株式会社シンカができるまで Vol.4 ~ベンチャーはこうして世に羽ばたく~

起業は一人でするべきか? 仲間と始めるべきか?

2019年8月19日
株式会社シンカ・江尻高宏さんのコラム、シリーズとして会社創業時から現在にいたる汗と涙の道のりを振り返ります。何が成功を導いてくれたのか? 何が足りなかったのか? どんな出会いがあったのか? どんな発想で切り抜けたのか?・・・ベンチャー企業創業者だからこそ語ることのできるリアルストーリーです。第4回は起業と仲間の関係――「起業は一人でするべきか? それとも仲間と始めるべきか?」について考えます。
 こんにちは。クラウドCTI「おもてなし電話」の江尻です。

 ところで皆さん、今までに起業を考えたことがありますか?
 それは一人でビジネスをやろうと考えたのですか?
 それとも仲間とともにやろうと考えたのですか?

 起業する際、一人で始めるのか仲間と始めるのか。どちらが正しいのでしょうか? もちろんどちらか一方が正解ではないのでしょうが、やりたいビジネスモデルやなりたいゴールによってはどちらかがベターということはあると思います。

 私は一人で会社を始めました。そのため、仲間とともに起業するということは詳しく分かりません。ただ、一人で起業したからこそ経験できたこと、感じたこと、つらかったこと楽しかったことなどはお話しできます。これから一人で起業しようと考えている人がいれば、ぜひとも参考にしてください。仲間と起業しようとしている人は、一人で起業するとこうなるのだと比較検討材料にしてもらえればと思います。

 なぜ私は一人で起業したのでしょうか。

 それは、そのタイミングで仲間がいなかったからです(笑)。「このビジネスがやりたい!」と感じたタイミングに、一緒に命を懸けてビジネスをやる仲間がいなかったこと。そして、そんな仲間探しに時間とお金をかけるよりは小さな一歩でもいいから今すぐ動こうと思ったため、一人ですぐに起業しました。

 そのため、起業前に、「一人で起業すること」と「仲間で起業すること」のメリット・デメリットやリスクを比較したわけではありません。勢いで、一人で起業したといっても過言ではありません。あまりいい事例ではありませんね(苦笑)。

 本来は、最短でやりたいビジネスのゴールに行くためにはどのように起業すべきかをじっくり検討すべきです。とはいえ、検討しすぎてスタートが遅れたり、考えすぎていつまでたってもスタートが切れなかったり、というのはもっとだめです。そのあたりは適当に区切りをつけてスタートしてください。

 思い返せば、一人で起業したことで様々な経験ができました。苦しかったことや楽しかったこと、苦しかったことやうれしかったこと、苦しかったことや感動したことなど。苦しいことが多いようにも思いますが・・・(笑)。本当にたくさん経験できました。

 一人で起業することのメリットの一つ、それは「多くの経験」でしょう。

 一人だと、起業後しばらくは何でも自分でやらなければなりません。ビジネスモデルの検討、事業計画の立案、商品設計・開発。もちろん、泥臭いことも何でもやらなければなりません。営業や提案書づくり、チラシ作り、商品のロゴ検討、サービス名検討、請求から入金確認、経費精算から月次締め、銀行さんと話したり、様々な業界団体の会合に出席したり。オフィスを決め、家具を決め、パソコンを選び、利用するソフトも選定する。一人とはいえ、企業としては大切なので、経営理念を考え、ミッション・ビジョン・バリューを考える。行動指針も決める。もう本当に何でもかんでも自分でやります。いろんな人と会い、いろんな打合せをこなします。

 たくさんの経験、様々な経験ができるため、とても勉強になります。

 メリット二つ目は、「自己成長」ではないでしょうか。こんなにスピーディに自分自身が成長した期間ってこれまであったでしょうか。自分自身の成長スピードに驚くこと間違いなしです。これだけ否が応でもいろんなことをやらざるを得ないため、いろんな能力がついていきます。

 ただ、何でも自分でやらないといけないため、正直言って時間が全く足りない。やらないといけないことがどんどん山積みになっていく。「自分自身の作業スピードが会社や事業の成長スピードにイコール」になってしまっている。自分の作業が遅いと事業成長も遅くなる。これが一番のデメリットでしょう。

 一人で起業してしまうと、ビジネスの成長が遅くなってしまう。何でもかんでも“一人力”。寝る間を惜しんでめちゃくちゃ頑張ってもせいぜい二人力程度でしょう。100人分の仕事量にはならない。事業スピードが圧倒的に遅くなってしまう。

 一人起業のデメリットの二つ目は、「リスクが高い」ということ。自分自身が怪我をしたり病気になったりすると途端にビジネスが止まってしまう。これはとてもリスキーです。ちなみに、不思議と私の周りの経営者は、病気になったりケガをしたりする人がほとんどいません。風邪なんてもう何年も引いていないという猛者が多いです。こういった自己管理ができることも経営者の資質として備わっていなければならないのではないでしょうか。

 さて、ビジネスのスピードという点では、実は一人のほうが早いこともあります。それは意思決定のスピードです。「スピーディに物事を決めていける」ということは3つ目のメリットでしょう。前に進むか戻るか、右に行くか左に行くか、このままいくか退却するか、買うか買わないか。自分一人で決められるため、意見が割れ、なかなか決まらないということはありません。

 ただ、その時下した決断がすべて経営者一人の意志によるものなので、どこまで正しい決断ができているのかは分かりません。あえて挙げるなら、「意思決定が一人にゆだねられている」というのはデメリットの三つ目なのかもしれません。このデメリットを回避するために大切なことは、間違った決断をしないためにも、社外に相談役やメンターを置くことです。先輩経営者や信頼のおける仲間、コンサルタントなど。様々なことを相談し、ズバリと意見を言ってくれる人を周りに置かねばなりません。


 起業して今は6年目となりましたが、一人で起業した際に何でもかんでも一人で決めていたことが、いまだに悪い癖として残っていると感じることもあります。すぐに自分で決めようとしてしまう姿勢です。意識して社員たちに決める機会を与えるようにしていますが、自分で決めたほうが早いし正しいという“思い込み”を持ってしまっているところがあります。これは会社を拡大させていくためには必ず直さないといけない悪癖です。

 また、起業してから強い意志と意見でこれまで決めて実行させていたため、その後に採用して入ってくるメンバーが経営者にとても従順なケースがあります。自分の意見に常に従ってくれるメンバーなら仕事が楽ですし、とてもやりやすい。しかし、そのように感じるのはただの錯覚で、経営者としてはだめです。会社を大きくするために必要なことは、経営者に意見を言う人。反対意見も勇気をもって言ってくれる人。こういう人を採用しなければならない。一人で起業した経営者は、これまでの経験から自分の意見を通したがるし、自分の意見が正しいと思い込んでしまっている。これではいつまでたっても会社が大きくならない。自分の意見に反対してくるメンバーがいるほうが健全であり、自分の意見が正しいとは限らないと気づかないといけない。一人で起業した創業者も会社成長とともにそういう気持ちを持たなくてはなりません(自戒を込めて)。

 一人で起業したが私がこれまで振り返り、そのメリット等を振り返ってみましたが、私がもう一度起業するとしたら、私はどちらを選ぶでしょうか?

 おそらく、私は仲間と起業することを選ぶと思います。

 ビジネスをやるとしたら、大きなビジネスがやりたいですし、早く成長軌道に乗せたい。そのためには、一人では難しいと思っていますので、早い段階から仲間とともにスタートさせたいと思います。

 そんな仲間と起業した時の一番のデメリット。それは仲間との分裂でしょう。そうならないためにはどうしたらいいのか?それは仲間とビジネスをスタートさせ、成功させた経営者から話を聞きたいと思います。成功ノウハウは周りにたくさんありますね。

 今回も最後までコラムをご覧いただき、誠にありがとうございました。

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執筆者: 江尻高宏 - 株式会社シンカ代表取締役社長
関西大学大学院工学研究科修了後、株式会社日本総合研究所に入社。金融系の情報システム開発に従事し、広範囲の開発プロジェクトに参画、チームリーダやプロジェクトマネジャーを経験。その後、株式会社船井総合研究所に入社。営業、マーケティング、商品戦略を中心に、中小IT企業向けのコンサルティングに注力。特にクラウドビジネス分野に強く年間約20本の講演を担当。2014年1月に株式会社シンカを設立。「おもてなし電話」をはじめ、クラウドサービスを中心にITを世界に広めることに注力している。

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