金融機関と中小企業を結ぶ最強のプラットフォームが、地域革命を起こす!(前編)

ココペリの「Big Advance」快進撃の秘密

2019年10月23日
「Big Advance(ビッグ・アドバンス)」の快進撃が止まりません。Big Advanceは、株式会社ココペリが提供する、全国の金融機関が連携して地域企業を支援するウェブのプラットフォームのこと。昨年4月からサービス提供が始まり、月を追うごとに参加金融機関、利用事業者が増えています。新たな販路の開拓や他県の企業との連携など、これまで中小企業で手をこまねいていた事業が、Big Advanceの登場でどんどん具体化しています。

株式会社ココペリ代表取締役CEOの近藤繁さん。全国の金融機関が連携して地域企業を支援するプラットフォーム「Big Advance」が快進撃を続けている

「Big Advance(ビッグ・アドバンス)」の快進撃が止まりません。Big Advanceは、株式会社ココペリが提供する、全国の金融機関が連携して地域企業を支援するウェブのプラットフォームのこと。昨年4月からサービス提供が始まり、月を追うごとに参加金融機関、利用事業者が増えています。新たな販路の開拓や他県の企業との連携など、これまで中小企業で手をこまねいていた事業が、Big Advanceの登場でどんどん具体化しています。なぜいま、プラットフォームによる企業支援なのか? 中小企業にどんなメリットをもたらすのか? そして変革が求められる金融業界に何をメッセージしているのか? ココペリの代表取締役CEOの近藤繁さんに話を聞きます。前編では、Big Advanceの開発秘話から現在やこれからの展望を、後編では中小企業への思いや会社設立に至る個人史などを語ってもらいました。

テクノロジーと金融機関が知恵と経験値を出し合った先に見えたもの

── 毎月のように地方の金融機関のBig Advanceへの提携発表が続いています。なぜここまで広がったのでしょうか?

横浜信用金庫さんとプロダクトを一緒に作り始めたときは、実はこんなに広がるとは思っていませんでした。最初の要件定義を決める際には、担当者さんを3日間、朝から晩まで軟禁して(笑)、数ヶ月間時間を費やしました。そしていよいよプログラム作業にとりかかるときに「これはいける!」という確信に変わったのです。

── 確信の理由はどこにあったのですか?

金融機関がいま何をやりたいのか? そのニーズが新鮮に感じられたんです。金融機関の要求に対して、テクノロジーからアプローチしたプロダクトはほとんど世の中にありません。逆に金融業界からテクノロジーにアプローチした例もありませんでした。両者が腹を割ってやりたいことを出し合ったサービスはこれまでなかったんです。それがBig Advanceで面、形になる。開発中は集中していたので気づきませんでしたが、できあがったときに「想像を超えるものになった!」と感激しました。

(横浜信用金庫の「Yokohama Big Advance」トップ画面より)Big Advanceに参加した金融機関と取引のある地域企業が会員になることで、プラットフォーム上で金融機関や会員同士の連携が生まれ、それにより地域の枠を超えた会員同士がつながっていく。販路の拡大やビジネスマッチング、事業承継、オープンイノベーションによる新規事業の創出などの機会が頻出し、地域活性化につながっている

── このところ、中小企業を支援するプラットフォームが注目を集めていますが、Big Advanceが先駆けでした。

タイミングが良かったのだと思います。僕たちはすごく恵まれていました。

3年ほど前からAI(人工知能)を使った融資の仕組みに取り組んでいました。いまでこそAIは当たり前だと思われていますが、僕たちが横浜銀行さんと連携してAIのプロダクトの開発を始めたときは「この人、何言っちゃってるの?」と揶揄されるほどでした。それがいまでは「口座の入出金履歴を使って融資の決定をする仕組みを作ってくれないか」という問い合わせがくるまでになりました。

金融業界特有の理由もあるだろうし、企業が金融業界に求める時流もある。Big Advanceもそのなかでぴたっと時機が合ったんでしょうね。

── 地方銀行と信用金庫が業態や地域の垣根を超えて連携しています。

プロダクトとして革新的であったと同時に、全体を貫く構想自体が飛び抜けていました。「地域を超えて金融機関をつなぐ」――これは業界の常識を超えています。3月に行った「9つの金融機関がBig Advanceを導入する」という記者発表を聞いた元・日銀の方が、「金融業界に激震だ!」と驚かれたそうです。信用金庫と第二地銀が同じプラットフォームを使うなんてことは以前では考えられなかった。相当のインパクトがあったようです。

── Big Advanceでは国内だけでなく「海外も視野」に入れていますね。

7月に増資を行いました。日米Fintechファンドや世界18カ国に拠点を持っている日本とシリコンバレーのベンチャーキャピタルなどからです。世界に向けた準備をすでに始めています。

3月に行われたココペリと横浜信用金庫ら9行庫のBig Advance導入の発表会。信用金庫と第二地銀が同じプラットフォームを使うーー以前では考えられなかった連携が、Big Advanceにより実現した(2列目右端が近藤さん)

金融機関と企業の関係をどう整理すべきか? その答がBig Advanceだった

── 日本の金融業界はいま、激変期にあります。地方の銀行というレベルではなく、すべての銀行がどうなるかわからないような状況です。テクノロジーが金融を再編するという仮説を、近藤さんは持っていたのですか。

それは想定していました。世界の流れを見ると、APIもそうですが、マイナス金利や金融緩和、金融以外の会社の参入などがありました。日本の政策が世界の流れに追随するのは当たり前です。金融機関は自らが変わっていかないと生き残れないだろう──大体のイメージはついていました。

── Big Advanceの構想にいたる過程を教えてください。

僕たちの経営理念は「企業価値のなかに、未来を見つける。」です。企業が成長するためのサポートをしたいという思いを込めています。その理念に基づいてまず手がけたのが「SHARES(シェアーズ)」です。これは中小企業と士業の先生をつなぐためのプラットフォームで、いま導入企業は1万5千社、士業の先生は1600人に登録していただいています。企業をサポートすることにおいては、士業の先生と金融機関がものすごく大きな役割を果たします。逆に言えば、士業の皆さんがもっと企業を応援するようになれば企業はもっと成長できるし、金融機関ももっと取引先を支援できるようになっているべきなんです。そう考えていたので、まず士業から始めて、次は金融機関と考えていました。
金融とテクノロジーを結びつけるフィンテックですが、シリコンバレーではしばしば、ディスラプト(既存の事業を破壊して再構築する)が起こります。法規制で守られている日本の銀行業界にフィンテックを導入する際に何を選択すべきか悩みました。

去年の2月、経産省の施策でシリコンバレーのフィンテック企業を視察する機会を得ました。現地をまわって話を聞くと、フィンテック企業は以前、直接企業にお金を貸す業務をやっていたそうなんです。しかし、ある一定レベルまでいくと顧客獲得コストがすごくかかってしまい、天井にぶち当たってしまう。そこで結局、フィンテックで培ってきたノウハウや技術を金融機関と組んでお客さんに提供するようになったんです。つまりアメリカは協業モデルに向かったわけです。その姿をみて「ああこれだ!」と悟ったんです。金融機関と企業の関係をどう整理すべきか? 「テクノロジーで金融機関をサポートする」という方向性をその時決めました。

シリコンバレーを視察したときの近藤さん。現地でフィンテック企業と金融機関が協業する流れを目にして「テクノロジーで金融機関をサポートする」というココペリの方向性が決まった

なぜ先入観や盲点を払拭できたのか?

── Big Advanceにはいくつもの機能が搭載されています。ビジネスに直結した成功事例も次々とあがっています。

Big Advanceを通じて、いま地域を超えたビジネスマッチングが盛んになっています。月間で何百件もビジネスマッチングが行われています。最初は横浜信用金庫さんだけだったので、横浜の企業間のみでした。しかし、次に静岡の静清信用金庫さんが参加したことで、それまでになかった企業間の出会いが起きました。静岡から横浜に進出したいという企業のビジネスマッチングが成立して、地域やエリアを超えた協業が行われています。

マッチングサービスでは、大手企業に400社ほどパートナー企業として入っていただいていますが、横浜のメーカーがH.I.S.さんとうまくマッチングできて、そこの製品が表参道の「H.I.S.旅と本と珈琲とOmotesando」で販売されています。福利厚生の機能もありますので、旅行やフィットネスなどのクーポンも人気があります。

── 日常の業務コミュニケーションを活性化させるツールもありますね。

企業と金融機関の間のチャットのやりとりがすごく盛んになっています。経営者が「ちょっと相談したいことがあるんだけど」という際にチャットを使うようになりました。それを受け取った金融機関が「じゃあすぐにお伺いします」となる。いままでなかったコミュニケーションがBig Advanceのなかで起こっているんです。

中小企業の経営者は、チャットの会話ひとつだけでも金融機関へのアクションのハードルが一気にさがるはずです。電話をかけるのは結構気が重くなる作業です。そんな場合、どう相談していいのか悩んでいた経営者も多いはずです。そこでチャットです。チャットだと気軽にコミュニケーションできる。その精神的な安心感が経営者的には支えになっているんじゃないかと思います。中小企業ではメールを使いこなせない人も多いので、最初は相当チャレンジングだと思っていましたが、蓋を開けてみれば、大成功でした。

── 先入観や盲点を払拭できたのはなぜなんでしょう。

最初に金融機関と膝を突き合わせて要件や困りごとを掘り起こしたことが大きい。僕たちも気がついていなかったことはいっぱいありました。実はチャットには「承認権限付」という機能があります。文言を打っても上長の承認がないと相手に飛ばない仕様にしています。これは金融機関ならではの対応ですが、普通そんなチャットを思いつかないじゃないですか。

いくつもの機能を備えたBig Advanceのなかで、これまで思いつかなかったようなツールとして重宝されているのがチャットだ。「気軽にコミュニケーションできるチャットは、精神的な安心感として経営者の支えになっているんじゃないかと思います」(近藤さん)

日本のすべての企業にメリットをもたらす自信がある

── 中小企業に向けたプラットフォーマーも次々に現れています。Big Advanceの優位性はどこにありますか?

Big Advanceは使用料として各企業から月額3,000円(税抜)をお支払いいただいています。いわゆるサブスクリプション型のSaaSモデルなんです。毎月支払っていただけるということは毎月チェックされるということでもあります。だからいかに企業に使っていただくかがものすごく大事なんです。

それに向けてすごく力を入れているのが、使っていただいている企業と金融機関の声を収集することです。そしてそれをよりよくシステムにしていくことです。毎週、なんらかのヴァージョンアップを行っています。サービスインしてからすでに400〜500箇所のマイナーチェンジをしています。

常に進化していくことが、ビジネス上でも競合優位性を保つ上でも重要です。仮にBig Advanceをパクって6ヶ月後にそれがリリースされたとしても、僕たちはそれよりも6ヶ月以上先を進んでいるので、盗んだところで追いつけないんです。

小さいところで言えば、ボタン一個の位置や言葉選びも変化を加えています。最近大きなデザインチェンジをしたのですが、「ホームページの作成機能」を加えました。中小企業はホームページをもっていないところが多いですからね。

── あれはすごいですね。SEO対策までついていて、ホームページ作成ツールだけで元が取れます。

普通にホームページを作ったら、初期費用で何十万もかかります。SEOもやればもっと制作費がかかります。プラットフォームだからできるパフォーマンスです。

── ユーザー企業の目標数字はありますか?

日本に350万社の企業があるとして、その350万社すべてに使って欲しいと思っています。Big Advanceにはそれだけの価値はあると信じています。

(後編に続く)

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執筆者: 加藤陽之 - HANJO HANJO 編集長
コンピュータ関連の出版社からキャリアを始め、カルチャー雑誌などの編集長を歴任。これまで数多くの著名人をインタビューしてきた経験を活かし、HANJO HANJOでは中小企業経営者の深く掘り下げた話を引き出し続ける取材の日々。

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