どうする? どうなる? 令和時代のキャッシュレス!

電子決済普及のカギは「お得感」と「必然性」/リテールテック JAPAN 2019

2019年5月7日
このところ話題の電子決済。日本のキャッシュレス比率は現在20%ほどで世界的には非常に低い割合です。政府は将来的にキャッシュレスの普及率を40%にまで引き上げるという目標を立てていますが、そもそも現金がない世界というのはありえるのでしょうか? 流通・小売・飲食業にとって差し迫った課題である電子決済の今とこれからを、最前線で取り組む4名によるクロストークで分析します。
 キャッシュレス化や無人店舗システム、データを利用したマーケティングなど、流通・小売・飲食業界の経営やビジネスにおいて、最新技術を使ったIT機器の導入は人手不足解決の一手として必ずチェックしておきたい分野です。 

 これらの業界向けの最新IT機器やシステムを扱う企業235社が一堂に会する展示会「リテールテック JAPAN 2019」が2019年3月5日〜8日の期間、東京ビッグサイトにて開催されました。

 今回のリテールテック JAPANでは、流通・小売・飲食業界向けの決済システムやAI、IoTを活用した店舗などが紹介され、4日間の来場者数は12万7000人を超える盛況ぶりでした。

 今回の記事では3月8日に開催されたセミナー「電子決済−Next ③ 小売・サービスから見た新決済サービスへの期待」(モデレータ:加藤総さん/山本国際コンサルタンツ・パネリスト:上山政道さん/イオンリテール株式会社 電子マネー推進本部長、岩崎純さん/株式会社インフキュリオン カード・ウェーブ編集長、西本裕紀さん/Japan Taxi株式会社 マーケティング部 事業開発グループ ビジネスプロデューサー)より、電子決済の現状と将来についてレポートします。

(上左より)株式会社インフキュリオン カード・ウェーブ編集長の岩崎純さん、イオンリテール株式会社 電子マネー推進本部長の上山政道さん(下左より)Japan Taxi株式会社 マーケティング部 事業開発グループ ビジネスプロデューサーの西本裕紀さん、山本国際コンサルタンツの加藤総さん

現金のない世界ははたして来るのか?

 このところ話題の電子決済ですが、日本のキャッシュレス比率は現在20%ほど。世界的には非常に低い割合です。政府は将来的にキャッシュレスの普及率を40%にまで引き上げるという目標を立てていますが、そもそも現金がない世界というのは訪れるのでしょうか?

 山本国際コンサルタンツの加藤さんは「これまで電子決済が使えなかった業界でも導入されるようになってきていますが、おそらく現金が完全になくなるということはないでしょう。ただし現金がなくても生活できる社会は2030年には来るかもしれません」と話します。

 電子決済といえば2018年に登場したPayPayを皮切りに、QR・バーコード決済が盛り上がっています。このことについて、従来のクレジットカードや非接触ICカードのように専用の端末を必要としないため、消費者にとっては決済の選択肢が増えるが、決済の多様化は小売業にとって負担になると加藤さんは見ているそうです。

 電子決済のメリットについてイオンリテール株式会社の上山さんは、自社で提供している電子マネーWAONを例に挙げました。「レジのサービス改善やスピーディー化のために電子マネーのニーズは高まっています。待たせないサービスの提供をできるのがメリットだといえます」と話し、「IC化してもスピードが上がらなければ導入の意味はありません」と強調しました。

日本のキャッシュレス比率は現在20%ほど。政府は将来的にキャッシュレスの普及率を40%にまで引き上げる目標を立てているが、そのカギを握るのは何なのか?

電子決済の普及に必要なのは「お得感」と「必然性」

 増え始めているQRコード決済について、株式会社インフキュリオンの岩崎さんは「今後流行するかと聞かれれば、そうでもないだろうと思っています。スマホ操作など決済までの手数が多くて面倒なんですね。メリットはあるが万能ではない。AlipayやWeChatPayのようにはならないと見ています」とQRコード決済の課題を示しました。

 また電子決済が普及するために必要なものとして、お得感と必然性を挙げた岩崎さん。「特に重要なのが必然性です。必然性とは、例えば時間を節約できるといったことで、これは強力な動機になります。JR東日本のSuicaが普及したのは切符を買うという面倒を省略できる利便性のおかげなのです」と解説しました。

 配車アプリや決済を提供するJapan Taxi株式会社の西本さんは、タクシー業界へのキャッシュレス化を推進していて「新しいサービスを導入することに抵抗のあるケースが多いですね。交通系は手数料が低いのですが、それでも手数料に対する嫌悪感を持っています」との現状認識を示し、「キャッシュレス導入によって、いかに人の手間を少なくできるかを伝える必要があります」と続けました。

電子決済が普及するために必要なものとはお得感と必然性。JR東日本のSuicaが普及したのは切符を買うという面倒を省略できる利便性によるものだという

キャッシュレス化への期待

 続いてのパネリストセッションでも議論が伯仲しました。まずモデレータの加藤さんが「小売サービス事業者目線でのキャッシュレス化の目的や意義」について質問すると、上山さんは「社会の高齢化によってタクシーを利用する人が増えていますが、電子マネーなら釣り銭等のトラブルを減らせます」と話しました。

 岩崎さんは「キャッシュレス化によるコスト削減を期待している人が多いですが、現実的には難しいでしょう。例えばコインパーキングは100%キャッシュレスにすれば、現金回収やセキュリティのコストがなくなりますが、一般小売においてはある程度コストを払いながらメリットを出していく必要があります」と話し、西本さんは「タクシーから現金がなくなれば防犯につながりますし、現金を片付ける手間を別の業務にあてることができます。新しい時間の創出が可能になると思います」と意見を述べました。

 最後に「キャッシュレス化への期待や提言」について加藤さんから質問されると、上山さんは「イオンで買い物をするときにキャッシュレスの方がはるかにお得だと認識してもらうために、さらに魅力的な特典を付加して会員を増やしていきたい」と意気込みを語りました。

 岩崎さんは「国策は掛け声だけでなく、例えば税金を控除するなど具体的なメリットを提示する必要があります」とキャッシュレス推進の提案をし、西本さんは「キャッシュレスを使える裾野を増やすことが必要です。一つの決済方法で複数のサービスが連携すると一気に広まる可能性があるのではないでしょうか」と締めくくりました。

 さまざまなシーンでの利用が可能になり、利便性が高まっているキャッシュレス化ですが、まだまだ普及しているとはいえません。キャッシュレス化普及のためには消費者が使うメリットと、小売業界が導入するメリットが必要です。行政や各企業がそのメリットをどう打ち出していくかが大きなポイントとなりそうです。

流通・小売・飲食業界向けの最新IT機器やシステムを扱う企業が一堂に会する展示会「リテールテック JAPAN 2019」。決済システムやAI、IoTを活用した店舗などが紹介された

(レポーター/HANJO HANJO編集部 川口裕樹)

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執筆者: HANJOHANJO編集部 - HANJOHANJO編集者
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