おもてなし規格認証 2019 最高位「紫認証」取得事業所に聞く 2(前編)~株式会社ワンダーテーブル モーモーパラダイス 歌舞伎町本店~

和の象徴=「しゃぶしゃぶ・すき焼き」で、料理と店をコト消費してもらう

2019年6月10日
「おもてなし規格認証」の最高位である「紫認証」に、2019年の第一弾として5事業所が認定されました。紫認証にいたった施策や取り組みはどのような内容なのでしょうか? そして生産性向上はどのように実現されたのでしょうか? 表彰を受けた紫認証取得者の皆さんにお話をうかがいます。第2回は「株式会社ワンダーテーブル モーモーパラダイス 歌舞伎町本店」(東京都)を紹介します。
 「おもてなし規格認証」の最高位である「紫認証」に、2019年の第一弾として5事業所が認定されました。紫認証は、認証機関から推薦を受けるとともに、顧客・従業員・地域社会の満足を促進することにつながる取り組みや、さらに、従業員の人材育成・業務効率化・顧客満足の向上につながる独自の取り組みの実施について確認された事業所に対して付与されるものです。

 紫認証にいたった施策や取り組みはどのような内容なのでしょうか? そして生産性向上はどのように実現されたのでしょうか? 表彰を受けた紫認証取得者の皆さんにお話をうかがいます。第2回は「株式会社ワンダーテーブル モーモーパラダイス 歌舞伎町本店」(東京都)を紹介します。

 モーモーパラダイスは、高品質でリーズナブルなテーブルオーダー型スタイルのしゃぶしゃぶ・すき焼き専門店。店内はゆったりと寛げるモダンな和の雰囲気を演出し、厳選された肉・野菜を最適なスープとタレでお客様をお迎えしています。歌舞伎町本店は国内外約50店舗を展開するブランドの旗艦店で、国内のみならず多くの外国人客を迎え入れていることでも知られています。外国人客における日本の食文化の体験ニーズに応えるとともに、安心して食事を楽しめるよう多言語対応スタッフが常駐し、きめ細やかなコミュニケーションが高い評価を受け、その口コミがお客様を招き寄せるという好循環を生んでいます。外食業界では初となる紫認証を得たモーモーパラダイス。日本経済の鍵を握る業界のトップランナーはどんなゴールを目指してきたのでしょうか? モーモーパラダイス歌舞伎町本店支配人の竹花将孝さんに話を聞きます。

2019年度「おもてなし規格認証 紫認証」を取得した「モーモーパラダイス歌舞伎町本店」支配人の竹花将孝さん。モーモーパラダイスは、高品質でリーズナブルなテーブルオーダー型スタイルのしゃぶしゃぶ・すき焼き専門店。国内外約50店舗を展開するブランドの旗艦店で、国内のみならず多くの外国人客を迎え入れていることでも知られている

外食業界初の「紫認証」が意味すること

ーー外食業界では初となる「おもてなし規格認証紫認証」です。

社長の秋元巳智雄をはじめ、社員全員が喜んでいます。外食産業として初めての取得だということが喜びをより一層大きくしています。業界関係者から注目されていますし、お客様をご紹介いただいたりもしています。

これまで社内の基準のなかでお店の評判などを測ってきましたが、経済産業省創設のおもてなし規格認証に評価いただいたことで、会社全体としておもてなしやホスピタリティ、インバウンドや付加価値などに目を向けられる体制になったように思います。

ーーおもてなし規格認証をなぜ取得しようと思ったのですか?

弊社は以前から「フィロソフィー(企業理念)経営」を軸にしてきました。そのなかでもホスピタリティを特に重要視しています。そういった社内の基準だけでなく、社外の基準でどれほどの評価を得られるのだろうか? という意識をもったことがきっかけです。

弊社で一番初めに作ったブランドが「モーモーパラダイス」です。海外を含め弊社ブランドの中で店舗数も一番多く、なかでも歌舞伎町店はリニューアルを行い、世界のお客様を日本のおもてなしでお迎えすることを日々レベルアップしている最中です。ぜひこのお店で挑戦してみたかったのです。

ーーモーモーパラダイスは1993年創業です。25年を超える年月の間に様々な課題を克服してきました。

一番大きかったのは08年のリーマンショック以降の外食低迷の時期です。そして2000年代初頭の狂牛病問題も外食産業にとって相当の衝撃を与えました。モーモーパラダイスはオープン当初は1500円台で安価の食べ放題という業態だったため、米国産の牛肉がまったく使えなくなり厳しい状況になりました。

その後ブランドリニューアルを何回か行い、新たなコンセプトで始めてから3年目になります。今回のリニューアルでは、もう一度、日本のおもてなし、日本食を見つめ直すことにしました。その象徴として、すき焼き、しゃぶしゃぶを中心に据えました。価格は最低価格帯が2800円ですので、やや高めに見えるかもしれません。しかし、廉価の競合店が多く出てきているなかで、私たちは商品やサービスに特化したブランド力で差別化を図ることを選びました。

外食業界では初となる「おもてなし規格認証紫認証」を取得した「モーモーパラダイス歌舞伎町本店」。「世界のお客様を日本のおもてなしでお迎えすることを日々レベルアップしています」(竹花さん)

ーー新たなブランドコセンプトはどういう設定にしたのですか?

以前は20代前半の若い学生さんをターゲットにしていました。彼ら・彼女らも30歳前後になりましたし、会社のグループ内には「鍋ぞう」という若い世代向けのブランドもできました。そこでターゲットを新しく設定し直し、30〜40代のより高額所得層をメインにしました。そして海外からのお客様です。日本の3倍から5倍のスピードで良いものを求める傾向があります。

新たな客層に向けメニューや価格帯を変えました。そして満足度をさらに高めるために、スープとタレ、品質管理を徹底して「食べ放題なんだけれどここまでやってもらえる!」というサービスやホスピタリティを意識しました。

店内の席数も以前より100席も減らしました。お客様の満足度をあげるためにゆっくりとできる席間にしたのです。

一方、海外のお客様は「価格よりも日本食」という目的でご来店されるので、それに対して安心・満足していただけるような環境を心がけました。内装や什器類もモダンな和のテイストをとりいれて、世界のお客様に納得してもらえるブランドをイメージしました。

「How to eat」。コト消費として日本食を楽しんでもらう

ーー大広間だけだったのが、100席も減らしてカップルや家族用の席を用意すると、客単価をあげる必要がありますね。

当日の回転率よりもリピート率をあげることを目指しました。口コミやSNS、トリップアドバイザーでの評価は常に意識しています。それがブランド力を強化することに直結するからです。おかげさまで2018年度来店客数は前年対比113%でした

ーー「爆買い=団体客」以降のトレンドを想定していたのですね。

海外客はもともとツアー客が多かったのですが、今後は個人客が増えるだろうと予測しました。かつては全フロアーをツアー対応で使っていましたが、現在はダイニングフロアーを個人客用、ツアーのお客様は宴会スペースという風に振り分けています。

ーーインバウンドではどんな点がお客様に受けているのですか?

圧倒的に多言語対応ですね。言葉の通じるスタッフがいることが集客の最大の理由です。海外旅行者の悩みで最も多いのが、言葉が通じないことです。それを当店は解消しています。メニュー表記は中国語、韓国語、英語になっています。

もうひとつは、店員が最初の一皿目を作ってさしあげるサービスーー「しゃぶしゃぶはこうして食べるんですよ」――です。しゃぶしゃぶやすき焼きを食べるために足を運ばれた「目的来店」のお客様に対して、スタッフが本当の食べ方をきちんと伝えています。自分なりでない本当の日本文化に触れることで大きな喜びを実感されているのだと思います。

ーー「リアル日本食」を体験していただくということですね。ワクワクして食べるお客様の姿が思い浮かびます。

海外には「出汁文化」がありません。私たちには日本の「出汁文化」を知っていただくという目的があります。しゃぶしゃぶのスープは初め、出汁のみなので、いわば味がない状態です。しかし鍋に具材をいれていくなかで楽しみながらスープを育てていく。最初にお肉を入れてエキスが出た状態で次はお野菜。そういう流れや意図をお伝えします。

「こまめにアクをとって雑味は除いてくださいね」といった言葉もかけます。そうしないと、アクだらけのなかずっと食べ続けることになってしまいます。アクとりという用具を海外の方は何のためにあるのかわかっていらっしゃらない。アクをもちあげて「これって食べられるの?」と聞かれるぐらいです。アク取りの必要性を伝えると驚かれる方が多いですね。でもそういった細やかさに、イメージする日本を感じ取られているようです。

インバウンドのお客様に対して意識しているのが「リアル日本食」を体験していただくこと。「目的来店のお客様に対して、スタッフが本当の食べ方をきちんと伝えています」(竹花さん)

――「〆(しめ)のお食事にこだわります」とうたっていますね。

食事の最後には「〆」が待っています。スープを育てて最後にそのスープを堪能するという日本ならではの食文化です。「おいしいお鍋」というブランドコンセプトは材料だけでなく調理の行為すべてを通じて表現されるものです。それらをきちんと伝えるためにお作りサービスは重要な役割を持っています。

きめ細やかな対応、その口コミが次のお客様を招き寄せる

ーー店構えも訪日客の期待に応えていますね。エレベーターで地上から7階に上がった時にパッと雰囲気が変わります。新宿歌舞伎町の喧騒から日本庭園が目の前に広がり、まるでハリウッド映画のワンシーンのようです。

上がってこられたお客様が「こんなお店があったんだ!」と声をあげられることがあります。オープン時はみなさんよくタランティーノ監督の『キルビル』みたいとおっしゃっていました。

ーー訪日客は記念写真をとったり、店内全体を楽しんでいますね。

「コト消費」を強く意識しています。体験型サービスがこれからの運営において鍵を握るであろうことは、おもてなし規格認証をとろうと考えた背景にもありました。

ーートリップアドバイザーの新宿歌舞伎町レストランランキングで第1位です(2019年4月時点)。

来客数を左右するのが口コミです。外国のお客様の約 6 割が口コミです。インスタとフェイスブックと口コミサイト、トリップアドバイザーがその中心となります。口コミで評判もついてきますので、スタッフからお客様にしっかりとアピールをして、いい口コミをいただける満足度の高いおもてなしをこころがけています。

ーーお客様の予約手段もウェブにシフトしてきていますね。

ウェブを通して予約をされる方がどんどん増えています。いまのところネット予約の割合は3割ほどです。食べログの口コミ評価をみてそこから受けるイメージで予約される時代になってきました。サービスの本質を高めていかないと予約獲得ができない。そういう意識は社内で共有できるようになりました。

来客数を左右するのが口コミだ。「スタッフからお客様にしっかりとアピールをして、いい口コミをいただける満足度の高いおもてなしをこころがけています」(竹花さん)

ーーお客様向けのIT化ではどんな施策を行いましたか?

最初に手をつけたのはiPadを使った多言語メニューです。まだ言葉の対応ができるスタッフがいない頃です。メニューの他に食べ方「How to eat」も掲載しました。いまはお客様の言語に対応できるスタッフがいるので、デジタルメニューは必要なくなりました。当店では、英語、中国語、韓国語、タイ語がメインで6ヶ国語に対応できます。

ウェブ上でのツールを使ったお客様アンケートも行っています。インバウンドのお客様にはタブレットを用意しています。アンケートは1ヶ月に2回、定期的に集約して社内で共有したり、分析内容により取り組み課題とすることもあります。

ーーバックヤードでもITを活用していますね。

昨年、複数の予約サイトからの予約を一括管理できるシステムを導入しました。ダブルブッキングしないうえに、顧客情報も管理できます。予約数もかなり向上しました。

人件費の削減につながりましたが、私たちはITにこだわっているわけではありません。ひととひととのつながりを減らすよりは、できる限りひとがひとを接客することのほうが弊社の掲げるフィロソフィー経営には合っているからです。
(後編に続く)

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★【連載】おもてなし規格認証 2019 最高位「紫認証」取得事業所に聞く

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執筆者: 加藤陽之 - HANJO HANJO 編集長
コンピュータ関連の出版社からキャリアを始め、カルチャー雑誌などの編集長を歴任。これまで数多くの著名人をインタビューしてきた経験を活かし、HANJO HANJOでは中小企業経営者の深く掘り下げた話を引き出し続ける取材の日々。

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