スポーツイベントは大きなチャンス! 訪日欧米豪人を取り込むための秘訣

ラグビーW杯やオリパラをインバウンド消費拡大につなげるために/インバウンドマーケットEXPO2019

2019年3月29日
今年から2020年にかけ、ラグビーワールドカップ、東京オリンピック・パラリンピックという大きなスポーツイベントが開催される日本。訪日観光客の消費を促すためには、これらのビッグイベントをスポーツツーリズムへと昇華させたいところです。ここで意識しておくことはリサーチや分析。コト消費がメインである欧米圏の外国人に対してはこれまでのやり方を変えることで効果は上がります。プロモーションの前に情報源の根っこを押さえることが重要なのです。
 年々増加を続け、2018年には3119万人を記録した訪日外国人。2019年のラグビーワールドカップや2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控えている今、企業にはこれまで以上にインバウンド対応の姿勢が求められています。

 そんな中、インバウンド市場と地方創生を目的とし、訪日外国人の満足度を高めるための商材・サービスが一堂に会する展示会「インバウンドマーケットEXPO2019」が2019年2月19日〜22日の期間、東京ビッグサイトにて開催されました。

 今回のインバウンドマーケットEXPOには102社149ものブースが出展、また4日間で30000人もの人が訪れる大盛況ぶりでした。

 今回の記事では2月22日に開催されたセミナー「今年から始まる、「ゴールデン・スポーツイヤーズ」!!これから熱い、訪日欧米豪人の攻略法大公開!」(講師:田熊力也さん/株式会社mov(訪日ラボ)インバウンド研究室 室長)より、大きなスポーツイベントを控える日本がインバウンドで効果を出すためのポイントついてレポートします。

株式会社mov(訪日ラボ)インバウンド研究室室長の田熊力也さん。「訪日ラボ」は国内最大級のインバウンドニュースサイト

なぜここまで急激に訪日外国人が増えたのか?

 2018年に3000万人を超え、2020年には4000万人を目指す訪日外国人。訪日外国人は2012年以降大幅な右肩上がりで増加しています。なぜここまで急激に訪日外国人が増えたのでしょうか? インバウンドビジネスの総合メディア「訪日ラボ」の田熊力也さんは3つの理由を挙げました。

 「第一にビザの緩和があります。中国ではこれまで団体旅行が中心でしたが、ビザの緩和により個人旅行の客層が増えています。その他、タイやマレーシア、フィリピン、インドネシアなどからのお客さんも増えています」

 「第二に世界の旅行人口が増えていることです。訪日外国人は増えていますが、世界的に見ると日本は極東であり日本への旅行者はまだまだ少ない。日本を訪れるのはベテランの旅行者が多いんですね。ライバルは世界の観光地。もっと日本を知ってもらう必要があります」

 「第三にLCCの就航が挙げられます。LCCを使えば日本まで数万円で来ることができます。ただLCCの路線を拡大するにはインバウンドだけでなくアウトバウンドも必要です。LCC定期便を増やすには日本人が海外に出なくてはなりません。自分たちは海外に行かないのに、日本に来てくださいというのはおかしいですよね」

 2018年には4兆5000億円に達したインバウンド消費額ですが、2020年にはこれを8兆円にしようとしていることについて「実現するにはいかにお金を落としてもらうかを考えなくてはなりません。現在は一人あたり平均15万円、これを20万円に伸ばすための方法が必要です。欧米圏の外国人はコト消費、アジア圏はモノ消費が多いというところにヒントがありそうです」と田熊さんは話しました。

2018年には4兆5000億円に達したインバウンド消費額だが、2020年には8兆円を目標としている。実現するには一人あたり平均15万円、これを20万円に伸ばすための方法が必要となる。「欧米圏の外国人はコト消費、アジア圏はモノ消費が多いというところにヒントがある」(田熊さん)

2019年のインバウンドはこうなる!

 このように訪日外国人が大きく増加している中、2019年のインバウンド事情はどうなるのでしょうか。田熊さんは電子商取引法、働き方改革、ラグビーワールドカップの3つのキーワードを挙げました。

 「電子商取引法」は2019年1月より中国で施行された中華人民共和国電子商取引法のことです。この法律の施行により個人での商品販売(転売)が難しくなったため、中国人訪日客による家電量販店やドラッグストアでの買い物が激減していると田熊さんは説明します。

 「家電や日用品は越境ECでも売れるようになっているので、今後転売目的の買い物は減ると予想されます。結果的に一人あたりの旅行単価は減りますが、日本を訪れる人数は増えています。中国からの訪日客はまだまだ伸びると見ています」

 2つ目のキーワード「働き方改革」は2018年11月に閣議決定された入国管理法改正に関わる話です。日本で働く外国人が増えることはインバウンド対応力の強化に繋がり、結果として満足度が向上することが期待されます。ただし、コミュニケーションの問題や各種手続き、住まいや生活面の支援など、外国人が働きやすい環境を作ることが求められます。

 「在日外国人が増えると、VFR旅行(親戚や友人を訪ねる旅)が促進されるようになります。観光や買い物以外の渡航目的が増えることにも注目してください」

 最後は「ラグビーワールドカップ」。2019年9月から11月にかけ、日本各地で開催されるこのイベントには40万人もの外国人が訪れると言われています。ただし、試合そのものは日中が多いため「お酒を飲みながら観戦することの多い欧米豪人に合わせ、昼間からお酒を飲める環境やパブリックビューイングの整備や告知が必要になるでしょう」と田熊さんは話します。

2019年のインバウンド事情はどうなるのか? 田熊さんは「電子商取引法」「働き方改革」「ラグビーワールドカップ」の3つのキーワードを挙げた

ビッグイベントを活用するには?

 2019年から2020年にかけ、大きなスポーツイベントが開催される日本。これらのビッグイベントをうまく活用したいものです。これらのイベントについて田熊さんは次のように話しました。

 「ラグビーやオリンピック・パラリンピックで世界のメディアが日本に注目します。そしてメディアは大会そのものだけでなく、日本の街やお店についても紹介するので、日本という極東の国に興味を持つ人が増えます。さらにオリンピック後も長きに渡って観光需要が喚起されるので、イベントのメリットは非常に大きいと言えます」

 イベントを最大限に活用するためのプロモーションについて「日本はプロモーションに予算をかけますが、リサーチや分析にかける予算が少ない傾向にあります。ラグビーワールドカップでメインとなるのは欧米豪州の人です。これまでとはやり方が違うことに注意が必要です。例えばアジアの人は旅行の参考にブログを見ますが、欧米豪の人は口コミサイトを見たりVFR旅行が多い。情報源の根っこを押さえることが重要です」と注意点を強調する田熊さん。

 最後に2019年に注目される業種・業態についてホテルとキャッシュレスの2つを挙げた田熊さんは「ホテルの建設ラッシュが進んでいますが、外国人対応可能な人材の確保が課題です。AIチャットボットや、忘れ物を国際配送するサービスを浸透させ、稼働率の不安を解消する必要があります。また日本ではいまいち浸透しないキャッシュレスについても、各国の習慣や流行を理解することで取り組み方が変わってきます。これらの事例は訪日ラボで紹介していますので、ぜひ活用してください」と締めくくりました。
 
 大きなイベントを控え、多くの訪日外国人が訪れることが期待されています。ターゲットとなる訪日外国人の特性をよく理解し、適切なプロモーションと環境整備をすることこそが、チャンスをものにするために必要なファクターだと言えるでしょう。

インバウンド市場と地方創生を目的とし、訪日外国人の満足度を高めるための商材・サービスが一堂に会する展示会「インバウンドマーケットEXPO2019」。4日間で30000人もの来場者が訪れた

(レポーター/HANJO HANJO編集部 川口裕樹)

★関連リンク

★インバウンドマーケットEXPO2019 特集

  • 同じ方法はもう通用しない。 2019年、インバウンドを再定義せよ!

    訪日外国人は2018年に3000万人を超え、一見するとインバウンド産業は順調に伸びているように見えますが、実は様々な課題を抱えています。消費額は足踏み状態であり、一人あたりの旅行消費額はマイナスになっています。訪日外国人が訪れるのは東京や京都、北海道など特定地域に片寄っており、地方への分散には至っていません。2020という目標を前に、インバウンドビジネスは意識のアップデートを迫られています。

  • 外国人雇用元年! いま経営者はどう対応すべきなのか?

    外国人労働者の雇用を増やす手段として政府が打ち出した入管法改正は、人材不足解消の一助として経営者には朗報となりました。では、在留外国人を雇用する場合に気をつけなければならないポイントは何でしょうか? 外国人販売スタッフの人材確保において重要となる指標や現在の外国人就労状況などを解説します。

  • 『YOUは何しに日本へ?』プロデューサーが見た、外国人が日本に来る理由とは?

    インバウンドを象徴する現象のひとつに、メディアにおける番組の増加が挙げられます。その先駆けとなったのが『YOUは何しに日本へ?』(テレビ東京系列)です。番組開始から6年、密着取材から受ける印象では、訪日客の状況に変化が生まれているようです。それは「“日本二周目”の人たちが増えた」点にあると、番組担当プロデューサーは話します。

  • 進化し続ける多言語サービス! 訪日外国人とのコミュニケーション解決ツール

    インバウンドツーリズム元年と言われたのが2015年。当時約2000万人だった訪日外国人旅行者数はいまや3119万人。訪日客が日本に求めるものの質や内容も変化しています。かつてはWifiなどハード面での不満が数多くありましたが、現在では言語面、コミュニケーションなどソフト面での不満へシフトしています。インバウンド対応で必須の多言語ツール、その最新形サービスを2つ紹介します。

★おすすめ記事

  • もうインバウンド集客で悩まない!【第1回】

    インバウンドが増え続けています。全国の地方自治体やDMOなどの関係機関は、幅広い地域からの訪日外国人客を誘致するためにウェブサイトの外国語対応や、集客のためのプロモーションなど、情報発信に追われているはず。新連載では、訪日外国人に対して情報発信をしたいが、有効な手段が分からないというインバウンドマーケティング担当者のために、「今だからこそ実施すべき、動画広告のゼロから100まで」を、分かりやすくハウツーでご紹介していきします。

  • アニメツーリズム〜集客だけでなく地域資源の消費につなげよ!

    2020に向けてさらに加速が期待されるインバウンド。世界最大級の旅の展示会「ツーリズムEXPOジャパン」では様々な議論が交わされましたが、今回はクールジャパン・コンテンツのひとつアニメを活用したインバウンドについて。「アニメツーリズム」を地域においてさらにビジネス化するためにはどうすればいいのでしょうか? アニメツーリズム協会のお二方の話から抽出します。

執筆者: HANJOHANJO編集部 - HANJOHANJO編集者
日本の中小企業の皆さんにとってビジネスのヒントになる「ヒト・モノ・カネ・情報」を探し出し、日々オリジナルな視点で記事を取材、編集してお届けします。中小企業の魅力をあますところなく伝えます。

インバウンドマーケットEXPO2019新着記事