混迷の時代を生き残る会社の「社長力」とは?

会社に良い悪いはない。社長に良い悪いがある/中小企業 新ものづくり・新サービス展

2019年2月18日
「会社に良い悪いはない。社長に良い悪いがある」。そう言い切るのは株式会社小宮コンサルタンツ 代表取締役社長CEOの小宮一慶さん。大学教授として会計や経済の教育に携わる一方で、140冊以上の多岐にわたる著書を発表しています。「世の中には経営という仕事があります。この経営という仕事を知らない社長さんが意外なほど多い。経営の仕事とは『方向付け』『資源の最適配分』『人を動かす』の3つを実行することです」と小宮さんは話します。
 中小企業がものづくり補助金を活用して開発した新製品・サービス・技術などの成果が集結する「中小企業 新ものづくり・新サービス展」が2018年12月11~13日の期間、東京ビッグサイトで開催されました。

  今回の「中小企業新ものづくり・新サービス展」は、「医療・福祉・生活・サービス・その他」「情報・通信」「繊維・木材・ガラス・土石」「紙・紙加工・印刷」「農林水産・食品・建設・工事」「化学・石油・プラ・ゴム」「鉄鋼・金属製品」「機械器具製造」の8つのゾーンで構成され、総勢733社が出展、来場者は3日間で37000名を超す盛況ぶりでした。

 また中小企業の課題解決に役立つセミナーも多数開催され、事業のヒントを求める聴講者で賑わいました。

 今回の記事では12月13日に開催されたセミナー「今こそ経営の基本を徹底せよ! ~どんな時代もサバイバルする会社の“社長力”~」(講師:小宮一慶さん/株式会社小宮コンサルタンツ 代表取締役会長CEO)より、成功する経営の基本についてレポートします。

世の中には「経営」という仕事がある

株式会社小宮コンサルタンツ 代表取締役社長CEOの小宮一慶さん。小宮さんは1995年に小宮コンサルタンツを設立し、2005年からは大学教授として会計や経済の教育に携わる一方で、140冊以上の多岐にわたる著書を発表している

 「会社に良い悪いはない。社長に良い悪いがある」

 そう言い切るのは株式会社小宮コンサルタンツ 代表取締役社長CEOの小宮一慶さん。小宮さんは1995年に小宮コンサルタンツを設立し、2005年からは大学教授として会計や経済の教育に携わる一方で、140冊以上の多岐にわたる著書を発表しています。

 「世の中には経営という仕事があります。この経営という仕事を知らない社長さんが意外なほど多い。経営の仕事とは『方向付け』『資源の最適配分』『人を動かす』の3つを実行することです」と小宮さんは話します。

 まず方向付けとは、「何をやるか、何をやめるか」を決めること。次に資源の最適配分とは、公私混同をしないこと。つまりオーナー経営者だからといって、会社のお金を好きに使って良いわけではないということです。そして人を動かすとは、部下やお客様の気持ちになることができるか、自分が先頭に立って行動し、問題が起きたときには率先して責任を取ることができるかということです。

 この3つの中でも特に重要なのが方向付けであり、ここで業績の7割が決まると小宮さんは強調します。
 「社長の仕事は管理することだと考えている人が多いですが、管理は部長クラスでもできることです。社長は経営という仕事をしなくてはいけません」

マーケティングとイノベーションの2つだけが会社に利益をもたらす

小宮さんがあげたのがピーター・ドラッカーの「マーケティングとイノベーションの2つだけが会社に利益をもたらす」。経営者はこの両方をやることが求められている

 この方向付けについて、小宮さんはピーター・ドラッカーの「マーケティングとイノベーションの2つだけが会社に利益をもたらす」という言葉を挙げました。マーケティングとは客が求めている商品・サービスを見つけ提供すること、イノベーションとはやり方を根本的に変えることであり、経営者はこの両方をやることが求められているということです。

 そのためには他社との違いを作り出す必要があります。小宮さんは「QPS、すなわちクオリティ、プライス、サービスの3つの組み合わせの中から最適なものをお客様は選びます。ライバルのQPSを分析し、ライバルよりも良い条件のQPSを提供できればシェアを取ることができます。ただし、QPSは専門性がないと分かりません。また素直に、謙虚になってライバルや自社を見つめることができないと正しく把握することはできないでしょう」と説明しました。

 特に「素直に、謙虚に」という部分を小宮さんは強調しました。素直でない人は周りの人の話を聞かないため、人の知恵を活かすことができず、また人が話をしてくれなくなったり、手伝ってくれなくなったりするため、結果的にうまく回らなくなるからです。

 「常に自分で自分が謙虚か省みなくてはいけません。『実るほど頭を垂れる稲穂かな』――これはまさに経営者が心がけておくべき姿勢だと言えます」

強みを活かし、競合との差別化をせよ

「差別化ができるとお客様が来るようになる。そこで得られた儲けはさらなる差別化に投資すること」(小宮さん)

 小宮さんはQPSを上手く組み合わせ成功した事例として、熊本県の株式会社ウェディングボックスを挙げました。

 ウェディングボックスは着物のレンタルを事業とする会社です。もともと呉服の販売をしていたため、着物という強みがありました。しかし競合する会社は多く、着物や着付けだけでは差別化できないと考え、成人式に特製の写真集を作ることで差別化を図ったそうです。

 この事例について小宮さんは「差別化ができるとお客様が来るようになります。そこで得られた儲けはさらなる差別化に投資しなくてはなりません。そこで投資すべきは業界全体が抱えているクレームの解消。これが解消できれば業績は青天井で伸びます」と話しました。

 着物レンタル業界では、成人式の会場で着物の柄が被るという大きなクレームがありました。せっかくの晴れの舞台で他人と同じ柄の着物になってしまうと、一生の傷にもなりかねません。そこでウェディングボックスでは、自社独自の柄の着物を製造・管理することでその問題を解決。その結果、ウェディングボックスの利用者は右肩上がりで増え、業績はさらに伸びたそうです。

 さらにウェディングボックスでは二手三手先を読み、もともと狙っていたウェディング業界への布石として、成人式利用の客に有料の友の会への入会を勧めます。加入者は卒業式の袴が無料になるなどの特典を受けることができ、それが結婚式まで継続するという仕組みです。つまり5年、10年先の潜在顧客の抱き込みをしているというわけです。

 「差別化のヒントは別の業界でもなにか役に立つことはないか、という目線で見ることです。事例に挙げた成人式の写真集は、写真館のスタジオアリスからヒントを得ています。ヒントは眼の前に転がっていますが、見つけられるかどうかは各個人の熱意。そして人の話を素直に聞き入れる姿勢も大事です」と小宮さんは説明し、最後に「やるかやらないかを決めること、そしてQPSを決めること。この2点が社長にとって最も重要な仕事になります」と締めくくりました。

 「経営の基本は原理原則を押さえておくこと。原理原則とは事業の規模に関わらず、どんな会社にも通用するものです」と話した小宮さん。小手先のテクニックに頼るのではなく、経営者にとっての原理原則をきちんと押さえておくことこそが、成功の鍵を握っていると言えそうです。

中小企業がものづくり補助金を活用して開発した新製品・サービス・技術などの成果が集結する「中小企業 新ものづくり・新サービス展」。2018年12月11~13日の期間、東京ビッグサイトで開催された

(レポーター/HANJO HANJO編集部 川口裕樹)

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