増え続けるムスリム訪日客、キーワードは「食事」と「お祈り」!

慣習を理解することで可能性が広がる大マーケット/レジャージャパン2018

2019年1月17日
日本を訪れるムスリム(イスラム教徒)の観光客が増えています。東南アジアや中東に多く住むムスリムは世界人口の1/4にも及び、日本を訪れるムスリムが増えるということは大きなマーケットのチャンスがあると言えます。日本におけるハラル(イスラム)ビジネスの先駆者である佐久間朋宏さんの話からビジネスへの具体的対応を抽出します。

一般社団法人 ハラル・ジャパン協会 代表理事の佐久間朋宏さん。ハラル(イスラム)ビジネスに関して年間100本以上の講演や企業研修を行っている。ハラルビジネスの推進や企業のサポートのスペシャリストとして活躍している

 テーマパークやライブ・演劇、レジャースポーツ産業を網羅した専門展「レジャージャパン2018」が2018年12月5~7日の期間、東京ビッグサイトで開催されました。

 「レジャージャパン2018」は、テーマパークやレジャー施設の開発・運営のための設備・サービスの専門展「テーマパークEXPO」、ライブハウス・劇場・ホール向けの設備・サービスの専門展「ライブ&シアターEXPO」、レジャースポーツ・アウトドア向け設備・機器・サービスの専門展「レジャー&アウトドアEXPO」の3つの展示会で構成され、合計150社以上が出展、来場者は3日間で18,902名を記録しました。

 各専門展のテーマに応じたセミナーも多数開催され、第一線で活躍している講師によりレジャー産業における最新トレンドのツボをおさえた講義が行われました。

 今回の記事では12月6日に開催されたセミナー「イスラム教徒の理解とインバウンドの基礎 ―食べ物・お祈りから学ぶー」(講師:佐久間朋宏さん/一般社団法人 ハラル・ジャパン協会 代表理事、サポート:野本康仁さん/株式会社丹青社 企画開発センター2部 部長)より、増え続けるムスリム訪日客への対応の中でも特に大切なポイントについてレポートします。

ムスリム訪日客がもたらす大きなマーケット

 日本を訪れるムスリム(イスラム教徒)の観光客が増えています。東南アジアや中東に多く住むムスリムは世界人口の1/4にも及び、日本を訪れるムスリムが増えるということは大きなマーケットのチャンスがあると言えるでしょう。

 今回のセミナー講師である佐久間さんは一般社団法人 ハラル・ジャパンの代表理事。ハラル(イスラム)ビジネスに関して年間100本以上の講演や企業研修を行っており、ハラルビジネスの推進や企業のサポートのスペシャリストとして活躍しています。

 「イスラム教徒は世界中にいます。特にマレーシア、インドネシア、シンガポールからは通年でムスリム訪日客が来るため、大きなマーケットとなることが期待できます」。佐久間さんはまず、ムスリムをビジネスに取り込むためには彼らの慣習についての理解が重要であることを力説しました。

 例えば、ムスリムは比較的親日的であり、日本の健康や長寿に強い関心を持っていること。他の宗教に比べるとお祈りが1日5回と多く、その理由としてイスラム教には聖職者がいないので自分でお祈りをする必要があるということ。ラマダン(断食)は富めるものも貧しいものも同じようにお腹が空く、つまり平等であるということを示すと同時に、普段の暴飲暴食を浄化する意味もあることなど、日本人とムスリムはだいぶ異なる慣習を持っていることがわかります。

 これらの慣習を理解することがムスリム対応の第一歩だと言えるでしょう。

「ムスリム訪日客にとって重要なのは、買い物をすることよりも日本で食べることができる食事やお祈りスペースの有無です」(佐久間さん)

ムスリムにとって大切なのは「食事」と「お祈り」

 ムスリムの慣習が持つ意味を理解し、きちんと対応することが日本には求められていますが、その中でも「食事とお祈り」には特に気をつける必要があると佐久間さんは強調します。

 ムスリムの食事といえば「ハラル(ハラール)」という言葉をよく耳にしますが、「ハラル」とは食べ物(ハラルフード)のことだけでなく、イスラム教徒にとって良いこと(合法なこと)を指しているそうです。

 「ムスリム訪日客にとって重要なのは、買い物をすることよりも日本で食べることができる食事やお祈りスペースの有無です。例えば提供する食事がハラルかそうでないかは、ムスリム本人たちが判断することなので、まずはムスリムへの対応をいろいろとやってみることが大切です」(佐久間さん)

 特に日本を訪れるムスリムは比較的寛容な人が多いので、あまり難しく考えず、英語・ピクトグラム(絵文字)・写真の3つを使うだけでも、食事をすることができるムスリムは増えるだろうと佐久間さんは話します。

日本に求められている「お祈りスペース」とは?

セミナーのサポートを務めたのは施設の空間づくりを手がける丹青社の野本康仁さん。丹青社はインバウンド対応のユニット型礼拝室「WANOMA(和の間)」を開発

 ムスリムにとって食事とともに重要なのが「お祈り」。日本ではお祈りをするための部屋(お祈りスペース/プレイヤールーム)が用意されていることが少なく、用意されていたとしても施設の空きスペースやバックヤードのようなシンプルすぎる部屋に、必要最低限の設備しかないケースがまだまだ多いと佐久間さんは説明します。

 「お祈りスペースが男女共同だったり、お清めのための洗い場(ウドゥ)が用意されていないなど、ムスリムへの配慮が足りていないケースが多いのが現状です。例えばクアラルンプールではトイレのように男女別々のお祈りスペースが用意されています。ムスリムの女性はお祈りしている姿を見られるのを嫌うこともあるので注意が必要です」

 それではムスリムの求める正しいお祈りスペースとは一体どのようなものなのでしょうか。施設の空間づくりを手がける株式会社丹青社の野本さんは、「ムスリムと日本の文化には共通する部分がたくさんあります。例えば日本人は部屋に入るときは靴を脱ぎますし、神社でお祈りをする前には手を洗って体を清めますよね。これはムスリムも同じです。また植物や自然を取り入れたデザインや言葉の音を好むところもよく似ています」と話しました。

 また野本さんは丹青社の作ったユニットタイプのお祈りスペースである「WANOMA(和の間)」を紹介し、「和のデザインや畳、木の材質などもムスリムの人は日本らしいと受け入れてくれます。ムスリムにとってお祈りは大切なもの。日本はムスリムの国ではありませんが、おもてなしの一つとしてお祈りスペースを整備することで、ムスリムが日本に立ち寄りたくなるきっかけにつながるはずです」とお祈りスペースへの配慮を強調しました。

 最後に佐久間さんは「大学や企業でもお祈りスペースを設置するとことが増えています。きちんとした部屋を作るのは無理でも、例えばパーティションで区切った簡易なスペースを用意するなど、その場にあったお祈りスペースを用意することが大事です。2020年のドバイ万博の次は2025年の大阪万博。そのときにムスリム訪日客を取り込むチャンスを逃さないようにしましょう」と締めくくりました。

 日本国内でも空港や大型の商業施設で見かけることの増えたお祈りスペース。ハラルフードだけでなく、お祈りを含めたムスリムの慣習にしっかりと目を向け、ムスリムが訪れたくなるような日本にしていくことが、彼らを取り込むための重要な鍵になると言えそうです。

2018年12月5~7日の期間、東京ビッグサイトで開催された「レジャージャパン2018」。テーマパークやライブ・演劇、レジャースポーツ産業を網羅し、来場者は3日間で18,902名を記録した

(レポーター/HANJO HANJO編集部 川口裕樹)

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執筆者: HANJOHANJO編集部 - HANJOHANJO編集者
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