特撮ドラマ『仮面ライダーゼロワン』 AIは人類にとって敵なのか味方なのか?

今作の主人公は2代目社長! 舞台はアンドロイドが普及した新世界

2019年11月8日
「AIは人類にとって敵なのか味方なのか?」と気になる人に是非オススメしたいのが日曜朝9時から放送されている『仮面ライダーゼロワン』(テレビ朝日系)だ。主人公はAI企業の2代目社長! アンドロイドが社会に普及した世界を舞台に、暴走したアンドロイドを止めるため、仮面ライダーゼロワンに変身して戦う物語だ。

『仮面ライダーゼロワン』(Ⓒ2019 石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映)

 近年、AI(人工知能)をめぐる議論が盛り上がっている。今後、AIが発展すると2045年頃にはシンギュラリティ(技術的特異点)をむかえ、私たちの仕事の多くはAIに奪われてしまうと言われている。
 自動運転の電気自動車が普及すれば運転手はいらなくなる。スーパーやコンビニではセルフレジは急速に増えている。だが、それは人手不足を補うもので、機械が仕事を奪っているわけではない。日本は少子高齢化が急速に進んでいる、だからこそ機械による自動化が必要なのだという反論もある。
 19世紀には、イギリスで起きた産業革命にともなう機械化によって仕事を奪われた労働者が、機械を破壊するというラッダイト運動を起こしたが、AIに対して多くの人々が感じる不安は同様のものだろう。
 とは言え、実際のところはどうなのか? 関連書籍を読んでも、うまくイメージできないという方も多いのではないかと思う。
 結局「AIって人類にとっては敵なの? 味方なの?」と気になる人に是非ともオススメしたいのが日曜朝9時から放送されている『仮面ライダーゼロワン』(テレビ朝日系、以下『ゼロワン』)である。

『仮面ライダーゼロワン』(Ⓒ2019 石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映)

 本作は漫画家の石ノ森章太郎が生み出した国民的ヒーロー番組『仮面ライダー』シリーズの最新作。物語は、ヒューマギアと呼ばれるアンドロイドが社会に普及した世界を舞台にしている。
 主人公の飛電或人(高橋文哉)は売れない芸人として活動していたが、ある日、ヒューマギアを取り扱うAI企業・飛電インテリジェンスの2代目社長に任命される。
 はじめは社長になることを拒否する或人だったが、暴走したヒューマギアを止めるために社長に就任し、(社長のみが使用する権利がある)ゼロワンドライバーを使って仮面ライダーゼロワンに変身して戦う。
 物語は或人が、ヒューマギアを暴走させマギア(怪人)に変えてしまう謎のテロリスト「滅亡迅雷.net」と戦う姿を描く一方で、ヒューマギアが社会にいかに普及しているかが描かれる。
 第8話までに登場したヒューマギアは、お笑い芸人、警備員、寿司職人、バスガイド、漫画家アシスタント、声優、教師、看護師とバラエティ豊か。
 面白いのは、エンタメ系の仕事もあることで、たとえば第1話に登場した腹筋崩壊太郎(なかやまきんに君)は、遊園地の営業で、或人よりも観客から笑いをとっている。人間の心の機微に関わる仕事でもヒューマギアが人気だという状況は、単純作業の効率化を超えた範囲で、AIが普及している世界だと言える。

『仮面ライダーゼロワン』(Ⓒ2019 石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映)

 『ゼロワン』における人間とヒューマギアの関係は、機械に仕事を奪われる人間という単純な構図ではない。ほとんどのヒューマギアは人間を手助けする存在として活躍しているのだが、それ故に予想外のトラブルが起きる。
 たとえば第7話には体育教師型ヒューマギアのコービー(海東健)が登場する。彼は、バスケ部の顧問なのだが、指導が行き過ぎて練習時間をオーバーしているため保護者から抗議を受けている。そのため、学校は初期化してほしいと或人たちに依頼するのだが、これは「バスケがうまくなりたい」という生徒たちの要望を優先して厳しい練習をおこなっているためで、その結果として、学校や保護者の利益に反する存在になっているのだ。このあたりは誰の要望を優先するかによってAIが自動学習していく方向性が大きく変わってしまうという問題をおもしろく描いていると感じた。
 こういう本来、合理的に動くはずのヒューマギアが非合理な行動をとってしまう背景には、使用する側の人間の目的や要望が原因であることがほとんどだ。
 逆に倫理的なテーマとして面白かったのが、第6話「あなたの声を聞きたい」。
 この回では、女性声優型ヒューマギア・セイネ(美山加恋)が登場するのだが、実は彼女は事務所の社長の亡くなった娘の姿に似せて作られたヒューマギアで「本人に無許可で酷似した容姿のヒューマギアを作成、使用してはいけない」という人工知能特別法違反に触れてしまう。
 確かに人型ロボットが普及すれば、本人に無許可で顔や体型を似せたロボットを作る人間が出てくるかもしれない。その際に問われるのは新しい倫理感であり、こういう将来起こりかねない問題を、ヒューマギアを題材に次々と見せてくれるのが、本作の面白さである。
 最新話の第8話では、早くも滅亡迅雷.netの正体が少しだけ明らかになった。当初は人間とヒューマギアの共存を邪魔する(人間の)テロリストグループかと思われた彼らだが、実は自分たちの意思で人類と敵対するヒューマギアだとわかるのだ。
 今後の展開は謎に満ちているが、おそらく作り手が描こうとしているのは人間とヒューマギアの共存は可能か? というテーマと、人間とAIの境界はどこにあるのか? という思索だろう。
 もちろんカッコいいアクションと群像劇スタイルの物語も見応え満載だ。童心に帰ってヒーロー番組を楽しみながら、AIの勉強にもなるという一粒で二度おいしい作りである。

■『仮面ライダーゼロワン』 

テレビ朝日系 毎週日曜午前9時 放送
執筆者: 成馬零一 - ドラマ評論家
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。WEBマガジン「ich」(イッヒ)主催。主な著作に『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の評論家』(河出書房新社)がある。
https://twitter.com/nariyamada
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