アパレル業界を変えるIT戦略! 熊本発ベンチャー、シタテルが描く「服の未来」【Vol.1】

シタテルが再生する地方の中小縫製工場ネットワーク

2019年6月26日
アパレル業界は、メーカー、工場ともにテクノロジー化が遅れており、在庫問題や工場稼働の不均衡、手作業による工数の増加など様々なビジネス上の課題を抱えています。そんななか、服を作りたい人と縫製工場を橋渡しする衣服の小ロット生産サービス「sitateru」が注目を浴びています。優れた技術力を持つ縫製工場の「時間・技術・資源」のデータ管理を行い、服を作りたい人と縫製工場を橋渡しする、衣服の小ロット生産サービスです。「sitateru」を提供しているのは、熊本発ベンチャーのシタテル株式会社。アパレル業界の課題をテクノロジーでどう解決するのか? シタテルCTOの和泉信生さんに語っていただきます(全3回シリーズ)。
 アパレル業界は、メーカー、工場ともにテクノロジー化が遅れており、在庫問題や工場稼働の不均衡、手作業による工数の増加など様々なビジネス上の課題を抱えています。昨年『誰がアパレルを"生かす"のか』がベストセラーとなりましたが、まだ業界として解決に至っているとは言えません。
 そんななか、服を作りたい人と縫製工場を橋渡しする衣服の小ロット生産サービス「sitateru」が注目を浴びています。優れた技術力を持つ縫製工場の「時間・技術・資源」のデータ管理を行い、服を作りたい人と縫製工場を橋渡しする、衣服の小ロット生産サービスです。
 「sitateru」を提供しているのは、熊本発ベンチャーのシタテル株式会社。2014年の創業よりテクノロジーの力で業界が抱える課題の解決に取り組み、大きく変化するアパレル業界のニーズに合ったサービスを開発・提供しています。それだけでなく、多くの地方の縫製工場などをネットワークし、発注者につなげることで、地方創生にも寄与しています。
 アパレル業界の課題をテクノロジーでどう解決するのか? アカデミック出身で異色の経歴を持つシタテルCTOの和泉信生さんに語っていただきます(全3回シリーズ)。

シタテル株式会社 CTO 和泉信生氏

 シタテルが地方の中小の縫製工場を再生することに取り組んでいる、と評価していただける機会があるのはとても光栄なことです。しかし、私達はそれを目的としてビジネスをしている、というと少し違うのかなと感じています。

 自分で服を作りたい、ブランドを始めたい。そんな夢を持ったことがある人は多いのではないでしょうか? アイディアはある、デザインも決めた、さぁ作ろう! 多くの人はここで壁にぶつかります。服を縫ってもらうにはどこに頼めばいいのだろう? インターネットで検索する、電話帳を探す。

 シタテルがビジネスをスタートした頃は、服を作ってくれる人や企業を見つけることが困難でした。日本中には今より多くの縫製工場がありましたが、そこにたどり着く情報が整備されていませんでした。

 「服を作りたいけど作れる環境が手に入らない」――そんなシンプルな課題からシタテルはスタートしました。大きなアパレルブランドは服を作る環境を持っていますし、事業を始めたばかりで声がかかるわけもありませんから、少ない枚数を作りたいけど作れるところがなくて困っているお客様から相談を受けることになりました。少ない枚数でも対応してくれるように工場に相談して回ると、忙しいから、面倒だからと断られることも多くありました。でも、面白そうな取組だと興味を持ってくださったり、忙しくない時期なら対応できると言ってくださる工場が見つかり始めました。

 会社を始めたばかりで営業も生産管理もとても少ない人数でやらなければならならず、直接会って商談したり、大量の電話に対応したりすることができなかったので、インターネットで依頼を受けてチャットのような仕組みで相談に対応するようにしました。

 小さくスタートしたビジネスですが、続けていくと中規模のアパレルブランドでも生産や生産管理をアウトソーシングしたいというニーズが見えてきました。何者かわからないスタートアップの企業に生産を依頼するのは勇気がいることだったと思いますが、いくつかの企業が試してくださいました。失敗もありましたが、知識を蓄えより良い生産リソースを提供できるように、工場を開拓し、プロセスをシステム化してきました。最近では大きなブランドや有名な企業のユニフォーム、ノベルティを依頼される機会も増えてきました。依頼に応えるために更に多くの工場やサプライヤーとネットワークを拡大しています。国内だけではなく、中国やベトナムの工場とも連携するようになりました。

「sitateru」の導入事例より/「sitateru」を導入した「PORTVEL(ポートヴェル)」では、ものづくりが複雑化するにつれて増える情報量をシタテルが一元管理し、工場との交渉を代行。本業以外に割いていた業務時間を大幅にカット

 シタテルは「服を作りたい人に服を作れる環境を提供する」衣服生産のプラットフォームです。生産のプラットフォームとして、小さな数量から大きな数量までを適切にこなせる必要があります。小さな数量をこなすには、日本国内の地方に存在している中小の縫製工場の協力が必要不可欠でした。シタテルが地方の縫製工場を再生しているのではなく、シタテルというプラットフォームに興味を持ち参加してくださった方々の手によって再生が主導されていて、そのおかげでシタテルがビジネスを成立させられているというのが正直な感想です。

 シタテルがプラットフォームとして成長していくことで、これまで服を作りたいけど作れなかった人たちが、衣服生産の顧客として参加するようになります。顧客の量が増えればもっと多くの縫製工場にご協力いただくことが必要になります。これからも生産の方々と関係を築きながら、より多くの人が「服を作れる」未来を目指して事業に取り組んでいきたいと考えています。

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執筆者: 和泉信生 - シタテル株式会社 CTO
2009年に博士(情報工学)を九州工業大学大学院情報工学府にて取得。同年4月から9年間熊本県の崇城大学情報学部助教として教育・研究活動に従事。「市民共働のための雨水グリッドの開発」などの学術研究を行う一方、アプリを企業と共同開発するなどエンジニアリングを実社会に応用するソフトウェア開発者としても活動。2017年4月、シタテル技術アドバイザーに就任。2018年4月、シタテル株式会社入社。主な著書に『Unity4マスターブック―3Dゲームエンジンを使いこなす』(カットシステム)などがある。

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