おもてなし規格認証 2019 最高位「紫認証」取得事業所に聞く 2(後編)~株式会社ワンダーテーブル モーモーパラダイス 歌舞伎町本店~

社員・アルバイトによる主体的な行動が、お客様への意識を高める

2019年6月12日
「おもてなし規格認証」の最高位「紫認証」取得者インタビューの第2回。前編に引き続き、「モーモーパラダイス 歌舞伎町本店」支配人の竹花将孝さんにお話を聞きます。後編では、アルバイト主体のチーム活動など人材育成についてフォーカスします。
 「おもてなし規格認証」の最高位である「紫認証」に、2019年の第一弾として5事業所が認定されました。紫認証は、認証機関から推薦を受けるとともに、顧客・従業員・地域社会の満足を促進することにつながる取り組みや、さらに、従業員の人材育成・業務効率化・顧客満足の向上につながる独自の取り組みの実施について確認された事業所に対して付与されるものです。

 紫認証にいたった施策や取り組みはどのような内容なのでしょうか? そして生産性向上はどのように実現されたのでしょうか? 表彰を受けた紫認証取得者の皆さんにお話をうかがいます。第2回は「株式会社ワンダーテーブル モーモーパラダイス 歌舞伎町本店」(東京都)を紹介します。

 モーモーパラダイスは、高品質でリーズナブルなテーブルオーダー型スタイルのしゃぶしゃぶ・すき焼き専門店。店内はゆったりと寛げるモダンな和の雰囲気を演出し、厳選された肉・野菜を最適なスープとタレでお客様をお迎えしています。歌舞伎町本店は国内外約50店舗を展開するブランドの旗艦店で、国内のみならず多くの外国人客を迎え入れていることでも知られています。後編では引き続きモーモーパラダイス歌舞伎町本店支配人の竹花将孝さんに、アルバイト主体のチーム活動など人材育成を中心に話を聞きます。

2019年度「おもてなし規格認証 紫認証」を取得した「モーモーパラダイス歌舞伎町本店」。モーモーパラダイスは、高品質でリーズナブルなテーブルオーダー型スタイルのしゃぶしゃぶ・すき焼き専門店。国内外約50店舗を展開するブランドの旗艦店で、国内のみならず多くの外国人客を迎え入れていることでも知られている

アルバイト主体のチーム活動はなぜ可能なのか?

ーー紫認証認定の理由のひとつが「アルバイト主体のチーム活動を通じた主体的な行動の促進」です。いま歌舞伎町本店ではアルバイトが60名ほどいますね。

「現場力」という考え方が弊社にはあります。それを身につけるために「HSJ(ホップ・ステップ・ジャンプ)プログラム」を10年前から続けてきました。Hを初めの段階としてお店を点数化し現場力を高めていくツールです。そのなかに「アルバイトが主体的にミーティングを開くことができる」という項目があります。難易度があがってJになると、「お店での行動、取り組みに対して主体的に自分たちでチームを作ってミーティングを開き、取り組みを決めて他のスタッフに落とし込む」という基準を設けています。当店では「トップランナー」というアルバイトリーダーを選任するほか、サービスチーム、教育チーム、商品チームというチームにわけてそれぞれリーダーをつけます。ミーティングを月2回実施し、取り組みを全体に発信して進捗をはかっています。これらを「アルバイト参加型チーム制度」と呼んでいます。

ーー社員やアルバイトの採用基準を教えてください。

「賢い=かしこい」社員です。「か」は感謝できる人、「し」は親切な人、「こ」は好奇心のある人、「い」は飲食が好きな人。これが昔からある採用基準です。

ーー社員・アルバイトのうち外国人の比率はどれくらいですか?

厨房も含めて約半数が外国人です。

ーーそれほど外国人が多いと社員教育が大変なのでは?

最初は言葉の壁が大変でした。しかし人材についてはあきらめずに辛抱強く教育してきました。やがて彼ら/彼女らも日本語を流暢に話せるようになっていきます。さらに英語も話すことのできる、特に言語に優れたスタッフも出てきます。次にトレーナーに引き上げます。そのなかで、日本語がままならない社員でもスタッフ同士で言語能力を高めていってくれています。そのやり方が功を奏して、今ではホールは外国人スタッフの方が日本人より多くなりました。

「モーモーパラダイス歌舞伎町本店」支配人の竹花将孝さん。社員の採用基準を尋ねると「 『賢い=かしこい』社員です」と答えてくれた。「か」は感謝できる人、「し」は親切な人、「こ」は好奇心のある人、「い」は飲食が好きな人

ーーモーモーパラダイスの何に惹かれて応募するのでしょうか?

私自身もびっくりしたのですが、入社希望者も口コミサイトをみて応募しているんです。そこで「本当にいいお店なんだ」ということを確認している。

外国人については、日本語を勉強することと仕事において自分の言語力を活かすというふたつが日本で生活する大きな目的になっています。その両方を備えている働き場所ということで当店を選んでいるようです。それも口コミです。「母国語がモーモーパラダイスでは使えるから」という志望動機が一番多いですね。

ーーお客様に評価されているお店は従業員が働きやすいお店でもあるのですね。

「トリップアドバイザーをみて応募しました」という社員・アルバイトが2割もいます。日本に住んでいて英語がしゃべれる人もたくさんいるはずですが、そういう人を狙って募集をかけるのは難しい。でもトリップアドバイザー経由で「ここなら自分の英語を活かせる」と自分から応募してくれるのです。そして次に自分の友達を紹介してくれる。その循環が「かしこい」人の採用を可能にしています。

フィロソフィー経営を軸にしたぶれない社員教育

ーー社員教育はどういう流れで行われるのですか?

まずフィロソフィー(企業哲学)をしっかり伝えます。心についての教育から始めるのです。フロアにすぐ出すのではなく、その前に4〜6時間、入念に勉強する時間を設けています。「トレーニングライン」という入社からステップアップするための教育ツールを使っています。外国人スタッフ用もあり、もちろん内容は同じです。レベルがあがるごとに中間チェックを行い、次の段階に向かうという流れです。

――フィロソフィーをどのようにして社員・アルバイトに浸透させているのですか?

皆が小冊子を携帯しています。多言語対応にもなっているので、外国人スタッフももっています。フィロソフィーはミッション、ビジョン、バリューズの3つで構成されています。

バリューの項目で1番に掲げられているのは「「自分を大事にする」です。飲食店だから「お客様を大事にする」が1番にきそうですが、弊社では「自分を大事にする」なんです。健康に心がける、高い目標を持って自分を磨く、家族に感謝するーーメンタルな部分も身体的な部分もしっかりすること。自分自身の成長からまず始めよ、と考えています。それがないと他者に心を向けることはできません。そしてともに働く仲間のことをよく理解していないと、お客さまに対して実力を発揮できません。

役員・部長が週に一回、ウィークリーメッセージを順繰りに発信しています。そのメッセージを各店舗のフィロソフィートークという朝のミーティングで伝えたり、会議で議論したりします。例えば「あなたはどういう風に健康にこころがけていますか?」とひとりが投げかけ、それに対して別の人がコミットメントを出すことで内容を深めていきます。いまではウェブ上でのEラーニングもありますので、いつでもフィロソフィーをスマホでみることができます。

社員教育で大切にしているのが「フィロソフィー経営」だ。社員全員がそれを記した小冊子を携帯している。多言語対応にもなっているので、外国人スタッフももっている

ーーアルバイトの「バイトテロ」動画やモラル低下が問題になっています。モーモーパラダイスでは、アルバイトがなぜそんな主体的に業務に貢献できるのでしょうか?

フィロソフィー経営が中心にあることが大きいと思います。役員から店の支配人、昨日入ったアルバイトまで、皆同じフィロソフィーを自分自身に落とし込んでいます。フィロソフィーが働く上での軸になること、困難に直面した時に立ち返る場所だと誰もが認識しているのだと思います。

危機管理という点では、精神面だけでなく雇用契約のときに「SNSの使い方」についても記載、サインしてもらっています。ただフィロソフィー経営では心の部分が非常に強く育まれます。「炎上させるような社員はうちにはいないね」と若い人が言ってくれる環境が店ごとにできている。それが弊社の企業文化になっています。

ーー「うち」(私たち)という意識が生まれる理由はどこにあるのでしょうか?

バリューズのなかに「仲間を大事にする」という項目があります。代表取締役社長の秋元、取締役、支配人など役員や管理職が全社員と面談することで、経営層と現場の壁をなくすということが会社の方針です。各店舗でも定期的にマネージャーと現場とで一対一面談を行っています。評価という側面だけでなくコミュニケーションを高める目的があります。そうやって生まれる信頼関係が弊社の強みであると思います。

ーー人手不足はありますか?

それはやはりあります。しかしそれよりも離職率を下げることが先だと考えています。飲食業界の平均の離職率が50パーセントのなか、当店は10パーセントを切っています。

外国人スタッフの声を生かし、お客様の満足につなげる

ーーダイバーシティ経営が叫ばれる中、いち早く外国人を採用してきました。その経験から得たものはありますか?

外食業界では外国人はキッチン周りのサブ的な雇用が主だったと思います。お客様と接点を持たない場面が多かった。しかし外国からのお客様が多く訪れるうちのようなお店では、外国人のほうが日本人より優れている要素がたくさんあります。国籍の垣根をなくして、日本人であろうが外国人であろうが、接客をしっかりと意識する人を上にあげていくことで、お客様の信頼を得ることができます。いまではリーダー7人のうち外国人は2人になりました。日本語と英語が話せることは最低限必要ですが、3か国語を話せることが今は普通です。

ーー外国人スタッフから様々なアドバイスがあるそうですね。

ひとりでご来店されるお客様に席をご案内するとき、日本人の感覚だと端の方で静かに食べられる席をご案内しがちですよね。私も着任当時は「おひとりさまのときは端っこの席をご案内してください」と伝えていました。でも私の話を聞いた外国人のレセプションスタッフは「それではお客様がかわいそうじゃないか」と言うのです。ひとりで来られて、お店でもひとりぼっちにしたらかわいそう。だからあえて、賑やかな広い席をご案内するべきだと。私は「絶対お客様は嫌がるよ」と返したのですが、お客様が逆に喜んで受け入れるのを目撃することになりました。文化や考え方の違いはこんなところで役に立つんだと感心させられました。

お店のノウハウは外国人社員が大きな役割を担ってくれています。外国の方へのおもてなしやサービスの仕方、考え方。外国人社員の教育という点ではいいアドバイザーにもなってくれています。

いち早く外国人を採用し、彼らからのアドバイスをお客様対応に活かしてきた。(左)「フィロソフィー」小冊子の英語版 (右)日本語・英語併記の「食品アレルギー表」

ーー2020に向けての目標は?

いまお客さまは6対4で海外の方が多くなっています。それぞれの伸び率は、海外が130パーセント、日本は105パーセントです。オリンピック時期には8割方が外国からのお客様になると予想しています。それに対応して言語対応のできるスタッフをもっと増やさなければいけません。

一方で海外のお客様が増えると、逆に日本のお客様の居心地が悪くなる恐れがあります。「ここは外国人向けのお店だ」という印象を与えるかもしれません。外国の方だけに頼ることは私たちの意図するところではありません。日本のお客様をもっと伸ばすために考えなければならないことはたくさんあります。たとえば日本人に特化した接客をするスペシャリストを配置して、日本人のお客様にアウェイ感を感じさせないようにすることも選択肢のひとつです。

ーーこの先、おもてなし規格認証をどのように活用していきますか?

歌舞伎町というと少し特別なイメージがついているかもしれません。今後ウェブサイトにも「紫認証取得」をうたっていくことによって、「紫認証=信頼できるお店」という外部の評判を高めていきたいですね。

これから日本にいらっしゃる海外客は確実に増えます。おもてなし規格認証を得ることで、「日本の安心できるお店はここです」という風に海外に伝わればいいなと思っています。

「『紫認証取得』をうたっていくことで「紫認証=信頼できるお店」という外部の評判を高めていきたい」(竹花さん)

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★【連載】おもてなし規格認証 2019 最高位「紫認証」取得事業所に聞く

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執筆者: 加藤陽之 - HANJO HANJO 編集長
コンピュータ関連の出版社からキャリアを始め、カルチャー雑誌などの編集長を歴任。これまで数多くの著名人をインタビューしてきた経験を活かし、HANJO HANJOでは中小企業経営者の深く掘り下げた話を引き出し続ける取材の日々。

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