それはもうすぐ! 自動運転がかなえる未来の交通

自動運転バスのビジョン、ダイナミックマップによる安全走行/JAPAN IT WEEK

2019年5月15日
話題の自動運転。特に実現化が望まれているのがコミュニティの足となるバスの分野です。深刻な運転手不足により、都市部ですら減便が行われています。そんななか自動運転は人手不足時代の交通インフラを改善する鍵を握っています。
 人手不足解消の一手として期待を集めているのが、人の代わりにさまざまな仕事をこなすことができる最新のIT技術。そんな最新IT技術を駆使した製品やソリューション技術が集結する「JAPAN IT WEEK【春】前期」が2019年4月10日〜12日の期間、東京ビッグサイトにて開催されました。

 そんな最新IT技術を駆使した製品やソリューション技術が集結する「JAPAN IT WEEK【春】前期」が2019年4月10日〜12日の期間、東京ビッグサイトにて開催されました。

 今回のJAPAN IT WEEKは、「IoT/M2M展」と「組込みシステム開発技術展」の2展で構成されており、合わせて620もの企業が出展。また、業界トップによる最新技術を紹介するセミナーも多数開催されました。

 今回の記事では4月10日に開催されたセミナー「自動運転の実用化に向けて」(講師:佐治友基さん/SBドライブ株式会社 代表取締役社長 兼 CEO、高田広章さん/名古屋大学 大学院 情報学研究科教授 付属組込みシステム研究センター長)より、現在研究開発が進められている自動運転技術の現状と課題についてレポートします。

免許返納、車離れが進む今こそ自動運転バスを

SBドライブ株式会社 代表取締役社長 兼 CEOの佐治友基さん。「赤字や人手不足の解消に自動運転バスが有効だと考えています」

 まずSBドライブ株式会社の佐治さんが「いざ実用化へ!自動運転バスの現在。」というテーマで講演を行いました。

 SBドライブは「UPDATE MOBILITY」をテーマに掲げ、主に自動運転バスの開発を手がけている企業です。自動運転バスにこだわっていることについて、佐治さんは「地域バスは80%が赤字です。しかし、駅からラストワンマイルの交通手段としてのバスは必需品であり、実際に6万台の乗り合いバスに対して42億人を輸送しているというデータが出ています。また、免許の返納や若者の自動車離れによってバスの需要が増加することが予想されます。赤字や人手不足の解消に自動運転バスが有効だと考えています」と話しました。

 しかし、自動運転バスの導入が人手不足や赤字の解消にどのように役立つのでしょうか? 佐治さんは「SBドライブの役割は車両とシステムをパッケージ化して提供することです。自動運転は安全性を管理するために、車両の状況を監視する必要があります。これは地域の交通事業者の役目です。あくまでも自動運転は単なる交通手段に過ぎず、本来の目的は人間中心の生活を送ることです。そして主役は交通事業者であるべきだと考えています」とビジョンを明らかにしました。

AI技術を応用すれば有人バスの安全性も高まる

セミナー会場に詰めかけた大勢の受講者。自動運転への関心の高まりが伝わってくる

 自動運転バスは具体的にどのような仕組みで運用されるのでしょうか。佐治さんの解説によると、車内にカメラを設置し、乗客が座っているか立っているか、発車しても安全かをAIが判断するそうです。また、走行中に突然乗客が移動するなどのいわゆる「ヒヤリ・ハット」が起きた場合は監視者にアラームで通知し、遠隔で安全を確認することができます。1人の監視者が複数台の車両を同時に監視できるため、人件費の削減が期待できそうです。

 また、カメラやAIの技術は自動運転以外にも応用できると佐治さんは話します。「例えば人が運転するバスで、走行中に人が転びそうになることがあります。実はバスの事故の33%は車内での転倒などによる怪我だと言われてます。このようなヒヤリ・ハットがどこでどれだけ起きたか、データや映像で客観的に示すことができるので、車内事故を未然に防ぐのに役立ちます」

 最後に佐治さんは「自動運転は今後の交通に革命を起こしうる技術です。完全な自動運転の実現にはまだ数年かかりそうですが、2025年には乗合バスの1万台が自動運転、残りの5万台が人の運転になるのではないかと予測しています。ネットワーク化された使いやすいインフラ作りと、ITによる安全性向上によって、過疎地に自動運転バスを導入していければと思います」と締めくくりました。

自動運転車の安全性を高めるダイナミックマップとは?

名古屋大学 大学院 情報学研究科教授 付属組込みシステム研究センター長の高田広章さん。自動運転に向けて、地図上に動的な情報をレイヤーで表示できるデータベース「ダイナミックマップ」の活用を提案している

 続いて名古屋大学 大学院 情報学研究科教授 付属組込みシステム研究センター長の高田さんが「自動運転の最新動向~安全性の考え方とダイナミックマップの必要性~」というテーマで講演を行いました。

 自動運転で特に注目されるのが安全性の確保です。その安全性を高めるために、自動運転技術はAIやセンサーなどのさまざまなIT技術が用いられます。しかし、高田さんによるとこれらの技術には性能の限界があるため、完全な安全性を実現することが難しいそうです。さらにセンサー等の機器はソフトウェアで管理するため、センサーが増えるたびにソフトウェアの再設計が必要になり、時間やコストがかかることが問題であると高田さんは指摘します。

 そこで高田さんは「ダイナミックマップ」の活用を提案しています。ダイナミックマップとは通信技術を活用し、地図上に動的な情報(車や人の動き、交通状況、道路情報など)をレイヤーで表示できるデータベースのことです。センサーの補助情報として使われるダイナミックマップは最新の情報がリアルタイムで配信されるため、仮にセンサーが増えても最低限のソフトウェア改修で済みます。高度な自動運転システムのキーコンポーネントになるだろうと高田さんは期待を寄せています。
 
 最後に高田さんは「自動運転を実現するためにさまざまな技術がありますが、何を使うのが最適なのかを見極めるのは難しく、安全性にはまだまだ多くの課題が残ります」と締めくくりました。

 人の命を載せて走る自動運転車には、人が運転する自動車よりも高い安全性が求められます。今回のセミナーで紹介された最新技術がさまざまな課題を解決し、自動運転車が日常的になる日が訪れることが期待されます。

最新IT技術を駆使した製品やソリューション技術が集結する「JAPAN IT WEEK【春】前期」。2019年4月10日〜12日の期間、東京ビッグサイトにて開催された

(レポーター/HANJO HANJO編集部 川口裕樹)

★関連リンク

★JAPAN IT WEEK【春】特集

  • なぜあなたの会社のRPAは業務効率に直結しないのか?

    業務効率化の打ち手の一つとして、定型的な業務を代行するRPAが注目されています。しかし、導入したものの、思うように効率化できていないというケースは意外なほど多いのも事実です。RPA導入において失敗しやすいポイントについてレポートします。

  • 星野リゾートが実現させた、ITによる生産性向上と顧客満足の両立

    あらゆる業界で顧客満足度と生産性を両立させることが求められています。その課題解決に期待されているのがITの活用。その先頭ランナーと言えるのがリゾートホテル業界を代表する星野リゾートです。いかにすればITを日常の中で仕組み化できるのでしょうか? その秘訣を紐解きます。

  • 顧客行動の分析が小売ビジネスを成長させる!

    ECにおいては顧客行動がデータ化され活用されている一方、実店舗の顧客行動を理解することは困難だと考えられてきました。しかし実店舗におけるビジネスのパフォーマンスを向上させるためには顧客行動分析が欠かせません。今回の記事では、小売店舗におけるデータ解析の重要性についてレポートします。

  • IoT導入は低コストで効果が見えるものを!

    人に代わってさまざまな仕事をこなすことができる最新のIT技術。本日の記事ではIoT技術を活用した人手不足の解消を提案する2社に注目。最新技術がもたらすさまざまなメリットについてレポートします。

★おすすめ記事

  • IoTを本気で日本に普及させる! 通信インフラを牽引する異色ベンチャー

    「IoTの時代が到来した」。ここ数年来、この言葉を幾度となく耳にしてきました。しかし騒がれているわりには、日本でIoT製品を目にすることはあまりありません。日本のIoTビジネスがなかなか進展しない理由のひとつが、通信インフラが整っていないことにあります。この状況を変える通信サービスで注目されているベンチャー企業があります。昨年、起業した「センスウェイ株式会社」です。

  • 地方創生、こんなITが欲しかった! 地域経済の好循環をウェブで実現させる会社

    地方創生の切り札と目されるIT。都市部の大企業では、AI、ロボット、IoTが導入され、様々な業務を自動化しつつありますが、地方にはまだその恩恵は行き渡っていません。しかし、3Dプリンタやドローンの登場など、テクノロジーの民主化がその壁を打ち破ろうとしています。それら最新のITをウェブの技術を使って、ローカル・コミュニティーの活性化につなげようとするソフト開発会社があります。東京大学在学中に創業し、今年で11年目を迎えた「株式会社リアルグローブ」です。

  • ICT活用で地域観光の課題を解決する!

    2020に向けてさらに加速が期待されるインバウンド。世界最大級の旅の展示会「ツーリズムEXPOジャパン」では様々な議論が交わされましたが、今回はICTを軸に交わされたトークライブの採録をお届けします。地域の観光で徐々に取り入れられている「旅のデジタル化」。その最前線として岐阜県(下呂、高山)の例から考えます。

  • 着地型ツアーのダークホース? 「観光タクシー」の可能性

    インバウンドを加速させるために、着地型旅行や個人旅行をより活性化することが求められています。しかし旅先における二次交通の不在がそれを阻んでいます。二次交通の代表であるタクシーがサービス業としての役割を果たせるなら? 観光需要を掘り起こす道筋を高速バスマーケティング研究所代表の成定竜一さんが探ります。

執筆者: HANJOHANJO編集部 - HANJOHANJO編集者
日本の中小企業の皆さんにとってビジネスのヒントになる「ヒト・モノ・カネ・情報」を探し出し、日々オリジナルな視点で記事を取材、編集してお届けします。中小企業の魅力をあますところなく伝えます。

JAPAN IT WEEK 2019新着記事

  • 起点は顧客! これまでとは違う戦い方で差別化を図る

    どんなに優れたデジタルマーケティングを採用していても、デジタル技術を利用したサービスは模倣が容易です。デジタル分野においては業界の垣根が溶け始めているため、これまでとは違う戦い方が求められています。収益につなげるためには、既存事業をサービス化し、顧客を“サービス顧客”にすることが必要なのです。

    2019年6月19日

    JAPAN IT WEEK 2019

  • なぜあなたの会社のRPAは業務効率に直結しないのか?

    業務効率化の打ち手の一つとして、定型的な業務を代行するRPAが注目されています。しかし、導入したものの、思うように効率化できていないというケースは意外なほど多いのも事実です。RPA導入において失敗しやすいポイントについてレポートします。

    2019年6月7日

    JAPAN IT WEEK 2019

  • 星野リゾートが実現させた、ITによる生産性向上と顧客満足の両立

    あらゆる業界で顧客満足度と生産性を両立させることが求められています。その課題解決に期待されているのがITの活用。その先頭ランナーと言えるのがリゾートホテル業界を代表する星野リゾートです。いかにすればITを日常の中で仕組み化できるのでしょうか? その秘訣を紐解きます。

    2019年6月5日

    JAPAN IT WEEK 2019

  • 顧客行動の分析が小売ビジネスを成長させる!

    ECにおいては顧客行動がデータ化され活用されている一方、実店舗の顧客行動を理解することは困難だと考えられてきました。しかし実店舗におけるビジネスのパフォーマンスを向上させるためには顧客行動分析が欠かせません。今回の記事では、小売店舗におけるデータ解析の重要性についてレポートします。

    2019年6月3日

    JAPAN IT WEEK 2019

  • 消費者の今を知るために。リアルもデータでとらえる「OMO」に移行せよ!

    ECサイトの著しい成長は、オンラインで収集したデータのマーケティング活用を可能にしました。しかし日本での購買活動は90%以上がリアル店舗で行われており、必ずしもオンラインデータだけで生活者行動をつかめるわけではありません。そこで最近マーケティングで注目されているのが「OMO」です。オンラインとオフラインを一体としてデータで捉える考え方です。

    2019年5月22日

    JAPAN IT WEEK 2019