ベテラン訪日客の増加にどう対応する? キーワードは「軽量化」と「ストレスフリー」

モノ消費からコト消費へ。訪日外国人の成熟化をチャンスに変えるために/インバウンドマーケットEXPO2019

2019年4月3日
ラグビーワールドカップはこれからの日本のインバウンドを大きく変えるほどのインパクトを持っています。ラグビーの観戦に訪れる40万人はほとんどが欧米豪州からの訪日客だからです。一方、「訪日旅行者の成熟化」や「中国インバウンドの変調」などによりインバウンド消費が減速していることは大きな懸念材料です。ではいかにしてマイナスをプラスに変えればいいのでしょうか? そのヒントを探ります。
 年々増加を続け、2018年には3119万人を記録した訪日外国人。2019年のラグビーワールドカップや2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控えている今、企業にはこれまで以上にインバウンド対応の姿勢が求められています。

 そんな中、インバウンド市場と地方創生を目的とし、訪日外国人の満足度を高めるための商材・サービスが一堂に会する展示会「インバウンドマーケットEXPO2019」が2019年2月19日〜22日の期間、東京ビッグサイトにて開催されました。

 今回のインバウンドマーケットEXPOには102社149ものブースが出展、また4日間で30000人もの人が訪れる大盛況ぶりでした。

 今回の記事では2月22日に開催されたセミナー「何を売る?どう売る?インバウンド消費の拡大による地域活性化」(講師:吉川廣司さん/一般社団法人ジャパンショッピングツーリズム協会 事務局次長)より、拡大するインバウンド消費と地域活性化の連動についてレポートします。

ジャパンショッピングツーリズム協会(JSTO)事務局次長の吉川廣司さん。JSTOのミッションは「日本の魅力(おもてなし・こだわり・くらし)が凝縮されたショッピングツーリズムを通じ、世界一のショッピングデスティネーションを目指す」

訪日外国人の成熟化が招く消費減速

 2018年に日本を訪れた外国人は3000万人を超えました。これは世界人口の2.2%に当たる数字です。しかしその成長スピード、そしてインバウンド消費額は徐々に鈍化しています。

 そんな中、2019年9月より始まるラグビーワールドカップはインバウンド消費のための体制を変えるチャンスであると一般社団法人ジャパンショッピングツーリズム協会(JSTO)の吉川さんは話します。

 「ラグビーワールドカップはこれからの日本のインバウンドを大きく変えるほどのインパクトを持っています。ラグビーの観戦に訪れる40万人はほとんどが欧米豪州からの訪日客。これを機に日本を訪れる欧米豪州の富裕層は確実に増えます」

 一方でインバウンド消費が減速している理由について吉川さんは、「訪日旅行者の成熟化」「中国インバウンドの変調」そして「日本製品輸出の拡大」の3つを挙げました。

 吉川さんによると、洋の東西を問わず海外旅行をする人の多くはビギナーのあいだは近隣の国へ行き、ベテランになるにしたがって遠くの国へ行くようになるそうです。これまでビギナーが多かったアジアからの訪日客がリピーター化してベテランになり、一方でヨーロッパのベテラン旅行者が極東の日本を訪れるようになりました。つまり総じて日本を訪れる旅行者のベテラン化・成熟化が進んでいるということです。そしてベテランの旅行者になるにしたがって買い物が少なくなり、食を楽しんだり文化を体験する傾向にあります。

 また中国の景気減速や電子商取引法の施行や、日本製品輸出の拡大も、インバウンド消費が減少している原因だと吉川さんは説明しました。

吉川さんによると、インバウンド消費が減速している理由は「訪日旅行者の成熟化」「中国インバウンドの変調」そして「日本製品輸出の拡大」の3つだという

薄くて軽いお土産が喜ばれる理由

 買い物をあまりしないベテラン旅行者が多く訪れインバウンド消費が減少している今、どのような商品を売ればよいのでしょうか? 吉川さんが強調したのは「軽量化」というキーワードでした。

 「ラグビーワールドカップに向け、欧米豪州向けのお土産を用意する必要があります。彼らは長期滞在することが多いため、賞味期限の短い食べ物は向いていません。また荷物を少なくするためにバックパックを使うことが多いので、収まりやすく壊れにくい、それでいて軽量なお土産が求められます」

 吉川さんは例としてレトルトパウチや真空パック、フリーズドライを使った日持ちして持ち運びやすい日本食をお土産として用意することを提案しました。これらのお土産は瓶詰めや箱詰めのお土産に比べ、壊れにくく軽量、収納もしやすいためバックパックに詰め込んでも安心して持ち帰ることができそうです。

 また訪日外国人に喜ばれる日本の伝統工芸品も、売る側が伝統に縛られていることがネックとなっていると吉川さんは指摘します。

 「伝統工芸品は日本を知りたいと考えるベテラン訪日客と相性が良く、また消費額がそのまま地域経済に寄与するためにおすすめのお土産ですが、使い方の提案が大きなポイントになります。高額な伝統工芸品は芸術品ですが、低価格の工芸品は生活の中で使う生活器でどのように使うかの提案が必要です。例えば着物をタペストリーにする、京指物の桶をワインクーラーにするなど、外国人は作り手の想像通りには使ってくれません。生活の中で使うシーンが想像できる日用工芸品であれば彼らは喜んで買ってくれるはずです」

 さらに最近では自分に合うショッピングを楽しみ、空いた時間をコト消費に当てたいと考える訪日外国人が増えていることについて「昼間にコト消費を持ってくると買い物の時間がなくなってしまうので、夜に旅館でできるコト消費が喜ばれます。例えば着物の着付け体験や茶室での撮影など、既存のインフラやサービス、スタッフのノウハウをフル活用すれば、旅館でコト消費を売ることは十分可能です」と話す吉川さん。

 すでにあるものの売り方を変えることによって新たな価値を付加する。これからのインバウンド消費にはこの視点が必要だと言えそうです。

すでにあるものの売り方を変えることによって新たな価値を付加することが、これからのインバウンド消費に必要な視点

ストレスフリーのショッピングが消費拡大の鍵

 訪日外国人向けのお土産を用意しても売れなければ意味がありません。どのように売るかが重要になってきます。吉川さんはストレスフリーなショッピングの実現こそが成功の鍵だと話します。

 「例えば荷物預かりサービスによる手ぶら観光。身軽に移動でき、さらに手ぶらだとついつい買い物をしやすくなるというメリットがあります。また工芸品などの大きいもの、壊れやすいものは海外配送(別送)の手続き代行サービスがあれば安心して買うことができます」

 また日本の果物もアジアの訪日客にとっては立派なお土産になると吉川さんは話しました。果物は、香港などのように植物検疫受検の必要のない国、日本側で検疫が必要な国、持ち込み禁止の国がありますが、正しい知識と適格な案内ができれば大きな経済効果を生み出すことができます。

「例えば検疫証明が必要な国には検疫代行サービスを作って事業化すれば新たなビジネスになります」

 さらに近年拡大するキャッシュレス対応についても、日本の各種サービスと各国のキャッシュレス事情を考慮し、適切な決済サービスを導入することが訪日外国人、自社の双方にメリットがあると吉川さんは強調しました。

 最後に吉川さんは「今回紹介した取り組み事例はすでに各地で始まっています。まずは自分の会社や地域でできることから始めてみてください」と締めくくりました。

 ラグビーワールドカップやオリンピック・パラリンピックによって、多くの外国人が日本を訪れます。彼らの消費意欲を向上させるためには、従来の商品や販売方法を見直し、さらに新たな価値を付加して提案する。この姿勢が企業や地域に求められていると言えるでしょう。

インバウンド市場と地方創生を目的とし、訪日外国人の満足度を高めるための商材・サービスが一堂に会する展示会「インバウンドマーケットEXPO2019」。4日間で30000人もの来場者が訪れた

(レポーター/HANJO HANJO編集部 川口裕樹)

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執筆者: HANJOHANJO編集部 - HANJOHANJO編集者
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