ブームのパン、おいしいというだけで売るのは難しい時代に

妥協しない消費者の心をどうすればつかめるのか?/P&B Japan

2019年8月13日
今、パンがブームです。高級食パンに行列ができたり、カフェチェーンがパン専門店を出店したりするだけでなく、各地でパンのイベントも開催されたりしています。パンの人気は衰える様子をみせません。見方を変えれば、目も舌も超えた消費者を満足させるためには、パン・ベーカリー事業者は相応の方法や工夫を考える必要があります。
 今、パンがブームです。高級食パンに行列ができたり、カフェチェーンがパン専門店を出店したりするだけでなく、各地でパンのイベントも開催されたりしています。パンの人気は衰える様子をみせません。そんな中、製パン・製菓の素材や設備の展示会「P&B Japan」が2019年7月22日〜24日の期間、東京ビッグサイトにて開催されました。会期中はパン作りに必要な素材や設備の情報を求め、約24,000人の業界関係者が来場。また、パンを中心とした食をテーマに各種セミナーが開催され、最新の知見に触れようと多くの聴講者で賑わいました。

 本日の記事では7月22日に開催されたセミナー「これなら伝わる!「購買者ニーズ」の引き出し方」(講師:中井崇さん/ピュラトスジャパン株式会社 マーケティング部ディレクター)より、消費者の心をつかむために必要な商品の良さを伝えるためのポイントついてレポートします。

ュラトスジャパン株式会社マーケティング部ディレクターの中井崇さん。ピュラトスはパン・洋菓子・チョコレートのプロフェッショナルに原材料を提供している

食の未来はどうなるのか? 世界と日本の意識を調査

 このところ、パンが大きなブームになっています。しかし、どんなパンでも売れるわけではありません。消費者の目も舌も肥え、商品選びに妥協することが少なくなってきています。 では、製パンや製菓において、消費者の心をつかむためには一体何が必要なのでしょうか?

 今回の講師であるピュラトスジャパン株式会社の中井さんは、「今後、食の未来はどうなるか」というテーマで世界各国を対象に行なった調査結果から、消費者が食に対して求めている9つのポイントを紹介しました。

 「消費者が食に対して求めているのは、味、健康、新鮮さ、クラフト(手作りや熟練)、透明性、エシカルなライフスタイル、究極の利便性、次レベルへの経験(味わったことのない食の体験など)、自分のためだけ(カスタマイズの先にあるもの)の9つです。今回はこの中から、味・健康・新鮮さの3つにフォーカスして解説します」

消費者が食に対して求めているのは、味、健康、新鮮さ、クラフト(手作りや熟練)、透明性、エシカルなライフスタイル、究極の利便性、次レベルへの経験(味わったことのない食の体験など)、自分のためだけ(カスタマイズの先にあるもの)の9つ

単においしいというだけで売るのは難しい時代に

 味は食の最も基本となる要素です。中井さんは「味は伝統的な味と新しい味の二つに分けられます。調査の結果、伝統的な味は海外でも日本でも重視されますが、新しい味について、日本人はやや保守的な傾向が見られました」と調査結果を説明。ただし、今の若い人は新しい味をそれほど抵抗なく受け入れる傾向にあるので、今後この調査結果は変わっていくだろうと補足しました。

 味を決める要素の中で重要なのが食感であると中井さんは強調します。特にパンにおいて食感は最も重要であり、食感と香りに集中することがおいしさの欲求を刺激するそうです。つまり、食べる前からおいしさを感じさせることができるということです。

 次に健康について、中井さんは「原材料から取り除くことと、原材料に加えることが健康を感じさせるポイントです」と解説しました。

 つまり、マイナスイメージのあるカロリーや糖分、塩分などを原材料から取り除き、食物繊維やタンパク質、パワー原材料(健康かつおいしい素材、アサイーやグレインなど)を加えることで健康的なイメージを持たせることができるということです。ただし、どちらか一方ではなく、必ずプラスとマイナスのバランスを取る必要があると中井さんは強調します。

 また、どんなに健康的であっても味に妥協しては売れないと中井さんは注意を促します。特にパンや菓子、チョコレートに関しては重要な要素とのことなので、味をキープしつつ健康性を高める必要性がありそうです。

食の基本である味。日本の若い人は新しい味をそれほど抵抗なく受け入れる傾向にあるので、今後この調査結果は変わっていくだろうと中井さんは話した

機能的な価値と感情的な価値の使い分け

 新鮮さのポイントは、いかに品質の良さをアピールできるかがポイントとなります。例えばパンであれば、焼き上がったときの香りやパリパリとした食感は、焼き立てや作り立てに弱い日本人に対して、強いアピールポイントとなると中井さんは話します。

 これまで紹介した味・健康・新鮮さは消費者の心をつかむ重要な要素であることは確かですが、中井さんは最後にもう一つ重要なポイントを付け加えました。

 「消費者への商品アピールで重要なのは、機能的な価値よりも感情的な価値をしっかりと強調することです。例えばケーキを売るときに、生クリームたっぷり、○○産のイチゴ使用、カロリー○%オフのような、商品の機能をアピールしても消費者は自分ごととしてとらえません」

 そこで重要なのが感情的な価値に訴えることであると中井さんは強調します。ケーキの例であれば、「このイチゴは栃木県の○○さんが丹精込めて作ったイチゴです」とストーリー性や透明性を持たせたり、「このケーキをぜひ夜に食べてみてください。クリームたっぷりで明日への活力になります。カロリー○%オフなので夜に食べても安心です」と、あたかも自分のためにこの商品があるように感じさせたりすることが必要なのです。

 パンをはじめとする食の流行には大きなビジネスチャンスが埋もれていますが、流行しているからといって必ず売れるわけではありません。売れるものにはきちんと理由があります。

 消費者が食に対して何を求めているのか、どうすれば購買意欲をかき立てることができるのかをしっかりと理解することが必要だと言えそうです。

製パン・製菓の素材や設備の展示会「P&B Japan」(2019年7月22日〜24日)。会期中はパン作りに必要な素材や設備の情報を求め、約24,000人の業界関係者が来場した

(レポーター/HANJO HANJO編集部 川口裕樹)

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