金融機関と中小企業を結ぶ最強のプラットフォームが、地域革命を起こす!(後編)

ココペリの「Big Advance」快進撃の秘密

2019年10月25日
「Big Advance(ビッグ・アドバンス)」の快進撃が止まりません。Big Advanceは、株式会社ココペリが提供する、全国の金融機関が連携して地域企業を支援するウェブのプラットフォームのこと。昨年4月からサービス提供が始まり、月を追うごとに参加金融機関、利用事業者が増えています。ココペリの代表取締役CEOの近藤繁さんに話を聞きます。後編では中小企業への思いや会社設立に至る個人史などにフォーカスします。

全国の金融機関が連携して地域企業を支援するプラットフォーム「Big Advance」、11月には北陸銀行の導入が決まった。写真は10月21日に行われた「Hokuriku Big Advance」発表会より。北陸銀行代表取締役頭取の庵栄伸さん(左)とココペリ代表取締役CEOの近藤繁さん(右)

「Big Advance(ビッグ・アドバンス)」の快進撃が止まりません。Big Advanceは、株式会社ココペリが提供する、全国の金融機関が連携して地域企業を支援するウェブのプラットフォームのこと。昨年4月からサービス提供が始まり、月を追うごとに参加金融機関、利用事業者が増えています。新たな販路の開拓や他県の企業との連携など、これまで中小企業で手をこまねいていた事業が、Big Advanceの登場でどんどん具体化しています。なぜいま、プラットフォームによる企業支援なのか? 中小企業にどんなメリットをもたらすのか? そして変革が求められる金融業界に何をメッセージしているのか? ココペリの代表取締役CEOの近藤繁さんに話を聞きます。後編では中小企業への思いや会社設立に至る個人史などにフォーカスします。

なぜ中小企業だったのか?

── 近藤さんが中小企業に目を向けるようになったのはなぜですか?

前職の大手銀行では、中小企業向け融資を担当していました。中小企業の良さを実感する一方、売上規模で融資が決まることなど、メガバンクならではのジレンマに悩みました。中小企業に融資ができる領域は一部に限られていたし、その規模も限られていました。そこで、独立して中小企業向けのお手伝いをすることに決めたのです。

僕は愛知県出身なのですが、地元には自動車関連の中小企業がたくさんあって雇用や地域を支えています。しかしながら過疎化も進んでいます。その風景を見て過ごしてきたので、中小企業が元気になれば地域も元気になるということが肌感でありました。

「子どもの頃から地元の中小企業を見てきました。中小企業が元気になれば地域も元気になるということが肌感でありました」(近藤さん)

── 中小企業とおつきあいをする上で重視していることは何ですか?

商品やサービスについて興味を持って話を聞くこと、より正しく言えばその態度ですね。中小企業で働く人にはすごいこだわりがあります。僕も中小企業のいち経営者としてBig Advanceのことを聞かれるとうれしいですからね。

── ココペリを設立したときはどういう業態だったのですか?

中小企業向けの財務コンサルから始めました。

── そこからテクノロジーにシフトしていきます。

財務領域のコンサルは属人的になりがちなので、自社サービスを1万社、10万社に提供できるかというとそれは無理です。そこで会計や経理に寄せていくことにしました。そうすればシステマチックにできるからです。その流れのなかでテクノロジーという発想が出てきました。

一方、経理領域では企業から細かな質問をいただくため、税理士といった士業の先生が必要になります。そこでBPO(業務プロセスアウトソーシング)を変えました。

以前、従業員数百人以下の中小企業がどの士業と顧問契約しているかの統計を調べたことがあります。顧問税理士がいる割合は7〜8割ですが、顧問弁護士では2割ほど、顧問社労士も2〜3割程度です。決算書は絶対なので税理士は外せない。しかし実際に抱えている問題は労務や法務がらみも多い。でも税理士しかいない。ただ、税理士、弁護士、社労士すべてを頼むと月10万円以上の経費になってしまいます。中小企業でその額は厳しい。ならば、中小企業と専門家がもっと安く気軽に交流できる、包括できる仕組みを作りたいと考えたのです。そこでテクノロジーを真ん中に据えたプラットフォーム化の道へとつながりました。それが、経営者と専門家(8士業)をつなぐマッチングサイト「SHARES(シェアーズ)」です。いまでは1万社以上が導入するサービスに成長しました。

Big Advanceとともにココペリの主要サービスである「SHARES(シェアーズ)」。経営者と8士業をつなぐマッチングサイトとして1万社以上が導入するサービスに成長した

部族を超えて幸せをもたらすホピ族の神様が社名の由来

── 2007年の創業です。これまで順調でしたか?

立ち上げ時はひとりのようなものだったので、さほど問題はありませんでした。しかし、業務を広げるために人を雇うようになると毎月の給料もあるし、BPOで外部の人材も必要になり、やり繰りが大変になりました。当時、事務所は米屋の3階を経費節約のため3社でシェアしていましたが、「食えなくなったら米屋を襲えばいい」── 冗談ともつかぬことを言っていたほどです(笑)。

創業から10年でなんとかというレベルになりました。しかし10年というのは「ベンチャー的」には格好悪いんです。ベンチャーの成功者は皆、あっという間に大きくなるじゃないですか。ベンチャー向けのイベントに出席したくても「創業5年以内」と足切りされてしまう。中堅でもなくベンチャーとしても認められない。あせりも出てきました。

でも10年を超えた頃、いまメインになっている事業がうまくいくようになりました。金融業界の流れに乗って勝負ができるような環境を勝ち得た。会社をやり続けてよかったなと思います。継続することは大事だと改めて感じています。時機を捉えて直ぐに動けたのも、続けていたからにほかなりません。

── 踏ん張れたのはなぜなのでしょう。近藤さんには未来が見えていたのでしょうか?

未来が見えたわけではありません。失敗もたくさんしてきました。タイミングというか、自分の感覚と世の中の感覚、そのずれがどれだけあるのかという自分なりの感覚値がわかってきたのだと思います。これはいけると思っても5年後に花咲くビジネスをいまやっても絶対に成功しません。でも5年後から始めてももう遅い。だから、世の中的には1年後に、2年後に来るだろうなという自分なりの感覚値が大事だと思うんです。10年間いろいろなことをやってきたので、そのタイミングを計れるようになりました。だからいま、希望を持って進めるのだろうと思います。

── 楽天的にも聞こえます。

その通りかもしれません。楽天的になれた ── 自分のなかであきらかに価値観が変わったのは大学生のときのアメリカ・サンディエゴへの留学経験が大きい。それまで海外に行ったことはありませんでした。

アメリカで強く印象に残ったのは、働く人が皆、楽しそうに仕事をしていたことです。しかもプライドを持ってやっている。自分がいいと思えば、人はこんなにもキラキラする ── その光景を見てすごく価値観が変わりました。「あ、こういうのでもいいんだ」と。

── ココペリという社名は留学時の経験に由来しているとか。

友達ができてからは砂漠や荒野と呼ばれる地域によく出かけました。ある時、ネイティブアメリカンの部族に「ココペリ」という神様がいることを知りました。ココペリが笛を吹くと、花が咲き乱れ、動物たちは次々と子供を産み落とす ── 豊作・子宝・幸運をもたらす豊穣の神様です。神様と呼ばれていますが、実はホピ族の精霊なんです。神様と人をつなぐ存在です。ネイティブアメリカンは部族ごとに神様や精霊を持っているのですが、いまも残る壁画を調べると、どの部族にもココペリの絵が描かれているそうです。ココペリは部族を超えていろいろな場所に現れていたのではないかと言われています。僕たちもプラットフォーマーとしていままさに、様々な会社や人をつないでいます。「ココペリという会社名はいいなあ」としみじみ感じているところです。

オフィス内には社名の由来となった「ココペリ」が。ネイティブアメリカンの神様であるココペリは部族を超えていろいろな場所に現れ、幸運をもたらしたと言われている

「他に選択肢はないのか?」── 社員が大きな裁量を持つ背景にあるもの

── Big Advanceで会社は大きな軌道に乗りましたね。

Big Advanceをもっと大きく広げていきたい。海外ではフィンテックの波は日本以上です。特に中国や東南アジアにアプローチしたいですね。たとえば北海道では、小規模の会社で生産している農産物や海産加工品が海外で人気を得ていて、すでに海外でも展開しています。ここにBig Advanceが介在するチャンスがあります。企業同士のニーズはすでにあるわけですから、海外の金融機関をつなぐと、グローカルなネットワークができます。

── 近藤さんは経営者として座右の銘を持っていますか?

特別に意識しているものはありませんが、昔からなんとなく自分の頭にあるのは高杉晋作の「おもしろき こともなき世を おもしろく」ですね。

高杉や坂本龍馬の世界が好きなんです。僕も世の中を面白く変えていきたい。若い頃、龍馬の最後の3日間をどうしても肌で感じたくて、たまらずに母親の車で京都の河原町まで直行したことを思い出します。

── 思いついたら行動してしまうタイプなんですね。

アメリカもそうでしたし、知ったかぶりはしたくない。まずは経験してから、です。

── 近藤さんの本棚にいつもある一冊を教えてください。

「コロンビア白熱教室」のテーマのひとつになった『選択の科学』は経営の観点でうなずかされる本です。人間は日々選択をして生きている。ではその選択をどういうメカニズムで行っているのか? 心理学、経済学、医学など様々な観点から実証して裏付けていく内容です。

統計をとると社長の寿命は長いらしいんです。社長は大変そうに見えるじゃないですか。でもその寿命は平均より長い。選択の幅が広いからストレスが少ないのがその理由です。選択しなさいと言われてやるのではあまりよくなくて、自分自身が選ぶことによって自分の力で変えられることが大切。しかもそれが成功体験になるからストレスが少ないというのです。

マウス(ねずみ)を使った実験が描かれています。あるマウスは水のなかで溺れさせ、溺れる手前で助ける。それを何回か繰り返します。もう一方のマウスには何もしません。その後、双方を水につける。水に対する経験のないマウスはあきらめて溺れ死んでしまうのですが、溺れたことのあるマウスはねばるんです。ねばれば助かることを学習しているので、自分で頑張るという選択をする。「自分は耐えられる」という認識が選択を行う動機付けになっているんです。

経営もまさにそうだと思うのです。うちの社員採用はスペシャリティな能力や経験のある中途のみです。彼らが裁量を持って仕事に当たっています。任せる範囲は大きい。そのためには、与えられた選択肢を選ぶのではなく、「他に選択肢はないのか?」という感覚を常に持っていることが必要です。固定概念を持たないということでもあります。会社を始めて10年余り、思い悩む時にはしばしばこの本を読み返しています。

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執筆者: 加藤陽之 - HANJO HANJO 編集長
コンピュータ関連の出版社からキャリアを始め、カルチャー雑誌などの編集長を歴任。これまで数多くの著名人をインタビューしてきた経験を活かし、HANJO HANJOでは中小企業経営者の深く掘り下げた話を引き出し続ける取材の日々。

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