生まれるべきものが生まれ 広がるべきものが広がり 残るべきものが残る

単なる資金調達ではないクラウドファンディング『Makuake』/合同展示会 大日本市

2019年10月4日
国内最大級のクラウドファンディングサービス「Makuake」。これまでに多くの製品やサービスを世の中に生み出してきました。作る側や売り出したい側にとって、Makuakeを活用した製品開発のメリットとは何なのでしょうか?
 日本の工芸を語るとき、キープレーヤーとして必ず名前があがるのが「中川政七商店」です。中川政七商店は1716年創業を誇る奈良の老舗企業。日本の工芸をベースにした生活雑貨を企画製造し、全国に50を超える直営店で小売業を展開するほか、地域活性事業や各地の工芸品メーカーに向けたコンサルティング事業も行っています。

 そのコンサルティングの一環となる販路開拓支援のために開催しているのが合同展示会 「大日本市」(2019年9月4日〜9月6日開催)です。今回で4回目となるそのテーマは"アタラシイものづくりと出会う3日間"。全国各地から集った49ブランドに加え、国内最大級のクラウドファンディングサービス「Makuake」とのコラボレーションにより、スタートアップの工芸メーカーも出展。ものづくり・店づくりを知るためのトークセッションや特別展示も数多く開催されました。

 今回の記事では9月5日に開催されたトークセッション「ユーザーと共創する新製品開発手法」(講師:中山亮太郎さん/株式会社マクアケ 代表取締役社長)より、クラウドファンディングサービスMakuakeを手がける同社から見た新製品の開発手法についてレポートします。

マクアケ代表取締役社長の中山亮太郎さん。国内最大級のクラウドファンディングサービス「Makuake」を通じて、これまで数多くの製品やサービスが誕生した

お蔵入りさせない。伝統技術の衰退をなくしたい。

 市場に出回っていない製品やサービス開発の支援者を募って集めるクラウドファンディングサービス『Makuake』を手がけている株式会社マクアケ。これまでにもMakuakeを通じて多くの製品やサービスが世の中に誕生し、話題を集めてきました。

 そんなマクアケのビジョンは「生まれるべきものが生まれ 広がるべきものが広がり 残るべきものが残る世界の実現」。このビジョンが作られた背景について、マクアケ代表取締役社長の中山亮太郎さんは次のように語ります。

 「私は日本全国に出かけるのですが、福井県の鯖江に行ったときに眼鏡会社の社長に『インターネットのサービスは右肩上がりに拡大を求めていけば良いからいいね』と言われました。事業というのはそういうものだと思っていたのですが、『ものづくりは違う。本当に良いものを作り続けるためには売上のスイートスポットがある。売上が少なすぎると従業員に給料が払えなくなり、多すぎると品質が担保できなくなる』と言われたんです。これには衝撃を受けました」

 そこで中山さんは、本来生まれるべきものがお蔵入りせずにきちんと生まれ、商流の変化による伝統技術の衰退をなくしたいという気持ちを込めて、マクアケのビジョンを作り、そのビジョンをベースに事業を行っていると話します。

マクアケのビジョンは「生まれるべきものが生まれ 広がるべきものが広がり 残るべきものが残る世界の実現」。この考えかたをベースに事業は行われている

先にお客さんを確保できれば、前に踏み出しやすくなる

 Makuakeのサイトを見てみるとさまざまな製品やサービスがずらりと並び、それぞれに支援金額や達成率が表示されています。「Makuakeのサービスを簡単に説明すると予約販売です。作り手は量産化する前段階の製品を予約販売として掲載して初期顧客を獲得する。一方で支援者は欲しい商品を予約し、量産化前の製品を買うという使い方が一般的です」と中山さんはMakuakeについて説明しました。

 もちろんこれはMakuakeの使い方の一部分に過ぎません。中山さんは過去の事例から、Makuakeを活用した製品開発のメリットについて次のように話しました。

 「まずは企画がお蔵入りせずに世の中に出やすくなること。先にお客さんが確保できれば、前に踏み出しやすくなります。また、Makuakeはお客さんとコミュニケーションを取る機能が付いています。量産前に新たなニーズを掘り起こしたり、細かな改良を加えることができれば、無駄がありません。さらに量産前に販売実績を作ることができるので、小売業者や銀行融資に対して好アピールをすることができます」

 他にも、下請けのOEMメーカーが作った自社製品が大ヒットして下請けから脱却できた事例、飲食物の需要予測や飲食店オープン前の初期顧客獲得、大手企業による新商品開発前の市場調査など、Makuakeを使ったさまざまな事例が紹介されました。

Makuakeを利用することで成功を収めた製品のひとつ、カブ・デザインの器「9°(クド)」。資金調達からマーケティングまで行った

作り手と消費者の距離を縮める

 従来のようなすでに作られた製品を売るのではなく、製品を作る前に売るというスタイルのMakuake。このスタイルについて中山さんは「作り手と消費者は基本的に分断されているものですが、Makuakeを使えばこの距離が縮められるのではないかと考えています。この距離を縮めることこそが新しい商流を作るために重要だと考えています」と話しました。

 新しい商流を作るためには、作り手と消費者のコミュニケーションが特に重要だと中山さんは強調します。例えば自分の趣味嗜好を表現したいと思っている部分については、消費者は日用品でも飲食物でもこだわりを持って買いますが、作り手側がこのこだわりを知るためには、消費者や市場を知らなくてはなりません。そのためにはコミュニケーションの場が必要ですから、Makuakeは作り手と消費者がコミュニケーションを行い、製品やサービスを共創する場だと言えるでしょう。

 最後に中山さんは「最近驚きだったのが、Makuakeは初期顧客の獲得だけでなく、小売店のバイヤーさんがチェックするオンライン上の展示会のような使われ方をしていることです。作る前に買ってくれる人と売ってくれる人が見つかれば、企画をお蔵入りさせないで済みます。こういった生態系が広がっていけば、本来生まれるべき製品が世の中に広がり、きちんと残っていく形になっていくと思います」と締めくくりました。

 インターネットの普及によって、製品を作る前に売ることを可能にしたクラウドファンディングサービスMakuake。単に資金を集めるだけでなく、支援者とのコミュニケーションを通じた顧客の獲得や製品のブラッシュアップをなど、活用するメリットは多くあると言えそうです。

中川政七商店が各地の工芸品メーカーの販路開拓支援のために開催しているのが合同展示会 「大日本市」。今回のテーマは"アタラシイものづくりと出会う3日間"。全国各地から集った49ブランドに加え、国内最大級のクラウドファンディングサービス「Makuake」とのコラボレーションにより、スタートアップの工芸メーカーも出展。ものづくり・店づくりを知るためのトークセッションや特別展示も数多く開催された

(レポーター/HANJO HANJO編集部 川口裕樹)

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執筆者: HANJOHANJO編集部 - HANJOHANJO編集者
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