在留外国人300万人時代!先進例に学ぶ、多文化共生のまちづくり(愛知県豊橋市)

2019年4月15日
2018年末現在、日本に在留する外国人は273万人、前年比約17万人(6.6%)増で過去最高を記録。6年間で約71万人増加しました。今年4月の改正出入国管理法施行により、今後5年間で最大約35万人が増加すると見込まれていますが、このペースでいけば、2年を待たずに300万人を突破する可能性もあります。今後、多様な国や地域の人々とどう共生していくのか、日本社会のあり方が問われています。水津陽子さんの今回のコラムでは、人口の約5%を占める外国人住民との多文化共生のまちづくりに取り組む先進地にフォーカス。今後あるべき地域と外国人との関わり、多文化との共生について考えます。

2019年2月に愛知県豊橋市で開催された「まちづくり講習会」。同市の多文化共生・国際課からの「多文化共生のまちづくり」における同課の活動とモデル地区での取り組みが紹介された

 法務省によると2018年末現在、日本に在留する外国人は273万1,093人、前年比16万9,245人(6.6%)増で過去最高を記録。2012年末の202万人から6年間で約71万人増加しました。

 今年4月の改正出入国管理法施行により、今後5年間で最大約35万人が増加すると見込まれていますが、このペースでいけば、2年を待たずに300万人を突破する可能性もあります。

 しかもここに不法に滞在する外国人は含まれず、留学生や技能実習生の行方不明事件も多発しています。外国人居住者が集住する地域では言語の壁や文化の違いなどから様々なトラブルが発生しており、住民アンケートなどでは治安の悪化を懸念する声も聞かれます。

 人手不足を補うためとはいえ、なし崩しに進む外国人の受入れ。今後、多様な国や地域の人々とどう共生していくのか、日本社会のあり方が問われています。

 今回は人口の約5%を占める外国人住民との多文化共生のまちづくりに取り組む先進地にフォーカス。今後あるべき地域と外国人との関わり、多文化との共生について考えます。

我が国における在留外国人の現状と課題

 近年、インバウンドの活況もあり、街中で外国人の姿を見ることが増えました。気づけば、都心のコンビニ店員のほとんどは外国人、地方の老舗旅館などでも外国人が接客を担う例が増えています。

 いつの間にか身の回りに普通に外国人がいる社会となっていますが、今後、日本社会はどう変化していくのか。在留外国人数で上位に位置する国や地域も様変わりしつつあります。

 (表1)2018年増加が顕著だったのはフィリピンを抜き、3位に浮上したベトナムで、前年比の伸び率は26.1%にもなります。6位には11.1%増のネパール、7位には12.7%増のインドネシアが入りました。

 都道府県別で最多は、全体の約2割を占める東京都の567,789人(前年比5.6%増)で、次いで愛知県約26万人、大阪府約24万人、神奈川県約22万人、埼玉県約18万人と続きます。

出典: 法務省入国管理局「平成30年末の在留外国人数について」()内は構成比、+-は前年末比の増減率

 (表2)在留資格別の1位は永住者の約77万人ですが、2位に躍り出た留学、3位の技能実習はいずれも30万人を突破、伸び率は技能実習生19.7%、留学生8.2%と高くなっています。

 戦前から居住している在日韓国人等とその子孫に与えられる特別永住者は減少し、4位に落ちました。また専門分野の機械工学等の技術者や通訳などを対象とした技術・人文知識・国際業務は19.3%と高い伸びを見せていますが、介護はないに等しい数字です。

 今回の改正出入国管理法における在留資格は、「人材が不足する分野で相当程度の知識又は経験を要する技能を持つ『特定技能1号』」と、「熟練した技能を要する『特定技能2号』」の2種です。

 1号の要件は最長5年の技能実習を修了するか、技能と日本語能力の試験に合格することで、在留期間は通算5年、家族帯同は認めていません。2号の要件は高度な試験に合格、熟練した技能を持つことで在留期間は1~3年ですが、期間更新で長期就労も可能となっており、家族の帯同も認められます。

 国では受入れ機関が支援計画を作成し、1号外国人に対し日常生活や職業生活、社会生活上の支援を実施することを求めるとしていますが、人手不足の業界で実際どこまでのことができるのか。技能実習生の現状を見ると懐疑的にならざるを得ません。

 日本の社会秩序を維持する文化や慣習、地域社会との関わりなど、外国人が日本社会にどう溶け込み、日本社会を構成する一員となっていくのか。国や地域はもちろん、企業や私たち国民も考えていく必要があります。

(左・右上)豊橋市の多文化共生モデル地区自治会で実施した『防災訓練とBBQの合同イベント』(右中)モデル地区の意見交換会(右下)来年度小学校に入学予定の外国人幼児を対象とした『プレスクール』/提供:豊橋市 多文化共生・国際課

注目される豊橋市における多文化共生のまちづくり

 東京都に次いで在留外国人数が多い愛知県、その中で名古屋市、豊田市に次いで3番目に外国人が多く暮らすのが県南東部に位置する豊橋市です。

 豊橋市の外国人人口は2018年12月末現在、市総人口377,303人のうち17,219人(4.5%)を占めています。国籍別ではブラジル、フィリピン、中国、韓国・朝鮮が多く、全体の約8割を占めます。他にペルー、インドネシア、ベトナムなど、数十の国や地域の人々が共に暮らしています。

 豊橋市では1990年の入管法改正以降、南米地域諸国出身の外国人市民が急増。2008年には市内に居住する外国人人口は73ヶ国約20,000人となり、人口の約5%を占めるまでになりました。

 それまで国際交流課で友好姉妹都市等との交流は行っていましたが、外国人住民を対象とした施策や受入れ体制はできていませんでした。そのため外国人住民が集住する地域では文化や習慣の違い等から様々な問題が表面化、生活者としての外国人をいかに受け入れるか、多くの課題に直面していました。

 こうしたことから2006年、市制施行100周年を迎えた豊橋市は平和・交流・共生の都市宣言を行い、2009年これを具現化する多文化共生推進計画を策定し、施策を推進する組織として多文化共生・国際課を設置しました。

 これにより外国人住民の母語(英語、ポルトガル語、タガログ語)での行政情報の提供や外国人相談窓口の設置、暮らしを支援する通訳派遣や翻訳対応のほか、外国人居住者が多い学校校区の公営住宅を多文化共生のモデル地区として様々な事業を行い、そこでの成功や失敗を他の地区でも共有、参考にしてもらう取り組みをしています。

外国人とのトラブルを未然に防ぐ、モデル地区での取り組み

 モデル地区の一つ、岩田校区(人口約16,000人)には市内で最も外国人住民の比率が高い公営住宅の岩田住宅(世帯数275世帯、外国人比率48.6%)があり、ブラジルとフィリピン出身の住民が多く暮らしています。

 この地区では生活習慣による違いにより、ゴミの分別や騒音などのトラブル、防災意識の差、言語の違いによる情報提供や意思疎通の難しさ、外国人の自治会活動への参加率の低さなどが課題となっていました。

 そこで新しく入居する外国人に対し、入り口部分からサポートするため入居者説明会を開催。母語の通訳を介し住宅の規則等を説明する機会を設けたほか、情報発信では担当課である多文化共生・国際課だけでなく、通訳や翻訳ができる人材を住宅内で確保し充実を図りました。

 また、小学校入学時に外国人の子どもたちが戸惑いやつまずきがなく、早く日本の学校に慣れることができるよう、ひらがなや小学校生活でのルールなどを勉強する「プレスクール」を毎年開催。2018年度は市内3カ所で11~3月の5ヶ月間実施、26名が参加しのました。

 この他、外国人児童が小学校転入する際、2ヶ月間日本語を勉強することができる「虹の架け橋教室」も用意。授業はバイリンガルの先生が担任し児童をサポートし、指導と成果は報告書として転入先の小学校へフィードバックされ、入学後の指導に役立ててもらっています。

 国籍による防災意識の違いは災害時の混乱を減らすため、岩田住宅の状況に即した災害対応マニュアルを多言語化し、外国人住民に配布。AEDや煙体験など、団地の体験型の防災訓練には多くの外国人住民が参加しています。

 また市内で2番目に外国人住民が多い柳原住宅では、外国人住民のイベント参加率が低いことが課題でしたが、防災訓練とBBQの合同イベントを開催。ブラジルの食文化であるBBQを取り入れたことで、子どもからお年寄りまで多くの外国人の参加に繋がりました。

 多国籍化が進んでいる西部住宅では、通訳・翻訳作業の負担が大きく、外国人住民の自治会への関わりが少ないことから、自治会役員に外国人住民を登用し、外国人住民との協力体制の構築を行っています。

 もちろんまだまだ課題もありますが、国籍に関わらず互いの理解を深める豊橋市の取り組みには学ぶところが多くあります。

 外国人住民が日本社会を構成する一員となり、いかに共生し、豊かな社会を作っていくか。それは私たち日本社会の側に委ねられています。

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執筆者: 水津陽子 - 地域活性化・まちづくりコンサルタント
合同会社フォーティR&C代表、地域活性化・まちづくりコンサルタント。地域資源活かした地域ブランドづくりや観光振興など、地域活性化・まちづくりに関する講演、企画コンサルティング、執筆を行う。2014年地方創生法に関連し衆議院経済産業委員会に参考人出席。著書に「日本人だけが知らないニッポンの観光地」(日経BP社)などがある。

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