【外国人材特集】同じ人間同士、まず胸襟を開くことから始まります

食肉の卸売や加工製造販売を手がける、日本ベストミート株式会社(神奈川県/食肉卸、加工、製造販売)

2019年7月31日
ガイジン、という言い方は日本にしかないと聞きます。そうではなく、外国人を区別することなく普通に接する。胸襟を開いて迎えれば、人間同士そう変わりはないものです。
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社名 日本ベストミート株式会社(神奈川県)
業種 食肉卸、加工、製造販売など
従業員数 220人(パート含め)
受け入れ外国人 24人(すべてインドネシア)
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  • 同社の主力商品
  • 工場(小田原市前川工場)
  • 職場の風景

事前に監理団体と入念に打ち合わせ

 食肉の卸売や、加工製造販売を手がける日本ベストミート株式会社。とくに、もっちりした食感と甘みが評判の和豚(わとん)もちぶたを扱っていることで知られています。

「本社のある小田原など神奈川の西部では、どうしても若い層は都心に出てしまいます。そこで人材の充実と、事業拡大も目指して、技能実習生の受け入れを決めました」

 と話すのは、常務取締役の細野雅史さん。事前に監理団体である協同組合メディアバンクエデュケーションと打ち合わせを重ねてきたので、あまり心配はなかったといいます。

「穏やかな国民性で、親日的だというインドネシア人に来てもらうことになりました。他社に聞いてもやはりインドネシア人は働きぶりが良いと評判だったこともありましたね」

 事前に準備したのは、仕事や生活する上での注意を英語とひらがなで書いた案内だといいます。職場での安全面で気をつけてほしいこと、住居として会社で家を用意したそうですが、ごみ出しの注意やご近所さんに挨拶をすることといった基本的なものです。

積極的に日本語を覚え、とにかく真面目に働く

 そしてやってきたのは20〜30代のインドネシア人女性たち。

「日本人従業員の中には、うまくつきあえるか不安な人もいたようです。でも彼女たちは日本語の簡単な会話くらいはわかるし、すぐに勉強を重ねてどんどん言葉を覚えていく。1年も経てば、日本人よりよっぽどちゃんとした日本語を話すようになったりしてね(笑)。そんな努力する姿勢が、私たちを安心させてくれました」

 実習生の職場は日本人と変わりありません。おもにハム・ソーセージ工場と、食肉の解体現場で働いています。事前には講習を受け、徹底した衛生管理を行っているのも日本人と同様です。

「とにかく真面目ですよ。働く意欲が本当に高い。一生懸命に働いてお金を貯めて、家族にも送ってあげたい。そんな気持ちを感じます」

 だから工場の稼働時間を増やし、実習生に認められた範囲の中でどんどん働いてもらうことにしたそうです。このため会社としても、仕事の幅が広がってきたといいます。

 彼女たちはインドネシア人ですが、多数派のイスラム教徒ではなくてヒンドゥー教徒。イスラム教徒にとって会社の主力商品である豚肉はタブーだからです。ヒンドゥー教徒は宗教的な問題もとくになく、日本の生活にも馴染んでいるといいます。食事に必要な香辛料などは故郷から送ってもらったり、あるいはネットで購入することもできる時代です。「日本のお米はインドネシアより甘くておいしい」と誰もが言うのだとか。

ジャカルタの朝の出勤風景

もう会社に欠かせない戦力

 「会社ではバーベキューや芋煮会をやったり、泊まりで箱根に旅行に出かけたりもするのですが、彼女たちも一緒に参加して楽しんでいますよ」

 実習生が来る前から、こうしたイベントを開催していた家族的な会社です。そこに外国人もごく自然に混じり、いまやそれが普通になってきたのだとか。

 「自分たちだけでも旅行に出かけて、日本の文化に触れようとしています。日本人の同じ年頃の女性社員たちと意気投合して、休みになると一緒に出かけたりしているようです」

 外国人実習生を受け入れて3年が経ち、2期生がやってくるようになりました。その働きぶりを見た細野さんは、さらにインドネシア人を採用していきたいと考えています。

 「ガイジン、という言い方は日本にしかないと聞きます。そうではなく、外国人を区別することなく普通に接する。胸襟を開いて迎えれば、人間同士そう変わりはないものです」

 いまや社員の一割以上を占めるインドネシアの若者たち。その勤勉さと明るさに助けられているそうです。
  • ジャカルタで開催される日本イベントに協賛する日系進出企業
  • ジャカルタの高級日本食レストランに並ぶインドネシア・ローカルの方々

日本ベストミート(株)をサポートする監理会社

●アジア各地に詳しいスタッフたちの細やかなケア
(伊東直幸 by メディアバンク エデュケーション 東京支社)

 「スタッフがどんどんアジア各地を回って、地元の送り出し機関と触れ合い、最新の情報をアップデートしているのが当組合の特徴でしょうか」

 と語るのは協同組合メディアバンクエデュケーションの伊東直幸さん。例えば日本ベストミートの場合、扱っている商品は豚肉です。そこでインドネシアのバリ島に注目しました。

 「インドネシアは大半がイスラム教徒で豚肉はNGなのですが、バリ島は独自のヒンドゥー教。豚肉が食文化として根づいています。現地には豚肉を加工する工場もあり、加えて親日的です。またバリ島の送り出し機関は歴史ある日本語学校でもあり、校長先生は日本に留学経験もあります。きっといいマッチングができると思いました」

 と語る通り、現地では4年制大学で日本語を学んでいた人、食肉会社に勤めていた人など優秀な人材が日本行きに手を上げたのです。

 日本、インドネシア双方で書類の準備を進める期間がおよそ半年。この間、実習生たちはみっちり日本語や日本の生活習慣について学習して、準備を重ねてきました。

「実際に来日してからも、組合は月に1度は実習生のいる企業を訪問して、ケアしています」

 とりわけ活躍しているのはインドネシア語が堪能なスタッフ、中村奈津子さん。日本ベストミートの場合インドネシアの実習生はみな女性です。女性同士だから相談しやすいこと、話せることもたくさんあります。実習生たちは彼女を「日本のお姉さん」と慕っているそうです。

 企業に密着して、どんな人材が必要なのか話し合い、豊富なアジアの実地経験とネットワークから、送り出し機関を推薦する。そして来日した実習生たちをきめ細かくサポートしていく。それが伊東さんの仕事なのです。

「企業と実習生のどちらもWinWinな関係を仲立ちできたらと思ってます」
取材/執筆:室橋裕和
監修:一般社団法人 国際連携推進協会(PIRA)

注)一般社団法人 国際連携協会の管理する問合わせフォームに移動します

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執筆者: 室橋 裕和 - 監修:一般社団法人 国際連携推進協会(PIRA)
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