同じ方法はもう通用しない。 2019年、インバウンドを再定義せよ!

勝ち続けるための6つのキーワードと条件/インバウンドマーケットEXPO2019

2019年3月27日
訪日外国人は2018年に3000万人を超え、一見するとインバウンド産業は順調に伸びているように見えますが、実は様々な課題を抱えています。消費額は足踏み状態であり、一人あたりの旅行消費額はマイナスになっています。訪日外国人が訪れるのは東京や京都、北海道など特定地域に片寄っており、地方への分散には至っていません。2020という目標を前に、インバウンドビジネスは意識のアップデートを迫られています。
 年々増加を続け、2018年には3119万人を記録した訪日外国人。2019年のラグビーワールドカップや2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控えている今、企業にはこれまで以上にインバウンド対応の姿勢が求められています。

 そんな中、インバウンド市場と地方創生を目的とし、訪日外国人の満足度を高めるための商材・サービスが一堂に会する展示会「インバウンドマーケットEXPO2019」が2019年2月19日〜22日の期間、東京ビッグサイトにて開催されました。

 今回のインバウンドマーケットEXPOには102社149ものブースが出展、また4日間で30000人もの人が訪れる大盛況ぶりでした。

 本日の記事では2月21日に開催されたセミナー「観光立国革命〜2019年のインバウンドを占う〜」(講師:中村好明さん/一般社団法人日本インバウンド連合会 理事長)より、日本が観光立国として生き残るためのポイントについてレポートします。

一般社団法人日本インバウンド連合会理事長 中村好明さん。日本のインバウンドを長く牽引してきた第一人者

2019年のインバウンド、6つのキーワード

 訪日外国人は2018年に3000万人を超え、一見するとインバウンド産業は順調に伸びているように見えますが、実は様々な課題を抱えています。

 「訪日客数は伸びたが、消費額は足踏み状態。一人あたりの旅行消費額はマイナスになっています。また訪日外国人が訪れるのは東京や京都、北海道など特定地域に片寄っており、今後どのように地方へ分散させるかが課題です」と、一般社団法人日本インバウンド連合会理事長の中村好明さんは話します。

 中村さんは2018年のインバウンド事情を振り返り「まずはレジリエンス(防災と災害からの復興力)の重要性です。2018年は自然災害が多くありましたが、同時に災害時の脆弱性が露呈してしまいました。次にインバウンドのワールドワイド化により、東アジアから欧米豪州とASEAN市場が台頭してきています。またオーバーツーリズムの問題化やデジタル化・キャッシュレス化の波などさまざまな動きが見られました」と総括しました。

 2018年のインバウンド事情を踏まえ、中村さんは2019年のインバウンドに関して6つのキーワードを挙げました。

 「1つ目は二極化、優勝劣敗です。本気の挑戦をした人、より高い付加価値を提供した人だけが勝ち残ります。2つ目はデジタルシフト。デジタルマーケティングの専門家がいない企業や地域は厳しくなるでしょう。3つ目はラグビーワールドカップと東京オリンピック・パラリンピック。特需を追うのではなく、世界から注目されるという視点で対応できるかが重要です。4つ目はFIT化。団体から個人旅行へシフトしているので、いかにリピーターを作るかが求められます。5つ目は東アジアの人口減少。韓国・台湾の人口が減少し、中国も8年後には人口が減り始めると言われています。これかrはインバウンド一辺倒ではなく、双方向ツーリズムでバランスをとる必要があります。最後は人による差別化戦略。2019年はこれまでとは全く違うフェイズに来ていることを認識し、人材を育成しなくてはいけません」

2019年のインバウンドにおける6つのキーワードは、「二極化」「デジタルシフト」「ラグビーW杯と東京オリパラ」「FIT化」「東アジアの人口減少」「人による差別化」

これからのインバウンド成功に必要な6つの条件

 インバウンドを取り巻く状況が大きく変化しつつある今、インバウンド対応を成功させるためには何が必要なのでしょうか。中村さんはインバウンド成功の条件には次の6カ条が必要だと説明しました。

 1つ目はデジタルマーケティングの機能強化。「5G革命やスマホ決済によるデジタルシフトのために経営資源を投入し、専門人材を育成・採用することが必要です」

 2つ目はハイエンド市場対応。「数だけでなく質も重視することが求められます。例えばラグビーワールドカップ。サッカーに比べ、ラグビーは欧米豪州のラグジュアリーなファンが多いという特徴があります。料理店であれば一品だけ高級料理を出す、ホテルであれば一室だけ高級な部屋を用意するといった工夫が考えられます」

 3つ目はデスティネーションマネジメント。「デスティネーションを観光地と捉えるのではなく、モノ・カネ・ヒトの最終目的地と捉えてください」

 4つ目はシビックプライドの形成。「ラグビーやオリンピック・パラリンピックのようなビッグイベントは、自分の街だけでなく近隣の街と手を組んで世界のお客様と触れ合うことができるチャンスです」

 5つ目は相互撹拌機能の創出。「成功している企業は、自分だけよければ良いという考えを持たずパートナーを組むケースが多く見られます。例えばベジタリアン対応をしている自分の店がいっぱいのときは、他のベジタリアン対応の店に案内するといった相互協力が必要です」

 6つ目はスポークからハブへ。「自分の街にだけ来てほしいというパラダイムから、お互いがハブとなるパラダイム・シフトが必要です」

2018年までは特に戦略がなくても利益を上げることができていたが、市場が安定成長に入りつつある今、同じ方法は通用しなくなってきている

2019年はインバウンドを再定義せよ!

 2018年まではインバウンド市場の急成長が追い風となり、特に戦略がなくても利益を上げることができていました。しかし市場が安定成長に入りつつある今、同じ方法は通用しなくなってきていると言えるでしょう。

 そこで中村さんは「インバウンドを再定義しよう」と提案します。訪日外国人観光客という狭義のインバウンドから、日本にやってくる人や物、金、情報、ベクトルのすべてを包括する広義のインバウンドという捉え方こそが、地域の生き残り戦略につながると力説します。

 また中村さんは「観光の再定義」についても言及しました。「旅というのはレジャーだけではありません。ビジネス出張やMICE(多くの集客が見込まれるビジネスイベント)、VFR(友人や親戚の訪問)も旅に含まれます。観光イコールレジャーではなく、観光イコール旅という定義が必要です」

 最後に中村さんは「理念やビジョンが価値を生み、その価値がお金に変わります。今後のインバウンド市場では優れたビジョンを持つ人が勝ち、ビジョンのない人は負ける優勝劣敗の時代に入ります。観光立国は哲学立国、ぜひ哲学のあるビジネスをしてください」と締めくくりました。

 訪日外国人の数が増えているからと安心せず、インバウンド特需はすでに終わったものと考え、新たな戦略をもってビジネスに当たる。これこそが、2019年インバウンドビジネス成功の鍵であると言えそうです。

インバウンド市場と地方創生を目的とし、訪日外国人の満足度を高めるための商材・サービスが一堂に会する展示会「インバウンドマーケットEXPO2019」。4日間で30000人もの来場者が訪れた

(レポーター/HANJO HANJO編集部 川口裕樹)

★関連リンク

★インバウンドマーケットEXPO2019 特集

  • 外国人雇用元年! いま経営者はどう対応すべきなのか?

    外国人労働者の雇用を増やす手段として政府が打ち出した入管法改正は、人材不足解消の一助として経営者には朗報となりました。では、在留外国人を雇用する場合に気をつけなければならないポイントは何でしょうか? 外国人販売スタッフの人材確保において重要となる指標や現在の外国人就労状況などを解説します。

  • 『YOUは何しに日本へ?』プロデューサーが見た、外国人が日本に来る理由とは?

    インバウンドを象徴する現象のひとつに、メディアにおける番組の増加が挙げられます。その先駆けとなったのが『YOUは何しに日本へ?』(テレビ東京系列)です。番組開始から6年、密着取材から受ける印象では、訪日客の状況に変化が生まれているようです。それは「“日本二周目”の人たちが増えた」点にあると、番組担当プロデューサーは話します。

  • 進化し続ける多言語サービス! 訪日外国人とのコミュニケーション解決ツール

    インバウンドツーリズム元年と言われたのが2015年。当時約2000万人だった訪日外国人旅行者数はいまや3119万人。訪日客が日本に求めるものの質や内容も変化しています。かつてはWifiなどハード面での不満が数多くありましたが、現在では言語面、コミュニケーションなどソフト面での不満へシフトしています。インバウンド対応で必須の多言語ツール、その最新形サービスを2つ紹介します。

★おすすめ記事

  • 「せとうちDMO」から考える、地方のインバウンド・マーケティング最前線!

    2020に向けてさらに加速が期待されるインバウンド。東京や京都だけでなく、地方への集客が観光立国・日本の鍵を握ります。世界最大級の旅の展示会「ツーリズムEXPOジャパン」では様々な議論が交わされましたが、今回はそのなかから地方へのインバウンド事例「せとうちDMO」から成功への道筋を明らかにしていきます。(このシリーズは7回にわたって紹介します)

  • もうインバウンド集客で悩まない!【第2回】

    訪日外国人に対して情報発信をしたいが、有効な手段が分からないというインバウンドマーケティング担当者のために、「今だからこそ実施すべき、動画広告のゼロから100まで」を、分かりやすくハウツーでご紹介する新連載。第2回では、兵庫県豊岡市・城崎温泉の動画プロモーションの成功事例から押さえるべきツボをピックアップします。

執筆者: HANJOHANJO編集部 - HANJOHANJO編集者
日本の中小企業の皆さんにとってビジネスのヒントになる「ヒト・モノ・カネ・情報」を探し出し、日々オリジナルな視点で記事を取材、編集してお届けします。中小企業の魅力をあますところなく伝えます。

イベントレポート新着記事

  • ニッポンブランドの食品をもっと世界へ! 商品開発、流通からブランディングまで

    先日終えたばかりの日米貿易交渉の初協議。いまやTPPやEPAといったワードが日常で当たり前のように使われるようになってきました。日本の中小企業は海外進出にこれまであまり積極的ではない傾向にありましたが、その壁を一刻も早く打ち破らなければならない状況にあります。今回の記事では日本の食品を海外にいかに広めるかについて、47CLUBやJETROでの施策や実績をもとにその課題解決法をひもといていきます。

    2019年4月19日

    イベントレポート

  • 「求職者はお客様!」 飲食店の離職率を下げるための面接とは?

    人手不足が深刻です。中でも飲食業界は人材が定着しにくく、また最も採用が難しい業界と言われています。人材が定着するかどうかは、応募してもらう前段階のお店の対応が鍵を握っています。飲食店の求人への応募者は、まず自分が働こうとしているお店のスタッフやウェブでの対応をよく見ているからです。

    2019年4月17日

    イベントレポート

  • 地域金融機関&取引先が全国・世界につながっていく。Big Advanceがさらなる進化!

    「金融サービス革命で地域を幸せに」をコンセプトに、地域金融機関の取引先企業ネットワークとIT企業の技術を融合し、経営に関わる情報をワンストップで提供するクラウドサービス「Big Advance」。横浜信用金庫が昨年4月に導入した「Yokohama Big Advance」から始まり、約1年で全国の9金融機関が参加、共同運営で広域連携へと広がることになりました。

    2019年4月10日

    イベントレポート

  • なぜあなたの情報発信は訪日外国人に刺さらないのか?

    外国人旅行客を呼び込むためには積極的な情報発信が欠かせません。しかし外国人の心をつかむためには、彼らの求めている情報を適切な形で発信する必要があります。それでは外国人はどのような情報を求めているのでしょうか? 訪日外国人向けウェブマガジン「MATCHA」からのレポートです。

    2019年4月5日

    イベントレポート

  • ベテラン訪日客の増加にどう対応する? キーワードは「軽量化」と「ストレスフリー」

    ラグビーワールドカップはこれからの日本のインバウンドを大きく変えるほどのインパクトを持っています。ラグビーの観戦に訪れる40万人はほとんどが欧米豪州からの訪日客だからです。一方、「訪日旅行者の成熟化」や「中国インバウンドの変調」などによりインバウンド消費が減速していることは大きな懸念材料です。ではいかにしてマイナスをプラスに変えればいいのでしょうか? そのヒントを探ります。

    2019年4月3日

    イベントレポート

  • もっと女性のバス運転手を!/第2回女性バス運転手の会レポート

    慢性的な運転手不足の状況にあるバス業界。人材登用にあたっては女性の活躍が不可欠ですが、バス運転手のうち女性の比率は1%台しかありません。そんな中、バス運転手不足問題の解決と、働き方改革に関する女性採用促進を目的とし、現役女性バス運転手とバス運転手に興味のある女性が語り合うイベント「第2回 女性バス運転手の会」が開催されました。

    2019年4月1日

    イベントレポート

  • スポーツイベントは大きなチャンス! 訪日欧米豪人を取り込むための秘訣

    今年から2020年にかけ、ラグビーワールドカップ、東京オリンピック・パラリンピックという大きなスポーツイベントが開催される日本。訪日観光客の消費を促すためには、これらのビッグイベントをスポーツツーリズムへと昇華させたいところです。ここで意識しておくことはリサーチや分析。コト消費がメインである欧米圏の外国人に対してはこれまでのやり方を変えることで効果は上がります。プロモーションの前に情報源の根っこを押さえることが重要なのです。

    2019年3月29日

    イベントレポート

  • 外国人雇用元年! いま経営者はどう対応すべきなのか?

    外国人労働者の雇用を増やす手段として政府が打ち出した入管法改正は、人材不足解消の一助として経営者には朗報となりました。では、在留外国人を雇用する場合に気をつけなければならないポイントは何でしょうか? 外国人販売スタッフの人材確保において重要となる指標や現在の外国人就労状況などを解説します。

    2019年3月25日

    イベントレポート