動画でHR業界にパラダイムシフトを起こす! ビデオマッチングの革新性とは?(後編)

人材会社は「背中を押す存在」でなくてはならない

2019年7月5日
新卒採用に対し「動画」というまったく新しい方法で、企業と学生をバックアップするHRベンチャーが登場しました。昨年創業した「株式会社ビデオマッチング」です。人材業界にパラダイムシフトを起こす可能性のあるビジネスモデルはいかにして生まれたのでしょうか? 創業者・満居優さんに起業までの道のりを聞きます。
 2020年春卒業の学生を対象とする採用選考が解禁され、全国各地で企業の面接が始まりました。経団連の発表にもあったように、今後就活の現行のルールは廃止されることになります。今年4月に経団連と大学は、通年採用を推進することで合意しましたが、現場では新しい手法がまだ確立されていません。

 これまで、企業の新卒採用は、就活生がエントリーシートを書き、面接を通過し、内定を取る流れが一般的でした。しかし、新入社員の3人に1人が3年以内に離職している現状を考えると、その方式がなんらかのミスマッチを招いている可能性もあります。

 そんな新卒採用に対し「動画」というまったく新しい方法で、企業と学生をバックアップするHRベンチャーが登場しました。昨年創業した「株式会社ビデオマッチング」です。

 圧倒的な情報量の動画をSNSと組み合わせ、極めて日常的なコミュニケーションを企業と就活生の間に生み出すアプリ・サービスには、単なる就活ツールというレベルを超え、働くことそのものへの意識の変化を促す革新性も感じられます。

 企業と就活生をつなぐ新サービスをローンチした、株式会社ビデオマッチングの創業者・満居優さんに話を聞きます。後編では、ビデオマッチング創業への思いやビジョンに焦点をあてます。

企業と就活生をつなぐ新サービス「ビデオマッチング」をローンチした、株式会社ビデオマッチングの創業者・満居優さん

なぜ「嬉しく、生きる」を会社のビジョンにしたのか?

ーー会社のビジョンは「嬉しく、生きる」です。

「何のために自分は生きているのか?」「自分の存在価値を見出したい」――人生とはつまり、自分の役割や働きを認めてくれる相手や居場所を探し続けることではないかとずっと考えてきました。

どんな人でも大なり小なり根底に「承認欲求」があると思っています。大企業で部長をやっている人も、家に帰ると娘から煙たがられたり、はたまた奥さんが相手にしてくれなかったり(笑)。逆も然りで、家ではすごく幸せなんだけれども、会社ではパッとしない人もいる。幸福を感じる場所やシチュエーションは人それぞれだけれども、どこかしらで居場所を見つけ、承認欲求を満たすところがあるから、人は人でいられるのではないかなと思います。必要な人に必要とされている、必要な組織やチームに自分が求められているということを実感した時に、人間は幸せになれるのではないか。会社のビジョンである「嬉しく、生きる」は、それを表現した言葉なんです。

――人材業は人に新たな道筋を与える仕事とも言えます。

僕は18歳まで長崎で育ちました。高校時代、遊び呆けていたこともあって進学がうまく行きませんでした(笑)。ただ、そこからいろんな大人との出会いがあって、僕の人生は少しずつ変わり始めました。振り返って気付いたのは、自分にきっかけや気付きを与えてくれる大人や、背中を押してくれる人の存在の大きさでした。将来自分が社会人になった時に、そうしたことをビジネスとしてやっていきたいと考えるようになりました。なので、就職活動では人材業界と広告業界、コンサル業界を中心に受験しました。当時はこれらのどの業界も人にきっかけや気づきを与えるものだと思っていたからです。今思えば、いろいろと間違えていたなと思いますが・・・(笑)。で、結局、新卒時は広告会社に入りました。

ビデオマッチングの会社ロゴ。企業名は代表的なサービスである就活SNS「ビデオマッチング」と同じ。「とにかくユーザーに余計な頭を使わせたくないんです」(満居さん)

人材会社は「背中を押す存在」でなくてはならない

ーー何かのきっかけで人生は変わる。

広告会社で働いている時も「背中を押す存在」のことが頭に残っていました。入社して8、9年目の時です。自分がかわいがっていた後輩が辞めていったり、めちゃくちゃ楽しそうにしていた先輩が気づいたら退職していたりしました。そういったことを目の当たりし、人間の幸福度合いは環境次第だと徐々に感じるようになりました。

もうひとつ、僕の気持ちを動かした出来事がありました。とある会社に勤めていた定年間際の先輩が地方の団体に出向させられたのです。傍目には左遷にしか見えない人事でした。その先輩は、これから先の出世も見込めない、社内的には俗にいう「パッとしない人」に思われていたと思います。

しかし、地方の出向先でその先輩は見事に変わったんです。「あなたが来てくれることを心待ちにしていました!」「プロモーションをしたいのですが、全く知見がないので本当に助けてください!」と出向先から手厚い歓迎を受けたのです。それからというもの現地でアドバイザーとしてご活躍され、いろいろな案件を決めまくっては、「ありがとう、ありがとう」と感謝されていました。先方のトップからも直接、お礼を言われ、いわば「ローカルヒーロー」です。その先輩と飲んだ時、僕に「長いサラリーマン生活で今が一番幸せだ」と話してくれました。出向が明けて「もう一年延長させてくれ」と彼は会社に希望を出したほどです。しかしそれは社としては受け入れられませんでした。そうすると、彼はなんと会社を辞めて、その出向先だった地方に奥さんと移住することを選択したのです。

僕はこの先輩を見たとき、これだ! と思ったんです。人は承認欲求が満たされて初めて自分自身を得られる。彼は大企業では出世することはできませんでしたが、自身を必要としてくれた場所で開眼し、自分の存在意義を見つけることができたのです。

ーーその先輩にとって期せずして出向が自分を見つけるきっかけになった。

適材適所がうまくいけば、人の幸福度合いを高めることができるし、そのお手伝いができるのが人材の仕事だなと思います。「あなたはここにいたほうが必ず輝ける。だから転職してみませんか?」と言ってあげるのが本来人材会社が行うべき仕事だし、社内だと人事が行うことだと思うんです。

ただ、そうやって誰かが間に入って丁寧に「仲介」することは当然重要なのですが、そうではなく、「自身でこういうことをやってきました! 僕これができます!」と言って手を上げる人がいて、「ああ、待ってました! 出会いたかった!」という、必要としている人がいて、そうした「箱」を作り、マッチングの活発化を行うことの方がもっと重要だと思います。適材適所などというものは、本質的には人から与えられるものではないと思うからです。そして、互いが出会いやすい環境をどう演出するか? が知恵を使うポイントであり、これこそがまさに人材会社の役目だと思っています。

ーー誰かの人生になぜ興味を抱くのですか?

純粋に人のドラマを聞くのが僕は好きなんです。小説を読むのに近いのかもしれない。誰かと飲んだり食事をするときや面談の場面もそうなのですが、「この人はこういう生き方をしてきたから、こんな振る舞いをするんだな」という想像をよく巡らしています。

会社のメンバーと(中央が満居さん)

人とのつながりのなかで形作られてきた人生

ーー新サービス「ビデオマッチング」は、すでにいくつかの大手企業で採用が決まったとか。

タイミングがよかったんです。ある会食で偶然共通の話題をもつひとと意気投合したのですが、その後彼が働く会社の人事責任者を紹介してくれたんです。僕の人生は人との関わり、つながりのなかで形作られてきました。

ーー人材会社として自社のスタッフィングにも工夫をしていますね。

前職で副業のサービスをやっているときに学んだのは、最近の企業は「この業務について」という形でパーツごとに業務を切り分けて考えるようになってきたことです。個人でもスキルのある人は、大企業・中小企業に関わらず色々な案件をかけもちしています。フリーランス的な発想も増えています。業務委託という契約については、個人にとっては仕事のあり方が変わりつつあること、一方、企業にとっては固定費をおさえられることが背景にあります。業務を棚卸しして、切り出しを行うことで効率化が図れるのです。

会社の「見せ方、見られ方」は社長次第で大きく変わる

ーー「ビデオ」と「マッチング」。会社名=業務内容ですね。

とにかくユーザーに余計な頭を使わせたくないんです。これはサービス開発で大事にしているコンセプトでもあります。「ビデオ」「マッチング」→「あ! 動画のマッチング」とすぐにイメージが湧きますよね。格好をつけた社名にしたところで、何をやっている会社かよくわからない。まずは社名から誰もがぱっと聞いてある程度わかるものにしました。

ビデオマッチングという名前は外国でも通じます。コテコテな会社名は、将来の海外進出に向けての狙いもあります。

創業時に貼られた素っ気ない社札。しかしこの扉を開くと満居さんの起業への想いが詰まった世界が広がっている

ーー初めての社長業です。会社を代表する者として気づいたことはありましたか?

会社の「見せ方、見られ方」ですね。それは社長によって大きく変わる。とあるベンチャーの集まりで「満居さんの会社の売り上げはもう1億くらいいってるんですか?」と聞かれたことがありました。当時は起業したばかりだったので、もちろん売り上げなんて億どころか、全然立っていません(笑)。でも外部からはそれなりに見えていたのです。これはプラスの話ですが、マイナスになる場合もありえます。成長局面で間違ったブランディングをすると致命傷になりかねません。責任を自覚した瞬間でした。

ーー社長として物事に対応するには何が重要なのでしょう。

社長だからという立場上は実はあまり関係なく、個人として常に意識していることがあります。綺麗事を言いすぎても嘘くさくなるし、自由奔放に発言してもそれはちょっと違う。「塩梅(あんばい)」が大事なのではないかと思っています。僕はこの日本語が非常に好きです。自分にあっていると思うからです。社長って結構「極端」な方が多い気がするのですが、僕はどう頑張ってもそうなれない(笑)。極端で突っ走っている人は本当に自分にない個性だし、心から敬意を評しますが、頑張ってもなれないし、なろうと思ったこともない(笑)。しょっぱい、すっぱい、何か物足りないとき、絶妙な加減で心地よさを生み出すのが、塩梅です。塩梅にはそこに行き着くまでの「加減の調整」があります。仕事も人間関係も同じで、様々な対応や交渉の際に、引いたり足したりして調整していきますよね。塩梅はまさにそれです。僕はこの自身にあった塩梅スタイルでこれまで人と付き合ってきましたし、経営する上でもそれを大事にしています。

ーー人生で大切にしている言葉を教えてください。

やはり「嬉しく、生きる」です。社内でも、社長だからとか新入社員だからというのは禁句にして、個人の裁量を最大限に広げています。個人の承認欲求が最大限満たされる組織体にしたいです。

「楽しい」の先には「嬉しい」がある。でも「悲しい」の先にも「嬉しい」があったりします。「苦しい」ことでも乗り越えると「嬉しい」が待っていたりします。色々な感情の先にあるのが「嬉しい」だと思うんです。それくらいに「嬉しい」は深い言葉だと思います。会社のビジョンも座右の銘も同じです。「嬉しく、生きる」に代わる言葉はありません。

★関連リンク

  • 動画でHR業界にパラダイムシフトを起こす! ビデオマッチングの革新性とは?(前編)

    これまで、企業の新卒採用は、就活生がエントリーシートを書き、面接を通過し、内定を取る流れが一般的でした。そんな新卒採用に対し「動画」というまったく新しい方法で、企業と学生をバックアップするHRベンチャーが登場しました。「株式会社ビデオマッチング」です。企業と就活生をつなぐ新サービスをローンチしたビデオマッチングの創業者・満居優さんに前後編2回に分けて話を聞きます。

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執筆者: 加藤陽之 - HANJO HANJO 編集長
コンピュータ関連の出版社からキャリアを始め、カルチャー雑誌などの編集長を歴任。これまで数多くの著名人をインタビューしてきた経験を活かし、HANJO HANJOでは中小企業経営者の深く掘り下げた話を引き出し続ける取材の日々。

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