「売る」のではなく「伝える」〜AKOMEYA TOKYO〜

“お分けする心”でビジネスを考えてみる/ライフスタイル総合EXPO

2019年8月5日
サザビーリーグが展開する「AKOMEYA TOKYO」。お米などの食品や食器など良質の日本の暮らしを消費者に届けるこのブランドは、実店舗とオンラインショップともに人気を得ています。成功をもたらしたポイントは、商品を「売る」のではなく想いを「伝える」ことにありました。
 モノ消費からコト消費への変化、個人のライフスタイルに合わせた消費ニーズ、ECサイトの活発化など、小売業・流通業を取り巻く環境は大きく変化しています。

 そんななか、消費者の購買意欲を刺激するような製品が集結する「ライフスタイル総合EXPO」と「国際文具・紙製品展 ISOT」が2019年6月26日〜28日の期間、東京ビッグサイトにて開催されました。

 今回のライフスタイル総合EXPOは、「雑貨EXPO」「ベビー&キッズ EXPO」など7つの専門展で構成され、日本国内・海外から合わせて1610社もの企業が出展。また、国際文具・紙製品展には国内外340社が出展し、多くの業界関係者で賑わいました。

 また、小売業の成長戦略やマーケティングなどの課題に対して、業界を代表する人物によるさまざまなセミナーが開催され、課題解決のヒントを得るべく多くの関係者が聴講に訪れました。

 今回の記事では6月26日に開催されたセミナー「「お福分けのこころ」を通して暮らしを提案するAKOMEYA TOKYO」(講師:高井 伸夫さん/株式会社サザビーリーグ AKOMEYA事業部 事業部長)より、AKOMEYA TOKYOが提案する「お福分けの心」のポイントついてレポートします。

株式会社サザビーリーグ AKOMEYA事業部 事業部長の高井伸夫さん。「AKOMEYA TOKYO」は、お米などの食品や食器など良質の日本の暮らしを消費者に届けるこのブランド。実店舗とオンラインショップともに人気を得ている

サザビーリーグのスピリットと「お福分けの心」

 「サザビーリーグのスピリットは『It’s a beautiful day.』です。このスピリットがすべての戦略の源泉となっています」

 そう話すのは株式会社サザビーリーグの高井伸夫さん。サザビーリーグが手がけるAKOMEYA TOKYO(アコメヤ トーキョー)も、お米を「It’s a beautiful day.」の視点でとらえ、日本の暮らしの良さを消費者に届けることを目的としているそうです。

 AKOMEYA TOKYOでは「お福分けの心」というキーワードを掲げています。この「お福分けの心」とはどのようなものなのでしょうか? 高井さんは「今は昔と違って情報が溢れており、商品についてもお客様の方が詳しいということが多々あります。これは売るという行為自体に無理が生じているとも言えます。そこで商品を売るのではなく、お分けする心でビジネスをする。これがお福分けの心です」と説明します。

 お米の生産者や職人が心を込めて作ったものには人を幸せにする力が宿っており、それらを単に消費者に売るのではなく、幸せを分けるという感覚が必要なのだそうです。

「商品を売るのではなく、お分けする心でビジネスをする。これが“お福分け”の心です」(高井さん)

接客を通じてスタッフの学びを深める

 AKOMEYA TOKYOでは食品・雑貨・厨房の3つを事業の柱としています。そして、これらについて、「差別化商品の開発」「情報の提供」「真心の接客」「居心地の良い空間」の4点でお福分けすることをモットーとしていると高井さんは話します。

 例えば、食品については「一杯の炊きたてのご飯から繋がり広がる幸せ」をベースに、お米だけでなくご飯のお供にふさわしいおかずをバイヤーが全国から探し出して提供。雑貨は価格や品質、機能だけに着目するのではなく、暮らしの中にあって上質な佇まいを感じさせるものを中心にそろえているそうです。また、銀座と神楽坂にある厨房では、AKOMEYA TOKYOで販売しているお米や出汁などと一緒に、旬の素材を使った食事が楽しめます。

 これらのお福分けを伝えるために「接客を通じてお客様に想いを伝えると同時に、スタッフの学びを深めるようにしています。例えばAKOMEYA TOKYOではお米コンシェルジュの育成に努めています。お米コンシェルジュは非常にハードルが高いのですが、お米の製法や炊き方、おいしく食べる方法など、お米については相当詳しくなります。これにより、どんなお客様でも受け入れられるようになります」と高井さんは具体例を挙げました。

AKOMEYA TOKYOの事業の柱は、食品・雑貨・厨房の3つ。これらについて、「差別化商品の開発」「情報の提供」「真心の接客」「居心地の良い空間」の4点でお福分けすることをモットーとしている

実店舗の持つ接客や顧客体験でブランド力を高める

 AKOMEYA TOKYOのこだわりはお米に向かう姿勢だけではありません。例えば、AKOMEYA TOKYOでは炊飯用に土鍋の販売もしていますが、土鍋を1個売るために非常に時間をかけているそうです。

 土鍋を使うとご飯がおいしく炊けることは一般的に知られていますが、炊飯器に比べると手間がかかるイメージがあります。そこでAKOMEYA TOKYOでは独自に土鍋を開発し、土鍋のメリットを一人ひとりの顧客に細かく説明しているそうです。土鍋の販売ひとつとっても、単に鍋を売るのではなく、土鍋の良さをきちんと知ってもらい、ご飯をよりおいしく食べてほしいという「お福分けの心」が見えるようです。

 また、AKOMEYA TOKYOではお米は生鮮食品であると考え、「お米は精米すると酸化して味が落ちていきます。そこでお客様がお買い上げの時点で必要な量を店頭精米するようにしています。精米も玄米・三分づき・五分づき・七分づき・白米とお客様のお好みに合わせて選ぶことができます」と話す高井さん。これもお米を最もおいしい状態で食べてほしいという「お福分けの心」だと言えるでしょう。

 「お福分けの心」を持って徹底的に顧客に寄り添うAKOMEYA。最後に高井さんは「お米はビジネスになるかという質問をよく受けますが、やればやるほどお米が中心となります。現在は3つのカテゴリを展開していますが、この3つに収まらずカテゴリを超えた展開も随時考えています」と締めくくりました。

 単にものを売るだけであれば、ECでも十分です。しかし、実店舗の持つ接客や顧客体験といったメリットを活かせば、ブランドに対して多くのファンを作ることも可能です。AKOMEYA TOKYOは「お福分けの心」でブランド作り、ファン作りに成功していると言えそうです。

2019年6月26日〜28日の期間、東京ビッグサイトで開催された「ライフスタイル総合EXPO」。日本国内・海外から数多くの企業が出展。業界関係者で賑わった

(レポーター/HANJO HANJO編集部 川口裕樹)

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執筆者: HANJOHANJO編集部 - HANJOHANJO編集者
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