「発足当時に匹敵する覚悟で、生産性運動を再起動する」/日本生産性本部 年頭会見

2019年の日本経済、激動の時代の重要課題とは何か?

2019年1月23日
1月9日に日本生産性本部の正副会長による年頭会見が開催されました。平成が終わり文字通り新しい時代の幕開けを迎える2019年、会長の茂木友三郎氏からは「発足当時に匹敵する覚悟をもって生産性運動を再起動する」という言葉とともに、5つの柱からなる日本生産性本部の中期運動目標が発表されました。
 日本生産性本部は、調査研究やセミナー等の開催を通して国民経済の生産性向上を図り、日本の経済発展、国民生活の向上および国際社会への貢献に寄与することを目的として1955年に発足された公益財団法人です。平成が終わり文字通り新しい時代の幕開けを迎える2019年ですが、1月9日には日本生産性本部の正副会長による年頭会見が開催されました。今回の記事では、その年頭会見の模様をリポートします。

日本生産性本部 茂木友三郎氏(キッコーマン 取締役名誉会長 取締役会議長)。「新時代への決意〜持続可能な社会へ〜」と題して所感を発表した(写真中央)

 ホテルニューオータニで開催された日本生産性本部の年頭会見では、会長の茂木友三郎氏(キッコーマン 取締役名誉会長 取締役会議長)が年頭の所感を発表するとともに、7名の副会長が、日本の重要課題についてそれぞれの立場からコメントを発表しました。

日本生産性本部発足当時に匹敵する覚悟で、生産性運動を再起動する

 茂木友三郎氏は「新時代への決意〜持続可能な社会へ〜」と題して所感を発表。アメリカを中心とした自国第一主義的な空気の蔓延や、米中対立の激化といった世界情勢の変化から話の端緒を開きました。そして、少子高齢化の進展や労働人口力の減少、巨額の財政赤字といった山積みの課題を前にして、経済社会の持続性がかつてないほど問われていることについて言及。そんな危機意識に満ちた現状認識のもと、茂木氏は「日本の経済社会を次世代に引き継ぎ、未来への責任を果たすためには、社会の活力となる生産性向上が不可欠」であると強調しました。
 そんな時代認識を前提に、「発足当時に匹敵する覚悟をもって生産性運動を再起動する」という言葉とともに、以下の5つの柱からなる日本生産性本部の中期運動目標が発表されました。

 1.生産性のハブ・プラットフォームとしての組織体制の構築
 2.社会経済システム改革に向けた合意形成活動の展開
 3.日本の人材戦略の再構築と中核人材の育成
 4.付加価値増大を軸とした生産性改革と「成長と分配の好循環」 の創出
 5.国際連携体制の構築

 来年3月には生産性運動が開始され65周年を迎えます。それを前にした今年は、「この5つの目標を実践し、内外に向けて本格的に発信を始める年にする」と茂木氏は述べました。新たな時代の幕開けという歴史の転換点において、人間性を尊重する生産性運動の精神を基軸として、持続可能な経済社会の実現にむけて全力で取り組んでいく――。そんな力強い宣言をもって、所感を締め括りました。

7名の副会長によるコメント

 続いて、7名の副会長が、この一年の日本の重要課題について、それぞれの問題意識からコメントを発表しました。

副会長 佐々木毅氏(元東京大学総長)

 最初にコメントを発表したのは佐々木毅氏(元東京大学総長)です。「いま世界各地で広がるポピュリズムという“ある種の伝染病”が、いつ日本に来るのか注意深く観察したい」と危機感を表明しながら、そのことが政治の在り方に少なからず影響を与える可能性を視野に入れておくべきだと述べました。

副会長 神津里季生氏(連合会長)

 神津里季生氏(連合会長)は、日本生産性本部の副会長と、連合会長という2つの立場が重なるところに絞って見解を提示。賃上げをはじめとした労働条件と働き方改革を重要な問題として捉えていると語りました。「生産性本部と連合で取り組みができないか、事務局ベースで要請を始めた」とのことで、これからの展開に注目が集まりそうです。

副会長 小島順彦氏(三菱商事相談役)

 世界各国の政治家や実業家がスイスに集い討議を行う「ダボス会議」にこれまで8回も出席している小島順彦氏(三菱商事相談役)は、「国際社会における日本の存在感を高めること」の重要性を説きました。また、これからの日本を担う若い世代がグローバルな環境下で活躍するためには「CURIOSITY(好奇心)」「CHALLENGE(挑戦)」「COMMUNICATION(コミュニケーション)」という「3つのC」と、プラスアルファとして「COURTESY(礼儀)」が大切なのだと話しました。

副会長 遠山敦子氏(トヨタ財団理事長)

 遠山敦子氏(トヨタ財団理事長)は、茂木会長の所感で発表された5つの中期運動目標の内、3つ目の「日本の人材戦略の再構築と中核人材の育成」を特に注力して考えていきたいと表明。少子高齢化やAIの発達が大きな変化をもたらす中で、「変化に応じられる人材やトップリーダーをどのようにつくっていくか」という人材戦略の重要性に言及しました。

副会長 増田寛也氏(東京大学大学院客員教授)

 増田寛也氏(東京大学大学院客員教授)は、日本古来の「緩急自在」という考え方を例に引きながら「デジタル技術が席巻しているが、“0か1か”といった二元論ではない考え方や見方を追求していきたい」とコメント。また、“情報化社会の次の社会”として近年提唱されている「ソサエティ5.0」にも触れつつ、自分たちが生きるフィジカルな空間をいかに豊かで魅力ある場としていけるのか――。その可能性も追求していきたいと語りました。

副会長 有富慶二氏(ヤマトホールディングス特別顧問)

 有富慶二氏(ヤマトホールディングス特別顧問)は、今年度は具体的な行動を起こしていく、という意思表明をした後、「特に欧米に比べて非常に遅れていると言われるサービス業分野における生産性の向上について、ベンチマークとなるような具体的な行動を起こし、水平展開していきたい」と続けました。

副会長 野中孝泰氏(全国労働組合生産性会議議長)

 野中孝泰氏(全国労働組合生産性会議議長)は3つの課題を挙げました。1つ目は「人間性を基礎とした生産性の精神を、日本社会全体の価値観として共有できないか」ということ。2つ目は「生産性に対する正しい理解を広めていく」ということ。そして3つ目は「生産性運動を通じて、人が持っている無限の可能性をいかに引き出すか。その環境をどうつくるか」ということ。「労使で、テーマによっては政労使で、徹底的に議論をして対応をしていきたい」とコメントを締め括りました。
 激動の時代の幕開けとなるであろう2019年。属している業界を問わず、未曾有の経営環境の変化に対してどの様に対応していくかを真剣に考え、行動していくことが求められます。その手がかりとなる問題意識や議題が提唱された日本生産性本部の年頭会見、険しい環境を乗り越えるための示唆に満ちた内容は今後、幾度となく読み返す必要がありそうです。

(レポーター/HANJO HANJO編集部 藤川貴弘)

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