「社会課題解決」で未来を変える! 企業の挑戦を可視化する、革新的採用プラットフォーム登場(第1回)

アスタミューゼの「SCOPE」はなぜ地域企業を活性化できるのか?

2019年11月11日
地域企業の価値を何で評価するべきなのか? 働く人のやりがいをかなえるために必要なことは何なのか? その問いに対してまったく新たな視点と具体的な方策によって答えを出した採用プラットフォームが登場しました。「アスタミューゼ株式会社」の「SCOPE(スコープ)」です。SCOPEは日本や世界が抱える「社会課題」を軸に転職者と企業をマッチングさせるプラットフォーム。未来に向けて解決すべき社会課題を105に分類、テーマをわかりやすく見える化することで客観性と信頼性を生み出しています。そしてそれはこれまでの大企業と中小企業という分類や関係性に変更を迫ることになるはずです。
 地域企業の価値を何で評価するべきなのか? 働く人のやりがいをかなえるために必要なことは何なのか? その問いに対してまったく新たな視点と具体的な方策によって答えを出した採用プラットフォームが登場しました。「アスタミューゼ株式会社」の「SCOPE(スコープ)」です。SCOPEは日本や世界が抱える「社会課題」を軸に転職者と企業をマッチングさせるプラットフォーム。これまでの採用基準である給与や勤務地、経験の有無ではなく、「社会課題を解決する」「未来を作る」という軸によって企業と人材を結びつけます。未来に向けて解決すべき社会課題を105に分類、テーマをわかりやすく見える化することで客観性と信頼性を生み出しています。そしてそれはこれまでの大企業と中小企業という分類や関係性に変更を迫ることになるはずです。中小企業の潜在力をクローズアップし、それを明示することによって優秀な人材が地域企業の扉をたたくーーSCOPEがもたらす企業価値の変換が、地方のみならず日本全体のビジネスの行方を占うことになるかもしれません。

 SCOPEについて、アスタミューゼ株式会社 執行役員 事業推進本部長の嶋﨑真太郎さんと同社・取締役の白木陽次さんに3回シリーズで話を聞きます。第1〜2回では嶋﨑さんにSCOPEを世に出す意義や地域企業との関係性などについて、第3回では、白木さんにアスタミューゼ社の創立時から現在に至る歩みを語ってもらいました。

アスタミューゼ株式会社取締役の白木陽次さん(左)と執行役員事業推進本部長の嶋﨑真太郎さん

SCOPEは中小企業の本当の実力を見える化する

──「地方の中小企業は自社の魅力を十分に発信できていない」という問題提起にハッとさせられました。

新しい技術やサービスが出たときに注目されるのはたいていの場合、どうしても、ネームバリューと取り上げやすさから、大企業が注目されてしまいます。また東名阪という大都市圏にある会社がスポットライトを浴びることが多いと思います。しかしアスタミューゼで集積しているテクノロジーの情報やビジネスの流れを分析すると、大手企業のサービスや技術の多くは中小企業が支え、作っていることがわかります。技術力は大手企業だけでなく中小企業にもあるのです。本当にイノベーションは大企業にしか生み出せないのか? そんなことはありません。地方の企業の存在を皆が知らないだけなんです。中小企業は大企業に負けない力をもっています。ならば、事実を知ってもらって初めて、証明するべきだと感じていました。もちろん、日本のイノベーションを大企業には牽引してもらいたいと心から思っています。

そんな状況を象徴したのが、人気になったテレビドラマ『下町ロケット』です。観た人は中小企業の可能性に夢を抱きましたが、同じような話はもっとたくさんあります。逆に言えば、中小企業の技術力を知らないがゆえに『下町ロケット』にわくわくしてしまうのです。地方の企業をどう認知させるのか? 地方をどう活性化していくのか? それらを解決するために始めたのが採用プラットフォーム「SCOPE」なんです。

新たな転職サービスとして日本や世界が抱える社会課題を軸に転職者と会社をマッチングさせるプラットフォーム「SCOPE」。地域企業にとっては取り組む社会課題やビジョンが可視化され、転職希望者は自分の技術や経験が活かせるやりがいを得ることができる

── 構想からリリースまでに2年かかったそうですね。その間にどんな苦労がありましたか?

SCOPEのコンセプトは「社会課題を軸に企業と働く人をマッチングさせる」です。しかし当初、社内の誰にも理解してもらえませんでした。社会課題と言った瞬間にボランティアに直結するような捉え方をされていました。海のゴミを片付けるとか、そういうイメージです。しかしよく考えるとすべてのビジネスはなんらかの課題や困りごとを解決するために行われています。ビジネスの課題を解決する延長線上にはかならず社会課題の解決があるはずなんです。しかし概念は理解されたとして、サービスとして世の中に出すためには「どれくらいニーズがあるの?」という問いに答える必要があります。そこを乗り越えるのに2年を要しました。

── 世界が抱える社会課題は山のようにありそうです。それらをどう収斂させていったのですか?

最初の企画段階でリストアップした社会課題は70ほどでした。しかしそれらだけで本当に全体を網羅できているのか? ほかにもあるんじゃないか? という見直しを何度も重ね、現在の「未来に向けて解決すべき社会課題105」にまとめました。

偏ったり、目立つ領域に寄ったりしないように心がけました。たとえば医療の領域は可視化しやすい一方、ジェンダーの領域では、性差別的な問題もあれば経済的な課題もあり幅広く可視化するのが難しい。そこを均等にして網羅性のある課題にリビルドしていくのはかなり大変な作業でした。

── 社会課題を選出する際には何を基準にしているのでしょう。

企業が提出する特許などにはかならず「この発明が解決する課題」という出願項目があります。ある一定の水準まではそれらのデータを基にしています。

社会課題の見直し作業を行っている時期に、一般におけるSDGsの認知度が高まってきました。そこでSDGsとの関係を整理しながら、ビジネスで解決できる社会課題をもう一度抽出することにしました。その結果、網羅的なリストになったと思います。

「未来に向けて解決すべき社会課題105」(写真は分類のなかから「健康と福祉」について)。アスタミューゼでは、世界の新事業、新製品/サービス、新技術/研究の情報に併せて80カ国の特許情報などを、独自に定義した176の「成長領域」とSDGsに対応した105の「社会課題」に分類・分析した

働く人のやりがいと未来の行方が合致すればハッピーになる

── 社会課題という言葉には重みがあります。

それはあまり意識していません。正しくクライアントやマーケットと向き合っている会社はかならずなんらかの社会課題解決に寄与しているはずだからです。「うちは社会課題を解決するなんて大きなことはやっていないよ」というのは、当事者が理解していないだけなんです。革命的なことをやろうという意識はなく、「企業のあるべき姿をただ可視化しただけ」というニュアンスが近いと考えています。

── 中小企業は社会というより大企業との関係性で自社の事業を測りがちです。

たとえば部品を作っているメーカーを考えてみましょう。バリューチェーンを見れば、その部品のおかげでその先に安心安全があることがわかります。自社がどの部分に携わっているのかということさえ認識できれば、それが社会に対してすごいメッセージになったり、自分たちの仕事に意味をもつこともできます。しかし「ネジを作っている会社なんですけど」と言ってしまえばそこで終わってしまう。目的もなくネジを作り続けているだけの会社はありません。それを納品できるということは、性能が良くて安全であるから発注がくるわけです。そこにプライオリティを置けば、事業の位置付けが大きく変わってきます。

── 登録する人材側はどんな意識でSCOPEに接すればいいのでしょう。

SCOPEが支援する人材層は主に技術系や研究職、専門職などに特化しています。やりがいや社会貢献に意欲がある人が多いのですが、具体的なところまで落とし込めていないように感じています。「社会課題のどれをやりたいのか?」「どんな未来を作りたいのか?」ということにはたどり着いていない場合が多い。その点をうまく導くために「あなたの実現したい未来ってこういうことですか」とか「あなたの挑戦したいマーケットってこういうところですか」などの問いかけから一定の答えが出せるロジックを作りました。それは新しい機能としてローンチ予定です。そうすれば登録者の「自分のスキルはどういう風に社会貢献できるのか?」を可視化できるようになります。社会や未来の何に役立つのかと自分がやりたいことがマッチすると、きっとハッピーに働けるはずです。

「社会や未来の何に役立つのかと自分がやりたいことがマッチすると、きっとハッピーに働けるはずです」(嶋﨑さん)

「それが中小企業だから」と言うのはまだ早い

── マッチングの基準に社会課題という新たな軸を設けると何が変わりますか?

企業が採用面接するとき、応募者の熱量で最終意思決定する企業が多い。お互いにどういう未来を作りたいのかをもっているかもっていないのかは非常に大事なポイントです。

将来的には、文系や理系、一般総合職や専門職、技術職という概念もなくなるのではないのでしょうか。その時の判断基準は「未来を作ろうという人とそうじゃない人」になっているかもしれません。そういうスキル軸、職種軸、学問軸じゃなくて、時間軸で未来に目を向けている人――そんな分け方が主流になっていると思います。

── アメリカのアップル社に同様の方向性を感じます。

だからGAFAは採用がうまくいっているんです。グローバルに強い会社は時間軸で事業を考えています。社員一人ひとりが未来を語ったり、「私たちはこうしたいんだ」としっかりと話せるのは、人事機能が強いということからくるものではありません。会社が発信しているというよりも個が発信しているので強いのだと思います。トップクラスのグローバル企業は名刺の社名ではなく、自分の名前と自分の未来を作りたいという思いで仕事をしているはずです。

── 中小企業もGAFAと同じ土俵で戦えるかもしれない。

米中貿易戦争のあおりを食って、韓国や中国の製品が売れなくなっていますが、その中身の部品はほとんど日本が作っています。あっちがダメになるとこっちもダメになるという連鎖で日本の景気が変動してしまうのであれば、そうならないような体制づくりを一社一社が始めるべきです。

中小企業が大企業の依存から脱せない構造が続けば、大企業が傾くと日本全体が傾くことになってしまいます。大手との関係性がダメというのではなく、それだけではない働き方や発信の仕方、事業の作り方などを中小で働く一人ひとりが考えていかないと、すべてを外的要因によって左右されてしまいかねません。「それが中小企業だから」と言ってしまうのは、まだ早い。いまからでもまだまだ巻き返せるはずです。
(第2回に続く)

★関連リンク

  • 「社会課題解決」で未来を変える! 企業の挑戦を可視化する、革新的採用プラットフォーム登場(第2回)

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執筆者: 加藤陽之 - HANJO HANJO 編集長
コンピュータ関連の出版社からキャリアを始め、カルチャー雑誌などの編集長を歴任。これまで数多くの著名人をインタビューしてきた経験を活かし、HANJO HANJOでは中小企業経営者の深く掘り下げた話を引き出し続ける取材の日々。

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