会話における必要な“非効率”

2019年4月8日
デジタルはあらゆるものを効率化しました。しかし、心理学の「ザイアンスの定理」は「相手の人間的な側面が見えると感情が深まる」と述べています。人と人のつながりで進めていくのがビジネスだとするなら、つながりを深めるために、会話にはある程度の“非効率”が必要なのです。

 こんにちは。クラウドCTI「おもてなし電話」の江尻です。

 桜のきれいな季節になりました。桜前線も順調に北上し、東北や北海道に春を告げることになるでしょう。

 今年は寒い日が続いているので、お花見も風邪をひかないように気を付けないといけませんね。桜を見るといつも和の心を思い出します。桜には、日本人に和の心を思い出させてくれる不思議な魅力があるのかもしれません。

 最近、よく聞く言葉として「デジタルトランスフォーメーション」や「デジタルシフト」があります。アナログからデジタルにシフトしていこう、つまりIT化を進めよう、IT化で業務効率化をしようというものです。

 確かにデジタル化が進んだことで、様々なことが便利になりました。
私も多くのデジタル機器やITツールを活用していますが、その中で利用してめちゃくちゃ効率化されたと感じるITツールは、SNSなどのチャットツールでしょう。チャットツールの登場は人とのコミュニケーションを大幅に効率化しただけでなく、とてつもなくスピーディにしました。ちょっとした要件を気軽に伝えられるのがとてもいいです。
 「今連絡しても大丈夫かな?」と相手の状況をあまり考えずに、ひとまず一方的に連絡できます(笑)。
 ちょっとした隙間時間にコミュニケーションができるようにしたというのも素晴らしい。電車を待っているとき、エレベーターの中、信号を待っているときなど、少しの時間でも人と「会話」できるようになりました。電車の中など、電話では話せない場所でもスムーズにコミュニケーションができます。これは本当に素晴らしい。
おかげさまで様々な要件がスピーディに決められるようになりました。

 この点をみると、デジタル化は人の「会話」をとても便利にしたと感じられます。
 一方で、デジタル化は進めば進むほど、確かに効率化は抜群に進むのですが、ちょっと冷たい世界になると感じていします。チャットツールは、要件を決めたり打合せ日時を確定させたりなど、ライトなコミュニケーションをスピーディに決められとても便利です。しかし、人と人のコミュニケーションとしてとらえるとちょっと味気ないところもあります。

 「最近どうですか?」といった近況伺いや相手の“人となり”が分かるような会話は、要件を決める会話の中で一見なくてもいい会話です。しかし、そうした会話があるからこそ、その人とのつながりがより強くなっていきます。
 これは心理学のザイアンスの定理でも言われていることで、「相手の人間的な側面が見えると感情が深まる」とあります。ビジネスは人と人のつながりで進めていくもので、つながりを深めるためには、会話にある程度の“非効率”が必要です。

 例えば、初めて出会えたことの感謝の気持ちを伝えるとしましょう。
今は、お礼の気持ちをメールで送ることがほとんどじゃないでしょうか?ここで、手書きのお礼状を送ったらどうでしょう?もらったほうとしては、メールよりも圧倒的に感動すると思います。効率さでいうと、手紙はとても非効率です。メールなら5分ほどで送信までできてしまうでしょうが、手書きのお礼状となると、はがきを買い、文面を書き、切手を貼り、ポストに投函する。20分~30分ほどかかり、手紙と比べると4、5倍ほどのコストがかかっています。
 でも、もらったほうはやっぱり手書きのほうが嬉しい。
 こういった、人とのつながりの部分では、すべてデジタル化して効率化のみを追い求めるのではなく、必要な“非効率”があると考えています。
 こういった部分が「和の心」じゃないかと考えています。

 靴のネット通販のザッポスはご存知でしょうか? 『ザッポスの奇跡』というベストセラー本が一昔前に流行りましたが、そちらをご覧になられている方も少なくないことでしょう。ザッポスは靴のオンラインショップを経営しています。ネット通販会社です。
 それなのにこの会社のコールセンターの対応は度肝を抜かれるものです。コールセンターでは、購入した商品の問い合わせやクレームの対応を電話で受け付けるのが通常です。ザッポスのコールセンターは違います。購入した商品とは全く関係のない内容までお客様の相談に乗るというものです。子供の進学の相談でももちろん構いません。何でも相談に乗ってくれるのです。これには驚きました。一人のお客様との電話時間の最長は、なんと7時間を超えたとのこと。お客様のことを徹底的に考えた会話の実現だと感じました。コールセンターを効率化だけで考えてしまうと、一人のオペレーターが1日何件の電話を対応したのかという対応数が重要な指標でしょう。しかし、ザッポスの評価は、顧客満足度なのです。
 ザッポスがコールセンターでやっていること、それは会話を通じ、お客様との関係構築を行っていることに他ありません。

 IT化で様々なものが便利になり、効率化されることは望ましいことです。
 しかし、冷たい世界、生きにくい世界になってはいけません。いろんな人とつながり、様々な人に自分の存在を理解してもらい、深い会話ができる世界が人にとって生きやすいのだと思います。
 そのためにも、人と人のコミュニケーションには、必要な“非効率”があるべきだと感じています。

 今回も最後までコラムをご覧いただき、誠にありがとうございました。

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執筆者: 江尻高宏 - 株式会社シンカ代表取締役社長
関西大学大学院工学研究科修了後、株式会社日本総合研究所に入社。金融系の情報システム開発に従事し、広範囲の開発プロジェクトに参画、チームリーダやプロジェクトマネジャーを経験。その後、株式会社船井総合研究所に入社。営業、マーケティング、商品戦略を中心に、中小IT企業向けのコンサルティングに注力。特にクラウドビジネス分野に強く年間約20本の講演を担当。2014年1月に株式会社シンカを設立。「おもてなし電話」をはじめ、クラウドサービスを中心にITを世界に広めることに注力している。

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