<シリーズ>「地方創生」2期へ! 1期を検証する ①

第1回 日本版CCRCの現状と今後

2019年5月31日
令和を迎えた2019年、地方創生は1期5年の最終年となり、国は2期に向け有識者会議を開催、自治体も次期地方総合戦略の策定に動いています。1期は各年1000億円の地方創生関係交付金を投じるなど、財政支援を地方創生版・三本の矢の一つとして多額の予算が次ぎ込まれましたが、果たしてその大盤振る舞いに見合った成果は出ているのか。水津陽子さんの新シリーズでは、地方創生の1期の現状と課題を分析、2期に向け必要なものは何かを探ります。
 令和を迎えた2019年、地方創生は1期5年の最終年となり、国は2期に向け有識者会議を開催、自治体も次期地方総合戦略の策定に動いています。
 
 1期は各年1000億円(事業規模で2000億円)の地方創生関係交付金を投じるなど、財政支援を地方創生版・三本の矢の一つとして多額の予算が次ぎ込まれましたが、果たしてその大盤振る舞いに見合った成果は出ているのか。

 本シリーズでは地方創生の1期の現状と課題を分析、2期に向け必要なものは何かを探ります。

秩父版CCRCモデル事業、公民連携で整備を進めるサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)と地域開放型交流拠点施設「秩父市花の木交流センター(仮称)」イメージ図  画像提供:秩父市

地方創生戦略、第一期の現状と課題とは?

 はじめに地方創生(正式名称「まち・ひと・しごと創生総合戦略」)の骨子を確認しておきましょう。

 地方創生の目指すところは、① 東京一極集中の是正、② 若い世代の就労・結婚・子育ての希望の実現、③ 地域の特性に即した地域課題の解決。その実現に向け、「しごと」と「ひと」の好循環をつくり、それを支える「まち」の活性化を図るというもの。

 基本目標の柱は4つ、施策は多岐に渡りますが、要は地域資源を活かし新たな産業や雇用を生み、地域へ新たな人の流れをつくり、その好循環を支えるまちの活力や住みやすい社会環境を作ること。

 第1回では、この中から「地方への新しいひとの流れをつくる」にある地方移住の推進政策の一つ、「生涯活躍のまち(日本版CCRC)」を取り上げます。

「生涯活躍のまち(日本版CCRC)」の現状と課題

 CCRCとはContinuing Care Retirement Community(継続ケア付き定年退職者コミュニティ)の略で、モデルとなった米国には約2000ヵ所のCCRCがあり、約75万人の居住者がいるとされています。

 日本版CCRCは中高齢者が希望に応じて地方やまちなから移住、地域活動などを通じ健康でアクティブな生活を送り、必要に応じて医療や介護を受けることができる集住コミュニティで、地方創生では「生涯活躍のまち」構想に位置づけられます。

 日本版CCRCに取り組む自治体は地方版総合戦略を策定、地域再生計画の認定を受け、生涯活躍のまち形成事業計画を作成、事業では ① 社会的活動、② 居住環境の整備、③ 継続的なケア、④ 移住支援等の取り組みが求められます。

 日本版CCRCは従来の医療・介護を前提とした高齢者施設等と異なり、まだ健康な中高年層をターゲットとして入居者を募り、移住先では施設で完結せず、地域で就労や生涯学習、ボランティアなど、様々な社会活動に積極的に参加、地域の支え手としても活躍してもらうことを想定しています。

 ただこうした理想に反し、構想を策定しても思惑通りに物事が進まない地域も少なくありません。

 事業者に話を聞くと、日本版CCRCは構想策定段階のコンサル事業には旨味があるものの、実際の事業には多くの手間と時間を要すため、民間事業者にはリスクが大きく、コスパが悪いといいます。

 先駆例としては「ゆいま~る那須」や「シェア金沢」、「ゴジカラ村」などが挙げられ、国のマニュアルでも先進事例として紹介されていますが、これらはいずれも構想の前から既に存在していたもので、日本版CCRCとして完成されたモデルはまだありません。
その一つのモデルとなるのか、今回は埼玉県秩父市が東京都豊島区と連携して推進する「秩父版CCRC」の取り組みを見てみましょう。

豊島区と連携した秩父版CCRC

 2018年9月秩父市は豊島区と連携し、秩父版CCRCを進めることを発表しました。

 きっかけは2014年に日本創成会議が2つのまちを消滅可能性都市に指定したことです。これを受け1983年から姉妹都市関係にあった両自治体のトップが2015年6月電話会談を行い、連携して日本版CCRC構想に取り組むことで合意。翌年3月には秩父版CCRC検討会議が発足。2つの自治体が連携した日本版CCRCの実現に向けが動き出しました。

 秩父版CCRCは2つの事業を柱として、一つは高齢者だけでなく、若者や子育て世代を含む幅広い世代をターゲットした移住・交流促進事業で、移住だけでなく、二地域居住や交流の拡大などに取り組むという総合事業。

 地方移住で気がかりな点としてよく聞くのが、「交通の利便性」や「地域の人間関係」、「娯楽の少なさ」、「買い物の不便さ」などです。

 秩父市と豊島区は西武池袋線・秩父線で結ばれ、池袋駅と西武秩父駅はいずれも始発駅、終着駅になります。座って移動できるほか、特急列車を使えば約80分で行き来が可能です。容易に行き来ができる地の利があり、お試し居住や農体験など様々な交流を重ね、じっくり移住先の適性を見定めることができます。

 もう一つは、西武秩父駅から徒歩約15分にある市営花ノ木住宅の未利用部分の市有地を活用、公民連携でサ高住と地域開放型の交流拠点施設を整備。豊島区など都市部のアクティブシニアを呼び込むモデル事業です。

 事業では交流拠点施設の整備は秩父市が行いますが、施設の運営はその隣接地に民間事業者がサ高住を新規で建設し、両施設の運営を行うものです。民間事業者の公募では「ゆいま~る那須」などを手掛ける株式会社コミュニティネットが選定され、2019年3月木造2階建て新築20戸の建設着工に至りました。

 先に建設が進められていた交流拠点施設「(仮称) 秩父市花の木交流センター」は2019年10月オープン予定で、サ高住は11月入居開始に向け5月より池袋で入居者募集説明会が始まっています。

日本版CCRCは、地方への移住を呼び込めるか?

 日本版CCRCの目的の一つは地方移住の推進です。しかし、事業者に聞くと実際に移住者を呼び込み、長期に渡り採算性の見込める地域は限られるといいます。

 秩父市の場合、豊島区と連携することでダイレクトに豊島区民に移住や交流を促すアプローチが可能で、この点は他にない強みです。

 また豊島区が区民を対象としたアンケートでは、一般的な移住に関し、「移住してみたい」または「どちらかというと移住してみたい」と回答した人は32.7%、そのうち秩父市へ「移住してみたい」または「どちらかというと移住してみたい」は20.1%で、一定のニーズがあることが分かりました。

 地方移住に関しては移住したものの、地域になじめないなどの理由で再び都会に戻ってしまう離脱者も多く、移住者の定着率は地域の受入れ体制やサポートによって大きく異なります。

 秩父市では市民を対象とした「移住・交流アンケート」で、市外から移住者を受入れることに対して市民からは「積極的に受け入れるべき」42.4%、「どちらかというと受け入れるべき」40.5%、合せて82.9%の賛成を得ました。

 地域活性化の成否を分ける要因の一つに、よそ者を受け容れる地域のオープン性がありますが、今後事業が進展していく中で、どのような成果が得られるのか。

 地域開放型の交流拠点施設では、サ高住の居住者だけでなく、地域の住民やこれから移住を考える人たちも利用できるコミュニティレストランや交流スペースも設けられます。運営をノウハウに長けた民間事業者が担うことで、秩父にもこれまでにない交流や活気が生まれることはほぼ間違いないと思います。最大の課題はそれをいかに総合事業へ波及していけるか。地域連携型の日本版CCRCモデル、秩父版CCRCの真価が問われるところです。

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執筆者: 水津陽子 - 地域活性化・まちづくりコンサルタント
合同会社フォーティR&C代表、地域活性化・まちづくりコンサルタント。地域資源活かした地域ブランドづくりや観光振興など、地域活性化・まちづくりに関する講演、企画コンサルティング、執筆を行う。2014年地方創生法に関連し衆議院経済産業委員会に参考人出席。著書に「日本人だけが知らないニッポンの観光地」(日経BP社)などがある。

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