訪日外国人が本当に買いたいものは何か?「ソーシャルリスニング」で解決する消費トレンド

ソーシャルメディアやSNSなどを分析し消費者のニーズを知る「ソリッドインテリジェンス」/インバウンドマーケットEXPO2019

2019年3月13日
マーケティングの基本はソーシャルメディア分析」の時代です。インバウンドビジネスを成功に導くためにもSNSやブログをどう読み込むかが問われています。その方法のひとつが、ソーシャルメディアやSNSなどを分析し消費者のニーズを知る「ソーシャルリスニング」です。
 年々増加を続け、2018年には3119万人を記録した訪日外国人。2019年のラグビーワールドカップや2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控えている今、企業にはこれまで以上にインバウンド対応の姿勢が求められています。

 そんな中、インバウンド市場と地方創生を目的とし、訪日外国人の満足度を高めるための商材・サービスが一堂に会する展示会「インバウンドマーケットEXPO2019」が2019年2月19日〜22日の期間、東京ビッグサイトにて開催されました。

 今回のインバウンドマーケットEXPOには102社149ものブースが出展、また4日間で30000人もの人が訪れる大盛況ぶりでした。

 今回の記事では2月21日に開催されたセミナー「アジア各国のソーシャルメディア・SNS分析から見える日本で買いたいものとは!?」(講師:丸野敬さん/ソリッドインテリジェンス株式会社 代表取締役)より、訪日外国人の消費事情についてレポートします。

海外ソーシャルメディアを中心に調査・分析を行うソリッドインテリジェンス株式会社 代表取締役の丸野敬さん

ソーシャルリスニングとは、SNSなどを分析し消費者ニーズを知る方法

 「少しソーシャルリスニングをすればだいたい分かります」

 そう話すのは海外ソーシャルメディアを中心に調査・分析を行うソリッドインテリジェンス株式会社代表取締役の丸野敬さん。

 2018年に3119万人を達成した訪日外国人、その消費額は4兆5000億円と巨大な市場に拡大しています。さらに政府主導で空港の発着回数を増やすなど、今後さらに大きなマーケットに育っていくことが予想されます。しかし、いつまでもこの好況が続くとは限りません。企業には今のうちに打てる手を打っておく努力が求められます。

 そこで活用したいのがソーシャルリスニング。ソーシャルリスニングとはソーシャルメディアやSNSなどを分析し消費者のニーズを知る方法です。

 「ソーシャルメディアというとSNSをイメージしがちですが、Web上で個人が書き込み、リアクションできる場所はすべてソーシャルメディアになります。ブログや口コミサイト、動画共有サイトのほか、最近ではニュースサイトもソーシャルメディアの性質を持ち始めています。ソーシャルデータはオープンな環境に顕在化した過去データとも言えるので、目的に応じて事実を確認するのに非常に適しています」

 これらソーシャルメディアを分析することで、消費者のニーズなどが見えてくると丸野さんは話します。

「ソーシャルメディアを分析することで、訪日外国人が日本でどんな商品を買い、どのように使っているか、また海外での評判なども分かります」(丸野さん)

個人発信の情報は信頼性が高い

 ではなぜ、個人の発信するソーシャルメディアを分析することが有効なのでしょうか?

 丸野さんはオバマ前アメリカ大統領のスピーチを例として出しました。「オバマ前大統領のスピーチの様子は各メディアだけでなく、個人が動画を撮影し、さらに個人の意見を付けてSNSに投稿するというケースが見られました。個人の発信は信頼性が高く、場合によってはメディアよりも重要視される傾向にあります」

 確かに各メディアの情報にはさまざまなバイアスがかかることもあり、その点において個人の発信は信頼性が高いと言えます。例えばある商品について調べるときに、メディア情報だけでなく口コミサイトや個人ブログなどから情報を得る人が増えていることからも、個人が発信する情報の信頼性の高さがうかがえます。

 「主に個人が発信するオープンな情報を分析することで、ターゲットとなるユーザー業界におけるネット上の評判やトレンド、個人の嗜好を把握することができます。したがって訪日外国人が日本でどんな商品を買い、どのように使っているか、また海外での評判などもソーシャルメディアを分析することで分かるようになります」と丸野さんは強調します。

 「海外、特に東南アジアでは情報の取得にFacebookのようなSNSを経由して得ることが多く、また年配の人もアクティブにソーシャルメディアを使っています。そして、得られた情報に対してブログや掲示板のようなソーシャルメディアを通じて、他の個人がどのような意見や感想をもっているのか検索をして確認します。ですので、今やソーシャルメディアは検索プラットフォームとして活用されていると言えます」

キーワードをもとにソーシャルメディアを分析し、海外ではどのように使われているのか、またどのようなニーズがあるのかを知ることができるソーシャルリスニングだ

表面上はわかりにくい事象も、ソーシャルリスニングだと把握できる

 それでは訪日外国人の消費事情はどうなのでしょうか。例えば「爆買い」の代表であった中国人観光客ですが、2019年1月に施行された電子商取引法によって何か影響は出ているのでしょうか。

 「電子商取引法が施行されましたが、今年の春節は今までどおり化粧品や日用品などを買う人が多く、表面的にはあまり変わっていません。ただし、SNS上では代理購入に関する投稿件数は激減しています」。表面上はわかりにくい事象でも、ソーシャルリスニングをすれば把握することができることを丸野さんは強調します。

 また、その他の国については「インドネシアではキャラクター関連、伝統工芸品、食べ物が人気です。ただし食べ物に関してはハラルフードが日本製でないことに対する投稿が目立ちます。せっかく日本に来たのに食べ物が外国製だということにがっかりしているようです。またタイでは日本の定番お菓子のほか、いちごが非常に人気のほか、近年深刻化しているPM2.5の対策として、有害な物質をブロックできるスプレーやマスクの人気が高まっています」

 PM2.5についてはタイ以外のアジア諸国でも問題意識が高まっており、品質の良い日本製のマスクが注目されているようです。

 このような人気のお土産についてもキーワードをもとにソーシャルメディアを分析し、海外ではどのように使われているのか、またどのようなニーズがあるのかを知ることができるソーシャルリスニング。

 最後に丸野さんは「キーワードを段階的に掘っていけば、もっとよく分かるようになります。国ごと、年代ごとによって使うソーシャルメディアは異なるため、データの取り方や設計が大事になってきます。ぜひソーシャルリスニングを活用してください」と締めくくりました。

 消費者の正直な意見がオープンになっているソーシャルメディア。訪日外国人の商品に対するニーズや使い方をソーシャルリスニングで把握し、うまく活かすことはこれからのインバウンドビジネスにとって欠かせないものになるのではないでしょうか。

インバウンド市場と地方創生を目的とし、訪日外国人の満足度を高めるための商材・サービスが一堂に会する展示会「インバウンドマーケットEXPO2019」。4日間で30000人もの来場者が訪れた

(レポーター/HANJO HANJO編集部 川口裕樹)

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執筆者: HANJOHANJO編集部 - HANJOHANJO編集者
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