ニッポンブランドの食品をもっと世界へ! 商品開発、流通からブランディングまで

47CLUB×オカベ×JETRO×農水省/FOODEX JAPAN 2019

2019年4月19日
先日終えたばかりの日米貿易交渉の初協議。いまやTPPやEPAといったワードが日常で当たり前のように使われるようになってきました。日本の中小企業は海外進出にこれまであまり積極的ではない傾向にありましたが、その壁を一刻も早く打ち破らなければならない状況にあります。今回の記事では日本の食品を海外にいかに広めるかについて、47CLUBやJETROでの施策や実績をもとにその課題解決法をひもといていきます。
 写真に映える料理、インバウンド向けに用意された各地の名産品、さらにはハラルフードまで、いまや飲食は料理を楽しむだけでなく、企業や地域をアピールするコンテンツの一つとして欠かせないものになっています。 

 そんな中、アジア最大級の規模を誇る食品・飲料専門の展示会「FOODEX JAPAN 2019」が2019年3月5日〜8日の期間、幕張メッセにて開催されました。

 4日間の来場者が80000人を超えたFOODEX JAPANでは、世界各国・日本各地の食品や飲料の展示ブースが多数出展されたほか、飲食をテーマにしたセミナーも多数開催されました。

 今回の記事では3月6日に開催されたセミナー「地域創生フォーラム~日本ブランドを世界へ!~」(事例紹介:株式会社オカベ 企画開発部 八木建多郎さん、株式会社47CLUB 販売促進チーム 黒石英男さん/パネルディスカッション:農林水産省 食料産業局 知的財産課長 尾崎道さん、日本貿易振興機構(JETRO)企画部 地方創生推進課 片岡照華さん)より、日本国内食品の発信事例と海外展開のヒントをレポートします。

(上左から時計回りに)JETRO 片岡照華さん、株式会社オカベ 八木建多郎さん、農林水産省 食料産業局 尾崎道さん、株式会社47CLUB 黒石英男さん

商習慣の違いを知る

 まず日本食品の輸出事例紹介として株式会社オカベの八木建多郎さんが登壇しました。株式会社オカベは愛媛県で小魚加工品を扱っている会社です。アジア圏を中心に、オーストラリア、アメリカ、カナダ、ブラジルなどに輸出を行っています。

 「新規見込み客とは展示会や商談会などに積極的に参加して出会います。大きい商談会は年5本、中小であれば毎月参加します」と話す八木さん、輸出にはさまざまな課題があるようです。まずは言語・コミュニケーションの問題です。語学力のある専従者を置くことは難しく、現状では翻訳機を使っているものの細かいニュアンスが伝わりづらく苦労しているそうです。

 また貿易知識や商習慣の違いも問題になるとのことです。これらは国や地域によって異なるため勉強が欠かせず、また頻繁に行くことができないため大きな取引につなげることが難しいと八木さんは話します。

 さらにFCL(コンテナ1本を借り切る状態)とLCL(複数の荷主がコンテナ1本を借りる状態)によるコストと商品価値の折り合いや、商品ラベルや味を現地のものに合わせる難しさなどさまざまな問題があるそうです。

 八木さんは「輸出にはいろいろな問題がありますが、売り始めて分かることもあります。例えば商品の一つである穴子揚げは台湾や香港などお粥文化の国に売れることが分かりました。これからもいろいろな提案をしていこうと考えています」と話し、「現在の輸出先は7割が中国や香港なので、東南アジアの各国にも売っていきたいですね。タイに工場を持っているので、タイ国内にも売っていければと思います」と締めくくりました。

販路の先にいるお客様が欲しがるものとは?

「商品開発は作った商品を売っていくプロダクトアウトよりも、売ることから逆算して商品を作るマーケットインの方が勝率は高い」(47CLUB 黒石さん)

 続いて登壇したのは株式会社47CLUB(よんななクラブ)の黒石英男さんです。47CLUBは全国の新聞社が連携し、情報だけでなくモノも流すことをコンセプトとし、販路やノウハウの提供、商品開発を手がけています。

 これまで数々のヒット商品を手がけてきた黒石さんは商品開発事例を紹介し、「商品開発は作った商品を売っていくプロダクトアウトよりも、売ることから逆算して商品を作るマーケットインの方が勝率は高いです。販路の先にいるお客様が何を欲しがっているのかを想像することが大切です」と話しました。

 そして売るために必要なものとして「どんなによい商品でもお客様に伝わらなければ売れません。しかし残念ながら伝わっていない状態が多い。また、欲しがる人がいなければ商品は売れません。欲しい人がどこにいるのか、商品を作る前にリサーチが必要です。走りながらPDCAを回すという考え方が求められます」と黒石さんは説明し、「商品の質よりも売り方が重要なのですが、ここが抜けている事例が多い」と強調しました。

 「良いものを真面目に作っている人がたくさんいます。この人たちがよい売り方を手に入れたら最高だと思います」(黒石さん)。47CLUBがこれからも食品メーカーや生産者を力強くバックアップすることは間違いありません。

日本の中小企業は海外進出にこれまであまり積極的ではない傾向にありましたが、その壁を一刻も早く打ち破らなければならない状況にある

自治体や団体が日本食品をバックアップ、その安心感

次にパネルディスカッションとして農林水産省の尾崎道さんと、日本貿易振興機構(JETRO)の片岡照華さんが登壇しました。

 まず尾崎さんによるGI法(地理的表示保護制度)の説明が行われました。地理的表示保護制度とは農林水産物や食品等の名称から当該食品の産地を特定でき、かつ商品の品質等の特性が当該産地と結びついていることを特定できる名称を知的財産として登録・保護する制度です。長野県の市田柿(地名プラス果実名)がその例として挙げられます。

 GI法に登録されると、その名称は他人が使うことができなくなります。これにより他商品との差別化、地域共同の財産としての産品保護を図ることができます。現在32道府県で72産品、海外で1産品が登録されています。

 尾崎さんは「EUのGI産品との相互保護制度も行っています。欧州市場での模倣品取り締まりや、他商品と差別化が可能になります」とGI法のメリットを強調しました。

 続いて片岡さんによるJETROの地域貢献プロジェクトが説明されました。JETROでは中小企業の海外展開ビジネスを支援しており、2018年度は19件の勉強会や商談会を開催したそうです。

 片岡さんは「海外展開ビジネスのポイントは、よそがやっていることをマネせず、熱意を持って取り組むことです。それぞれの地域に合った方法で、積極的に海外に出て商品を知ってもらうことが大切です」と話し、「海外ビジネスを始めるにあたって、何か問題があれば気軽にJETROに相談してください。自治体や地域と連動して支援することができます」と受講者に声をかけました。

 日本には魅力的な食品が数多くありますが、言語も商習慣も異なる海外にその魅力を伝えるにはさまざなま課題を乗り越えなくてはなりません。今回のセミナーで紹介された商品開発やGI法による食品のブランド化、自治体や地域との連携が課題解決の鍵を握っているのかもしれません。

2019年3月5日〜8日の期間、幕張メッセにて開催された、アジア最大級の規模を誇る食品・飲料専門の展示会「FOODEX JAPAN 2019」

(レポーター/HANJO HANJO編集部 川口裕樹)

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★FOODEX JAPAN 2019

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執筆者: HANJOHANJO編集部 - HANJOHANJO編集者
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