キャッシュレス化、チャンスととらえて攻めに転じよう!(前編)

中小・小規模事業者はどう対応すればいいのか? 徹底解説!

2019年8月21日
現金を使わない支払いが急速に広がっています。国は25年までにキャッシュレス決済の比率を4割まで高めることを目指していますが、小売店などは決済業者に手数料を払う必要があります。中小・小規模事業者はいま、「現金なのか? キャッシュレスなのか?」という大きな選択を迫られているといっていいでしょう。キャッシュレス化によって売上げや利益はどう変わっていくのか? 店舗のキャッシュレス決済を支援するサービス「Air(エア)ペイ」を提供する、株式会社リクルートライフスタイル ネットビジネス本部 ペイメント事業ユニットの塩原一慶さんに2回に分けて話を聞きます。
現金を使わない支払いが急速に広がっています。国は消費税引き上げによる消費の落ち込みを防ぐため、キャッシュレス決済に伴うポイント還元を計画。税率が10%になる10月を機にキャッシュレス化を加速させようと、中小の商店などが自己負担なしで端末を導入できる補助制度も設けています。一方、消費者へは消費増税分以上にポイント還元をして増税の負担を減らそうとしています。国は25年までにキャッシュレス決済の比率を4割まで高めることを目指していますが、小売店などは決済業者に手数料を払う必要があります。中小・小規模事業者はいま、「現金なのか? キャッシュレスなのか?」という大きな選択を迫られているといっていいでしょう。キャッシュレス化によって売上げや利益はどう変わっていくのか? 店舗のキャッシュレス決済を支援するサービス「Air(エア)ペイ」を提供する、株式会社リクルートライフスタイル ネットビジネス本部 ペイメント事業ユニットの塩原一慶さんに2回に分けて話を聞きます。

店舗のキャッシュレス決済を支援するサービスAirペイを提供する、株式会社リクルートライフスタイル ネットビジネス本部 ペイメント事業ユニットの塩原一慶さん

Airペイはキャッシュレス決済の切り札となるか?

ーーAirペイとはどんなサービス、役割なのかを教えてください。

リクルートグループの販促・集客サービスのなかで、ホットペッパーやじゃらんは飲食店、美容室、旅行について販促・集客のお手伝いをする事業ですが、Airペイが含まれる「Airシリーズ」は業種・業態にとらわれずに「中小企業の支援」というテーマのもとに、IoTの力を使って負荷を軽減させようというサービスになります。

その出発点になったプロダクトが「Airレジ」です。商売があるところには必ず会計があり、それに対応したレジがあります。Airレジは、iPad、iPhone、インターネットがあれば簡単に使えるPOSレジアプリとして開発されました。一方、Airペイは、お店の煩わしさを取り除こうというAirシリーズのなかで、決済の役割を担当しているサービスになります。

一言で「決済」といいますが、そこにはいろいろな種類があります。クレジットカード、交通系電子マネー、QR決済・・・。日本にはキャッシュレス・サービスのラインナップが多い。Airペイはその状態を解決すべく、あらゆる種類の決済に対応することを目指しています。

ーーAirペイをキャッシュレス決済の「プラットフォーム」と考えてもいい?

概念としてのプラットフォームという宣言をしているわけではありませんが、そう捉えていただいても結構です。

ーーある新聞記事に「Airペイがキャッシュレス決済の混乱状況を改善する可能性がある」とありました。

特に中小の個店、たとえば10席未満でやられている飲食店の本音は、「クレジットカードだけはいままでやっていたのだけれど、PASMO(パスモ)やSuica(スイカ)の区別もつかないうちに、今度はPayPay(ペイペイ)とかLINE Pay(ラインペイ)・・・あまりに多すぎてよくわからない!」というところではないでしょうか。

決済サービスごとに個別に対応するとなると、Suica、PASMOなどの交通系電子マネー用、LINE pay、PayPayなどのQR決済用・・・と専用となるリーダー端末がそれぞれ必要になります。でも「それらすべてをレジ前には置けない!」となることは目に見えている。加えて、契約や清算などで付随する煩わしさもどんどん増えていきます。それらの物理的問題や煩わしさを解決するためのツールがAirペイなんです。

カード・電子マネー・QR・ポイントも使えるお店の決済サービス、Airペイ。業界最安水準の決済手数料、振込み手数料0円、月額固定費0円など、運用コストについて数多くのメリットをもっている

乱立するキャッシュレス決済サービス、レジ前の混乱を解決するには

ーーAirペイが始まって、3年半ほどになります。

2015年のスタート当初はVISA、Masterのクレジットカードだけでした。16年の12月にクレジットカードが6ブランドに拡大して、17年の2月に交通系電子マネーに対応、それから春にはApple Pay(アップルペイ)、QUICPay(クイックペイ)・・・という流れでどんどん決済手段を拡充してきました。

現在、Airペイで取り扱いできるのは、クレジットカードは6ブランド、交通系は9ブランド、電子マネーで3ブランド。QRはPayPayを5月末からスタートして5ブランド。流通系のポイントサービスはTポイント、WAON(ワオン)、Ponta(ポンタ)の3ブランドです。

ーーインバウンドでは中国系の決済サービスが重要な位置を占めます。

15年12月にAlipay(アリペイ)を使えるようにしました。日本で一番早かったのがわれわれです。それまではお店でAlipayを使えるサービスはありませんでした。その後、WeChatPay(ウィーチャットペイ)も使えるようになりました。

Airペイでは、1台のカードリーダーで上記のすべての決済に対応している。煩雑化したレジ周りを省スペース化することで場所も取らず、お客様からの見え方も変化する

ーー広がったのは、キャッシュレスサービス会社からAirペイが肯定的に受けとめられたということ?

肯定的に受け入れられたということもありますが、キャッシュレスそのものが未来のことなのでどうなっていくかがわからない、といった今後の可能性に対する期待も大きかったと思います。

たとえばQRを使うモバイル決済。Airペイを始めたタイミングではここまで増えていくことを予想していたかというと、決してできてはいませんでした。ただAlipayやWeChatPayが中国で爆発的に伸びていたことを可能性として理解はしていました。中国のインバウンドで爆買いが現象化していた頃でしたので、日本でもそれに対応するサービスを用意すればQRは使われるだろうと思っていました。ただ国内QR決済市場がどこまで伸びるかは半信半疑でした。

中国とは日本のマーケット状況は大きく異なります。日本では住んでいる地域や年齢・性別によって、決済手段が結構違います。われわれはそれを指して「ゆらぎ」と呼んでいます。首都圏だとSuicaを使うのは当たり前ですが、例えば福井県では、福井駅でも交通系電子マネーが使えるようになったのが昨年のことです。従来からのクレジットカードや現金の利便性が高いこともあって、地域によっては交通系をもっている人がまだあまりいない状況なんです。

普通に考えれば、お店は消費者の好む支払い方法にお付き合いしてあげたいと思うはずです。でもそれぞれの決済サービス会社と契約すると、レジ周りが端末であふれかえってしまう。それは消費者とお店の双方にとって幸せな状況なのでしょうか? ありとあらゆるものをシンプルに「これだけで対応できる」と入り口をつくることが、その問題の解決策になると思います。

日本はなぜキャッシュレス化してこなかったのか?

大規模キャンペーンなどにより急速に広まったQR決済。Airペイでは国内の大手だけでなく、インバウンドのカギを握る中国系のAlipayやWeChatPayにも対応している

ーーQRを活用した決済が雨後の筍のようにあっという間に広がりました。

QR決済がこの2年間のトレンドになっています。Airペイ立ち上げ時の憶測は杞憂に終わりました。

ーーとはいえ、現金の比率はまだ80パーセント以上もあります。

現金はすぐにはなくならないと思っています。われわれの強みは現金も非現金=キャッシュレスもあわせてハンドリングできることです。代表的なサービスがAirレジとAirペイなんです。どちらも決済、会計をテーマにしているサービスですが、Airレジは現金をテーマにしています。

ーー主要国のキャッシュレス比率は韓国が約9割、中国が6割、米英が5割程度なのに対し、日本は2割にとどまっています。極端に低いのはなぜなのでしょうか。

これはあくまで私個人の所感ですが。いくつかの要因があると思っています。日本でキャッシュレスが広がらなかった理由は、まずお店側の要因と消費者側の要因に分けることができます。

お店側の要因については、導入するときのハードルとして物理的なものをどうやって用意すればいいのだろう、あるいはそれに対するコストがどれくらいかかるのだろう、つまりお金とハードウェアの問題があります。またそれを継続するにあたってどれくらいの経済的なコストがかかるのだろうというランニングの問題があります。

消費者の立場に立つと、日本人は現金に対する信用度が極めて高い。日銀によって発行枚数がコントロールされ続けているということもあるでしょうし、ATMなど現金が流通するためのインフラも整っています。現金が必要だと思ったとき、コンビニにいっておろすことができれば、大きく困ることはありません。

次に海外でなぜ普及したのか? お隣の中国ではもともとは圧倒的にキャシュレス比率が低かった。2000年から10年にかけて、スマートフォンが爆発的に普及したことによってQR決済が可能になり、お店側がハードウェアを用意することが不要になったことで爆発的に広がりました。貨幣に対する信用が低く不潔なものとして扱われていたことも、キャッシュレスへと変わるきっかけとなりました。

韓国や北欧の高いキャッシュレス比率もよく語られます。そこには政府の施策が大きく影響しています。1990年代、韓国は通貨危機に瀕しました。税金の徴収率をあげようとするなかで、クレジットカードに舵をきっていきました。キャッシュレスを優遇する施策を行ったのです。国策という点ではスウェーデンも同じです。電子化を後押しする政策を政府が何らかの形で仕掛けていました。

消費者とサービス提供者と国、それらの動きがあいまって、各国ごとの状況がつくられているのだと思います。

すぐに現金がなくなることはない

「現金はすぐにはなくならないと思っています」(塩原さん)。Airシリーズで現金を扱う代表的なサービスがAirレジだ。Airレジは、iPadまたはiPhoneとインターネットがあれば、0円で始められるPOSレジ

――日本人はたくさんのクレジットカードを持っています。キャッシュレス化に馴染みそうなものですが。

「クレジットカードだとお金を使い過ぎてしまうから」という感覚があったのではないでしょうか。実際はどうかはわかりませんが、そういう話が定説的にあります。あるいは「クレジットカードを盗まれたどうしよう」という漠然とした不安。たとえば現金10万円をなくしたとき、現金とクレジットカードのどちらが安全かというとクレジットカードの方なんです。消費者が保護されますから。これらのなんとなくの印象が消費者とお店の双方にあったのではないでしょうか。

ーー日本でも政府がキャッシュレス決済に伴うポイント還元などの施策を計画しています。

キャッシュレス化において政府の関与が大きなフォローになっていることは間違いありません。ただ、キャッシュレスが叫ばれるなかでよく出される問いは「で、現金どうするの?」です。しかしそこにソリューションを当てている会社はあまりありません。われわれのAirシリーズの強みは現金にも十全に対応していることです。「明日から100パーセント、キャッシュレスです」といわれれば楽だと思いますが、仮に80パーセントになったとしても20パーセントの現金は残ります。それを無視できることはできません。

ーータンス預金など日本人、特に中高年には現金に対する一種の信仰があります。若い世代の意識はどうなんでしょう?

社内で若い世代と食事にいくと、割り勘の場合すべてアプリで処理しています。現金は単純に面倒臭い、負の感情をもっている世代は増えてきているように感じます。これは肌感ですが。

ーーそうすると、デジタル世代が増えてくると理屈ではなくて自ずとキャシュレス化はおこる?

楽観的にはそう考えるところもありますね。
(後編に続く)

★関連リンク

  • キャッシュレス化、チャンスととらえて攻めに転じよう!(後編)

    現金なのか? キャッシュレスなのか?ーー25年までにキャッシュレス決済の比率を4割まで高めることを国が目指すなか、大きな選択を迫られている中小・小規模事業者ですが、キャッシュレス化によって売上げや利益はどう変わっていくのでしょうか? 前編に引き続き、店舗のキャッシュレス決済を支援するサービス「Airペイ」を提供する、株式会社リクルートライフスタイル ネットビジネス本部 ペイメント事業ユニットの塩原一慶さんに話を聞きます。

★おすすめ記事

  • どうする? どうなる? 令和時代のキャッシュレス!

    このところ話題の電子決済。日本のキャッシュレス比率は現在20%ほどで世界的には非常に低い割合です。政府は将来的にキャッシュレスの普及率を40%にまで引き上げるという目標を立てていますが、そもそも現金がない世界というのはありえるのでしょうか? 流通・小売・飲食業にとって差し迫った課題である電子決済の今とこれからを、最前線で取り組む4名によるクロストークで分析します。

  • 小売・飲食業〜VRやAIが店頭現場の効率化を実現!

    最新技術を使ったIT。人手不足解決の一手として必ず導入したい分野です。「リテールテック JAPAN 2019」では、流通・小売・飲食業界向けの決済システムやAI、IoTを活用した店舗などが紹介されました。今回の記事では、VRやAIを活用したサービスを提供する2社に注目します。

  • 小売業界のIT導入はネットから実店舗へ〜中国AI企業とローソンの事例から見る店舗ビジネスの今後〜

    インターネットの登場以降、ECサイトが先行してきた「ユーザーの利便性向上」や「導線分析」。しかし、ハードウェアやAI技術の発達により、実店舗でもECサイトで培ってきたノウハウを導入できるようになっています。ネットショッピングに顧客を奪われ続けてきた小売業界ですが、実店舗ならではの利便性の向上が、その魅力の再確認につながりそうです。今回の記事では、10月25日に開催された「Japan IT Week」のセミナーの中から、「実店舗におけるIT活用」をテーマに中国と日本におけるAI技術の導入事例についてレポートします。

  • ローカルビジネスの活性化で日本を元気にする! 個店のマーケティングをまとめて解決するITの力

    「ローカルビジネス」という言葉をご存知でしょうか? 飲食店をはじめ地域で店舗ビジネスを行っている業態の総称です。これまで総体として考えてこなかった、ある意味では遅れていた領域だったかもしれません。そんななか、日本の経済を活性化させるためにはローカルビジネスが鍵を握る、という思いをもって起業したベンチャーがあります。いま話題のEATech(イーテック)で、誰でもがすぐに個店のマーケティングを行える仕組みを提供する株式会社CS-Cです。

執筆者: 加藤陽之 - HANJO HANJO 編集長
コンピュータ関連の出版社からキャリアを始め、カルチャー雑誌などの編集長を歴任。これまで数多くの著名人をインタビューしてきた経験を活かし、HANJO HANJOでは中小企業経営者の深く掘り下げた話を引き出し続ける取材の日々。

インタビュー新着記事