「自分らしい家を作る」から「街とどう関わるか」。家をめぐる意識の変化を探る

移住を考えているユーザーと地域の自治体や工務店をマッチング/リフォーム産業フェア

2019年8月30日
ライフスタイルや働き方の変化により地方への移住に関心を持つ人が増えています。そんな移住を考えている人と、移住を受け入れたい地域の自治体や工務店を結びつけるスカウト型マッチングサービスが今、注目されています。
 ライフスタイルの変化やストック住宅の充足により、新築住宅を買うよりも気に入った中古住宅をリノベーションして活用する人が増えています。また、増加する空き家問題や地方移住に対する課題解決の一手として、さらには2018年の民泊新法の施行や旅館業法の改正により、リフォームやリノベーションが注目されています。 

 そんな中、住宅設備や建材、営業支援サービスの展示会「リフォーム産業フェア2019in東京」が2019年7月30日〜31日の期間、東京ビッグサイトにて開催されました。会期中はリフォームに関する設備やサービスの情報を求め、10,000人を超える業界関係者が来場。299社が出展するブースには多くの人で賑わいました。

 今回の記事では7月31日に開催されたセミナー「所有・定住から共有・移動の時代へ。移住の増加と仕事のマッチングで見えた2019年の住まいと暮らし方」(講師:松原佳代さん/株式会社カヤックLiving 代表取締役)より、移住を中心にした新しい働き方のポイントについてレポートします。

株式会社カヤックLiving代表取締役の松原佳代さん。カヤックLivingでは、移住を考えている人と、移住を受け入れたい地域とを結びつけるスカウト型マッチングサービス「SMOUT」を展開している

「自分らしい家を作る」から「街とどう関わるか」への意識の変化

 ライフスタイルや働き方の変化により地方への移住に関心を持つ人が増えています。そんな移住を考えている人と、移住を受け入れたい地域とを結びつけるスカウト型マッチングサービス「SMOUT」を展開している株式会社カヤックLivingの松原佳代さんが今回のセミナーの講師です。

 SMOUTについて松原さんは「SMOUTは2018年6月に立ち上げた移住スカウトサービス。移住を考えているユーザーと、地域の自治体や工務店、NPOなどをマッチングさせています。一般ユーザー数は約6000人、これは広告なしで自然流入した数字です。これだけ潜在的な移住希望者がいるということは、それだけ移住に対する関心が高いことがうかがえます」と説明しました。

 このSMOUTを通じて、生活者の関心の変化が見えると松原さんは続けます。「2011年の東日本大震災をきっかけに地域活性化の流れが強くなりました。家を自分らしく作るという観点から、自分が街とどのように関わるかという観点へと関心がシフトしています」。

 例えば住居の一部をカフェとして開放する、いわゆる「住み開き」をする人が増えているそうです。住み開きをして、いかに地域・コミュニティで生きるかに関心がシフトしていると松原さんは話します。

「東日本大震災をきっかけに地域活性化の流れが強くなりました。家を自分らしく作るという観点から、自分が街とどのように関わるかという観点へと関心がシフトしています」(松原さん)

地域への関わりのなかでコミュニティの幅が広がりつつある

 松原さんは移住や暮らしの多様化について、「所有からシェアへのシフトが、特に20代の若い人に多く見られます」と話し、「マイホームを都会に建てるよりも、地域に知り合いが多くいる方が安心と考える人が多いようです。背景には震災により一瞬でモノがなくなるのを見て、所有よりも人とのつながりを求めるようになったことが挙げられます」と続けました。

 松原さんは家族でシェアハウスを運営し、子育てや畑仕事などを一緒に暮らす人とシェアしている事例や、移動可能なモバイルハウスで地域を転々としながら各地に知り合いを増やす事例を挙げました。所有すること以外の生き方に若い人の関心が向いており、それを実践する人が増え始めているそうです。

 また、松原さんは一人あたりの関わるコミュニティが増大していることについても言及しました。従来は職場や家族、町内会といったある程度閉じられたコミュニティがメインでしたが、働き方改革により社会との関わりが推進され、都会でのイベントやサークル、オンラインサロン活動、さらにローカルへの関わりのなかでコミュニティの幅が広がりつつあるそうです。

 「例えば3ヶ月交換日記だけでコミュニケーションを取るという地域の婚活キャンペーンには270名を超える人が応募しました。コミュニティにはオンラインとオフラインがありますが、意外とオフラインでのつながりを求めている人が増えています」

働き方改革により社会との関わりが推進され、都会でのイベントやサークル、オンラインサロン活動、さらにローカルへの関わりのなかでコミュニティの幅が広がりつつある

2020年はローカル回帰が強まる。地域に資本を提供する人が増える?

 高度経済成長時代以降、マイホームを所有することが当たり前のように考えられていましたが、ライフスタイルの変化やストック住宅の充足により、2019年の住まい方・暮らし方の特徴は所有からシェアの時代へ、そして関わるコミュニティの増大が挙げられそうです。それでは2020年はどうなるのでしょうか?

 「2020年は国内だけでなく世界的にローカルへの回帰が進むと考えられます。新たな関わり、つながりへの欲求が高まるでしょう。地域はそれが実現しやすい場所です。街への関わりを自分ごと化すると楽しくなりますから、地域に自分の資本を提供しても良いと考える人も増えると思います」

 松原さんはここ1~2年で注目されているキーワードとして「関係人口」という言葉を挙げました。関係人口とは、定住人口と交流(観光)人口の中間に位置し、その地域に住んでいないけど何らかの形で貢献する人を指します。例えば地域の出身者や勤務者、ふるさと納税者、あるいは観光以外に年数回訪れる人などが該当します。この関係人口が今後増えると松原さんは見ているそうです。

 また、2020年は高度経済成長期以前への回帰もあると松原さんは話します。「少子高齢化により人口が減っていきます。これまでの日本は成長を求めていたので、人口が減ることは一見するとネガティブなようですが、これからは減った人口で最適な暮らしを考える必要があります。キーワードはSDGs、コミュニティ経済(地域通貨)、長屋的共同生活(シェアハウス)です」

 最後に松原さんは「これからの生活者は気持ちのいい場所と暮らしを考える必要性があります。いろいろな条件(Must)を取っ払って、自分がどんな暮らしをしたいか(Want)の時代へと変わっていくでしょう」と締めくくりました。

 所有からシェアへ、さらに移住による地域との関わりへとシフトしている生活者の関心。この関心をいかに捉えることができるかが、地域ビジネスのポイントになると言えそうです。

住宅設備や建材、営業支援サービスの展示会「リフォーム産業フェア2019in東京」(2019年7月30日〜31日、東京ビッグサイト)。会期中はリフォームに関する設備やサービスの情報を求め、10,000人を超える業界関係者が来場した

(レポーター/HANJO HANJO編集部 川口裕樹)

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執筆者: HANJOHANJO編集部 - HANJOHANJO編集者
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