なぜあなたの会社のRPAは業務効率に直結しないのか?

現場や情シス任せにしてはいけない/JAPAN IT WEEK

2019年6月7日
業務効率化の打ち手の一つとして、定型的な業務を代行するRPAが注目されています。しかし、導入したものの、思うように効率化できていないというケースは意外なほど多いのも事実です。RPA導入において失敗しやすいポイントについてレポートします。
 最新IT技術を駆使した製品やソリューション技術が集結する「JAPAN IT WEEK【春】前期」に続き、2019年5月8日〜10日の期間で「JAPAN IT WEEK【春】後期」が東京ビッグサイトにて開催されました。

 今期のJAPAN IT WEEKは、「ソフトウェア&アプリ開発展」「クラウドコンピューティングEXPO」「ビッグデータ活用展」「モバイル活用展」「データストレージEXPO」「通販ソリューション展」「情報セキュリティEXPO」「店舗ITソリューション展」「Web&デジタルマーケティングEXPO」「AI・業務自動化展」「データセンター展」の11展で構成され、合わせて1180もの企業が出展。また、各業界の最新動向に詳しい識者によるセミナーが多数開催され、課題解決のヒントを得ようとする聴講者で賑わいました。

 今回の記事では5月8日に開催されたセミナー「ユーザー事例で学ぶ、失敗しないRPA導入の進め方」(講師:小ノ島尚博さん/ユーザックシステム(株)取締役 RPA統括マネージャー)より、効率的なRPA導入において失敗しやすいポイントについてレポートします。

ユーザックシステム(株)取締役 RPA統括マネージャーの小ノ島尚博さん。これまで750社以上の企業にRPAを導入してきた

RPAは安定性が最重要項目

 業務効率化の打ち手の一つとして、定型的な業務を代行するRPA(Robotic Process Automation /ロボティック・プロセス・オートメーション)が注目されています。

 定型業務を機械化し、本来人間がやるべき業務に注力することを目的として用いられるRPA。しかし、RPAを導入したものの、思うように効率化できていないというケースは意外なほど多いのも事実です。

 これまで750社以上の企業にRPAを導入してきた経験を持つ小ノ島さんは、「RPAを入れたからといって何でもうまくいくわけではありません。逆にうまくいかないという声も多く聞いています。原因はさまざまですが、最も重要なのは安定性に問題があるということです」と話します。

 RPAにおける安定性とは、テスト過程ではうまく動いていたものの、本番になると動かなくなることを指しています。

 「本番で動かなくなるエラーは開発PCと実行PCの環境が異なることによって起きやすくなります。特に現場開発では画像による動作指定がよく使われますが、画面のレイアウトや解像度、色などが少し変わるだけでも動かなくなることがあります」と小ノ島さんは説明し、「画像による動作指定は直感的に操作できますが変化に弱い。ある程度の知識が必要ですがタグによる指定が最も安定性が高いと言えます」と続けました。

「RPAを入れたからといって何でもうまくいくわけではありません。最も重要なのは安定性に問題があるということです」(小ノ島さん)

RPAを誰が開発するかも重要

 また、誰がRPAを開発するかも重要なポイントであると小ノ島さんは強調します。

 RPAは利用部門で開発・導入されることが多いのですが、利用部門は業務をよく知っている反面、開発スキルが低いと小ノ島さんは指摘。開発時のドキュメントなどが整備されていないと、開発者がいなくなったときに仕様が分からなくなってしまい、結局使われなくなることがあるそうです。

 一方、情シスや開発会社に依頼をすれば高いスキルで開発をすることができますが、現場業務に対する知識が乏しいため、開発に時間がかかるというデメリットがあります。小ノ島さんは「現場任せ、情シス任せにせず、各部門が連携して開発に当たる必要があります」と注意を促しました。

 それでは効率よく開発を進めるにはどうすればよいのでしょうか? 小ノ島さんは一つの方法として「RPA化したい作業を洗い出し、手順を見える化すれば誰が見ても作業内容を把握することができます。見える化することで不要な手順が浮き彫りになり、RPA化しなくても効率を上げることが可能だと判明することもあります」と提案しました。

 「中小企業でも5〜10分の小さな業務をRPA化することで、年間1万時間の削減を目指すことができます。まずは、どの作業にどれくらいの時間を必要としているのか把握するために、記録することから始めてみてはどうでしょうか」(小ノ島さん)

誰がRPAを開発するかも重要なポイント。「現場任せ、情シス任せにせず、各部門が連携して開発に当たる必要があります」(小ノ島さん)

失敗しないRPAの選び方とは?

 RPA関係のサービスは数が多すぎてよくわからない・・・という声があるかもしれません。では失敗しないRPAの選び方はあるのでしょうか?

 「まずは展示会や各企業の行っているセミナーで実物を見ることです。また、多くの企業は無料体験版を提供していますから、これを導入してみるのも良いでしょう。導入事例を集め、自社の業務に合うかどうか分析することも有効です」と小ノ島さんはアドバイスしました。

 さらにRPAを選ぶ際には、まず安定性を第一に考え、さらに導入しやすさや保守の充実が一つの判断基準になると話す小ノ島さん。とにかく稼働の安定性がRPAの品質に直結することを強調しました。

 小ノ島さんはRPAに過剰な期待は禁物であると強調します。「RPAは定型業務を自動化し、効率化を図るツールです。だからといって、大量のデータを扱うとエラーが多くなり、処理時間も長くなります。RPAで何をどこまで自動化するのかをよく検討し、場合によってはRPAだけでなく専用ツールやプログラムを開発することも必要でしょう」と締めくくりました。

 業務効率化として活躍が期待されるRPAですが、開発方法や使い方によっては効率を下げてしまう可能性もあります。どの業務をRPA化するのが効果的なのかをよく検討し、適切な開発・導入を行うことが求められます。

最新IT技術を駆使した製品やソリューション技術が集結する「JAPAN IT WEEK【春】後期」。合わせて1180もの企業が出展。最新の製品やサービスに触れようとする業界関係者で会場は熱気に包まれた

(レポーター/HANJO HANJO編集部 川口裕樹)

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執筆者: HANJOHANJO編集部 - HANJOHANJO編集者
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