴う業務です。それをドローンに取って代わらせようというのです。彼らが開発した水中ドローンは水中300メートルまで潜行可能で、水の中を自由に動き回れます。

── 意外な領域で技術力を発揮している会社もあります。

鎌倉市の「inaho(イナホ)」は、アスパラガスの成長具合を判断して自動で刈り取る収穫ロボットを開発しています。この会社のあり方から読み取れるのは、テクノロジー先行ではなく、「どんな未来を作るか」から発想していることです。

テクノロジーだけで言えば、画像解析・処理、センサー、ロボットアーム、自動機械制御などいくらでも挙げることができます。しかし大事なのは「それを使って何をしたいんだっけ?」という目的意識であるはずです。inahoには「農家をもっとクリエイティブにする」「一次産業を変革させる」という大義があるように思います。

私たちが注目するベンチャーやスタートアップはテクノロジーがすごいという前提があるにせよ、「自分たちはテクノロジーで○○を解決するんだ!」という強い思いがかならずあります。だから注目されるし、投資家の目にもつくし、資金調達もできるのです。課題解決から発すれば、いろいろなものが回り始めます。

── 地域として潜在力が高いエリアはありますか?

静岡は高い技術力を持った会社の宝庫です。だけれどそのすごさはあまり知られていません。滋賀県の琵琶湖のまわりにも技術力がある会社は多い。琵琶湖と聞くと、何か遠くの場所というイメージがあるかもしれませんが、京都から1時間もあれば行けますし、浜松も東京からさほど遠くありません。静岡も滋賀もその潜在力が可視化されていないし、もっと魅力的なPRができるのではないかと思います。東海地方とその周辺の地域企業はできるだけ早く訪れたいですね。

企業や働く人の評価に「社会課題」という軸を打ち立てたい

SCOPEを地域企業に利用してもらう取組の第一弾が、島根銀行とともに地域企業における雇用促進を図る施策だ。アスタミューゼはSBIグループと提携して、同様の施策を今後47都道府県へと拡大する予定(左から、SBIネオファイナンシャルサービシーズ アライアンス推進本部部長の藤本悟智人さん、島根銀行東京事務所長の高瀬博隆さん、右が嶋﨑さん)

── 9月に「SBIネオファイナンシャルサービシーズ」との提携を行いました。地域の金融機関がバックアップする体制が整いますね。

SBIグループがネットワークしている全国の地域金融機関を紹介してもらいます。各地域の独自性を理解しているのは地域のインフラを担っている金融機関です。地方銀行に協力してもらい、全国47都道府県の未来へ挑戦する地域企業を可視化していきたいと考えています。11月12日に、島根銀行との提携をリリースしました。まずは島根の地方企業、地域企業の活性化を進めていきたいと思います。この連携を足掛かりに、47都道府県すべてで同様の取組を行ってきたいと思います。

── 最近、大学の評価について様々な評価軸が登場しています。それがこれまでのヒエラルキーに大きな変化をもたらしています。SCOPEにはそれと同様のインパクトがあるように感じます。

働く側、求職側は既に変化しています。新卒では勤めたい先ランキングの上位にNPOが入るような時代です。働く側の価値基準が変わってきているのに、企業側の採用基準は相変わらずで、時代錯誤と言ってもいいほどです。

いままでの人材採用の基準は主に、従来の給与、勤務地、年齢、学歴、転職回数、職種の経験年数などでした。しかしそれだけで向かうべきビジョンに対しての優劣がわかるのでしょうか。私たちは人材を選ぶ際の判断基準に新しい軸を一本作りたいと考えています。SCOPEが提案する新しい評価基準によって人材登用の考え方が変わってくるはずです。

「SCOPEが提案する新しい評価基準によって人材登用の考え方が変わってくるはずです」( 嶋﨑さん)

── 参加企業数や登録者数などの数値目標はありますか?

いまは出していません。というのも参加企業の数が大事なのかどうかは議論の余地があるからです。私たちが設定している社会課題は105ありますが、1つの課題につき10社限定にして本気で社会課題に向き合っている会社を選定する、というやりかたもあるからです。各課題につき20社としたら、この選ばれた2100社が日本の未来を変えていく2100社になるわけです。そう考えるとそれ自体で順番待ちが出るような面白いコンテンツになる可能性もあります。

── サイト自体はとても使い勝手がよさそうです。

アウトプットは簡単そうに見えても、裏側でどれだけ手間や思いをかけているか ── それが私たちのビジネスを左右するものになっていくと思います。手間をかけなくなるとよくありがちなサービスになってしまいます。そうならないためにどれだけ労力を費やすか、どれだけ頭を使うか。いまはおかげさまで好評を得ていますが、私たちの真価が問われるのはこれからだと思っています。

── SCOPEという名前の由来をお聞きするのを忘れていました。

SCOPEには望遠鏡という意味があります。のぞきこんだ先に星を見つけて欲しいという思いがありました。星は未来です。それぞれの人にとっての未来であり社会の未来にもなる。そういう光にも似たものを見つけるサービスでありたいと願っています。
(第3回に続く)

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執筆者: 加藤陽之 - HANJO HANJO 編集長
コンピュータ関連の出版社からキャリアを始め、カルチャー雑誌などの編集長を歴任。これまで数多くの著名人をインタビューしてきた経験を活かし、HANJO HANJOでは中小企業経営者の深く掘り下げた話を引き出し続ける取材の日々。

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