アパレル業界を変えるIT戦略! 熊本発ベンチャー、シタテルが描く「服の未来」【Vol.2】

熊本出身の異色CTOが手がけるテクノロジー戦略

2019年7月29日
アパレル業界は、メーカー、工場ともにテクノロジー化が遅れており、在庫問題や工場稼働の不均衡、手作業による工数の増加など様々なビジネス上の課題を抱えています。そんななか、服を作りたい人と縫製工場を橋渡しする衣服の小ロット生産サービス「sitateru」が注目を浴びています。優れた技術力を持つ縫製工場の「時間・技術・資源」のデータ管理を行い、服を作りたい人と縫製工場を橋渡しする、衣服の小ロット生産サービスです。「sitateru」を提供しているのは、熊本発ベンチャーのシタテル株式会社。アパレル業界の課題をテクノロジーでどう解決するのか? シタテルCTOの和泉信生さんに語っていただきます。
 アパレル業界は、メーカー、工場ともにテクノロジー化が遅れており、在庫問題や工場稼働の不均衡、手作業による工数の増加など様々なビジネス上の課題を抱えています。昨年『誰がアパレルを"生かす"のか』がベストセラーとなりましたが、まだ業界として解決に至っているとは言えません。
 そんななか、服を作りたい人と縫製工場を橋渡しする衣服の小ロット生産サービス「sitateru」が注目を浴びています。優れた技術力を持つ縫製工場の「時間・技術・資源」のデータ管理を行い、服を作りたい人と縫製工場を橋渡しする、衣服の小ロット生産サービスです。
 「sitateru」を提供しているのは、熊本発ベンチャーのシタテル株式会社。2014年の創業よりテクノロジーの力で業界が抱える課題の解決に取り組み、大きく変化するアパレル業界のニーズに合ったサービスを開発・提供しています。それだけでなく、多くの地方の縫製工場などをネットワークし、発注者につなげることで、地方創生にも寄与しています。
 アパレル業界の課題をテクノロジーでどう解決するのか? アカデミック出身で異色の経歴を持つシタテルCTOの和泉信生さんに語っていただきます(全3回シリーズ)。

シタテル株式会社 CTO 和泉信生氏

 CTOやITのテクノロジーという話になると、人工知能ですか? 工場自動化ですか? というような反応で受け取られることが多くあります。それらはトレンドですが、私がシタテルに入社する以前に、大学時代から学び、大学の教員として研究に携わってきた情報学はもっと広い範囲を取り扱います。

 日本学術会議によれば、情報学は次のような学問として定義されています。

 “情報学は、情報によって世界に意味と秩序をもたらすとともに社会的価値を創造することを目的とし、情報の生成・探索・表現・蓄積・管理・認識・分析・変換・伝達に関わる 原理と技術を探求する学問である。以下では、情報を生成・探索・表現・蓄積・管理・分析・変換・伝達することを、総称して、「情報を扱う」という。”(抜粋 *1)
 この情報学をアパレル衣服生産の業界にどのように実装していくか、というのがシタテルのCTOとしての挑戦です。

 アパレル衣服生産はとても長い歴史を持つ産業です。インターネットが無く、まだ世界の情報が地理的な距離によって分断されていた時代からずっと続いています。あたりまえですが、ITが無くてもそこで働く人たちは情報を交換しながら衣服生産を行ってきました。しかし、狭い世界の中で最適化された情報交換方式が乱立した結果、共通の言語に当たるものが整備されず、全体の最適化が進みませんでした。

 つまり「情報を扱う」ことの最適化が、アパレル生産の世界に欠けていて、今、必要とされているテクノロジーと言えるのではないでしょうか。

 衣服はとても複雑で興味深いプロダクトです。工業製品として暑さや寒さ、外部から身をまもる機能的なモノであると同時に、音楽や映像のように「私」の思いやアイデンティティーを強く表現する媒体でもあります。それなのに外出するときは全員が常に身につけ無い訳にはいかない。だから自然と他の人からも見られることになって、「私」がどんな人物であるかを強制的に定義してしまいます。

 衣服がこれほど個人の多様性に影響を受けるプロダクトである以上、生み出すには多くの人たちがアイディアを交換するためにコミュニケーションをとる必要があります。
 シタテルのテクノロジー戦略は「コミュニケーションの最適化」です。そのために「フロー情報」と「ストック情報」という概念を使っています。「フロー情報」は主に会話として交換される情報です。会話をすることで新しいアイディアが生まれたり、漠然としていたものが明確になっていきます。「フロー情報」の交換にはノリが大切です。入力に煩わされたり、遅延にストレスを感じたりすることが無いようにしなければいけません。しかし、後で見返せるように記録もされていなければいけません。「ストック情報」は「フロー情報」の中から導き出された決定事項や保存して置かなければならない情報です。適切なタイミングで見返すことができるようにきちんと整理整頓して保存されていることが重要です。

 シタテルが社内で開発して生産管理に利用しているSCS(シタテルコントロールシステム)、連携縫製工場に導入しているマイオペレーター、衣服生産依頼をオンラインで受け付けるマイページでは、上記の考え方に基づいて、対象とする生産アイテムに対して必要な情報が一元的に記録されて参照でき、それに対するコミュニケーションが紐付いて行える構成になっています。

 これまでに縫製工場や顧客とのコミュニケーションはシステム化を進めて来ましたが、縫製工場以外のサプライヤーやデザイナー、パタンナーなど衣服生産に関わる人達とのコミュニケーションで最適化が必要な箇所はまだまだ多くあります。また、シタテルが最適化に取り組んだものを、同じように衣服生産を行っている他のプレイヤーにも開放し、業界の中で皆が使って利益を享受できるものとして、広げていきたいと思っています。
 
 衣服生産のプラットフォームというユニークな事業に取り組んでいるからこそ生み出せる、シタテルオリジナルのテクノロジー開発に、引き続き取り組んでいきます。

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執筆者: 和泉信生 - シタテル株式会社 CTO
2009年に博士(情報工学)を九州工業大学大学院情報工学府にて取得。同年4月から9年間熊本県の崇城大学情報学部助教として教育・研究活動に従事。「市民共働のための雨水グリッドの開発」などの学術研究を行う一方、アプリを企業と共同開発するなどエンジニアリングを実社会に応用するソフトウェア開発者としても活動。2017年4月、シタテル技術アドバイザーに就任。2018年4月、シタテル株式会社入社。主な著書に『Unity4マスターブック―3Dゲームエンジンを使いこなす』(カットシステム)などがある。

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