おもてなし規格認証 2019 最高位「紫認証」取得事業所に聞く 4(前編)~パナソニック株式会社 パナソニックセンター東京~

東京オリンピックを前に「理念」を見つめ直す

2019年7月24日
「おもてなし規格認証」の最高位である「紫認証」に、2019年の第一弾として5事業所が認定されました。紫認証にいたった施策や取り組みはどのような内容なのでしょうか? そして生産性向上はどのように実現されたのでしょうか? 表彰を受けた紫認証取得者の皆さんにお話をうかがいます。第4回は「パナソニック株式会社 パナソニックセンター東京」(東京都)を紹介します。
 「おもてなし規格認証」の最高位である「紫認証」に、2019年の第一弾として5事業所が認定されました。紫認証は、認証機関から推薦を受けるとともに、顧客・従業員・地域社会の満足を促進することにつながる取り組みや、さらに、従業員の人材育成・業務効率化・顧客満足の向上につながる独自の取り組みの実施について確認された事業所に対して付与されるものです。

 紫認証にいたった施策や取り組みはどのような内容なのでしょうか? そして生産性向上はどのように実現されたのでしょうか? 表彰を受けた紫認証取得者の皆さんにお話をうかがいます。第4回は「パナソニック株式会社 パナソニックセンター東京」(東京都)を紹介します。

 「パナソニックセンター東京」は、パナソニック株式会社の最先端技術・ソリューションを通じた未来の暮らしやビジネス向けソリューションを体験できる施設として、一般のお客様をはじめ、体験学習に訪れる小学生〜高校生、ともに社会課題解決を目指すビジネスパートナー、海外からの国賓に至るまで年間100万人以上の来場者を受け入れているグローバルな総合情報発信拠点です。ビジネスパートナーとの共創の場、東京における同社の迎賓機能の役割も担っており、長期的視点からのパナソニックのブランド向上に寄与しています。日本を代表するグローバル・カンパニーはどのような取り組みによって、日本を代表するおもてなしを実現させたのでしょうか? パナソニックセンター東京 所長の池之内章さんに話を聞きます。

2019年度「おもてなし規格認証 紫認証」を取得した「パナソニック株式会社 パナソニックセンター東京」所長の池之内章さん

東京オリンピックを前に、おもてなしのレベルを再認識する

ーーおもてなし規格認証をなぜ取得しようと思ったのか、その理由をお聞かせください。

パナソニックがスポンサーしているオリンピック・パラリンピックの2020年東京大会を来年に控えています。私どもはオリンピックが開催されるエリアの一等地に幸運にもパナソニックセンター東京を構えています。間違いなく世界各国から多くの来賓の方がいらっしゃることになります。おもてなしや迎賓に力を入れなければならないことは明らかでした。

オープンして17年になりますが、私どもだけの尺度ではなくて、色々な角度や外部からの尺度から見たおもてなしのレベルを再認識する必要があるように感じていました。そこで、おもてなし規格認証のなかにある「サービス品質の見える化」でスタディをさせていただこうと思ったのです。おもてなし規格認証は私どものサービスのレベルを一度外部の視点で見直してみるという、非常に良い機会でした。

姉妹施設である「パナソニックセンター大阪」が昨年度の紫認証を取りました。情報交換をしているなかで、おもてなし規格認証はお客様をどうお迎えするかだけではなくて、業務のサイクルなど幅広い領域を扱っているので業務改善の参考になるよ、というアドバイスがあったことも取得のきっかけとなりました。

ーー紫認証は施設運営のどんなところで役に立っていますか?

紫認証を取得している事業所は去年と今年合わせて10しかありません。経済産業省創設による確かな認証を取得でき、正直ホッとしていますし、達成感もあります。ただ社内における喫緊の評価軸は来年のオリンピック・パラリンピックです。

世界の名だたるビジネスVIPや国を代表する来賓が予想されます。そのなかでどのようにおもてなしをしてそれに対してどのような評価をいただけるか? そこに向けて準備をしている最中でもありました。そのひとつがおもてなし規格認証だったのです。

審査にあたっては足りないところをいくつかご指摘いただきました。たとえばチェック項目にある決済・会計関連。当施設にはカフェがありますが、インバウンド系の決済システムはやや遅れていました。今回、その認識を新たにもつことができました。それも含めて2020に向けてどう手を打つべきか、それをいままさに検討している最中なんです。

ーーパナソニックセンター東京は、消費者向けとビジネス向け、ほかにはない組み合わせの施設です。

2013年に弊社の津賀(代表取締役社長)がBtoBビジネス(法人向けビジネス)を強化すると宣言して、当施設にビジネスとしての迎賓、あるいはディスカッションや共創の場を設置するということになりました。海外のお客様も含めて、ビジネスのお客様はまず日本の玄関口である東京に入ります。施設ができた当初はBtoC(消費者)を意識した施設で、自社ショールーム的な位置付けでしたが、時代や会社の戦略に即して我々の発信内容もアップデートしています。

パナソニック株式会社の最先端技術・ソリューションを通じた未来の暮らしやビジネス向けソリューションを体験できる施設である「パナソニックセンター東京」。一般のお客様、ともに社会課題解決を目指すビジネスパートナー、海外からの国賓に至るまで、年間100万人以上の来場者を受け入れているグローバルな総合情報発信拠点として機能している

世界のVIPやビジネスのトップレベルを迎えるにあたって意識したこと

ーー4階はビジネスに特化した「ビジネス・ソリューションズ」のフロアです。

パナソニックはいま、法人向け製品・ソリューションにかなりシフトしています。セキュリティ関連のソリューション、モビリティやセンサーのソリューション・・・。事業のポートフォリオは幅広くなり、さらに時代に対応して日々変化しています。

弊社が目指す街の光景やモビリティ空間、ビジネスソリューションなど、“少し先の世界観”を体感いただくというしつらえで構成しています。インバウンドをはじめ、お客様がたくさん来られたとき、「パナソニックはこんなこともできるんだ!」と皆様の期待をこえるデモンストレーションを提示したいと考えています。

ーーこのところ、パナソニックは自動車会社や流通業界とのコラボレーションを積極的に行っています。展示からもこれまでとは違う方向性を感じました。

社内のスローガンのひとつが「クロスバリューイノベーション」です。社内、社外ともに「共創」することでイノベーションを創出するという意味です。もはや一社で何かができる時代ではありません。必要に応じて自動車メーカーやコンビニほか、業界の枠組みを超えて協業しています。当施設で行われているワークショップの内容をご覧いただくとわかるように、当施設でも外部からのいろいろな知見を取り入れています。パナソニックセンター東京は、「パナソニックは共創する会社なんだ!」という理解をしていただく場でもあり、その仕組みを積極的に発信していきたいと思っています。

ーービジネス関係だけでなく世界各国の政治家も訪問されるとのこと。運営にあたってはどんな点を意識しているのでしょうか。

世界のVIPやビジネスのトップレベルの方をお迎えするという点では、「日本」「東京」や「日本文化」といったことは意識しています。各国の文化を尊重するという考え方はオリンピック憲章でも謳われています。パナソニックセンター東京を訪問いただくことで、日本の文化や技術、おもてなしなどを肌で感じていただきたい。

4階の会議室は意図して窓を設けていないのですが、それは映像によって「日本」「東京」というテーマを演出するためです。「日本の東京などの景色」や「日本の文化」を当社の映像や照明技術を使った空間でお見せしています。

ビジネス・ソリューションズのフロアにある会議室。このフロアではパナソニックが目指す街の光景やモビリティ空間、ビジネスソリューションなど、“少し先の世界観”が体験できる構成になっている(*4階はビジネス関係のフロアのため、一般のお客様には公開していません)

ーーパナソニックセンター東京を起点にビジネスに結びつくという流れはあるのですか?

パナソニックの各拠点の営業所や事業開発部門がお客様をお連れすることが基本ですが、お客様がその後、どうディスカッションされてどのように成約にいたったかについては一部トラッキングもしています。様々なビジネスの流れの中でこの場所がどう位置付けられ、お役立ちできているかを知るためです。

ーー単なる迎賓館というわけではなく、ここで実務が生まれるのですね。

もうひとつはもちろんブランディングです。ビジネスだけでなく、これからの日本を背負う次世代層も含めて、ともに考え、学ぶ場としての活動も力を入れています。

ーー1階フロアでは、小・中学生が楽しめるオリンピック・パラリンピックコーナーや、日常生活への提案が行われています。

来賓者には必要に応じて1階もご覧いただいています。文化の裏にある技術について詳しく知りたい方もいらっしゃいます。1階で展示している「Wonder Life-BOX」のエリアでは、キッチンやリビングルーム、寝室など今の暮らしへのソリューション、少し先の暮らしのソリューションもお見せしていますので、「ここでこういったものが欲しいんだ」「こういったことができないか」といったディスカッションを始められるフックを随所に配置しています。

コーポレートショウルームとしてのパナソニックセンター東京の役割は少し幅広さをもたせています。次世代である小中高生から家族連れ、そしてビジネス層と、ターゲットによって施設としてのしつらえや見せ方を変えていきながら、それぞれを関連させています。

1階で展示している「Wonder Life-BOX」。コンセプトは「憧れの豊かなくらし〜自分らしく、快適に〜」。ディスカッションを始められるフックが随所に配置されている

パナソニックセンター東京は「理念」を伝える場所でもある

ーーさきほど館内を案内していただいたときに、1978年に中国の鄧小平氏(当時・副首相)がテレビ工場を見学したときの映像を見ました。政治とは別に、企業が主体となる国際交流がある。それを感謝している中国の経営者が今もいると聞きます。

あの映像はほんの数十秒ですが、中国の政府関係者が来られたときには必ず見ていただいています。そうすると皆さんの目の色が変わるんです。「そうか、パナソニックはあの時代の中国から40年間もつきあってくれていたんだ」と。

ーー展示を超えたメッセージを感じました。

パナソニックセンター東京は「理念」という側面に光を当てています。とくに若年層にはオリンピックの理念について知っていただきたい。私どもはオリンピックに30年以上、パラリンピックに20年以上、協賛させていただいています。オリンピック・パラリンピックを単にスポーツ競技という捉え方だけでなく、そこにある背景や目指すところを、平和、文化、相互理解、教育、もっと言うと驚きというレベルまで伝えたいのです。

一方、パナソニックの会社としての理念的なコンセプトを伝える場でもあります。弊社は昨年、創業100周年を迎えました。そこで、創業者である松下幸之助が会社をおこしたときの理念に今一度立ち返りました。そこには社会に対して貢献するという考え方があります。幸之助が語っているのは、「利益は社会に貢献した見返りである」ということです。そして利益だけでなく、「どう社会や生活をよくしているか」が重要です。

ーー各フロアを回ると、何度となく訪れたくなる気分になります。

時間の経緯とともに社会課題や技術は当然変化していきますが、時代ごとの社会貢献の仕方をうまく取り入れながら1階から4階までのフロアでお見せしています。

例えば2〜3階の「RiSuPia(リスーピア)」。近年、子供の理数離れが課題として浮かび上がっていることはご存知だと思います。その課題にいかに貢献できるか? そこで楽しく遊びながら算数・数学や理科に接することで親しみを持ってもらおうというコンセプトで立ち上げたエリアです。年間40万人も来場いただいています。

「RiSuPia(リスーピア)」は、理数の魅力とふれ合うための体験型ミュージアム。五感に訴えかける展示で、原理・法則を楽しみながら学ぶことができる 

――会社のイメージ全般を担っているとも言えますね。

お客様をきちんとお迎えすることはもちろんですが、会社を代表する意識をもつことをスタッフ全員に伝えています。創業から培ってきたもの、創業者から受け継いだDNAを大切にするーーその意識で日々、お客様と接しています。
(後編に続く)

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執筆者: 加藤陽之 - HANJO HANJO 編集長
コンピュータ関連の出版社からキャリアを始め、カルチャー雑誌などの編集長を歴任。これまで数多くの著名人をインタビューしてきた経験を活かし、HANJO HANJOでは中小企業経営者の深く掘り下げた話を引き出し続ける取材の日々。

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