伸び盛り企業会議/おもてなし規格認証で向上する生産性とは?

2017年3月14日
【記事のポイント】 ▼生産性向上の余力、顧客満足度調査の反映を付加価値創造につなげる ▼地域振興の担い手としての認証取得を、PR戦略に活用する ▼覆面調査やIT導入など、生産性向上には具体的な仕組みも必要
【記事のポイント】
▼生産性向上の余力、顧客満足度調査の反映を付加価値創造につなげる
▼地域振興の担い手としての認証取得を、PR戦略に活用する
▼覆面調査やIT導入など、生産性向上には具体的な仕組みも必要
 日本においてはGDPベースで7割以上を占めるサービス産業。その生産性は日本生産性本部発表の「日米産業別労働生産性水準比較」によると、米国の49.9%とまだまだ伸び白を感じさせる。
 日本のサービス産業を活性化する上では、生産性を向上させることが重要となっていくだろう。これを推進する取り組みの一環として経済産業省が設立したのが「おもてなし規格認証」だ。2017年1月30日には「おもてなし規格認証2017」の運用がスタートし、事業者におけるサービス品質の見える化に努めている。
 2017年3月6日に開催された、サービス産業の生産性向上に言及する「伸び盛り企業会議2017」の会場では、プログラムの一つとしておもてなし規格認証についての講演を実施。同規格がどのようにしてサービス産業の活性化を目指していくかが、認証取得者の取り組みとともに紹介された。

「本制度の活用によるサービス事業者の生産性向上に向けて」と題して、会場ではおもてなし規格認証についての講演を実施

■サービス品質の見える化で、集客とその意見反映のPDCAを回す

 会場ではまず経済産業省商務情報政策局サービス政策課課長補佐の阿部尚行氏より、おもてなし規格認証の概要についての説明があった。

おもてなし規格認証の目的について解説を行う、経済産業省商務情報政策局サービス政策課課長補佐の阿部尚行氏

 サービス産業の生産性向上は、アベノミクスにおいても大きな切り札とされている。ポイントとなるのは付加価値の創造。そのために重視されたのがサービス品質の見える化だったと阿部氏は話す。同認証において認証取得者はその証であるプレートを店頭などに配置。これによって集客を行い、その意見をフィードバックしていくことが、スキームにおける基本的な考え方だ。
 おもてなし規格認証は4つの認証によって、認証取得者におけるサービス品質を見える化する。2017年2月末の時点で登録件数は1万件を超えており、これを2020年までに30万件まで増やすことを目指しているとのことだ。
 では、実際におもてなし規格認証を取得するにはどうすればよいか? これについては、一般社団法人サービスデザイン推進協議会理事の平川健司氏が解説している。平川氏がまず言及したのが認証における規格項目だ。これは全部で30項目に及び、職場環境の改善から従業員育成、ITの導入まで多岐にわたる。

一般社団法人サービスデザイン推進協議会理事の平川健司氏からは、おもてなし規格認証の取得方法などについての説明があった

 おもてなし規格認証では4種類ある認証のうち、まず紅認証を取得することになる。紅認証の取得に必要なのは、規格項目のうち15項目に適合、もしくは今後取り組む予定があること。これを自己宣言することで、認証を受ける資格が得られる。

 その後は、優れたサービス品質を持つ認証取得者に対し、認証機関がコンタクトを取り、より上位の金認証、紺認証に登録していく運びとなる。認証を取得するとIT導入補助金の審査が有利になるほか、固定資産税の減免についても検討されているようだ。
「お客様と従業員、認証取得者が一緒になってサービス品質向上に取り組んでいく、三方よしの認証制度となります。2020年の東京オリンピック、さらにはその先の観光立国に向けて、地域も巻き込んだ取り組みを目指したいですね。そのためにも、まずは間口を広くして募集しているので、ぜひトライしてほしいです」

■従業員の育成をベースに、おもてなしの質向上に努める


 おもてなし規格認証では認証機関の準備が整い次第、4月から順次金認証や紺認証の認証を行っていく。それに先駆けて、3月6日にはパイロット認証取得者を発表。会場にはその認証取得者と、認証を行った認証機関の各代表者が登壇した。

会場ではパイロット認証取得者に対して、登録証の授与も行われた

 パイロット認証取得者のうち2者は金認証を取得している。そのうちの1者が、勝山自動車株式会社が福岡県北九州市で展開する「勝山タクシー」だ。接客やおもてなしの精神に優れたドライバーを、“プレミアムタクシー”のドライバーとして認定。その他にも、陣痛タクシーや地域コミュニティFMといった、地域密着の取り組みを行っている。
 勝山タクシーの認証機関となったOSTi副代表理事の渋谷健氏によると、同機関では今後地域との関係性にフォーカスした認証を行っていくという。その上で認証取得者をPRするメディア戦略も行い、事業成長を促していくとのことだ。
「勝山タクシーは地域とつながる事業者の象徴として認証しました。我々は地域貢献のキーワードは“友達最強”だと考えています。深い関係性を作ることで、それを生産性向上につなげていきたいですね」
 一方、もう1つの金認証取得者は“スローフードカンパニー”を名乗る株式会社セオリーが展開する飲食店「にいがた方舟 新潟駅 CoCoLo 南館店」。県内にある酒蔵の杜氏との関係性を大切に、その酒に込められた想いを表現するようなサービスを提供している。

 同店の認証は一般社団法人ピースキッチン新潟が行った。代表理事の横山裕氏は、同社の地域と食文化を大切にサービスを提供する姿勢、全従業員を一つの家族としてその満足度を大切にする方針が、おもてなし規格認証の理念と共通していたと話す。

「我々は新潟の米と酒を中心とした食文化に注目し、ガストロミーツーリズムなどを通したプロモーションを展開していきます。その上で、認証のポイントは人材にあると考えました。サービスとともに食文化に関する知識を提供できる人材を育て、それを世界に広めることにも認証を活かしていきたいです」

■覆面調査から職人スキルのIT化まで、生産性向上を追及する紺認証取得者

 パイロット認証取得者には、製販一体の事業を展開する事業者も選ばれている。紺認証を取得した株式会社杢目金屋は、金属の色の違いで文様を生み出す伝統技法を活かし、結婚指輪をはじめとしたジュエリーを製造。国内に直営販売店を20店舗展開する。
 生産性向上においては伝統技法をデータ化し、安定したクォリティで提供できる体制を整えた。これにより若者の雇用を確保するほか、全従業員の5%にあたる障害者雇用を実現している。経営計画書にのっとったPDCAは個人単位に落とし込み、顧客の声を取り入れながら、絶え間ない経営の改善に取り組んでいるようだ。

 認証機関の日本CSR協会代表理事の前田浩氏は、これらの取り組みが社会貢献につながっているところが素晴しかったと話す。顧客満足度に配慮した社是についても評価のポイントになったとのことだ。
 一方、レストラン「ダンチキンダン町田店」で紺認証を取得した株式会社キープ・ウィルダイニングでは、覆面調査を取り入れ、客目線でのおもてなしに力を入れているという。業界の常としてパートやアルバイトの雇用が多いが、2か月に1回サービスに優れた人を表彰するなど、人材育成には特に力を入れているようだ。

 同社ではローカルブランディングという方針のもと、町田を中心とした武相エリアに特化して、カフェから居酒屋まで多彩な業態の飲食店を展開している。地場食比率をグループ全体で高め、レトロ建築のリフォームなども手掛けており、こうした地域密着の姿勢が人材募集においても強みになっているようだ。

 おもてなし規格認証はサービス産業の発展の先に、地域経済の活性化を視野に入れた規格。今回のパイロット認証取得者は、その方針が色濃くみられるメンバーとなった。認証機関にはOSTiやピースキッチン新潟のように、事業における地域性を重視するものもある。生産性向上とともに地域貢献をバランスよく行っていくことも、認証の取得に向けての一つの方向性となりそうだ。
《丸田鉄平/HANJO HANJO編集部》

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執筆者: HANJOHANJO編集部 - HANJOHANJO編集者
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