■ニュース深堀り!■お土産やサニタリーに広がるハラル対応

2016年10月20日
ハラル対応の動きが中央から地方へ、食品からさまざまな商品・サービスへと展開するなかで、今後新たな商機が増えると予想される。そこに中小企業にとってのチャンスはあるのか? あるとすればまず何から始めればいいのか? 「やまだ屋」や「廣榮堂」などのハラル認証取得のサポートを手がけ、認証団体の選定・手続きなどのコンサルティングを行なうハラル・ジャパン理事の佐久間朋宏さんに話を伺った。
インバウンドの増加にともない、ムスリムによる訪日観光客も増え続けている。ジェトロが16年3月に発表した資料によると、世界の人口比率におけるムスリムの割合も増加傾向にあり、20年には24.9%に。13年の東・東南アジアにおけるムスリム消費者による食品・飲料市場規模は、2260億ドルと全体の17.5%におよんだ。このような状況の中で注目を集めているのがハラル認証だ。企業にとって認証取得はハードルが高いイメージがあるが、16年9月には広島「やまだ屋」のもみじ饅頭によるハラル認証が話題に。その前年には岡山「廣榮堂」のきび団子が、やはりハラル認証を取得するなど、その動きは中小企業にとって身近な所にも広がりつつある。

ハラル対応の動きが中央から地方へ、食品からさまざまな商品・サービスへと展開するなかで、今後新たな商機が増えると予想される。そこに中小企業にとってのチャンスはあるのか? あるとすればまず何から始めればいいのか? 「やまだ屋」や「廣榮堂」などのハラル認証取得のサポートを手がけ、認証団体の選定・手続きなどのコンサルティングを行なうハラル・ジャパン理事の佐久間朋宏さんに話を伺った。

ハラル・ジャパン 理事 佐久間朋宏さん

■ハラル対応は健康食品や化粧品、サニタリー製品にも拡大

――当初は加工食品と飲食店が中心だったハラル認証も、様々な商品・サービスへと広まっていると伺っています。中でも、特に普及が進んでいるものはありますか?

佐久間 まず、食品でいうと肉関係ですね。特にソーセージや焼肉、すき焼き、しゃぶしゃぶなど、ハラルの牛肉を出すレストランが増えています。自国にはない柔らかな和牛は、ムスリムの方にとって格別のようで、現地では日本の牛丼も大人気です。

 一方で、アルコール・豚由来成分不使用の化粧品、サプリメント、シャンプー、トリートメント、ソープ類などのサニタリー製品にもハラル対応が広がりつつあります。日本製品の品質と安全性への信頼は厚いので、食品から体内に摂取するもの、肌に触れるものへと広がってきたのは自然の流れといえますね。

 また、マレーシアやインドネシアといったアセアン諸国の女性は、化粧品に関して日本の美容トレンドを手本にしています。雑誌やインターネットで情報を得た、日本コスメへのあこがれは大きいですね。日本製は肌に優しく高品質というイメージも定着しています。さらに美白効果や健康サポートをうたったサプリメントも顕著ですね。

――その背景としてはアセアン諸国で富裕層が増え、美容と健康への意識が高まっていることがあるのでしょうか? 日本の美容トレンドがそのままアセアンのトレンドとなり、女性の間で美白志向が高まっていると聞きます。またマレーシアでは肥満が問題となっていますよね。

佐久間 美容と健康は今後のキーワードとなってくるでしょう。若い女性には美白サプリが人気ですし、肥満対策やビタミン系のサプリも売れています。これらが安心・安全・高品質な日本製となるとなおさらです。

 富裕層の増加による購買意欲の高まりも後押ししていますね。ムスリム向けの美容健康食品へのニーズは今後も増えると思いますが、ハラル対応に必要なトレーサビリティや製造ライン分別の問題などは、製造ラインが小規模な中小企業のほうが取り組みやすいのではないでしょうか。

――医療に関しては在日ムスリムの方も苦労されているイメージがあるようです。

佐久間 ムスリムの女性には女医が対応する必要がありますし、医療現場では日本語だと不安なので、英語でコミュニケーションしたいというニーズがありますね。ワクチンにしても、「何が入っているかわからないものを体内に入れることはできない」という人もいます。当然訪日観光客のムスリムの方でも、通訳や英語対応ができる女医が在籍する病院があれば喜ばれるでしょうね。

 また、日本の学校給食で困っているという、ムスリムの母親の話も聞きます。その方は学校が対応してくれないので、大学生になるまでお弁当を持たせていたそうです。ハラル対応の宅配弁当のサービスもありますが、訪日ビジネスマンや観光客向けで数自体少なく、学校給食レベルにまでは浸透していません。

16年9月にハラル認証を取得した「やまだ屋」のもみじ饅頭

■ハラル対応と並んで大切なのはマーケティング

――ハラルビジネスを成功させるためには、何が鍵となってくるでしょうか?

佐久間 ハラル認証さえ取れば売れるというものではありません。やはり、商品力があり、その国の人にとって魅力的でわかりやすいものであることが重要です。例えば、マレーシアやインドネシアで流行っているドラマやキャラクター、人気のお菓子をリサーチし、何が彼らに訴求するのかを理解する必要があるでしょう。

 また、販路についても駅や空港、バスターミナル、高速のサービスエリア、ドラッグストアなど、彼らの行動範囲に沿った展開が必要があります。Amazonや楽天市場など、オンラインで買い物ができればなおいいですね。

お土産では「廣榮堂」のきび団子も、やはりハラル認証を取得している

――ハラルビジネスでは食の分野が進んでいます。先行事例として考えると、どのような取り組みが成功を生んでいるのでしょうか?

佐久間 現地の味覚に合わせる、つまり現地の食文化を知ることが第一です。生魚を食べる習慣がない人にいきなり刺身を出しても食べられません。そこを理解し、和食のなかで食べられるものを提供する。むやみにその国の調味料を使えば良いというものではありません。加えて重要なポイントは、ターゲットが何度目の訪日かということです。リピーターになるほど外国人向けにつくったものではなく、本物の和食が食べたくなります。臨機応変な対応が求められますが、それこそ日本人のホスピタリティが発揮できる部分ではないでしょうか。

――最後にハラル対応を考える中小企業へアドバイスをお願いします。

佐久間 「ハラルは心の中にある」とよく言われるのですが、何をハラルとするかはその人次第です。日本に旅行に来て、自国にいるときと同じように厳密にハラルを守ろうとする人はあまり多くありません。旅先だから、日本だから大丈夫と自分のなかで線引きをしているわけです。

 なので、英語で原料表示をするなど、まずはムスリムフレンドリーというスタンスで始めてみてはどうでしょう。それだけでムスリムの方には喜ばれます。そこからしっかりマーケティングを行ない、ニーズに合う商品づくりの方向性を探っていく。そのためにはまずムスリムについて勉強し、理解していただきたいですね。
<Profile>
佐久間朋宏(さくまともひろ)さん
64年岐阜県下呂市生まれ。92年に株式会社中広に入社し、07年常務取締役管理本部長として名古屋証券取引所上場に尽力後、海外展開と地域活性化事業のため退社。12年に海外展開支援・インバウンド事業を開始し、非営利一般社団法人ハラル・ジャパン協会を設立。代表理事に就任する。地域経済活性のスペシャリストでマーケティングが専門。国内外に精通し、特に販路拡大とPRを得意とする。ハラルビジネスでは年間100本以上のセミナーや講演、企業研修を実施。
《尾崎美鈴/HANJO HANJO編集部》

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執筆者: HANJOHANJO編集部 - HANJOHANJO編集者
日本の中小企業の皆さんにとってビジネスのヒントになる「ヒトモノコトカネ」を探し出し、日々オリジナルな視点で記事を取材、編集してお届けします。中小企業の魅力をあますところなく伝えます。

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