「損して得取れ」のすすめ

2019年4月22日
スタートアップで成長できている会社、継続できている会社の特徴は何なのでしょうか? これまでに数百の中小企業を見てきた李日生さんが、経験に基づいて検証します。

 4月。日本の会社は3月決算が多く、今月から新年度の会社も多いでしょう。今回のコラムでは、私がこれまでに見てきた数百の中小企業のなかで、スタートアップの企業に注目して話を進めたいと思います。スタートアップで成長できている会社、継続できている会社の特徴は何なのか? 私の経験に基づいて検証します。

 まず一番ダメなタイプの経営者からです。2〜3年ももたない会社に共通していることは・・・

 ・業種は何でもいいから社長をやりたい
 ・お金持ちになりたい(「IPOをして億万長者になりたい!」なんて平気で言う人が多い)

 結果を最初から求めているタイプの経営者は、苦しい状況に耐えられなかったり、コツコツと続けるべき細かな仕事をやりたがらないことが多い。これでは数年で会社が倒産一歩手前に向かってしまいます。

 そもそも起業というのは、「世の中にまだないサービスや商品を、誰もやらないから自分でやってみたい」ということから始まるものです。「今の会社組織では自分の思っていることがやれない」といった状況にある時、自分の思いや実現したい夢を叶えるために共感できる仲間を集め、組織を徐々につくっていくのが本来あるべき姿ではないでしょうか。

 強い思いがあれば、少々の困難は乗り越えられるものです。誰もやってくれない仕事も自分がやるしかないので、それが勉強にもなるし努力にもつながっていくのです。

 次に、コラムの題名「損して得取れ」の意味するところです。好調に成長できている会社が続かなくなる原因で意外と多いのが、外注先や従業員に対してきちんと利益を配当していないことです。そういう会社は中長期の視点で見ると、やがて立ち行かなくなってしまいます。

 外注先や従業員はともにサービスや商品をつくるパートナーです。パートナーが動機付けできていない会社の多くは、事業の継続が困難になっていきます。

 外注先に値下げ圧力をかけたり支払いを渋ることで、一時的には利益も上がり資金繰りの状況もよくなるでしょう。経営状況は表面的には活況を呈します。

 しかし優秀な外注先は、値下げ圧力をかけてくる取引先よりも、定価できちんと自分たちのサービスや商品を評価してくれる取引先の仕事を最優先します。ある程度の利幅があるからこそ取引外の業務も進んでやってくれるのです。

 常に値下げ圧力をかけていると、優秀でない外注先か、利幅の薄い中で仕事をせざるえない余裕のない外注先しか残りません。その結果、自社のサービスや商品のクオリティも下がり、トラブルも多くなっていきます。最終的には外注先とお客様を失い、じり貧になってしまうのです。

 商売はチームプレイでステークフォルダー(様々な利害関係者)との関係性が重要です。成長している会社、継続している会社に共通して言えるのは、そのバランスが優れている点にあります。それが、私が長年、スタートアップの企業と関わってきて見えてきたことです。

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執筆者: 李 日生 - プレジデントタイム株式会社 代表
慶應義塾大学経済学部卒業後、公認会計士試験合格、監査法人トーマツ国際部に入社・配属。国際企業(商社・通信事業会社・運輸会社等)の連結会計やM&Aを担当、中小企業の経営コンサルティングも数百社経験する。現在はプレジデントタイム株式会社、神宮前アカウンティングファーム株式会社、株式会社H HOLINGS、有限会社ルーベ、神宮前会計を主宰。会計・税務・経営・飲食・不動産等、実際の経営者として代表取締役視点で多岐に及ぶ経験を重ねている(「頭でっかちの机上の空論が大っ嫌い」を自認)。近刊に『忙しい社長を救う経理改革の教科書』(幻冬舎)がある。

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