クラウドファンディングで活性化! 地方発工芸品メーカーの逆転劇

Makuakeとのコラボは役に立つ!/合同展示会 大日本市

2019年9月26日
日本の工芸を語るとき、キープレーヤーとして必ず名前があがるのが「中川政七商店」です。中川政七商店は1716年創業を誇る奈良の老舗企業。日本の工芸をベースにした生活雑貨を企画製造し、全国に50を超える直営店で小売業を展開するほか、地域活性事業や各地の工芸品メーカーに向けたコンサルティング事業も行っています。そのコンサルティングの一環となる販路開拓支援のために開催しているのが合同展示会 「大日本市」です。
 日本の工芸を語るとき、キープレーヤーとして必ず名前があがるのが「中川政七商店」です。中川政七商店は1716年創業を誇る奈良の老舗企業。日本の工芸をベースにした生活雑貨を企画製造し、全国に50を超える直営店で小売業を展開するほか、地域活性事業や各地の工芸品メーカーに向けたコンサルティング事業も行っています。

 そのコンサルティングの一環となる販路開拓支援のために開催しているのが合同展示会 「大日本市」(2019年9月4日〜9月6日開催)です。今回で4回目となるそのテーマは"アタラシイものづくりと出会う3日間"。全国各地から集った49ブランドに加え、国内最大級のクラウドファンディングサービス「Makuake」とのコラボレーションにより、スタートアップの工芸メーカーも出展。ものづくり・店づくりを知るためのトークセッションや特別展示も数多く開催されました。

新世代向けにデザインを変えた三代目/もちはだ

防寒肌着「もちはだ」を製造販売するワシオ株式会社の統括部長の鷲尾岳さんは創業から三代目にあたる。伝統のある製品を現代にフィットさせて成功に導いた

 今回、編集部が注目したのは、クラウドファンディングのプラットフォーム「Makuake」とのコラボレーションで成功へとつなげたメーカーです。その代表が防寒肌着「もちはだ」を製造販売する「ワシオ株式会社」(兵庫県加古川市)。もちはだの新製品開発にあたってMakuake経由で小口投資を募ったところ、予想を大幅に超えるお金が集まり、「Makuake Award 2018【Made in Japan賞】」を受賞するまでの大ヒット商品になりました。

 もともともちはだは50年ほど前に立ち上げたオリジナルブランドでした。長く続いてきたのはその品質の高さによるものでしたが、だんだんと時代の流れに合わなくなり、存在感をなくしていました。やがて会社が傾きかけたとき、急遽、社長の息子の鷲尾岳さんが会社に呼び戻され改革を行うことになったのです。それまでのイメージを刷新して若い世代に支持されるよう、製品のデザインやイメージづくりを岳さんが手がけ、新たなもちはだがうまれたのでした。

 「商品の特性は理解されていたので、格好よさに力点を置きました。新製品にあたっては、古くからのオリジナルの機械を改造することから始めました」(鷲尾岳さん)。

 品質にかけては世界に誇る日本ですが、現代性が伴わないことで苦戦している地方の製造業が数多くあります。その状況を変えたワシオの現代へのアプローチ。サイトで一度、そのストーリーを確認してみてください。

クラウドファンディングはマーケティングにつながる/9°(クド)

株式会社カブ・デザインの器「9°(クド)」。電子レンジから冷蔵庫まで調理ができるスグレモノ。2018年度のグッドデザイン賞ベスト100にも選ばれた。クラウドファンディングのMakuakeによって資金調達からマーケティングまで行った

 次に訪れたのは中小企業が数多く集まる東京・足立区にある「株式会社カブ・デザイン」です。社名からわかるように主にプロダクトデザインを行うB2Bの会社です。ではなぜデザイン会社が「9°(クド)」という器の販売で成功を収めたのでしょうか? 「デザインを請け負ったのですが、卸先の会社が破綻してしまったのです。でも『このデザインはイケる』と考え、製品を引き取りました」(ブース担当の市橋樹人さん)。

 しかし、モノはつくることができても販売ルートがなければ売れません。よくある話ですが、全くその通りになり、当初は卸先がよくわからずに思案に暮れたそうです「デパートに営業に行っても理解されませんでした」(市橋さん)。そこで出会ったのがMakuakeでした。

 テストマーケティングの意味からプロジェクト目標金額は50万円と少額でしたが、そこで集まった投資者からの反応は販売に大きく寄与したのです。

 「モノにこだわる男性がメインかと思っていましたが、蓋を開けてみると30代の女性が多かった」(市橋さん)。

 9°はデザイン性もさることながら、「料理が不慣れな人」「時間がかけられない人」でも、電子レンジさえあれば、簡単に調理ができ、かつそのまま食卓に出せる点も大きな特徴です。忙しい30代女性にとっては光明とも言える器だったのです。テストマーケティングデータから得たデータをきっかけに販路をしぼったところ、蔦屋家電やセレクトショップなど、次々に扱い店が増えていきました。

 クラウドファンディングは資金調達だけでなく、新商品のテストマーケティングにも使えるーーカブ・デザインの成功はその好事例と言えるでしょう。

中川政七商店が各地の工芸品メーカーの販路開拓支援のために開催しているのが合同展示会 「大日本市」。今回のテーマは"アタラシイものづくりと出会う3日間"。全国各地から集った49ブランドに加え、国内最大級のクラウドファンディングサービス「Makuake」とのコラボレーションにより、スタートアップの工芸メーカーも出展。ものづくり・店づくりを知るためのトークセッションや特別展示も数多く開催された

 中小の製造業は今何をすればビジネスチャンスを得られるのか? メーカーとMakuakeとのコラボレーションから理解できるのは、リアルであれデジタルであれ、出会うことを積極的に重ねることで見えてくるものがあるということです。伝統やポリシーを維持するためにも、(リアルであれデジタルであれ)新しい世代やウェブの意見に耳を傾けることから成功を得た2社はそのことを教えてくれます。
(レポーター/HANJO HANJO編集部 加藤陽之)

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執筆者: HANJOHANJO編集部 - HANJOHANJO編集者
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