おもてなし規格認証 2019 最高位「紫認証」取得事業所に聞く 3(前編)~株式会社ワンダーテーブル ロウリーズ・ザ・プライム リブ 赤坂店~

伝統の継承とブランド価値の向上はいかにして達成されたのか?

2019年6月21日
「おもてなし規格認証」の最高位である「紫認証」に、2019年の第一弾として5事業所が認定されました。紫認証にいたった施策や取り組みはどのような内容なのでしょうか? そして生産性向上はどのように実現されたのでしょうか? 表彰を受けた紫認証取得者の皆さんにお話をうかがいます。第3回は「株式会社ワンダーテーブル ロウリーズ・ザ・プライム リブ 赤坂店」(東京都)を紹介します。
 「おもてなし規格認証」の最高位である「紫認証」に、2019年の第一弾として5事業所が認定されました。紫認証は、認証機関から推薦を受けるとともに、顧客・従業員・地域社会の満足を促進することにつながる取り組みや、さらに、従業員の人材育成・業務効率化・顧客満足の向上につながる独自の取り組みの実施について確認された事業所に対して付与されるものです。

 紫認証にいたった施策や取り組みはどのような内容なのでしょうか? そして生産性向上はどのように実現されたのでしょうか? 表彰を受けた紫認証取得者の皆さんにお話をうかがいます。第3回は「株式会社ワンダーテーブル ロウリーズ・ザ・プライム リブ 赤坂店」(東京都)を紹介します。

 「ロウリーズ・ザ・プライム リブ 赤坂店」は、株式会社ワンダーテーブルが運営するアメリカ発祥のプライムリブ専門店。18年前に国内1号店を出店したゆかりの地である赤坂に2017年、オープンしました。プライムリブは“高品位なリブロース”のこと。アメリカンスタイルのローストビーフと言い換えるとわかりやすいかもしれません。約 300 坪の店舗スペース、5mの天井高を活かしたゆとりある空間。そして利用目的に応じて選べる複数タイプのテーブルなど、細部に至るまで居心地の良さを追求しています。お客様の目の前で仕上げるサラダやプライムリブ、印象に残る接客や雰囲気を提供することで、記念日などの特別な食事だけでなく、ビジネスユースの場所として訪れる顧客ニーズに応えています。世界に数あるロウリーズのなかで、赤坂店が傑出した存在になり得た背景には何があったのでしょうか? ロウリーズ・ザ・プライム リブ 赤坂店支配人の横溝慎一さんに話を聞きます。

2019年度「おもてなし規格認証 紫認証」を取得した「ロウリーズ・ザ・プライム リブ 赤坂店」支配人の横溝慎一さん。お客様の目の前で仕上げるサラダやプライムリブ、印象に残る接客や雰囲気を提供することで、記念日などの特別な食事だけでなく、ビジネスユースの場所として訪れる顧客ニーズに応えている

赤坂店は世界で一番のロウリーズを目指した

ーーおもてなし規格認証の最高認位である「紫認証」を取得されました。シンボルマークは富士山です。頂に登ったという感はありますか?

特別な何かに対してというより、継続してやってきたことが認められたと考えています。ブランドも赤坂店も「20年愛される店」という目標を掲げています。そこはブレずにやってきました。

赤坂店では特にサービスの点でホスピタリティに強いお店を目指してきました。2017年のオープンから1年半という早い段階で認めていただき、感慨深いものがあります。

ーーロウリーズ開業の地である赤坂に再び戻ってきました。

ロウリーズが日本に進出したのが2001年です。旧赤坂店(ビル建て替えにより閉店)は新店の向かいにありました。私は副支配人で着任しその後、支配人になりました。会社のなかでも思い入れの強い特別なレストランでしたので、支配人になれたことは私の中で大きな喜びでした。その後、新しい試みとして恵比寿店ができ、そこに私も移りました。

新店舗としてロウリーズが上陸した地である赤坂に戻ることに、特別な感情を抱きました。当時のお客様に再びお会いできること、アメリカ大使館の前でアメリカンレストランを開くことーーそれらは私に強く訴えかけてきました。

赤坂店オープンにあたっては、世界で11ある専門店のなかでも、ブライムリブが最も美味しく感じられるレストランにしようと意識しました。お皿づくりであったり照明であったり、様々な工夫をこらし本当にこだわった内容になったと自負しています。サービスも内装もすべての点においてロウリーズブランドを引っ張っていけるものにしようと決めたのです。

ーー「東京一は世界一」ということですね。

アメリカのロウリーズ(業務提携)は創業80周年になりますが、いまでは日本でできたメニューも逆輸入されています。サービスに関しても本国に逆輸入されたものもあります。赤坂店はそういう意味でも世界で一番のロウリーズになりえるのです。

「赤坂店オープンにあたっては、世界で11ある専門店のなかでも、ブライムリブが最も美味しく感じられるレストランにしようと意識しました」(横溝さん)

継承される伝統と文化――アメリカと同じサービスを提供する

ーー席数が248もある広いフロアがしばしば満席になっていると聞きます。

その理由のひとつはかつての顧客が戻ってきたことだと思います。地元や近隣の企業・大使館の方々です。赤坂店に皆様が求めていたものが変わらず継承されていたことが評価されたのだと思います。

ーー一度離れた顧客を取り戻すというのは大変なことです。

お客様から「戻ってきてくれてありがとう!」と声をかけていただいたときには、この仕事をやってきて本当によかったと感激しました。

ーー約17年のブランドの歴史のなかで大変な時期もありました。

狂牛病のときはオーストラリアの牛肉でプライムリブを提供したこともありました。低迷期でした。しかしアメリカの牛肉輸入再開でお客様が徐々に戻ってきました。さらに骨つき肉が認可されてアメリカとまったくおなじ状態で提供できるようになりました。

ーー本国の味とサービスが日本でも体験できることのメリットはどんな点ですか?

3世代にわたってご愛顧いただいているお客様もいらっしゃいます。50年前の海外転勤時にビバリーヒルズ本店でご食事された方が帰国され、息子さんやお孫さんとご来店される。そういうことが日常の中で数多くあります。いまもロサンゼルス旅行ツアーなどではロウリーズが組み込まれているほど、「アメリカの味といえばプライムリブ」なんです。そういった歴史をベースに今もなお進化しているのがロウリーズなんです。

ーー老舗には伝統と革新があります。変えないものと変えるものは何ですか?

メニューで変わることのないのは、プライムリブの焼き方をはじめ、お肉の品質に関わるすべてです。そして「シルバーカート」によるサーブや「オリジナル・スピニング・ボウル・サラダ」など、ワクワクするプレゼンテーション。このふたつは守り続けています。

プラスのサービスの部分では、笑顔で迎え入れるロウリーズの楽しい雰囲気です。アメリカ同様、このホスピタリティは日本でも継承していきたい。

一方、お店のロケーションが変わるとお客様の層も変わります。その変化に適した表現を心がけています。

シャンデリアが美しく映えるフロア。「サービスも内装もすべての点においてロウリーズブランドを引っ張っていけるものにしようと決めたのです」(横溝さん)

日本独自のきめ細やかなサービスによってブランド価値を高める

ーーアメリカと日本で大きく変わる点はあるのですか? 

アメリカでは接待という文化がないため、プライベート利用のお客様がほとんどです。ファミリーでのご利用では、お肉とサラダを食べてあまったらドギーバッグに包んで家にお持ち帰りになる。そんなカジュアルな使い方が多いのです。ドギーバッグも実はロウリーズが発祥といわれています。

赤坂店は立地条件もあり、平日は接待で使われるお客様が7割ほどになります。アメリカとは利用動機がまったく違うのです。そのため日本では高単価のサービスが求められ、お肉とサラダだけでなく、コース仕立てのものが好まれます。フランクななかにも高単価のサービスに対応できる表現にしています。

ーー日本では、ビジネスとファミリーユースのふたつのパターンに対応しないといけないのですね。

利用用途が週の曜日で変わるのが当店の特長です。ビジネスで平日に利用されるお客様が、土日に家族を連れてご来店されるケースが多くあります。ロウリーズはビジネスとファミリー、ふたつのサービススタイルが可能なお店なんです。平日にはコースとワインでフォーマルなサービス。一方、週末にご家族でいらっしゃる際には、小さなお子様にもお肉を切り分けるようなカジュアルさを表現します。

ーー家族を連れてきたいと思わせるお店なんですね。料亭だとこうはいきません。

もともとのブランドコンセプトはファミリーフレンドリーです。アメリカでは、小さなお子様がレストランマナーを学ぶ場所ということでも知られています。もちろんそれは日本でも同じです。

名物となっている「オリジナル・スピニング・ボウル・サラダ」は、サラダボールを回転させ、頭上に持ち上げたカップからドレッシングを注ぐパフォーマンスです。ファミリーでお越しの場合、お子様にも一緒にボールを回していただきます。「It‘s Show Time!」といった演出で家族全員にお楽しみいただいています。そういったサービスがビジネスシーンからカジュアルへと雰囲気を変える効果をあげています。

「シルバーカート」によるサーブや「オリジナル・スピニング・ボウル・サラダ」など、ワクワクするプレゼンテーションは守り続けている

ーーグルメサイトの口コミを見ると、味のよさはもちろん、雰囲気のよさに言及しているユーザーが多いようです。

平日も土日もベースになるサービスの仕方は変えていませんが、接待利用かどうかはお聞きするようにしています。それは情報共有し、席順のことなど細かな配慮も含めて、お客様の用途に応じたサービスを心がけています。

求められるのは食事だけではない

ーー店内サービスではお客様とのコミュニケーションが高い評価を得ています。

ロウリーズではサービス担当マネージャーをフロアに配置しています。赤坂店はふたりいます。特にジョージというガーナ出身のマネージャーはこの役割を象徴する人間です。彼のホスピタリティ、サービスの意識はとても高く、その役割に対して「ゲストリレーション」というポジションを作りました。

テーブルのサービスをするサーバーや経営陣ももちろんお客様に対応していますが、ゲストリレーションはお客様との距離を縮めてロウリーズの楽しみ方を常に伝える、そういったスペシャルな業務になります。

――さきほどジョージさんにお会いしましたが、達者な日本語で次から次へと冗談を繰り出す、まさにエンターテイナーですね。

ジョージは開業以来17年間、ずっとその役割を担っています。ベーシックな部分は私たちが押さえ、プラスの部分の楽しみ方はゲストリレーションが担当することで、全体としてのロウリーズが成立しています。

ジョージはフロアスタッフの指導にも力を注いでいます。そのなかで「ロウリーズの楽しみ方」をサーバーも理解し、やがてお客様に正しくロウリーズを伝えられるようになります。店舗全体を見渡して楽しみを形にする彼の存在のおかげで、ロウリーズの特別感がお客様に伝わっているように思います。

ロウリーズのホスピタリティを象徴するのが「ゲストリレーション」のジョージさんだ。深い接客によってロウリーズの特別感をお客様に伝える要となっている(写真:ジョージさんと横溝さん)

ーーAIが職を奪うという報道をよく目にしますが、深い接客は人間でなくては無理かもしれません。

ジョージはある意味、ロウリーズのマスコットキャラのような存在といえます。「ミスター・ロウリーズ」なんです。予約をいただく際にも「ジョージさん、今日はいらっしゃいますか?」と尋ねるお客様がたくさんいらっしゃいます。「ジョージにもう一度会いたい!」というお子様もいらっしゃいます。

本国では80年続いているロウリーズですが、日本では20年で定着しました。料理を提供する以外でお客様の心に残るようなこと、印象付けること、そのひとつがプラスのサービスです。そこに特化した人間は必要だと考えています。

ーー食べる前にすでにそれだけでお金を払っていいや、という気にさせるサービス、つまり付加価値ですね。

副支配人の橋本は「ロウリーズが好きで好きで」が高じて当社に入りました。「異動するなら、社員を辞めてアルバイトとしてロウリーズに関わることを選ぶ」とまでいっています(笑)。彼女だけでなくマネージャー陣や現場スタッフも、新しいロウリーズにチャレンジして、ホスピタリティやサービスを向上させたいと思っています。

ーーディズニーランドのような部分があるように感じました。

それはよくいわれます。求められるのは食事だけじゃないんです。

ーー「ES(従業員満足)=CS(顧客満足)」が体現されています。社員がこのお店にい続けたいという要因はどこにあるのでしょうか?

ロウリーズというブランドはとてもわかりやすいブランドだと思います。「何を食べに行こう?」となったときに「お肉」。ひとに紹介するときでも「面白いパフォーマンスがあるから連れて行ってあげよう」。シンプルであるがゆえに自分たちのさじ加減ひとつでお店をよくすることにつながるからかもしれません。

ーー経験を積み重ねる喜びもあるのでしょうね。

サーバーはパフォーマンス等でお客様との距離を縮めやすい仕事です。デビューして1ヶ月の女性が客単価1万円を超えるレストランで、お客様から「また来るね」と声をかけていただける。ロウリーズでプロフェッショナルになることができれば、やがてブランドの顔になります。やりがいのある働き場所だと思います。
(後編に続く)

「おもてなし規格認証」の最高位である「紫認証」。顧客・従業員・地域社会の満足を促進することにつながる取り組みや、さらに、従業員の人材育成・業務効率化・顧客満足の向上につながる独自の取り組みの実施について確認された事業所に対して付与される

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★【連載】おもてなし規格認証 2019 最高位「紫認証」取得事業所に聞く

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執筆者: 加藤陽之 - HANJO HANJO 編集長
コンピュータ関連の出版社からキャリアを始め、カルチャー雑誌などの編集長を歴任。これまで数多くの著名人をインタビューしてきた経験を活かし、HANJO HANJOでは中小企業経営者の深く掘り下げた話を引き出し続ける取材の日々。

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