もうインバウンド集客で悩まない!【第3回】

外国人観光客を5年で40倍にした自治体もやっている、動画プロモーションの始め方

2019年2月22日
訪日外国人に対して情報発信をしたいが、有効な手段が分からないというインバウンドマーケティング担当者のために、「今だからこそ実施すべき、動画広告のゼロから100まで」を、分かりやすくハウツーでご紹介する連載。第3回では「バズる動画=誘客につながる施策」という“勘違い”をなくすためにすべきことを紹介します。

バズる動画が成功なのか!? インバウンドの“集客”につなげるための動画プロモーションとは

 第2回では城崎温泉で訪問意向前年度比175%増という成果についてご紹介したが、第3回では、そもそも動画プロモーションにおける成功とはなにかについて一緒に考えたい。

 インターネットニュースやSNSに見出しが躍る「某自治体PR動画、●●万回再生を突破!」を目にすると、これはすごい!どんな動画だろうか、自分も観てみたいという好奇心にかられるのは人の常。それによって、再生回数はさらにうなぎ上り、話題がさらに話題を呼ぶことでバズ動画はここ数年自治体間の注目の的となった。しかし、話題の中心は再生回数に終始し、実際に自治体の訪問客増やUターン・Iターンに繋がったかどうかという、キャンペーンの本質的な成果まで振り返られるケースは少ない。本稿では、バズった動画=成功したプロモーションと言えるかどうかについて、考えてみたい。

 現在、生産性の向上や新サービスの創出などを目的に様々な業界、企業がデジタル化に取り組んでいる。国民総スマホ時代に突入しつつある今、マーケティングにおいても、消費者とのタッチポイントにデジタルを活用しない手はない。

 2020年という一つの節目に向け、インバウンドを呼びたい地方自治体やインバウンドマーケティング担当者に対して、今注目されている「デジタル動画広告」のハウツーを解説していく本連載。第一回では“そもそもデジタル広告とはなにか”といった基本について、第2回では兵庫県城崎温泉で訪問意向が前年度比175%増という成果を出した事例についてお話してきた。そして第3回となる今回は、近年流行し、すでに施策として定着化している「デジタル動画広告」は、なにをもって成功だと言えるのか、その“ゴール”の設定について、お話できればと思う。そして、第2回に続き、豊岡市大交流課課長の谷口雄彦氏と、豊岡版DMO(一社)豊岡観光イノベーションのアドバイザーであり、データストラテジー株式会社代表取締役兼CEOの武田元彦氏に実施したインタビューをもとに、デジタル動画広告施策に対する知見を当社でまとめ、ご紹介していく。

SNSと“バズ動画”

 デジタルマーケティングを語るときに、SNSはもはや欠かせないツールとなった。情報を自分とつながっている人に拡散・共有する“シェア”される様子を、英語では「buzz(ざわめく、ウワサをする)」と表現され、日本でも「バズる」、「バズった」という表現が一般化した。SNSの後押しもあり、地方創生のPRにおいても、多くの視聴者にシェアされ話題作りや認知獲得を目的とした「バズ動画」、「バイラル動画」がフォーマット化し、ご当地ムービーとして観光資源のプロモーションで活用され始めた。代表的なものとして、宮崎県小林市の移住促進動画「ンダモシタン小林」、大分県の「おんせん県おおいた新フロジェクト シンフロ」など、一度は目にしたことはないだろうか。再生回数200万回超えのこれらのPR動画がもたらして経済効果は、それぞれ、10億円と35億円にものぼると言われている。

“再生回数”を目的とした「もったいない」施策

 一方で、いまや年間700本程にものぼるという地方自治体が作るPR動画は、日の目を見ないものも少なくない。地方自治体が独自の動画を製作する潮流のなかで、「●●万回再生を突破した〜」といった枕詞がメディアに数多く紹介されることにより、後に続く自治体は、動画の“再生回数”をプロモーションの成否を問う試金石とみなすようになった。

 これまで堅いイメージであった地方自治体が、試行錯誤して話題を呼ぶ動画マーケティングに取り組むこと自体は認知獲得に寄与し、集客というゴールに向かって大きく一歩前進したと言える。しかし、動画の再生回数に一喜一憂し、その後の導線や受け皿作りが間に合っていないのが実態と言える。

動画の受け皿づくりはできていますか?

 全国の多くの地方自治体やマーケティング担当者には、「もっと多くの人に知ってもらいたい(認知)」「まちの魅力について知ってほしい(興味関心)」など、様々な目的はあるものの、最終的には「自分たちのまちに来てほしい」というインバウンドがもたらす経済効果に“ゴール”に集約されるだろう。本連載第1回では、施策を打つ前に「まちの現状を正しく把握し、適切なターゲットとゴールを定めること」の重要性を強調したが、PR動画と接触し、「日本にはこんな場所があるんだ!」と初めて気づいた国内外のユーザーがいざ検索行動を起こしたときに、アクセスできるウェブサイトがあるか、インバウンドの場合はそのウェブサイトは多言語化されているか、動画の中で紹介したコンテンツがについてもっと理解を深められるコンテンツは提供できているか。動画視聴後の消費者心理とそれに伴って取るであろうアクションに備えて、体系的な動線設計が伴わないプロモーションは、どんなに動画がバズっても、まちに大きな経済効果をもたらすことはないのである。

外国人観光客が5年で40倍になった豊岡市

 第2回でお話した兵庫県豊岡市では、海外の有名旅行ガイドブック「ロンリープラネット」で“Best Onsen Town”、「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」では2つ星観光地として掲載される日本屈指の名湯“城崎温泉”を観光資源として擁しており、但馬牛や津居山カニの産地としても知られていながら、集客に伸び悩んだ。そうした中、当時の豊岡市の海外における認知度がまだ低いことを認識し、もっとたくさんの訪日客に知ってもらうことをキャンペーン目的として設定した。データ分析を通して、カニのオフシーズンが国外の長期休暇とちょうど被ることを発見し、ターゲットを欧米国の日本文化関心層に設定する戦略的な集中と選択行った。同時に、メッセージは、“都市の喧騒から離れた隠れ家のような場所で過ごせること”を動画というフォーマットを通してプロモーションすることで方向を定めた。さらに、実施段階では、配信メディアの選定やPR動画の受け皿である外国版宿泊予約サイト “Visit Kinosaki” への動線を計画的に設計したことで、業界平均を大きく上回る視聴完了率やクリック率(CTR)といった定量成果を出し、ブランドリフト調査においても、動画を通して伝えたかったメッセージである「Hideaway(隠れ家)感」がしっかり視聴者に受け取ってもらえたことが調査結果で確認することができた。

【参考】豊岡市が実施した4方向性の施策

① PR動画の受け皿づくり(外国版宿泊予約サイト)
② 動線づくり(ランディングページ作成)
③ PR動画配信設計(海外メディアにおける発信力のある動画配信プラットフォーム活用)
④ 効果測定とプロモーション結果のPDCA(ウェブ解析、態度変容調査)

※詳細は「もうインバウンド集客で悩まない!」第2回をご参照ください。

再生回数はあくまではじめの一歩

 本連載ではこれまで三回にわたり、「地方自治体のインバウンド施策におけるデジタル動画施策」をテーマにお話してきた。近年、動画戦国時代と揶揄されるほど動画広告市場は急速な拡大傾向にあり、そのタッチポイントも、通勤通学途中のサイネージやパソコンのみならず、スマートフォンやはたまた家電まで広がるばかりだ。とはいえ、動画は、多くあるマーケティング手法の一フォーマットでしかなく、地方自治体によって取り組む課題は千差万別であり、隣まちで成功した動画プロモーションが必ずしも最適解ではない。

 手法ありきになる前にまず、地方自治体の共通ゴールである“集客”に向けて、今いる “立ち位置(as is)”を規定したい。“まちの名前を知らない人に対して、まず自分たちのまちの名前を知ってほしい(認知獲得)”、 もしくは、“ある程度知名度はあるから、知名度よりここにしかないまちの魅力について知ってもらい(興味関心)、または、”最後の一押しをして目的地として検討して欲しい(集客)”、”すでに一度訪れた観光客にリピートしてもらいたい(ロイヤリティ)“、どのフェーズが一番まちの現状や目指したい姿に近しいか客観的に分析した上で、適切なターゲット、伝えたいメッセージを明確化することが成功するプロモーションへの第一歩であり、手法はあとからついて来るものである。その上で、動画が最良の選択肢と判断した場合、定量的な「再生回数」を指標の一つとしつつも、その再生回数の「質」を評価するモノサシをぜひ持ちたい。誰によって再生されたのか、ちゃんと観て欲しい人に観てもらえたのか。観た人にまちとして伝えたいメッセージ、魅力は伝わったのか。動画視聴者の態度変容に寄与できたかどうか。その効果測定する適切な指標設定をぜひ広告代理店に提案してもらえるようチャレンジし、PR動画とその再生回数を次の施策に着実につながる大きな一歩にしてもらいたいと考える。

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執筆者: 岩本香織 - GlassView Japan合同会社COO
ニューヨークに本拠地があり、グローバルでブランディング動画広告配信ソリューションを提供するGlassViewを日本に展開。入社以前は、日産自動車のグローバル商品戦略マーケティング部門を経て、消費者インサイトアナリストとして、世界戦略車を担当。広告主視点に立ったメディアプランニングやKPI設定、市場のニーズに即したB2Bやインバウンドプロモーションに特化したメニュー開発にも携わる。慶應義塾大学総合政策学部卒。台湾生まれ、日英中台湾語を話すマルチリンガル。

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