「アメリカ料理」と聞いてあなたは何を思い浮かべますか?(前編)

アメリカの食文化を伝えるレストランイベント「TASTE OF AMERICA」(テイスト・オブ・アメリカ)

2019年10月9日
アメリカの食文化を伝えるレストランイベント「TASTE OF AMERICA」(テイスト・オブ・アメリカ/TOA)をご存知でしょうか? アメリカ発の料理や食材はたくさん日本に入ってきていますが、そこに「アメリカ」という意識を持つことはあまり多くないかもしれません。TOAはそんな状況に変化を加え、アメリカの食文化とは何か? さらにはその背景にある歴史とは何か? にまで広がるユニークな催しとして2011年に始まりました。
 アメリカの食文化を伝えるレストランイベント「TASTE OF AMERICA」(テイスト・オブ・アメリカ/TOA)をご存知でしょうか? アメリカ発の料理や食材はたくさん日本に入ってきていますが、そこに「アメリカ」という意識を持つことはあまり多くないかもしれません。TOAはそんな状況に変化を加え、アメリカの食文化とは何か? さらにはその背景にある歴史とは何か? にまで広がるユニークな催しとして2011年に始まりました。

 今年で9回目になるTOAですが、2019年のテーマは「Chowder / My American Food」。アメリカを愛する都内約30店舗のレストランと、アメリカ系食品企業、アメリカ食品協会の連携により、参加レストランごとにスペシャルなメニューが提供されています。

 10月1日より始まったTOAについて、主催するアメリカ大使館農産物貿易事務所(ATO)の青木純夫(Sumio Thomas Aoki)さんに2回に分けて話を聞きます。前編ではTOAの意義や内容について、後編ではアメリカの食文化や背後にある歴史について紹介してもらいます。

 インタビューを行った場所はTOA参加レストランのひとつである「バビーズ ニューヨーク アークヒルズ」。チーフシェフの與那覇直行さんには料理とともに会話にも参加してもらいました。

アメリカの食文化を伝えるレストランイベント「TASTE OF AMERICA」を主催するアメリカ大使館農産物貿易事務所の青木純夫(Sumio Thomas Aoki)さん

アメリカ料理だけでなく、その背景も知ってもらいたい

ーーTOAは今年で9回目になりました。

フランス料理、中華、イタ飯といった各国料理について、日本の人はだいたい想像がつくと思うんです。でも、「アメリカ料理」と聞いて、そのイメージが思い浮かぶ人はどれほどいるでしょう。そういった認識を変えてもらうために2011年に始めたのがTOAなんです。

飲食関係の人と話をしていて、実は音楽や映画、車など、アメリカ文化を好きな方がいっぱいいることに気がついたんです。ただそういう人たちが集まる場所や旗振り役がいなかった。それがTOAを始めた理由のひとつでした。TOAはアメリカ好きの人が集まるコミュニティでもあるのです。

ーー今回の参加は30軒の都内のレストランと、25のアメリカ輸入食材振興機関、8社のアメリカ食品輸入企業です。

第1回のレストラン数は54店舗でした。2年目は欲が出てしまい100店舗まで増やしたのですが、管理しきれない。イベントを続けていく中でちょうどいい数が30店舗ほどとわかり、このところは主に東京やその近郊の約30店舗で運営しています。

ーー100店舗のときですが、アメリカ料理と銘打った店がそんなにたくさんあったのですか。

アメリカ料理でなくてもいいんです。それが「美しい」と思っています。中華、和食、イタリアン、フレンチ・・・様々なジャンルのお店に参加してもらいました。ブロッコリーやセロリなどアメリカ産の食材を使ってもらいました。

ーーそれだとアメリカ料理という感じがわかりづらいのでは?

寿司は今ではもうアメリカの食文化に入ってしまっていますからね。多様性がアメリカ料理とも言えます。

首都圏の参加レストラン30店舗を中心にアメリカンフードカルチャーの多様性や楽しさを分かち合うイベントがTOAだ。期間中は各レストランがアメリカ食材を用いたTOAオリジナルメニューを展開する

今年のテーマはチャウダー。アメリカにはレモン入りのチャウダーもある!

ーー今回のテーマである「チャウダー」。バビーズの特別メニューは「ニューイングランドクラムチャウダー」ですね。ところでチャウダーとはもともとどういう意味なんですか?

チャウダーは、とろみのあるスープのことです。もともとイギリス系じゃないかな。基本はちょっとこってり。

ーーイベント説明会で出されたチャウダーは澄んだスープでした。驚きました。

試食会をお願いした「ロウリーズ・ザ・プライムリブ」のエグゼクティブシェフ木部勝一郎さんいわく「クリアーチャウダー」だそうです。見た目はクリアーでしたが、味は濃厚だったですよね。

テーマ設定は「チャウダーとは何だろう?」というところから出発しました。チャウダーを広い意味で使いたかった。すべてのレストランがクリーミーなものを出すのは無理かなとも思ったんです。今回のチャウダーが意味する範囲にはスープを入れてもいいだろうという発想です。

アメリカにはカリフォルニアくるみ協会がありますが、くるみとマッシュルームのチャウダーっぽいスープがあります。くるみもそんな風に使われているんです。プルーンやレモンが入っていたり、レーズン、ソーセージ、ライス、チキン、ポテト、ハム、ベジタブル、チーズ、フィッシュ・・・こんなにたくさんのチャウダーもあるんですよ。

TOAの今年のテーマは「チャウダーと私のアメリカンフード」。(左)発表会の試食会で出されたのはクリアーなスープの「クリアーチャウダー」! (右)クリアーチャウダーを料理した「ロウリーズ・ザ・プライムリブ」のエグゼクティブシェフ、木部勝一郎さん

ーーチャウダーというと、日本ではキャンベルのクラムチャウダー缶が強くインプットされているので想像がつきません。

(バビーズ 與那覇シェフ) チャウダーというと白いものという固定観念がありましたが、TOAの説明会をきっかけに色々な種類があることを知りました。
(青木) 逆に「アメリカン・フードとは?」という風にみなさんに考えてもらうのも、今回の狙いのひとつです。

新しいアメリカの食材を日本に広める機会

ーージンジャービールをいまいただきました。これはノンアルコールで、独特のテイストです。

去年、輸入が始まって、バビーズ全店でジンジャービールを入れてくれました。バックリブを訴求した年がありましたが、それを機に各レストランがバックリブ料理を出し始めてくれました。アメリカの新しい食材や食料品をお店が扱ってくれるようになるーーこれがTOAの持つ大きなポイントです。

ーーTOAは新しいアメリカの食材を日本に広める機会なんですね。ではアメリカ発祥の料理はどうなのでしょうか。

4〜5年前、南部の料理であるガンボをテーマにしたことがあります。日本でもガンボがあちこちで見られるようになりましたが、TOAの影響もあったように思いたいですね。

ーーバビーズでいまプッシュしているアメリカ料理は何ですか?

(バビーズ 與那覇シェフ) 「チェリーパイ」ですね。ミシガンサワーチェリーを使っていて、うちのパイのなかで一番さっぱりしています。「梅干しパイ」と呼んで楽しまれるお客様もいらっしゃいます(笑)。チェリーは梅とおなじバラ科なんです。

バビーズは1990年のサンクスギビングの日にニューヨークでアップルパイを売り始めたことで評判になった店なんです。山積みのアップルパイが名物です。日本ではアップルパイはいろいろなお店が出ているので、他にはないチェリーパイを味わっていただきたいと思います。

ーー10年の間にアメリカにまつわる食はいくつものブームをおこしました。

(バビーズ 與那覇シェフ) パンケーキ、エッグベネディクト、グルメバーガーなどいろいろなブームがありました。同業他社が少なかったのでバビーズの一人勝ち状態でした。日本ではワッという感じで広がりますので、今では、客単価千円以上のグルメバーガーが当時に比べて3倍以上に増えています。しかし、われわれはブームに関係なくぶれずに、手作りとFarm to Table(農場から食卓へ)というコンセプトを守り続けます。コーヒー豆も決まった農園からオーガニックなものを入れています。レシピは本国に忠実で、サイズ感以外は変えていません。店の内装もニューヨークのトライベッカ店と同じですし、関連グッズもアメリカと同じ。本物にこだわる姿勢は守り続けます。

(左)「バビーズ」のチェリーパイはミシガンサワーチェリーを使ったさっぱり味。(右)バビーズのチーフシェフ、與那覇直行さん

なぜアメリカは食のトレンドを生み出せるのか?

ーー新しい食材で期待されるものは?

(バビーズ 與那覇シェフ) 発表会で試食したシーアスパラガスは美味しかったですね。日本の海ぶどうのような食感です。

(青木) ハワイの海でとれる海水で育つ草です。つぶつぶがあり、食感がいいんですよ。アメリカから日本へ輸入している方がいます。TOAで紹介することで今後、使用量が増えてほしいですね。 

ーー今後、日本でブームになりそうなアメリカ発の食はありますか?

(バビーズ 與那覇シェフ) バブカはどうでしょうね。チョコレートパンみたいなスウィーツです。ベーカリーの一線を超えていて、ヌテラのような感じもある。ニューヨークでは流行っているのですが、日本ではまだです。クロワッサンドーナツもブームになりましたよね。これもアメリカ発です。トレンドはいつもアメリカからやってくる。

ーーなぜアメリカは食のトレンドを生み出せるのでしょうか?

「生きていくため」に発想してきたからじゃないでしょうか。生きるために世の中にないものを生み出す。でも美味しくなければいけない。そのなかでいろいろな発想をする。それがアメリカなんじゃないかな。

ハワイの海でとれる海水で育つ草、シーアスパラガス。食感の良さが特徴

(後編に続く)

■「TASTE OF AMERICA 2019」

期間:10月1日(火)〜14 日(月)
概要:アメリカを愛する都内約30店舗のレストランと、アメリカ系食品企業、アメリカ食品協会の連携により、アメリカの食文化を感じられる特別メニューを提供

★関連リンク

  • 「アメリカ料理」と聞いてあなたは何を思い浮かべますか?(後編)

    アメリカの食文化を伝えるレストランイベント「TASTE OF AMERICA」(テイスト・オブ・アメリカ/TOA)。アメリカの食文化とは何か? さらにはその背景にある歴史とは何か? にまで広がるユニークな催しです。前編に引き続き、アメリカ大使館農産物貿易事務所(ATO)の青木純夫(Sumio Thomas Aoki)さんにアメリカの食文化や背後にある歴史について紹介してもらいます。

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執筆者: 加藤陽之 - HANJO HANJO 編集長
コンピュータ関連の出版社からキャリアを始め、カルチャー雑誌などの編集長を歴任。これまで数多くの著名人をインタビューしてきた経験を活かし、HANJO HANJOでは中小企業経営者の深く掘り下げた話を引き出し続ける取材の日々。

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