利益を貯めていたら成長はありません! 配る経営へ!!

2019年1月15日
李日生さんの連載コラム、新年の一本めは企業経営の核である「ヒト・モノ・カネ」についての提言です。このところよく耳にするのが「内部留保」。儲けたカネは最大限に有効活用しなければなりません。ではどんな対応が好ましいのでしょうか? 内部留保の「ヒト・モノ・カネ」への適切な配分を李さんは勧めます。

 経営資源とは「ヒト・モノ・カネ」だとよく言われます。経営学の教科書で使われる決まり文句のひとつが「それらを有効活用しつつ最適配分することが経営である」です。メディアに登場するコメンテーターは「企業は最高益なのだから、給料に振り分けて内部留保を吐き出せ」と声高に繰り返しています。

 しかし、経営者の立場からすると話は一変します。そんなことをしてしまうと、長期ビジョンに立つ経営は立ち行かなくなりかねないからです。

 例えば工場を保有している会社を例にあげましょう。自社工場の減価償却分についてはそのまま内部留保にたまるので、それを使ってしまったら工場の建て替えは困難になります。そして工場新設の資金全額を銀行借り入れに頼ってしまうと、金融コスト負担が重くのしかかかり、最終的には経営に大きな支障が生まれてしまうのです。

 一方で、固定資産の将来投資のために、減価償却等の効果で内部留保された利益と違う利益については、しっかりと使い方(振り分け方)を考えていくことが会社の成長には不可欠です。

 まさに「ヒト・モノ・カネにどう配分していくか?」です。

 配分することなく、「今季は利益があるけれど、税金を払うのはもったいないから何かに使うか」ーーなんていう経営者もよく見かけますが、税金をしっかり払えば、払った後のカネは社内に将来投資用としてきちんと留保され経営資源になるのです。

 不要な飲み食いや買い物、気分的に無計画なボーナスなんかで使ってしまったら、それは会社の成長に起因しないムダ金になり、使ったカネのすべてがなくなってしまします。

 しかしながら、カネを貯めることが正しいのかというと決してそうとも言えません。カネを貯めて税金を払う(国に一部配分する)のは最後の選択肢にすべきです。国に配分しても直接的に会社の成長に寄与することはあまりないと思うからです(ただし、中長期もしくは短期でも投資案件があり計画的に留保するのなら、それは当然ありです)。

 税前の利益をいかにヒト・モノへと配分するべきなのでしょうか? 新規の雇用計画や投資計画、老朽化したヒト・モノの入替えに使うことを意識して配分を決めていけば、それは会社の成長にとって重要な要素になるはずです。

 2019年の干支は猪突猛進の亥(イノシシ)です。「ヒト・モノ・カネ」への配分を心掛けて、猪突猛進の景気、そして諸突猛進の経営にしていきたいものです。

★関連リンク

★李 日生の連載

  • 企業インフラ、管理インフラの重要性。

    システムやAIを会計に導入するべきか否か? 恐れてばかりでは会社は前進できません。積極的に管理インフラの構築をして、会社全体が慣れていくことをお勧めします。それは時間を有効に使うことにつながり、競争力を高めることにもなっていくはずです。システムやAI導入は、社員一人ひとりが付加価値の高い仕事へのシフトに向かう第一歩になる可能性を秘めています。 

  • 経営は、毎日、毎月、コツコツと。

    経営者が現場で陣頭指揮を取り、肌感覚で対応できるのは成長前の初期段階だけです。会社が成長するにつれ、経営者は日々の数字を確認していくことが求められます。

執筆者: 李 日生 - プレジデントタイム株式会社 代表
慶應義塾大学経済学部卒業後、公認会計士試験合格、監査法人トーマツ国際部に入社・配属。国際企業(商社・通信事業会社・運輸会社等)の連結会計やM&Aを担当、中小企業の経営コンサルティングも数百社経験する。現在はプレジデントタイム株式会社、神宮前アカウンティングファーム株式会社、株式会社H HOLINGS、有限会社ルーベ、神宮前会計を主宰。会計・税務・経営・飲食・不動産等、実際の経営者として代表取締役視点で多岐に及ぶ経験を重ねている(「頭でっかちの机上の空論が大っ嫌い」を自認)。近刊に『忙しい社長を救う経理改革の教科書』(幻冬舎)がある。

コラム新着記事

  • 株式会社シンカができるまで Vol.5 ~ベンチャーはこうして世に羽ばたく~

    株式会社シンカ・江尻高宏さんのコラム、シリーズとして会社創業時から現在にいたる汗と涙の道のりを振り返ります。何が成功を導いてくれたのか? 何が足りなかったのか? どんな出会いがあったのか? どんな発想で切り抜けたのか?・・・ベンチャー企業創業者だからこそ語ることのできるリアルストーリーです。第5回は会社を興した後、初めて社員を採用した時の気持ちが揺れ動いた日々を振り返ります。

    2019年9月19日

    コラム

  • アパレル業界を変えるIT戦略! 熊本発ベンチャー、シタテルが描く「服の未来」【Vol.3】

    アパレル業界は、メーカー、工場ともにテクノロジー化が遅れており、在庫問題や工場稼働の不均衡、手作業による工数の増加など様々なビジネス上の課題を抱えています。そんななか、服を作りたい人と縫製工場を橋渡しする衣服の小ロット生産サービス「sitateru」が注目を浴びています。優れた技術力を持つ縫製工場の「時間・技術・資源」のデータ管理を行い、服を作りたい人と縫製工場を橋渡しする、衣服の小ロット生産サービスです。「sitateru」を提供しているのは、熊本発ベンチャーのシタテル株式会社。アパレル業界の課題をテクノロジーでどう解決するのか? シタテルCTOの和泉信生さんによる連載、その最終回です。

    2019年9月9日

    コラム

  • <シリーズ>「地方創生」2期へ! 1期を検証する③

    今、地域に足りないものは何か? カギを握るのは連携協働、事業を推進するプレイヤーの存在です。連携というと、かつては官民や産学、産学官が一般的でしたが、その実態は名ばかり。真の連携、共創のパートナーシップはどうあるべきか。水津陽子さんのシリーズ第3回は、行政、市民、企業の三者が連携、地域のストックを活用し、老化した都市を再生した先駆的取り組みに迫ります。

    2019年9月2日

    コラム

  • 株式会社シンカができるまで Vol.4 ~ベンチャーはこうして世に羽ばたく~

    株式会社シンカ・江尻高宏さんのコラム、シリーズとして会社創業時から現在にいたる汗と涙の道のりを振り返ります。何が成功を導いてくれたのか? 何が足りなかったのか? どんな出会いがあったのか? どんな発想で切り抜けたのか?・・・ベンチャー企業創業者だからこそ語ることのできるリアルストーリーです。第4回は起業と仲間の関係――「起業は一人でするべきか? それとも仲間と始めるべきか?」について考えます。

    2019年8月19日

    コラム

  • 斜めから見る〜今月の一冊 ⑨『自然はそんなにヤワじゃない—誤解だらけの生態系』

    参院選が圧倒的勝負でもなかったことから、各陣営が都合のいい解釈で、勝利宣言や、健闘し宣言を続けています。どちらが勝とうが、惨事になっているはずだった。なのに比較的平静な選挙後。何だったのでしょう。今回は選挙後だから読んでおきたい本を何冊かピックアップします。

    2019年8月9日

    コラム

  • 「王者」に挑む後発参入の高速バス。業界をどう変える?

    貸切バス専業からスタートしたバス事業者が、短・中距離の高速バス路線に参入する事例が続いています。「新運賃・料金制度」によるチャーター代上昇が好業績を呼び込み、団体ツアーの減少による市場縮小が予想される現在、体力に余裕があるうちに新規事業に挑戦する会社が増えているのです。

    2019年8月7日

    コラム

  • アパレル業界を変えるIT戦略! 熊本発ベンチャー、シタテルが描く「服の未来」【Vol.2】

    アパレル業界は、メーカー、工場ともにテクノロジー化が遅れており、在庫問題や工場稼働の不均衡、手作業による工数の増加など様々なビジネス上の課題を抱えています。そんななか、服を作りたい人と縫製工場を橋渡しする衣服の小ロット生産サービス「sitateru」が注目を浴びています。優れた技術力を持つ縫製工場の「時間・技術・資源」のデータ管理を行い、服を作りたい人と縫製工場を橋渡しする、衣服の小ロット生産サービスです。「sitateru」を提供しているのは、熊本発ベンチャーのシタテル株式会社。アパレル業界の課題をテクノロジーでどう解決するのか? シタテルCTOの和泉信生さんに語っていただきます。

    2019年7月29日

    コラム

  • 株式会社シンカができるまで Vol.3 ~ベンチャーはこうして世に羽ばたく~

    株式会社シンカ・江尻高宏さんのコラム、シリーズとして会社創業時から現在にいたる汗と涙の道のりを振り返ります。何が成功を導いてくれたのか? 何が足りなかったのか? どんな出会いがあったのか? どんな発想で切り抜けたのか?・・・ベンチャー企業創業者だからこそ語ることのできるリアルストーリーです。第3回は、起業家が必ず通る道「資金調達」の艱難辛苦(!?)です。

    2019年7月16日

    コラム