地方で戦うための集客戦略とは? 工場テーマパーク「おやつタウン」の狙いを探る!

一人勝ちはダメ!、地元の施設や工場との連携、ソーシャルメディア時代に合ったCRM/レジャージャパン2018

2019年1月21日
地域活性化の手法のひとつとして「工場テーマパーク」が注目を集めています。特に食品製造業は消費者に近い存在であることから、工場を体験型のアミューズメント施設化するだけでなく、製品購入につながるブランディング効果も期待できるのが大きな特長です。今夏開業予定であるおやつカンパニーの「おやつタウン」から、工場テーマパークの集客戦略を探ります。

株式会社おやつタウン 常務取締役の嶋田亘克さん。オリエンタルランドでマーケティング部門に所属、東京ディズニーリゾートの集客を手がけ、同社退職後は上場企業での新規事業立ち上げやM&A、コンサルティングを行ってきた。2017年5月より現職

 テーマパークやライブ・演劇、レジャースポーツ産業を網羅した専門展「レジャージャパン2018」が2018年12月5~7日の期間、東京ビッグサイトで開催されました。

 「レジャージャパン2018」は、テーマパークやレジャー施設の開発・運営のための設備・サービスの専門展「テーマパークEXPO」、ライブハウス・劇場・ホール向けの設備・サービスの専門展「ライブ&シアターEXPO」、レジャースポーツ・アウトドア向け設備・機器・サービスの専門展「レジャー&アウトドアEXPO」の3つの展示会で構成され、合計150社以上が出展、来場者は3日間で18,902名を記録しました。

 各専門展のテーマに応じたセミナーも多数開催され、第一線で活躍している講師によりレジャー産業における最新トレンドのツボをおさえた講義が行われました。

 今回の記事では12月6日に開催されたセミナー「三重県津市に来夏誕生!ベビースター工場一体型テーマパーク「おやつタウン」」(講師:嶋田亘克さん/株式会社おやつタウン 常務取締役)より、地方でも戦っていくための集客戦略についてレポートします。

大人も子ども遊べる「おやつタウン」

 2019年夏、三重県津市に新たなテーマパーク「おやつタウン」が誕生します。おやつタウンはベビースターラーメンなどを手がける株式会社おやつカンパニーが、創業70周年の記念事業として開業する施設です。

 テーマを「たっぷり楽しい夢と幸せの提供」、コンセプトを「遊べる」「学べる」「創れる」としているおやつタウンですが、交通の便利な場所ではなく、なぜ三重県津市という場所にオープンするのでしょうか?

 株式会社おやつタウン常務取締役の嶋田さんは「三重県津市は正直言ってなにもない場所ですが、創業の地であり、地元への感謝の意味を込めておやつタウンの開業を決めました」と話します。嶋田さんは株式会社オリエンタルランドでマーケティング部門に所属、東京ディズニーリゾートの集客を手がけ、同社退職後は上場企業での新規事業立ち上げやM&A、コンサルティングを行ってきた経歴の持ち主。2017年5月に現職に就きました。

 おやつタウン開業に向け、マーケットリサーチを始めた嶋田さん。オリジナルのベビースター作り体験と工場見学というコンテンツには、当初新しいものが好きな10代後半から20代が多数反応したものの、おやつタウンの場所を提示すると反応は半分に減少。一方で場所を提示しても反応数が減らなかったのが小学3年生と幼稚園の子どもがいるファミリー層。多少の移動距離とお金をかけてでもぜひ行きたいという反応があったそうです。

 ただし一度来てもらうだけでなく、リピーターになってもらう施設にする必要があると考えた嶋田さんは、ターゲットである小学3年生を観察した結果、二つのことが見えてきたと話します。

 「一つは親子が一緒になって競争するものであること。小学1~2年生であれば親は遊ぶ姿を見ているだけですが、小学3年生であれば体力もあるので一緒になって遊ぶことができます。もう一つとして子どもは大人と同じ扱いをしてほしいということ。小学3年生にもなるとお子様ランチを食べずに大人と同じものを食べますよね。子供だけが楽しい施設ではなく、親も巻き込んで楽しませる。これが満足につながると考え、大人も子どもも平等に遊ぶことができるアスレチック施設を作ることにしました」

2018年12月5~7日の期間、東京ビッグサイトで開催された「レジャージャパン2018」。テーマパークやライブ・演劇、レジャースポーツ産業を網羅し、来場者は3日間で18,902名を記録した

東京ディズニーリゾートはなぜ高い集客力を維持できるのか?

 テーマパークに限らず、ビジネスにとって集客というのは重要な課題です。以前はオリエンタルランドでマーケティングを担当していた嶋田さん、東京ディズニーリゾートになぜ人が集まるのか、集客力の秘密について説明してくれました。

 「東京ディズニーリゾートはサービスの質が高いから人が集まると思われがちですが、じつは近年、サービスの評価を大きく下げています。しかも入場料もどんどん高くなっています。それでも入場者は右肩上がりで伸びています。高い集客力の代表的な理由は5つあります」

 まず歴史があるということ。東京ディズニーリゾートには時代や経験の積み上げがあり、安定した価値の提供が担保されています。入場料を払う以上は損をしたくない、安定した価値を求める人が多いということです。「おやつタウンは初年度は話題性で集客できますが、そこでいかに価値を提供し、リピーターにすることができるかが肝心です」

 次に毎年新しい発表を繰り返し、いつまでも完成しないテーマパークであること。「なぜディズニー映画はヒットするかというと、毎年新しいことをやらないと人は飽きてしまうからです。毎年映画を作ることで飽きる暇を与えないということですね。おやつタウンでは2年後、3年後に何をどう改善するか、新しい変化を提供できるかが鍵となります」

 3つ目は映画との連動。映画と連動した新しいアトラクションを用意し、集客の強化をしています。4つ目はSNS時代のリア充。ディズニーリゾートで遊ぶことは、他人から羨ましがられやすく、自分の満足にもなるのでSNSにアップしやすいということです。最後はパーク内の雰囲気がゲストの心理を醸成し、特別な時間を提供する非日常空間であること。

 これら5つの要素が東京ディズニーリゾートの集客力の強さだと嶋田さんは説明しました。

かつてオリエンタルランドでマーケティングを担当していた嶋田さん。東京ディズニーリゾートになぜ人が集まるのか、その集客力の秘密についても語ってくれた

ターゲットの明確化と求める価値を正しく見極めよ!

 しかしすべての施設が東京ディズニーリゾートのような施策をすることはできません。そこで嶋田さんは「誰でも実施できる施策」について「まずはターゲットを明確にした集客を行うこと。そしてターゲットが求めている価値を追求することです。同じ施設、エンターテインメントでもターゲットによって求めるものが違います。学生なら仲間との思い出づくりかもしれませんし、ファミリー層なら子どもとキャラクターのふれあう姿を求めるかもしれません。誰を、いつ、どこに集客したいかによって手段は変わってきます。集客したいターゲットにとって何が価値なのかを徹底的に考えることが必要となります」

 そんなおやつタウンの集客戦略として、嶋田さんは集客エリアをおやつタウンから片道70分と120分圏内に設定。また地元、京阪神、中京圏のファミリー層をターゲットの中心としているため、客足が落ちる平日は伊勢神宮の参拝に来ている観光客向けに道の駅として使うことを考えているそうです。

 最後に嶋田さんはおやつタウン成功のためのKFS(Key Factor of Success:成功要因の鍵)として次の3点を挙げて締めくくりました。

 「まずは点から面へ、おやつタウンだけでなく、地元の観光施設や工場と連携し、来園の意向を高めること。そして園内の原材料や商品の仕入れは極力県内から行い、県内消費を拡大する脱・一人勝ち、最後にソーシャルメディア時代に合ったCRMを構築すること。そのためにはおやつが持つ本当の価値である人と人の距離を縮めるというストーリー性に着目し、共感を集客につなげることを考えています」

 テーマパークに限らず、どんなビジネスにおいても悩みのタネとなる集客。嶋田さんのようにターゲットにきちんと向き合い、彼らが何を求めているのかを徹底的に理解することこそが、一番の集客の近道と言えそうです。

「誰でも実施できる施策」を嶋田さんはこう語る。「まずはターゲットを明確にした集客を行うこと。そしてターゲットが求めている価値を追求すること」

(レポーター/HANJO HANJO編集部 川口裕樹)

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